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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 施工BIMによる業務効率化から働き方改革へ向けた取り組み -Informationの活用-

 

施工BIMの目的

当社でのBIM活用の主な目的は、業務効率化・生産性の向上である。2017 年よりICT技術を活用した現場支援プロジェクトを立ち上げ、全社一丸となって働き方改革に向けた取り組みを進めている。BIMは「形状」と「情報」の2つの側面を持っていることから、それらを活用するICT技術との親和性が非常に高いと感じている。施工フェーズでBIMを活用することで、ICT化の促進につながっている。
 
施工BIMの中でも、仮設計画においてBIMを実施することの目的は、大きく3つ、Visualization(視覚化)、Simulation(模擬)、Information(情報)だと考える。仮設計画は、どのように建物を作るかというプロセスを表現するものであるため、計画の手順を3次元化するだけで、Visualization(視覚化)、Simulation(模擬)の目的は達成される。しかし作成に手間がかかるわりには、イメージの共有程度の活用にとどまってしまい、効率的とは言えない。BIMモデルのInformation(情報)を有効活用することが、施工BIMを効率的かつ効果的に運用するためのキーワードである。
BIMによる鉄骨建方計画



 

Information=パラメトリック

構造モデルは、幅・高さ・長さなどの形状情報と、材質などの情報をパラメーター化し部材を構成しており、その情報をタグで出力、数値を集計することで、図面化を効率的に行うことができている。設計変更があった場合は、おのおののパラメーターを変更するだけで、部材形状が追随して変形するなど修正対応が容易である。パラメトリックにモデルが変形可能であることは、業務改善にダイレクトにつながってくる。従って、施工BIMでもパラメトリックなモデリングを行うことが重要な目的となる。つまりInformationを有効活用することが、業務効率化への必要条件となる。
 
 

仮設計画BIMの環境整備とワークフロー

BIMで仮設計画を取り入れる際に、BIMを追加業務にするのではなく、これまで行っていた業務をBIMで置き換え、さらに効率よく行えることが重要だ。そのためには、業務フローとそれに即した仮設コンポーネントの整備が必要である。
 
(1)鉄骨建方計画
鉄骨建方計画は手順を検討するものであるので、BIMとの相性が非常に良い。シミュレーションのプロセスがそのまま図面となると言ってもよい。そのためには操作性が高いクレーンコンポーネントが必須となる。




クレーンコンポーネントは、旋回やブームの上げ下げによる建物等との干渉をシミュレーションできるように、BIMモデル上のマウス操作でフックの先端を動かせるようにしている。さらにブームの長さ・角度・作業半径などの条件取得により「定格荷重」を決定し、自動的に算出できる機能を付加している。



鉄骨建方計画に使用する鉄骨モデルは、鉄骨ファブが作成したモデルをIFC形式で取り込んだものでは不十分である。鉄骨建方計画において重要な情報である「ピース重量」が引き継がれないからだ。鉄骨専用BIMソフト(すけるTON、FAST Hybrid)とRevitがダイレクト連携することで、ピース重量の情報を持った鉄骨BIMモデルを取得できるようになった。このモデルとクレーンに時間軸(フェーズ)情報を加えることで鉄骨建方ステップ図が作成でき、かつ高精度な鉄骨建方計画が可能となった。
 
 
(2)山留計画
山留計画における業務フローは、敷地条件・地盤レベル・基礎床付けレベルなどから山留めの必要可否を検討し、山留めを配置、数量を積算し見積りを行うという流れであった。ファミリー内に山留めで使用する数値を全てパラメーターとして入力することで、モデリングを行うだけで、集計・概算金額算出まで行えるようにした。モデリングについても、山留めを配置する範囲に線を引くだけで、自動割り付けするようになっている。基礎形状は計画時に変更が多く、複数のパターンを短時間で検討する必要があるため、変更追従性が高く、数量をリアルタイムに把握しながら計画できることは、BIM活用における最大のメリットである。

山留計画の業務フロー




(3)外部足場組立図
外部足場の計画においては、まず平面的な足場の割り付けを行うが、建物形状によりさまざまな調整を行っている。そこで、足場の設置範囲に線を引くだけで足場の割り付けを自動的に行うツールを開発した。入隅・出隅部などの詳細な調整は、全てパラメーターに置き換えパラメトリックに変更できる。これにより平面割付作業時間を5割削減した。この割り付けに合わせ、コンポーネントを配置するのだが、足場材は同じ部材を繰り返し配置するため、カーテンシステムとの相性が良い。縦・横のグリッドを移動することで、足場の割り付けが変わり、パネルのW×Hや配置条件によって内蔵された部材が切り替わるようにパラメーターを組み込んでいる。部材には品番や重量が組み込まれているので、足場の集計まで可能となっている。労働基準監督署に提出する88申請図は、テンプレートを割り当てて、注釈を入れるだけで簡単に作成可能となっている。



 

BIMモデルを測量に活用

ある物流施設では、着工時から施工BIMモデルを一貫して活用した。外部足場計画、工程検討、基礎コンクリート躯体図・配筋納まり図、鉄骨建方計画図、平面詳細図と、各施工フェーズに合わせ徐々にBIMモデルを詳細化し、施工レベルまで精度を上げた。BI Mの「情報」と「形状」という側面からも、施工図にするためには、正確な「形状入力」が必須となる。



施工図レベルに押し上げたBIMモデルを、Autodesk社の墨出しシステム「Point Layout(ポイントレイアウト)」により、現場での墨出し測量に活用した。BIMモデル上に測量点を配置し、クラウドサービスと連携させて測量機に転送する。タブレット上でポイントを指定すると、位置をナビゲーションしてくれるシステムだ。これまで3人で行っていた傾斜路の墨出し作業が、BIM 360 Layout導入後は1人で可能となった。BIMモデルおよびICT技術と連携させることで、現場の生産性向上を実現した。



 

BIMモデルから配筋チェックシートを作成

建物を建築する際、設計図どおりに鉄筋が配置されているかを確認するために「配筋チェックシート」を作成している。これまでは設計図から配筋情報を転記してチェックシートを作成し、検査前にチェックシートに間違いがないか再確認する必要があり、現場技術者に多大な負担をかけていた。そこで、構造BIMモデルの配筋情報から、図面上でワンクリックするだけで、配筋チェックシートを自動的に作成するプログラムを開発した。これにより、従来と比較して約90%の作業時間削減を実現した。
 
本プログラムには断面リスト自動作成機能も有している。従来のものは、BIMモデル→断面リストの一方向のみの連携であったが、断面リストを更新すればBIMモデルの配筋情報が更新される双方向連携が可能となっている。修正による作業時間を従来と比較し約20%短縮できることに加え、BIMモデル内に鉄筋情報が正確に保持されるため高品質な設計が可能となった。この機能により、構造BIMモデルを配筋チェックシートへ活用するための、モデルにおける「配筋情報の正確性」が担保されている。



 

まとめ

これまでのBIMは、使っている人が最も効果を得られるエンジニアリングツールであった。当社も、使うプロセスに合わせてツールを整備することで、確実に生産性を向上させてきている。しかし、これからは現場全体の業務効率化を目指す活動をさらに進めなければならない。BIMの情報を現場に持ち出してさまざまなフェーズに活用していくことが、キーワードとなる。それらを加速するためには、BIM技術者がその重要性を認識し、情報活用の業務フローを新たに見出していかなければならない。BIM情報をツールとして扱えるように意識を改革することこそ、働き方改革であり、われわれの役目となる。誰もがBIMデータを有効に活用することができるようになれば、必然的に働き方改革は進んでいく。
 
 
 

矢作建設工業株式会社 建築事業本部 施工本部 施工部 工務グループ
グループマネージャー 伊藤 篤之/ BIM推進担当 太江 慎吾

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 

最終更新日:2019-08-06

 

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