建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 平成25年度決算検査報告における公共工事関係の指摘事例

 
会計検査院は、憲法及び会計検査院法に基づき、
国や国が出資している独立行政法人等、国が補助金等を交付している都道府県、市町村等の会計を検査しています。
このたび、その成果である平成25年度決算検査報告のとりまとめができ、26年11月7日、これを内閣に送付しました。
 
平成25年度決算検査報告に掲記された指摘事項等の総件数は595件で、
そのうち公共工事の実施、効果等に関するものは97件ありました
表-1を参照。関係事例の選別・分類は筆者の個人的見解によります)。
 

表-1 平成25年度決算検査報告における公共工事関係の指摘事項件数・金額

表-1 平成25年度決算検査報告における公共工事関係の指摘事項件数・金額


 
本稿では、これら公共工事関係の指摘事例を簡単に紹介させていただきます。
 
なお、以下、①「不当事項」は法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を、
②「意見表示・処置要求事項」は会計検査院法第34条又は第36条の規定により
関係大臣等に対して会計経理や制度、行政等について意見を表示し又は処置を要求した事項を、
③「処置済事項」は検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項を意味します。
また、④「特定検査状況」は検査報告に掲記する必要があると認めた特定の検査対象に関する検査の状況を意味します。
 
また、金額は断りのない限り指摘金額であり、国庫補助事業に係る事案の指摘金額・背景金額は国庫補助金ベースで示しています。
 
 

1 設計に関するもの

これらは、工事の設計が適切でなかったため、構造物に求められる所要の安全度が確保されていない状態になっていた事態や、
工事の目的を達していなかった事態等です。
これらの中には、設計業者の成果品に誤りがあるのに、発注者が看過したことが原因となっているものが多く見受けられます。
 
【不当事項】
●ボックスカルバートに作用する鉛直土圧を過小に計算していて、設計が適切でなかったため、
 ボックスカルバート等の所要の安全度が確保されておらず、工事の目的を達していなかった(1721万余円)。
 
●水路の浮上の検討において、設計地下水位を壁高の2分の1の位置と設定する必要があったのに、
 水路側壁の下部に設置した水抜きの位置としていて、排水路の設計が適切でなかったため、
 所要の安全度が確保されていない状態になっていた(2件 4752万余円)。
 
●ピット部を含めた側壁の高さで応力計算を行っていなかったり、設計計算書どおりの配筋図を作成していなかったりしていて、
 ファームポンドの設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた(2件 1275万余円)。
 
●防風ネットの設計において、全ての支柱に対して控柱を設置すれば構造計算上安全であるとしていたが、
 設計図面では、この構造計算と異なり控柱を支柱2本につき1本設置することとしていて、設計が適切でなかったため、
 所要の安全度が確保されていない状態になっていた(4601万余円)。
 
●設計において独立基礎の寸法を誤って構造計算を行っていたり、施工において耐力壁の長さを誤っていたりしていて、
 鉄骨造建築物の設計及び施工が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた(1287万余円)。
 
●アンカー付き山留め式擁壁の下段ブラケットとH鋼杭との溶接部について、
 アンカー打設角の見直しによる設計計算に対する確認が十分でないなどしていて、設計が適切でなかったため、
 擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっていた(1874万余円)。
 
●車道に埋設する雨水管等の整備において、設計が適切でなかったため、
 函渠が舗装の一部である下層路盤に入り込んでいて舗装構造が一様でなくなり、
 不同沈下に伴う路面の不陸が生ずるおそれがあるなどしていて、
 安全かつ円滑な交通が確保されていない状態になっていた(134万余円)。
 
●サーバ等を格納するラックの据付けについて、
 耐震据付設計基準を満たすかの検討を行っておらず、設計が適切でなかったため、
 地震時において放射線監視機能の維持が確保されていない状態になっていた(2件 2億6770万余円)。
 
【処置済事項】
●ため池改修工事の実施に当たり、波による堤体の貯水側法面の浸食を防止するための法面保護工について、
 従来の工法より安価となる工法が普及してきているのに、経済比較を行った上で工法を選定していなかったため、
 経済的な設計となっていなかった(1億3076万円)。
 
●パイプライン工事の実施に当たり、
 管路の基礎材に再生砕石を使用することについての各事務所等に対する指導が十分でなかったことなどから、
 事務所等において新材砕石を使用していて、環境に配慮した経済的な設計となっていなかった(2530万円)。
 
●下水道事業における終末処理場等の設計に当たり、
 事業主体に対して下水道施設の耐震対策指針等のほか同指針において
 準拠することとしている杭基礎の設計に関する基準等に基づき適切に設計することを十分周知していなかったり、
 事業主体において平成19年の同基準の改訂の内容を十分理解していなかったりしていたことなどから、
 基礎杭とく体の底版との結合部について地震時における所要の安全度が確保されていなかった(32億0815万円)。
 
 

2 積算に関するもの

これらは、積算額が過大であったものなどであり、工事費に係るものと補償費に係るものがあります。
 

(1)工事費に係るもの

【不当事項】
●分庁舎等の解体撤去工事の施行に当たり、処分費等の積算を誤ったため、契約額が割高となっていた(670万円)。
 
●直立消波ブロック補修工事において、請負人からの申出を受けて施工方法の変更を指示していたのに、
 積算の見直しを行っていなかったなどのため、工事費が割高に算定されており、交付金が過大に交付されていた(126万余円)。
 
【処置済事項】
●高速道路の保全管理工事等における保安規制作業費の積算に当たり、
 保安規制作業の実施方法を定めたマニュアルにおける交通誘導員等の数量及び同作業の実態を
 積算基準に反映させていなかったことなどから、保安規制作業費の積算額が過大となっていた(2億3390万円)。
 

(2)補償費に係るもの

【不当事項】
●建物の移転補償費の算定に当たり、公共用地の取得に伴う損失補償の標準書等の適用を誤っていたり、
 事業の支障とならない建物を移転補償の対象に含めていたりしていたため、
 交付金等相当額が過大に交付されていた(5件 2968万余円)。
 
【処置済事項】
●国庫補助事業で実施する道路整備事業に係る見積書の価格を用いた移転補償費の算定に当たり、
 直接工事費と諸経費等に区分された見積書を徴していないことなどから
 要領諸経費等に相当する価格が重複して計上されているおそれを生じさせていたり、
 見積検証資料の作成及び保存を行っていないことから見積書の価格の内容を検証できなかったりしていた
 (背景金額 7億3238万円:
  要領諸経費等に相当する価格が重複して計上されるおそれが生じていた見積書の価格に対する国庫補助金等相当額)。
 
 

3 施工に関するもの

これらは、工事の施工が設計と相違していたり、施工が不適切であったりしたため、工事の目的を達していなかったものです。
原因は、請負人の粗雑な施工や設計への理解不足、発注者の監督・検査が十分でなかったことなどです。
 
【不当事項】
●木造施設の建設に当たり、柱と梁や土台等との接合箇所の一部に接合金物を使用せずに部材を組み合わせただけにするなどしていて、
 施工が設計と相違していたため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた(1481万余円)。
 
●擁壁の施工において、伸縮目地が設計図書のとおり設置されておらず施工が著しく適切でなかったため、
 擁壁の背面まで貫通したひび割れが生ずるなどしていて、工事の目的を達していなかった(582万余円)。
 
●土留壁の施工において、鋼矢板と腹起し材の間に充填材が全て設置されていなかったり、
 全てのブラケットにおいて鋼矢板との溶接部の脚長が設計値を満たしていない部分が見受けられたりなどしており、
 施工が設計と著しく相違して粗雑なものとなっており、土留壁等が工事の目的を達していなかった(4233万余円)。
 
 

4 契約等経理に関するもの

これらは、工事に係る契約等の経理が不適正な事態となっていたものなどです。
 
【意見表示・処置要求事項】
●地方航空局が締結する空港管理業務等に係る契約の競争性の確保に向けた取組について
国土交通省の地方航空局は、空港の管理運営等のために必要な各種業務等に係る契約を毎年度多数締結している。
そして、これらの空港管理業務等のうち省令に基づき立入りが制限されている区域において実施する制限区域業務に係る契約について、
競争性の確保に向けた取組を推進してきている。
しかし、事業者に対して、制限区域業務の内容、作業環境等に関する理解の促進を図る取組が十分に行われていなかったり、
入札公告において入札説明書等の交付場所を契約を発注する東京、大阪両航空局に限定していたりしている中で、
1者応札の割合が高くなっている事態が見受けられた
(背景金額75億7065万円:
 制限区域業務に係る契約のうち作業環境等の理解促進を図る取組が十分に行われておらず1者応札となっている契約の金額。
 背景金額 17億3876万円:
 地方航空局の管轄区域内に競争参加資格要件を満たす事業者が多数存在すると思料される契約のうち
 入札公告において入札説明書等の交付場所を地方航空局に限定していて1者応札となっている契約の金額)。
 
●住宅防音事業における契約手続等の公正性等の確保について
防衛省は、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律等に基づき、防衛大臣が指定する飛行場等の周辺の区域において、
当該区域に指定される以前から所在する住宅の所有者等が住宅に遮音機能等を付加するための防音工事等を実施する場合に、
その費用を補助する住宅防音事業を実施している。
そして、同省は、防音工事に係る契約金額を公正に決定しなければならないことから、
補助事業者に対して、交付決定額及び予定価格を提示せずに見積書を徴取した上で工事業者との工事請負契約等を締結すること、
共同住宅の複数世帯に係る防音工事を同一時期に発注する場合において
原則として競争入札又は複数の工事業者からの見積書の徴取を実施した上で工事請負契約を締結することなどを求めている。
また、これらの事務手続に不慣れな補助事業者を支援する業務を外部業者に委託している。
しかし、防音工事について、工事契約の金額等が公正に決定されているかを確認等していなかったり、
共同住宅の複数世帯に係る防音工事を同一時期に発注する場合において
競争入札又は複数の工事業者からの見積徴取等の実施が徹底されていなかったり、
最低制限価格の設定状況等を具体的に確認していなかったり、
工事業者と人事面において関連があると疑われる者に支援業務を実施させていたりするなどの事態が見受けられた
(指摘金額 1388万円。
 背景金額 69億7516万円:
 契約金額等が公正に決定されているかを確認等していないなどの国庫補助金額)。
 
 

5 事業効果等に関するもの

これらは、事業効果の発現が十分でないなどの事態であり、
公共工事により整備した施設等の維持管理・安全性に関する問題についても取り上げています。
 

(1)施設等の維持管理・安全性に係るもの

【意見表示・処置要求事項】
●基幹的な農業水利施設のストックマネジメントについて
農林水産省は、農業水利施設の劣化の状況に応じた補修、更新等を計画的に行うことにより、
施設の長寿命化及びライフサイクルコストの低減を図るストックマネジメントを推進している。
しかし、土地改良調査管理事務所等及び府県において、
対策工事が、施設の劣化予測を踏まえて作成した技術的、経済的に妥当な複数の実施時期及び工法の組合せ(シナリオ)のうち、
機能保全コストを比較するなどして選定された最適なシナリオを踏まえて適時に実施されていなかったり、
施設管理者による施設監視が適切に実施されていないことから施設の劣化状況が継続的に把握されていなかったりなどしている事態、
府県において、優先度が高いと考えられる施設が実施方針や機能診断及び機能保全計画の対象施設として選定されていなかったり、
ストックマネジメントに関する情報がデータベースにおいて一元的に蓄積されていなかったり、
機能診断の対象施設について土地改良施設管理円滑化事業の定期診断が重複して実施されていたりなどしている事態が見受けられた
(背景金額 67億4772万円:
 国営造成施設について実施されたストックマネジメントに係る委託事業及び対策工事の事業費。
 背景金額 312億9961万円:
 県営造成施設について実施されたストックマネジメントに係る国庫補助事業等に係る補助金交付額)。
 
●電線共同溝における無電柱化の効果について
国土交通省は、安全かつ円滑な交通の確保を図ることなどを目的として、
電線を入溝する管路等を道路の地下に整備して無電柱化の推進を図る電線共同溝整備事業を、
国道事務所等が事業主体となる直轄事業又は都道府県等が事業主体となる交付金等事業として実施している。
そして、事業主体は、
電線共同溝の整備完了後の占用の許可を申請した電気事業者、電気通信事業者等の占用予定者の意見を聴いて、
電線共同溝の整備計画を策定することができることとなっており、
整備計画を策定した場合には、これに基づき整備を行わなければならないこととなっている。
しかし、電線共同溝の整備が完了してから長期間経過しているのに無電柱化が完了していなかったり、
占用予定の管路延べ延長に対する電線が入溝されていない管路延べ延長の割合が高かったりしていて
電線共同溝を整備した効果が発現していない事態が見受けられた
(背景金額 450億1235万円:
 長期間無電柱化が完了していない箇所及び電線が入溝されていない管路延べ延長の割合が高い箇所に係る事業費等)
 
●ダムの維持管理について
国土交通省は、河川の水量を一時的に貯留して洪水調節を行うダムについて、
建設等のほか、日常の維持、修繕その他の維持管理を行っており、
また、ダムの建設等を行う道府県に対して補助金又は交付金を交付している。
そして、道府県は、自ら建設するなどしたダムの維持管理等を行っている。
しかし、県が管理するダムにおいて、計測、修繕等が3年以上にわたり行われていなかったり、
地方整備局等管内の事務所等及び道府県が管理するダムにおいて、
堆砂量があらかじめ計画する年数の間に貯水池に堆積すると推定される土砂の量(計画堆砂量)を上回っていたり、
洪水調節を行うための容量内に堆砂していたり、洪水調節容量内における堆砂の状況が不明となっていたり、
設定貯水量について堆砂測量の結果を反映していなかったり、
道府県が管理するダムにおいて、地震が発生した際にダムの維持管理を行う者にその情報が適時に通報されなかったり、
予備発電設備について所要の連続運転可能時間が確保されているか明らかでなかったりする事態が見受けられた
(背景金額 2兆2557億6137万円:
 維持管理が適切でないなどのダムに係る建設費)
 
●鉄道施設の維持管理について
JR北海道は、技術基準に基づき、
軌道、軌道に近接した法面や斜面からの落石の進入を防止するための落石止擁壁等の鉄道施設の維持管理を図るために、
軌道に係る軌道変位検査及び補修工事並びに落石止擁壁に係る通常全般検査を実施することとしている。
しかし、軌道の維持管理について、軌道変位検査を適切に行っていなかったり、
補修工事の実施が適切でなかったりしている事態及び落石止擁壁の維持管理について、
擁壁背面の落石等の堆積状況を適切に把握していない事態が見受けられた
(背景金額4億4842万円:
 軌道変位検査及び補修工事が適切に実施されていなかった軌道及び分岐器の帳簿価額。
 背景金額 34億0441万円:
 擁壁背面の落石等の堆積状況を適切に把握していなかった柵付擁壁の帳簿価額)。
 

(2)資産の活用に係るもの

【意見表示・処置要求事項】
●新直轄道路における料金所予定地等の有効利用等について
国土交通省は、平成15年度から、直轄事業として高速自動車国道を整備するために、
旧日本道路公団等が取得するなどした用地の譲渡を受けるなどしている。
これらの用地には、公団等が料金所を整備することを予定して取得した用地、
公団等がインターチェンジを設置することを予定して取得した用地等のうち
同省が規模を縮小したインターチェンジを設置することとしたために生じた残余地
及び公団等が休憩施設を整備することを予定して取得した用地が含まれている。
そして、これらの料金所予定地等は、
国有財産として用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分が求められている。
しかし、料金所予定地等の一部又は全体が有効利用されていない状況において、
これらの用地を有効利用等するための具体的な計画が定められていなかったり、
保有し続ける必要性が具体的に検討されていなかったりしている事態が見受けられた(12億4466万円)。
 

(3)東日本大震災からの復旧・復興等に係るもの

【意見表示・処置要求事項】
●東日本大震災の被災地における防災のための集団移転促進事業の実施について
国土交通省は、東日本大震災の被災地において、
住民の居住に適当でないと認められる区域から移転しようとする者が住宅団地内の宅地
又は災害公営住宅へ集団的に移転することを促進する防災のための集団移転促進事業を実施しており、
岩手、宮城、福島各県管内の25市町村に対して、その費用の一部を東日本大震災復興交付金により交付している。
しかし、住宅団地の整備に時間を要する中、
移転者の意向が変化するなどして住宅団地へ移転を希望する者のうち貸付け又は分譲により宅地を希望する者が減少して、
住宅団地の宅地に空き区画が生じている事態が見受けられた
(背景金額 4410億0819万円:
 防災のための集団移転促進事業に係る東日本大震災復興交付金の交付決定額)。
 
 
 
以上に紹介した事例を含め、会計検査院の指摘事項等について、
詳しくは検査報告をご覧いただきたいと思います(会計検査院のホームページに全文を掲載しています)。
 
最後になりましたが、各府省等や国の出資法人その他の関係者の皆様には、
これらの事例を参考にしていただき、適正かつ効率的・効果的な事業の実施に努めていただくようお願いいたします。
 
 
 

筆者

会計検査院 事務総長官房 渉外広報室長 山崎 淳也(やまざき じゅんや)
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2015年2月号
月刊積算資料2015年2月号
 
 

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品