- 2014-10-20
- 土木施工単価
専門官 遠藤 正洋
国土交通省港湾局では,国による港湾・海岸土木請負工事等の発注にあたり,その予定価格の基礎となる積算価格を適正に算出するために「港湾請負工事積算基準」(以下「積算基準」という)を制定している。この積算基準は,毎年,施工実態等を調査・分析し,社会情勢の変化,工事規模の大型化・多様化,さらには技術革新等の施工環境の変化に迅速かつ適切に対応するために所要の改定を行っている。
1.はじめに
港湾工事は,施工場所の大部分が海上や海中であるため陸上土木工事に比べて気象・海象条件等の影響を受けやすく,また,施工規模の大型化や建設地の沖合展開,早期供用への対応等により,施工環境はより厳しいものとなってきている。このような条件下での港湾・海岸工事の工事費を適正に算出するために,国土交通省港湾局では,標準的な施工形態を積算基準として制定している。
また,積算基準の編成は,「港湾工事共通仕様書」と同様に工事内容の細分化方法を工種の分類ごとに標準的に規定した「港湾工事工種体系」に合わせており,工事内容が受注者,発注者双方にとって分かりやすいものにし,契約内容や事務処理手続きの明確化に努めている。
2.実態調査の概要
積算基準改定の基礎調査として実施されている施工情報調査の概要は,以下のとおりである。
(1)施工情報調査
施工情報調査は施工実態を調査・分析するもので,積算基準が施工実態を適正に反映しているかを検討するための最も重要な情報の一つである。従来は国土交通省発注工事を対象に調査を実施してきたが,サンプル数をより確保するため,平成16 年度からは各都道府県等港湾管理者にも調査に協力していただいている。
①モニタリング調査
モニタリング調査は,次に述べる詳細調査の工種以外の全工種を対象に実施するもので,施工実態と積算基準との整合度合いを概略的に把握し,詳細調査の必要性を判断するものである。
②詳細調査
モニタリング調査の結果等により,施工実態と積算基準とに乖離が認められると判断される場合に,該当工種について詳細に調査を行うものである。積算基準の改定は,この調査結果を分析し,現行積算基準との比較検討を行った結果を反映したものである。
(2)未制定歩掛の調査
積算基準に歩掛が設定されていない工種のうち,汎用性が高く歩掛設定の要望が強い工種については,必要に応じ実態調査を実施し,積算基準に反映している。
(3)作業船稼働実態調査
港湾工事等で使用する各種作業船の機械経費を算定するための基準として「船舶および機械器具等の損料算定基準」を定めているが,その基礎調査として,民間各社が保有する作業船の稼働実態を調査するものである。
(4)その他の調査
積算基準に関係する調査のうち,港湾・海岸工事以外の工事と共通する事項については,国土交通省の他部局や農林水産省等と共同で調査を行っている。積算基準については,2省共同調査として,主に陸上の工種について,農林水産省と国土交通省(河川,道路,港湾,空港等)とが共同で施工実態を調査・分析している。積算基準に制定されている該当工種については,この調査結果を反映している。
その他,公共事業労務費調査,間接工事費等諸経費動向調査を毎年実施しており,積算基準をより充実させるとともに,各関係部局,省庁との整合を図るなどの調整を行っている。
3.平成26年度積算基準の主な改定工種
(1)実態調査等に基づく改定
施工実態調査および共同調査等に基づき,検討,分析を行い,現行基準と施工実態とに開きの見られる工種について改定した。
主なものとしては,ブロック運搬据付・撤去を適用する工種において使用する作業船等の大型化を反映した改定を行い,被覆・根固工,土工および構造物撤去工で施工パッケージ型積算方式を試行導入した。
(1) 浚渫・土捨工[排砂管設備工]
(2) 基礎工[基礎捨石工]
(3) 本体工(ケーソン式)[ケーソン進水・据付工]
(4) 本体工(ブロック式)[本体ブロック据付工]
(5) 本体工(鋼矢板式)[鋼矢板工]
(6) 本体工(鋼杭式)[鋼杭工]
(7) 被覆・根固工[被覆石工,被覆ブロック工]
(8) 付属工[係船柱工]
(9) 消波工[消波ブロック工]
(10)裏込・裏埋工[裏埋土工]
(11)埋立工[排砂管設備工]
(12)陸上地盤改良工[圧密排水工]
(13)土工[掘削工][盛土工]
(14)舗装工[路床工][コンクリート舗装工]
[アスファルト舗装工]
(15)構造物撤去工[取壊し工,撤去工]
(16)仮設工[仮設鋼矢板工]
[仮設鋼管杭・鋼管矢板工]
(17)間接工事費[一般管理費]
(2)暫定基準関係
施工実績または基礎データの不足により基準化できなかった工種(未制定工種)について,平成8年度より順次暫定基準化への検討を進めてきており,参考資料として暫定基準を整備し運用している。
4.おわりに
本積算基準の活用を通じて,港湾工事の標準的な積算について受注者および発注者の共通の認識が深まり,適正な事業の執行と効率的な社会資本の整備が図られることを期待し,今後とも,関係各位から寄せられるご意見等を踏まえ,より充実した積算基準にしていきたいと考えている。
【出典】
土木施工単価2014夏号
最終更新日:2016-09-27
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