建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 埼玉県内企業産の建設資材・新技術「県産品」利用向上に向けた取り組み〜いいモノたくさん県産品〜

 

1.はじめに

埼玉県では、平成14年12月に「埼玉県中小企業振興基本条例」が制定されたことを契機に、
県内企業が製造または加工した物品、いわゆる「県産品」の利用促進に全庁をあげて取り組んでいる。
本稿ではこの中で建設産業に係る取り組みについて紹介する。
 
 

2.取り組みの背景

埼玉県は、事業所のほとんどを中小企業が占める中小企業立県であり、中小企業が本県経済の基盤をなしている。
これまで中小企業は、生産、流通など経済活動の全般にわたって重要な役割を果たすとともに、地域の経済と雇用を支えてきた。
 
一方、建設産業を取り巻く状況を整理すると、埼玉県の建設関係予算は、
平成8年度予算をピークに減少を続け、平成26年度にはピーク時の約3割まで減少している。
平成27年度予算は平成26年度並みの予算を確保したものの、建設産業を取り巻く状況は厳しい状況が続いている(図-1)。
 

図-1 県土整備部予算の推移

図-1 県土整備部予算の推移


 
県内中小企業の振興は、単に中小企業だけでなく、県内経済、産業と県民生活全体に関わる課題である。
そこで、県では中小企業政策を県政の重要課題として位置づけ「埼玉県中小企業振興基本条例」を制定し、
県内中小企業にできることはすべて県内中小企業に発注することを基本に事業を執行している。
 
 

3.建設産業における取り組みの概要

建設工事の発注は「埼玉県中小企業振興基本条例」に基づき、県内企業を基本に発注している。
建設工事等では多くの建設資材が使用されるため、調達する建設資材も県内企業が開発・製造した建設資材※1
(以後、「県産品」と言う)とすることで、県内建設産業全体が活性化することになる。
県産品は多岐にわたり、これを「使ってもらう」ためには、どのような県産品があるのか「知ってもらう」ことが必要である。
 
そこで、県産品の利用を促進するため、
県内企業の振興を目的に既存制度の改正や、県内建設企業、製品・技術の紹介等に取り組んでいる(図-2)。
 

図-2 取り組みの概要

図-2 取り組みの概要


 
 

4.知ってもらう

県産品や県内企業が開発した新製品・新技術を「知ってもらう」取り組みとして、6つの取り組みを行っている。
 
①埼玉県建設資材県産品製造会社紹介制度
②新製品・新技術紹介制度
③県産品シンボルマークの付与
④新製品・新技術マッチングモデル事業
⑤建設資材県産品フェアの開催
⑥新製品・新技術発表会
 

4-1 埼玉県建設資材県産品製造会社紹介制度

県産品の更なる利用を促進し、県内企業の振興を図ることを目的に、
土木・建築・設備工事関連の建設資材県産品を製造している会社を、埼玉県ホームページにおいて広く紹介している。
平成27年8月31日現在、290社が製造する1,579件の建設資材を紹介している。
 

4-2 新製品・新技術紹介制度

建設工事をとりまく環境の変化に対応するため、
コスト縮減、品質向上、環境負荷軽減などに適応した新製品・新技術が開発されている。
県内企業が開発した新製品・新技術の利用を促進し、普及させるために、
これらの情報を埼玉県ホームページにおいて広く紹介しており、平成27年8月31日現在、新製品33件、新技術16件を紹介している。
なお、紹介後、5年を経過したものは過去の製品・技術として整理しており、現在までに延べ158件の新製品・新技術を紹介している。
 

4-3 県産品シンボルマークの付与

県産品の利用促進や県産品を広くアピールするため、
平成24年度に県産品シンボルマークを定め、製造会社に付与することにした。
平成27年8月31日現在、25社の使用を承認している。
シンボルマークは建設資材やパンフレット、名刺等に使用されている。
このマークを見て、ひと目で県産品であることが分かるよう、引き続き広く周知していく(図-3)。
 

図-3 県産品シンボルマーク

図-3 県産品シンボルマーク


 

4-4 新製品・新技術マッチングモデル事業

県内における優れた技術や新製品を持ちながら公共事業に活かす機会に恵まれない企業と、
行政が抱えている公共事業に関する技術的課題をマッチングさせるため、
「新製品・新技術マッチングモデル事業」を平成19年度から試行し、平成22年度から本格実施している。
 
本事業は、発注機関に事業実施に係る技術的課題を照会し、技術的課題を解決する製品・技術を県内企業から募集し、
応募された製品・技術からモデル事業を選定、実施するものである。
モデル事業の選定は、
学識者および建設関係団体を構成員とする第三者委員会「新製品・新技術評価委員会(以後、「評価委員会」と言う)」
で内容を審査して決定している。
 
平成24年度からは、従来の事業である「発注者提案型モデル事業」に加え、
県内企業からの応募提案により試験施工する「応募者提案型モデル事業」を新たに設けて2本柱の事業へと制度の拡充を図った。
 
これまでに発注者提案型モデル事業を40件、応募者提案モデル事業を10件選定している。
事業実施後は効果検証を行い、評価委員会で効果検証結果を審査し、その結果をホームページで公表している。
 

4-5 建設資材県産品フェアの開催

「埼玉県建設資材県産品フェア(以後、「県産品フェア」と言う)」は、建設工事の資材を製造している県内の企業や団体が集い、
自社製品の魅力や優れた技術を直接紹介することで、販路拡大のチャンスをつかむ場として、
平成17年から毎年開催している(写真-1)。
 

写真-1 建設資材県産品フェア2015

写真-1 建設資材県産品フェア2015


 
県産品フェアは実行委員会形式で運営されており、出展企業から出展費用を集めて運営している。
平成27年度は過去最大となる47企業・団体が出展し、「いいモノたくさん県産品」と題して、8月4日、5日の二日間で開催した。
 
ブース展示のほか、特設プレゼンスペースにて後段で述べる「新製品・新技術発表会」や
出展者による「製品・技術プレゼンテーション」を行っている。
聴講は自由で、来場者が気になる発表だけでも気軽に聴講できるオープン形式で開催している。
発表時間は限られているが、発表製品・技術は展示されており、発表を聞いた後で実際に製品を見ることができるので、
より製品・技術の理解が深まるプログラムとなっている。
 
これまでの来場者の内訳を見ると、発注機関の来場者が多い状況であった。
しかし、発注の際は材料指定をしないため、直接的な販路拡大につながっていなかった。
これまで建設産業団体に参加を呼び掛けていたが、
より一層の来場者アップと実際に建設資材を使う建設企業の参加を促すため、建設専門誌への広告掲載のほか、
平成27年度は(一社)全国土木施工管理技士会連合会の『継続学習』システム(CPDS)のユニット付与を行った。
この結果、前年度を上回る延べ1,300名を超える来場者にお越しいただき、大盛況の内に終了した(写真-2)。

  • 写真-2 建設資材県産品フェア2015の様子
    写真-2 建設資材県産品フェア2015の様子
  • 写真-2 建設資材県産品フェア2015の様子

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

4-6 新製品・新技術発表会

県内企業が開発した建設工事に係る新製品・新技術を、
公共工事発注担当者、設計・施工業者(建設コンサルタント会社、建設会社)に直接PRする機会として
「新製品・新技術発表会」を平成22年度から毎年開催している。
平成24年度からは県産品フェアと同時開催としており、多くの方に聴講してもらっている(写真-3)。
 

写真-3 新製品・新技術発表会

写真-3 新製品・新技術発表会


 
 

5.使ってもらう

県産品や県内企業が開発した新製品・新技術を「使ってもらう」取り組みとして、3つの取り組みを行っている。
 
⑦契約約款、各共通仕様書等の改正
⑧総合評価方式の入札における加点
⑨県産品事例集の発行
 

5-1 埼玉県建設工事標準請負契約約款、各共通仕様書等の改正

県では工事材料の調達に当たって、県内企業の活用および県産品の利用拡大に努めている。
また、元請け企業にも要請するため、埼玉県建設工事標準請負契約約款および土木工事、設計業務各共通仕様書等を改正し、
設計段階から県産品の積極的な利用を検討するとともに、建設資材の調達に関して県産品とするよう努めることを規定している。
平成14年度に集計を始めた県土整備部の主要資材の県産品利用率※2は約55%であったが、
平成26年度は約76%となっており、県産品の利用が促進されている。
 

5-2 総合評価方式の入札における加点

県では建設工事の入札に係る総合評価方式において「企業の技術能力」を加点評価しており、
この中で新製品・新技術の活用を評価項目としている。
評価する新製品・新技術は、国土交通省の新技術情報提供システム (NETIS)に登録または、
県の新製品・新技術紹介制度に登録していることを条件としている。
また、新製品・新技術マッチングモデル事業に採用され、
有効性が確認されている製品・技術を選定した場合についても加点評価しており、
県産品や県内企業が開発した新製品・新技術の活用を促している。
 

5-3 県産品事例集の発行

平成11年度から、公共工事等において県産品製造会社のノウハウが活かされた事例を1つにまとめた
「県産品事例集」を年1回発行している。
この県産品事例集は県の発注機関(公社含む)だけでなく、国(国土交通省関東地方整備局、農林水産省関東農政局)、
独立行政法人都市再生機構、市町村、建設産業団体に配布しており、
公共工事等の発注、施工時に際して活用してもらっている(写真-4)。
 

写真-4 県産品事例集

写真-4 県産品事例集


 
また、設計委託業務の受注者に対して配布する等、設計段階から県産品の一層の利用促進に活用している。
 
 

6.広報

県産品に関する広報は、県のホームページでの広報が主体である。
しかし、ホームページによる広報は情報を発信しても「見てもらう」ことが前提であり、興味のある人にしか見てもらえない。
 
県産品フェアや事例集の発行は、ポスター掲示や直接配布等、より踏み込んだ広報となっているが、
取り組み全体の広報としては限定的である。
 
県産品の利用向上を図るには、現在の限定的な広報にとどまらず、
広く知ってもらえる積極的な情報発信のあり方を検討しなければと考えている。
 
 

7.今後の展開

県内企業が製造・開発している製品・技術には「いい県産品(モノ)」がたくさんある。
取り組みを始めた当初は新規の建設に関する内容が多かったが、
昨今の社会情勢の変化から社会資本の長寿命化や適切な維持管理に寄与する県産品が増えてきており、
県の公共事業も建設から維持管理へシフトしている。
 
県としては社会の要請に応じて日々進歩する製品・技術を的確にとらえ、
建設から維持管理まで幅広い県産品の利用促進を促すことで、県内建設業の振興につなげたい。
 
一方、建設企業の担い手不足、高齢化が進んでいる。
県では担い手対策として、建設関係団体と協働で県内の大学、工業高校の学生を対象とした現場見学会の実施や、
資格取得支援研修、職場定着支援研修を実施している。
また、県内の大学と連携し、技術的な課題の助言や大学での講義を行っており、
双方の技術力の向上を図るとともに、学生に建設産業に興味を持ってもらう取り組みを実施している。
 
県産品の利用向上に向けた取り組みが、これまでの利用促進だけでなく、
担い手の確保や建設産業のイメージアップ等、建設産業全体の盛り上がりにつながれば良いと考えている。
 
 
 

埼玉県の県産品に関する情報

●『「県産品」の利用向上促進について』
http://www.pref.saitama.lg.jp/a1002/shigoto/kensetsugyo/doboku/kensanpin/index.html
●問合せ先
埼玉県県土整備部建設管理課技術管理担当
電話:048-830-5201
e-mail:a5190-02@pref.saitama.lg.jp
URL:http://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/a1002/index.html
 
 
 

【注】

※1建設資材県産品の定義
①埼玉県内に所在する本店(本社)があり、その会社の直営工場(県外工場でも可)により製造されたもの。
②埼玉県内に本店(本社)が所在しなくても、埼玉県内の直営工場(県外工場は不可)で製造されたもの。

※2県産品利用率
「公共工事で利用した資材の総額」に対する「利用した県産品資材の総額」の割合。建設資材の内、電気・機械・建築資材を除いたものを主要資材としている。平成24年度からは県内で全く製造されていない「県内不流通資材」 は県産品利用率の分母から除外して集計している。

 
 
 

筆者

埼玉県 県土整備部 建設管理課
 
 
 
【出典】


月刊 積算資料公表価格版2015年11月号
特集 地方自治体の新技術普及・活用に対する取り組み〜埼玉県〜
月刊 積算資料公表価格版2015年11月号
 
 

 

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