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はじめに

 
富山市のコンパクトなまちづくり
 
富山市では、平成27年3月の北陸新幹線の開業に伴い、かねてから進めている「コンパクトなまちづくり」とあわせて、
富山駅新幹線高架下への市内電車の乗り入れ環境の整備、富山駅周辺整備を含む中心市街地の再開発など、
新たなまちづくりの動きを加速させている。
 

写真-1 新しく整備された富山駅

写真-1 新しく整備された富山駅


 
北陸新幹線の開業は新たな都市整備やまちづくりに挑むひとつの契機であるが、
今後予測される人口減少・少子超高齢社会に対応すべく、
20、30年先の将来を見据えた、経済・社会・環境などあらゆる面で持続可能なまちづくりを進めていくことが肝要である。
 
図-1 富山駅の完成イメージ。

図-1 富山駅の完成イメージ。北口の富山ライトレール線と南口の路面電車が高架下で接続することで、利便性の向上が期待できる


 
 

コンパクトなまちづくり

富山市は、富山県の中央部に位置し、
人口約42万人、 水深1,000mの富山湾や、3,000m級の雄大な北アルプス立山連峰を有する日本海側有数の中核都市である。
 
地方都市では、 過去40年ほどかけて拡散型のまちづくりとともに車社会をつくってきたが、富山市もこの例外ではなく、
平坦な地形で可住地面積が広い、持ち家志向が強いという背景もあり、過去35年で市街地が急速に外延化した。
市街地の拡散により、公共交通の衰退、中心市街地の空洞化、行政維持(都市)管理コスト増大などが懸念されるとともに、
今後進行する人口減少と超高齢化による生産年齢人口の減少、
経済の縮小や社会保障費の増大への対応なども課題となっている。
 
そこで、富山市ではこのような諸課題に対応し、
将来の市民に責任の持てる、“持続可能な都市経営・まちづくり”が必要であると考え、
これまでの拡散型のまちづくりから転換し、
およそ10年前から『公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり』に取り組んでいる。
 
本市が目指すコンパクトなまちとは、鉄軌道をはじめとする公共交通のサービスレベルを高めることで活性化させ、
その沿線に居住、商業、業務、教育、文化などの都市の諸機能を集積させることで、
車が自由に使えなくても、日常生活に必要なサービスを享受できるまちであり、
経済的に効率的で環境にも高齢者や子育て世代にも優しいまちである。
このコンパクトなまちづくりを実現するために、
 
①公共交通の活性化
②公共交通沿線地区への居住推進
③中心市街地の活性化
 
を施策の3本柱と位置付けてさまざまな事業を実施している。
 
 

①公共交通の活性化

富山市では、公共交通の衰退が続いていたものの、地方都市としては比較的公共交通網が残り、
富山駅が結節点となり、鉄軌道、路線バスが放射状のネットワークを形成している。
しかし、地方都市の輸送密度では交通事業者が建設から維持・管理・運営にかかる費用を運賃収入のみで賄い、
安定した運行を行うことは困難な状況にあることから、
まちづくりに必要な公共交通については、行政として積極的に関与し交通事業者と協働で公共交通の活性化を図ることにした。
 

図-2 市街地の概要。

図-2 市街地の概要。約436ha枠内の地域を中心に商業地域だけでなく住居系地域の活性化にも取り組む


 
このリーディングプロジェクトとして実施したのが、富山ライトレールの整備である。
利用者が減少し廃線の危機にあったJR富山港線を公設民営として、
運行間隔の短縮、終電の延長、駅の増設など、さまざまな運行サービスの向上を図り、
日本初の本格的LRT(Light Rail Transit:次世代型路面電車システム)として蘇らせた。
その結果、利用者は開業前(平成17年度)と比べ平日で約2倍、休日で約3.5倍と跳ね上がった。
 
次に取り組んだのが、市内電車環状線化事業である。
中心市街地の活性化と回遊性の強化を目的として、
富山地方鉄道が運行していた軌道線の一部を延伸することで、路面電車の環状運行を実現した。
路面電車では日本初となる上下分離方式を導入している。環状線「セントラム」の開業により、
市内電車全体の利用者も増加しているだけでなく、
中心市街地での滞在時間の増加や、平均消費金額にもプラスの影響を与えている。
 
写真-2 市内電車環状線「セントラム」。後方は、富山城址公園

写真-2 市内電車環状線「セントラム」。後方は、富山城址公園


 
また、市内電車環状線を含む富山駅南側を走る富山地方鉄道市内軌道線は、
北陸新幹線の開業に合わせ、富山駅の新幹線高架下に直接乗り入れとなり、
富山駅ならびに新幹線、在来線利用者が市内電車に直接アクセスできるようになったことで、利便性が大きく向上した。
 
現在も富山ライトレールと富山地方鉄道市内軌道線を富山駅高架下で接続する
「路面電車の南北接続」プロジェクトが進行中であり、駅周辺の賑わいをさらに創出していくとともに、
路面電車をはじめとする公共交通のさらなる活性化を図り、
今後さらに、LRTネットワークを拡大していくことで、公共交通環境の利便性をより向上させ、
過度に車に依存したライフスタイルを見直し、歩いて暮らせるまちを実現させたいと考えている。
 
 

②公共交通沿線地区への居住推進

公共交通の活性化とあわせて取り組んでいるのが、中心市街地および公共交通沿線地区への居住の推進である。
富山市では、都心地区(約436ha)と公共交通沿線居住推進地区(約3,357ha)において、
良質な住宅の建設を行う事業者や住宅を購入する市民に対し助成を行っている。
これにより、平成17年に富山市の人口の約28%だったエリア内人口は、
平成25年には約32%まで増加し、20年後には約42%まで高めることを目標としている。
 
 

③中心市街地の活性化

富山市では、中心市街地活性化基本計画を策定し、
現在は平成24年度からの第2期中心市街地活性化基本計画に基づく事業を展開しているところである。
 
平成19年に整備された多目的広場「グランドプラザ」は、中心市街地の真ん中に位置するガラスの大屋根のある全天候型の広場である。
大型ビジョン、昇降式ステージなどを備え、まちなかの賑わい・交流の拠点となっている。
年間を通じて多くのイベントが開催され、人が集い、賑わい、そして新たな文化を発信する拠点であり、
来街者の憩いの場になっている。
 

写真-3 全天候型多目的広場「グランドプラザ」

写真-3 全天候型多目的広場「グランドプラザ」


 
「おでかけ定期券事業」は交通事業者と連携し、65歳以上の高齢者を対象に、
市内各地から中心市街地へ出かける際に、公共交通利用料金を1回100円とする割引制度である。
定期券申込時に1,000円の利用者負担があるが、市内高齢者の約24%が「おでかけ定期券」を所有し、
1日平均2,500人余り(平成25年度)の利用がある。
この事業は、中心市街地の活性化の効果だけではなく、交通事業者への支援や、高齢者の外出機会の創出にも大きく寄与している。
 
他にも、地元農林水産物の情報発信と販売促進を図る拠点「地場もん屋総本店」の整備、
空き店舗を活用した学生の活動拠点「富山まちなか研究室 MAG. net」の整備、
華やかで明るい空間を演出し、花で潤うまちを創出するため、指定の花屋で花束を購入し、
市内電車などを利用した時の運賃を無料化する「花Tramモデル事業」といったユニークな取り組みも展開している。
 
中心市街地における民間投資も活発化している。
シネマコンプレックス、ホテルが入居する再開発事業などが相次いで進められているほか、
ガラス美術館・図書館などが入居する再開発ビル「TOYAMAキラリ」も整備され、
来街者の増加や、さらなる中心市街地の活性化を見込んでいるところである。
 
写真-4 再開発ビル「TOYAMAキラリ」。

写真-4 再開発ビル「TOYAMAキラリ」。設計は隈研吾氏による。
外観は石やガラス・アルミ等が使用されている


 
現在は、民間の開発事業者とのPPP(公民連携)により、
中心市街地における地域医療・介護の拠点となる、地域包括ケア施設を整備する計画も進めている。
地域包括ケア施設は、昼夜の訪問診療を担う診療所や連携拠点を設置するほか、
子育て支援として、病児・病後児保育、産後ケア施設や、
医療福祉・調理関係の専門学校、民間商業施設も併せて設ける計画としており、
中心部の賑わい創出、郊外への人口拡散の抑制、元気な高齢者の増加、医療費の抑制と多様な効果をもたらすことが期待できる。
 
また、公有地の利活用と、必要な都市機能の配置・整備・誘導は、今後さらに重要になってくると考えられる。
富山市では、平成16年度から平成20年度にかけて、中心市街地に7校あった小学校を2校に統合しており、
小学校跡地を必要な都市機能集積に活用している。
新築した統合校の用地や、老朽化した県立高校の移転先となるなど、教育施設として活用されているものがあるほか、
全国初の温泉水を活用した介護予防施設「角川介護予防センター」の整備、
PPPによる、公共施設(公民館)と民間施設(スーパーマーケット、ドラッグストア)の一体的な整備などを行っている。
 
 

高齢社会へ対応したレジリエントな都市

このようなさまざまな取り組みにより、富山市は「環境未来都市」への選定をはじめ、
平成24年6月には、OECD(経済協力開発機構)の『コンパクトシティ報告書』の中で、ケーススタディ都市の一つに取り上げられた。
さらに、平成26年12月には国際連合の「エネルギー効率改善都市」に国内で唯一選定されたほか、
ロックフェラー財団による「100のレジリエント・シティ」に選定されるなど、国内外から評価をいただいている。
 
本市は、コンパクトシティ政策を軸に、高齢者の外出機会の創出による健康・福祉のまちづくり、
薬業などの地場産業や自然特性を活かした再生可能エネルギー型産業の振興など、
持続可能な都市経営を通じ、その実現を目指すこととしている。
 
例えば、祖父母が孫と一緒に動物園など市の施設に来園したときの入場料を無料にする「孫とおでかけ支援事業」は
高齢者の外出機会を創出するとともに、世代間交流を通じて家族の絆を深めるきっかけになることが期待される。
 
 

おわりに

北陸新幹線の開業を追い風に、駅周辺整備事業、LRTの南北接続事業、駅前や中心市街地における再開発事業を進めながら、
今後の将来を見据え、子供から高齢者まで各世代の誰もが安心して暮らせるように、
これからも「コンパクトなまちづくり」を着実に進めていきたいと考えている。
 
 
 

筆者

富山市都市整備部 都市政策課
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2015年5月号
月刊積算資料2015年5月号
 
 

 

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