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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > CALSの成果をCIMにつなげるBCPサポートシステムプロジェクト~東日本大震災の被災地における実証実験~《後編》

 

一般財団法人 日本建設情報総合センター 研究開発部 建設ICT推進グループ
主任研究員 富岡 光敏
グループ長 元永 秀
主任研究員 影山 輝彰

 
 

CIM

CIMのキックオフ

平成24年4月13日、JACICでは、基本構想の15年を振り返るとともに、建設生産システムのイノベーションに向けた新たなステージを展望するため「CALSの15年を振り返り、新たなステージへ~建設生産システムのイノベーションに向けて~」と題したセミナーを開催した。国土交通省技監の佐藤直良氏は基調講演の中で、建築分野で活用されている3次元データの建物モデルに部材等の属性情報を盛り込んだBIM(Building Information Modeling)の効果や、新宿労働総合庁舎へのBIM導入事例を紹介し、建設生産システムにおける建築と土木のBIMを総称する言葉としてCIMを提言され、建設産業の生産性を高めるためにはCIMの積極的な活用が重要であるとの内容であった。
 

CIM (Construction Information Modeling)とは

CIMについては「建設現場において、企画から調査、計画、設計、施工、維持管理の一連の過程における関連情報の統合・融合により、施工段階における品質や施工性の向上、維持管理段階における管理の高度化といった、新しい建設管理システムの構築」と述べられている。さらに、CIMの導入には①対象物の三次元の空間形状に加え、時間・コストの基本的な情報、②対象物の属性情報、③維持管理を考慮した計測機器の組み込み等の高度化の3つの要素が重要であると述べられている。
 
CIMの具体的なイメージは、公共事業の計画から調査・設計、施工、維持管理そして更新に至る一連の過程において、ICTを駆使して、設計・施工・協議・維持管理等に係る各情報の一元化および業務改善による一層の効果・効率向上を図り、公共事業の品質確保や環境性能の向上、トータルコストの縮減を目指すものである。
 
次にCIMの核となるデータモデルのイメージを図-8に示す。データモデルはCALSで実現できなかった統合データベース(質+情報)と3次元モデリング(形状+属性)により構築される。これはCIMにおける重要な施策になると考えられる。データモデルでは、データを受け渡しではなく、共通するデータを取りに行くといった発想により、建設生産システムの各フェーズの関係者全てが同一のモデルを同時にイメージすることができる。そのため、設計段階での検討に施工や維持管理の担当者が参画可能となり、高い品質の社会資本とサービスを提供することにつながる。さらに、目的化されることにより、シミュレーション、構造計算、施工等についてフロントローディングを実施することが可能となり、建設生産システム全体の改善につながると考えられる。
 

図-8 CIMデータモデルのイメージ

図-8 CIMデータモデルのイメージ


 
 

CIMに繋がるBCPサポートシステム

BCPサポートシステムプロジェクトの成果(具体的な利用状況とCIMへの手応え)

図-9 維持管理業務への適用可能性(例:道路巡回)

図-9 維持管理業務への適用可能性(例:道路巡回)


2012年11月現在、東北地方整備局の北上川下流河川事務所をはじめとした6現場で、モバイル機器としてタブレット端末やクラウドサービス等を活用して、どのような業務改善や品質確保の効果があるのか計測を開始し、一定のデータが整理できたところである。計測項目は、移動時間や移動距離、作業時間や保管スペース等に加え、タイムリーに判断を可能とする資料や図面が速やかに検索できるか等を調査した。
 
具体的な利用例は、図面や管理台帳および各種基準類をPDFデータとして電子図書館に登録し、現地での確認や打ち合わせ時にタブレット端末により閲覧したり、現地調査や巡回点検時に現地で撮影した写真をクラウドサーバにアップし即時情報共有を行うこと等である。このようにクラウドサーバとタブレット端末の連携およびタブレット端末自体の有効性が確認できた。また、現場ではよく利用されており、便利であるとの声をいただいている。さらに、受注者側でも同様にタブレット端末を利用して、既済検査時に写真を印刷せず、タブレット端末で確認をしている現場の事例も見られた。
 
図-10 タブレット端末の利用状況

図-10 タブレット端末の利用状況


 
検証の結果、BCPサポートシステムの効果としては、現場確認、打ち合わせ時のお互いの理解度の向上、時間短縮、手戻り防止などがあり、これらは当初想定していたBPRに有効である。これらの効果は、電子図書館をデータモデルと捉え、そのデータ(情報)を関係者間でいつでもどこでも共有し、業務の品質向上を図る点において、CIMの目指す効果につながるものである。なお、現場の事例であるが、修正等が容易である電子データでも、あまりにも修正頻度が高い場合は電子図書館への登録が追い付かない状況もでてきている。これは復興関係の工事において図面の修正が相当多いためである。この課題は、今後CIMのデータモデルを利用することにより、解決していけるものと考えられる。
 
また、数字には表れないが現場での対応に関して相当の効果があり、現場技術力(品質を見抜く力、施工・管理場面での判断力等)の向上支援等、今後の可能性は大きい。
図-11 写真管理サービスの利用状況

図-11 写真管理サービスの利用状況


なお、今回の検討では点検等維持管理業務への適用の可能性が高いことがわかった。図-9にイメージを示す。またタブレット端末(電子図書館サービス)、写真管理サービスの現場の利用状況を図-10、11に示す。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

今後の展開とCIMサポートプロジェクト

現在、6つの現場でBCPサポータとして寄り添い、日々の業務をサポートすることから取り組んでいる。各現場では、現場のニーズを出発点にしたアイデアや工夫が生まれている。その一例としては現地にタブレット端末を持参し、簡易TV会議と写真管理サービスを併用した正確な情報伝達や、録音アプリケーションの利用による議事録作成の補助等である。またICTは日々進化しており、CIMの核である3次元モデリングのソフト関係も整備されてきている。
 
今回、最先端のICTを、業務が輻輳し、多忙な作業に追われている被災地の復旧・復興の最前線にあてはめ、多忙な職員の方々自らが取り組み、サポートした結果、業務改善、効率化に明らかな効果を確認した。さらに品質向上を図るためには、最先端のICTを駆使するとともに一人一人の技術者がICTに向き合うことが重要である。これらはCIMが目指すものに通じるものである。
 
現在、国土交通省をはじめとした公共事業の現場では、ICTの導入を阻害する要因が多く、他産業に比べ業務改
善・品質向上は、大きく遅れている。このため、公共事業の現場で、最先端のICTの導入と普及を図り、寄り添った支援を行うCIMサポートプロジェクトを提案し、公共事業の現場においてCIMの積極的な活用をサポートし、業務改善による一層の効果・効率向上を図り、公共事業の品質確保や環境性能の向上、トータルコストの縮減に寄与していきたい。
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 

最終更新日:2014-06-11

 

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