建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の概要

 

1.はじめに

平成26年5月21日、国土交通省では、
管理・所管するあらゆるインフラの維持管理・更新等を着実に推進するための中長期的な取組の方向性を明らかにする計画として、
「国土交通省インフラ長寿命化計画(以下「行動計画」という)」をとりまとめた。
 
具体的には、
道路、河川・ダム、砂防、海岸、下水道、港湾、空港、鉄道、
自動車道、航路標識、公園、住宅、官庁施設、観測施設の14分野を対象に、
①各インフラの的確な維持管理・更新等が行われるよう、体制や制度等を構築する「所管者」としての役割と、
②各事業等に関わる法令等に基づき、自らがインフラの「管理者」として、的確な維持管理・更新等を実施する役割、
という二つの立場から国土交通省として取り組むべき施策を記載している(図-1)。
 

図-1 国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の概要

図-1 国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の概要


 
本稿において、行動計画の策定経緯や目的、および記載されている施策の要点等を紹介させていただくことで、
インフラの老朽化対策の計画的実施に取り組む地方公共団体や民間のインフラ管理者、
維持管理の担い手となる民間企業の皆様の一助となれば幸いである。
 
 

2.インフラ老朽化の現状と将来見通し

国土交通省が所管するインフラは、道路、鉄道、港湾、空港といった産業インフラ、
河川管理施設や砂防等の国土保全のためのインフラ、下水道や公園等の生活関連インフラ等、多岐にわたっている。
これらの整備は、昭和30年頃からは産業インフラ、昭和50年頃からは生活関連インフラについて集中的に進められるなど、
時代の要請に応じた対応がなされてきた。
その結果、整備時期は施設によって大きく異なり、管理主体も国、地方公共団体、民間企業等さまざまである。
 
中でも、昭和39年の東京オリンピックの頃に整備された首都高速1号線をはじめ、
高度成長期以降に整備したインフラが急速に老朽化し、
今後20年間で、建設後50年以上を経過する施設の割合が加速度的に高くなる見込みである。
表-1を見ると、現在は各分野において数%〜20%台にとどまっている50年を経過した施設の割合が、
20年後には多くの分野で過半数に達することが明らかになっている。
 

表-1 建設後50年以上経過する社会資本の割合

表-1 建設後50年以上経過する社会資本の割合


 
これらの社会インフラを今後、維持管理・更新していくのに必要となる費用については、
平成25年12月に開催された国土交通省社会資本整備議会・交通政策審議会において、
国土交通省所管の社会資本10分野(道路、治水、下水道、港湾、公営住宅、公園、海岸、空港、航路標識、官庁施設)の
国、地方公共団体、地方道路公社、独立行政法人水資源機構が管理者のものを対象に、
建設年度ごとの施設数を調査し、過去の維持管理・更新実績等を踏まえた推計が示されている。
 
現在の技術や仕組みを前提とすれば、平成25年度に3.6兆円あった維持管理・更新費が、
10年後には約4.3〜5.1兆円、20年後には約4.6〜5.5兆円程度になるものと推定されている1)
今後の国土の利用や都市、地域の構造変化の見通し、技術開発による維持管理・更新費の低減の可能性、効果等については、
不確定な要素が多いが、決して小さくはない維持管理・更新費の負担に十全に対処し、
将来にわたってインフラの機能劣化により経済競争力の低下や安全・安心が脅かされる事態が生じないよう、
適切に対策を実施していくことが重要である(表-2)。
 
表-2 将来の維持管理・更新費の推計結果

表-2 将来の維持管理・更新費の推計結果


 
 

3.国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の策定に至る経緯

3-1 国土交通省の取組

平成24年12月2日、中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故が発生した。
このような事故を二度と起こさないよう、
国土交通省では、翌年の平成25年を「社会資本メンテナンス元年」と位置付け、取組を進めてきた。
同年1月21日に国土交通大臣を議長とする「社会資本の老朽化対策会議」2)を省内に設置し、
同年3月21日には、3カ年にわたる工程表として「社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置3)
(以下「当面講ずべき措置」という)」をとりまとめ、これに基づく取組を順次進めてきた(表-3)。
 

表-3 社会資本の老朽化対策に関する国土交通省の主な取組

表-3 社会資本の老朽化対策に関する国土交通省の主な取組


 

3-2 政府全体の取組

一方、他省庁も含めた政府全体の取組としては、
平成25年10月4日、「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」が設置され、
同年11月29日には、国民生活やあらゆる社会経済活動を支える各種施設をインフラとして幅広く対象とし、
戦略的な維持管理・更新等の方向性を示す基本的な計画として、
「インフラ長寿命化基本計画(以下「基本計画」という)」がとりまとめられた。
 
上記の基本計画において、各インフラの管理者4)
およびその者に対して指導・助言するなど当該インフラを所管する立場にある国や地方公共団体の各機関は、
インフラの維持管理・更新等を着実に推進するための中長期的な取組の方向性を明らかにする計画として、
インフラ長寿命化計画(行動計画)を策定することが定められている。
加えて、行動計画に基づき、個別施設毎の具体の対応方針を定める計画として、
個別施設毎の長寿命化計画(個別施設計画)を策定することとされている5)
 
これに基づき、国土交通省が各省庁に先駆けて決定したものが「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」である6)図-2)。
 

図-2 インフラ長寿命化に向けた計画の体系(イメージ)

図-2 インフラ長寿命化に向けた計画の体系(イメージ)


 
 

4.国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の目的・対象施設・期間

4-1 目的

前章で紹介したインフラ長寿命化基本計画では、将来の目指すべき姿として、
①安全で強靱なインフラシステムの構築、
②総合的・一体的なインフラマネジメントの実現、
③メンテナンス産業によるインフラビジネスの競争力強化の3点を挙げている。
上記を受けて、国土交通省の行動計画でも、
国民の安全・安心の確保、中長期的な維持管理・更新等に関わるトータルコストの縮減や予算の平準化、
メンテナンス産業の競争力確保を目指すこととしている。
 

4-2 対象施設

対象施設については、基本計画における「計画的に点検・診断、修繕・更新等を実施する必要性が認められる全ての施設について、
行動計画の対象とする」との記載を踏まえ、
国土交通省が維持管理・更新等に関わる制度や技術を所管するインフラについて、
法令等で位置付けられた全ての施設を対象としている(具体的な対象施設は表-4参照)。
 

表-4 行動計画の対象施設

表-4 行動計画の対象施設


 

4-3 期間

計画を決定した平成26年度(2014年度)を初年度とし、基本計画に示されたロードマップ7)において、
一連の必要施策の取組に一定の目途を付けることとされた、平成32年度(2020年度)までを計画期間としている8)
 
 

5.国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)における施策の方向性

行動計画では、対象施設の現状と課題を踏まえて、8項目からなる「必要施策」に係る取組について、
「その方向性の総論」および「施設毎の具体的な取組」を記載している。
本稿では、前者の総論を中心に紹介するため、
施設毎の具体的な取組については行動計画の本文9)を参照されたい(表-5)。
 

表-5 国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の主な取組

表-5 国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)の主な取組


 

5-1 点検・診断/修繕・更新等 10)

点検・診断/修繕・更新等にあたっては、全対象施設において点検・診断、必要な対策を実施するとともに、
これらの取組を通じて得られた情報を記録し、次の点検・診断等に活用するという、「メンテナンスサイクル」を構築する。
 
必要な対策の検討にあたっては、他の関連する事業も考慮した上で、その施設の必要性等を再検討する。
必要性が認められる施設は、
更新等の機会を捉えて社会経済情勢の変化に応じた質的向上や機能転換、用途変更や複合化・集約化し、
必要性が認められない施設は、廃止・撤去する等の戦略的取組を推進する。
 
①地方公共団体等の管理者の技術力の確保
各地方整備局等に設置した相談窓口の機能の充実を図るとともに、基準の整備・提供と研修・講習の充実を推進する。
 
②地方公共団体等への予算に関連する措置
既存の交付金等による支援や運用の改善を継続する。
加えて、上記の戦略的な取組を地方公共団体等が推進できるよう、交付金制度の充実に向けた検討を行うとともに、
本計画で示された工程表(ロードマップ)の実現に向け、必要に応じた交付期間を設定する。
また、交付金以外の面では、起債対象の拡充・明確化に係る地方整備局等の相談窓口等を通じて必要な情報提供を行う。
 
③担い手確保に向けた入札契約制度等の見直し
修繕工事等の担い手を円滑に確保できるよう、積算基準の見直し等を通じた適正価格等の設定や、
発注ロットの最適化を図るとともに、調査・設計・施工の各段階の連携強化や、単価・数量精算方式の活用等を推進する。
 

5-2 基準類の整備

①体系的な整備
建築基準法等の分野横断的な基準類や各分野の基準類を引き続き適切に運用するとともに、適時・適切に改定を行う。
また、新規整備、点検、修繕・更新等の各段階で、基準類の相互の整合性が図られるようにする。
 
②地域の実情に応じた基準の整備
施設の重要度、設置環境等、地域の実情を考慮した点検の頻度や内容等の基準を設定する。
 
③新たな技術や知見の基準類への反映
新技術の普及状況や同じような事故・災害から得られた知見を関連する基準類に反映する。
 

5-3 情報基盤の整備と活用

①不足情報の収集
点検・修繕等のメンテナンスサイクルの取組を通じ、最新の劣化・損傷の状況等の情報を収集する。
情報収集に際しては項目やフォーマット等の明確化、一般化を図る。
 
②情報の蓄積、地方公共団体等も含めた一元的な集約
収集した情報の蓄積や一元的な集約化を進めるとともに、
共通フォーマットの提示やシステムの共有等、地方公共団体等におけるデータベース構築の支援を行う。
 
③情報の利活用と発信・共有
収集した情報を、効果的な維持管理の実施、事故等に係る同種・類似のリスクを有する施設の特定、
基準類の体系的整備や新技術の開発・活用等へ積極的に活用する。
加えて、蓄積された情報を目的に応じて一定の条件を付した上で、可能な限り広く一般に公開する。
 

5-4 個別施設計画の策定・推進

①対象施設(表-6)
行動計画の対象施設のうち、以下を除く全ての施設について、
予防保全型維持管理の考え方を前提とした個別施設計画の策定を推進する。
●経年的な損傷以外の損傷によって健全性が左右される施設
●主たる構成部が精密機械・消耗部材である施設
●規模の小さい施設
 

表-6 個別施設計画の対象施設

表-6 個別施設計画の対象施設


 
②計画策定の推進と内容の充実
全ての管理者によって早期に計画の策定が進むよう、策定方針や手引きの策定等を実施する。
その際、中長期的な予算管理に資するよう、概算費用の算定や計画期間の考え方についても明記する。
加えて、修繕や更新に際し、機能転換・用途変更、複合化・集約化、廃止・撤去、耐震化等の検討を行うに当たっては、
都市計画や交通計画、その他の戦略等と一体となって取り組めるよう、相互連携の強化を図る。
 

5-5 新技術の開発・導入

①技術研究開発の促進
管理ニーズ、インフラのボリューム感等の情報の提示、試行フィールドの提供等、
民間等が技術研究開発に投資しやすい環境の整備等を通じ、適切な役割分担の下での産学官の連携を推進する。
 
また、管理ニーズと技術シーズのマッチング等に向け、モニタリング・ロボット技術に係る有識者会議の設置や、
管理ニーズの分野毎・メンテナンスサイクルの段階毎の整理、
府省庁連携による技術シーズとのマッチング、公募による現場実証・評価等を推進する。
 
②円滑な現場展開
NETIS11)等を活用し、管理ニーズを踏まえ公募した新技術の現場での積極的な活用・評価を図るとともに、
評価に基づく新技術の特性等について「NETIS維持管理支援サイト」で公表する。
 

5-6 予算管理

①トータルコストの縮減と平準化
トータルコストの縮減・平準化に向け、個別施設計画の策定・推進や新技術の開発・導入につき、
行動計画で示した取組を強力に推進する。
さらに、人口減少、少子高齢化社会の到来を見据え、国土の利用等に応じたインフラ機能の維持・適正化を推進する。
 
②受益と負担の見直し
料金等を徴収している施設は、点検・診断結果に基づき、将来必要となる経費の見通しを明確化し、
現在の料金等でその対応が困難な場合は、必要な財源の確保に向けて検討を行う。
なお、その時期については、点検・診断の結果等や、修繕・更新等の必要経費における将来見通しの算定状況、
利用者負担の増加の程度や経済社会への影響等に配慮しつつ、個別施設毎に慎重に判断するものとする。
 

5-7 体制の構築

①技術者の確保、育成資格制度の充実
維持管理・更新等に係る技術者の確保・育成資格制度の充実に向け、必要となる能力や技術を施設分野毎等に明確化し、
民間資格を評価・認定する仕組みを構築する。
また、研究機関や地方整備局等の人材を活用し、技術者が不足する地方公共団体等への技術的助言体制を確立する。
 
②管理者間の相互連携体制の構築
小規模な市町村においても将来にわたってインフラを管理できるよう、
国、都道府県、市町村等が広域的に連携するなどの仕組みを構築する。
 
③担い手確保に向けた環境整備
適正な施工体制の確保を徹底するため、
修繕工事等の小規模工事へ施工体制台帳の作成・提出義務を拡大し、施工体制の把握を徹底するとともに、
技能労働者への適切な水準の賃金支払いの確保、社会保険等への加入徹底に向けた取組の強化を通じて、
魅力ある環境を整備する。
また、包括的民間委託やPPP/PFIの活用についても検討し、順次導入を図る。
 
④国民等の利用者の理解と協働の推進
民間団体等を協力団体等として指定し、維持管理の実施や占用に係る手続きを簡素化する。
加えて、施設の現地見学会や維持管理への参画等により、国民の理解と協働を推進する。
 

5-8 法令等の整備

①責務の明確化
点検や基準類等の位置付けが不明確な施設について、機会を捉えて法令等で明示し、管理者の責務を明確化する。
 
②社会構造の変化に対応した制度の構築
建築基準法等の分野横断的な法令等や各分野の法令等を引き続き適切に運用するとともに、
社会構造の変化や新たな課題に対応して制度化が必要な事項については、機会を捉えて法令等の整備を推進する。
 
 

6.おわりに〜今後の展望〜

行動計画では、計画に記載した施設毎の具体的な取組を引き続き深化・充実させるとともに、
計画に関する進捗状況を把握し、進捗が遅れている施策の課題整理と解決方策等の検討を行うため、
必要に応じて「社会資本の老朽化対策会議」等においてフォローアップを行うこととしている。
その結果や新たな取組については、
以下の社会資本の老朽化対策ポータルサイト等を通じて積極的に情報提供を図っていく予定である。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/point/sosei_point_mn_000003.html)。
 
加えて、取組を各省庁へと拡大していくことも重要となる。
既に平成26年7月31日には「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議幹事会(第1回)」が開催され、
各府省庁、地方公共団体および所管法人等における行動計画の策定時期の見通しを明らかにしていくこと等が確認されている12)
 
笹子トンネル事故のような痛ましい事故は二度と繰り返さないとの決意の下、
本稿で紹介した行動計画や上記の取組等を通じて、
国土交通省では引き続き、インフラの老朽化対策に計画的・重点的に取り組んでいく。
 
 
 

【注】

1)社会資本整備審議会・交通政策審議会「今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について 答申」
2)「社会資本の老朽化対策会議」の詳細は、ホームページを参照のこと
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/sosei_point_mn_000006.html

3)「社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置」の詳細は、ホームページを参照のこと
http://www.mlit.go.jp/common/000991905.pdf

4)管理者以外の者が法令等の規定によりそのインフラの維持管理・更新等を行う場合にあっては、その者
5)行動計画、個別施設計画ともに、各インフラの管理者がすでに同種・類似の計画を策定している場合には、当分の間、当該計画をもって、上記の計画の策定に代えることができるものとされている。
この場合、各インフラの管理者は、インフラ長寿命化基本計画の趣旨を踏まえ、できるだけ早期に適切な見直しを行う必要がある

6)平成26年8月19日には、農林水産省がインフラ長寿命化計画(行動計画)を策定している
7)ロードマップの詳細は、「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」ホームページを参照のこと
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/infra_roukyuuka/

8)個別の施策における実施時期の詳細は、行動計画工程表を参照のこと
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/sosei_point_mn_000011.html

9)行動計画本文の詳細は、ホームページを参照のこと
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/sosei_point_mn_000011.html

10)「等」には、修繕や更新の機会を捉えた機能転換・用途変更、複合化・集約化、廃止・撤去、耐震化等が含まれる
11)NETIS(新技術情報提供システム):民間等により開発された新技術をデータベース化し、HPでの公表を通じて、広く情報共有するとともに、公共工事等において積極的に活用・評価し、技術開発を促進していくためのシステム
12)インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議幹事会(第1回)資料
 
 
 

筆者

国土交通省 総合政策局 政策課((併)参事官(社会資本整備)付) 社会資本整備企画係長 片桐 悠貴
※本記事は「建設マネジメント技術」2014年9月号に掲載されたもの。
※筆者の所属・肩書は2015年5月31日現在。

 
 
 
【出典】


月刊 積算資料公表価格版2015年10月号
特集 土木インフラの維持管理
月刊 積算資料公表価格版2015年10月号
 
 

 

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