建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 施工者から見たCIMの問題点と対応策《その2》

 

株式会社 大林組 技術研究所
主任技師 古屋 弘

 

CIM導入のメリット

情報化施工の導入は、前述のように労働者不足や技術継承のツールとしての役割の他、建設に携わる人々や利用者に対してさまざまなメリットを与えることが可能となる。
建設構造物の特性として、ビルなどの建築物を除き、オーナーは国や地方公共団体、または公共性の高い道路や鉄道を提供する会社であり、そのユーザーは一般の人々である。
ここでは、ユーザーを国民とし、オーナーを発注者、そして施工企業のそれぞれの観点からCIM導入のメリットを考えることとする。
 

(1) 国民のメリット
i) 確実で安心できる品質を提供する

施工データが記録されることによって、完成後も必要に応じて構造物の施工品質を追跡することが可能となり、手抜き工事の防止や、瑕疵に対する責任の所在が明確化できる。
また、食料品の生産・流通データのトレーサビリティによって消費者が品質をチェックできるように、土木構造物の品質データのトレーサビリティが確保され、ユーザーがより安心して社会インフラとしてのさまざまな構造物を使用できる環境が得られる。
 

ii) 工期短縮

例えば、建設機械の数値制御や施工情報の統合管理技術の導入によって、建設機械の作業効率が向上する他、目視が困難な夜間作業でも効率よく施工することが可能となる。
これによって工事期間が短縮し、土木構造物の効果の早期発現や、工事に伴う社会損失(渋滞や騒音・振動等)の低減が期待できる。
 

iii) CO2の発生量を抑制

CIMの施工分野での実現にはICTは一つの必要条件であるが、ICTを用いることにより建設機械の作業効率が向上することで、施工量当たりの建設機械の稼働時間が短縮され、燃料消費量(CO2発生量)が低減できる。
例えば、国土交通省が実施した実証実験では、路盤整形時のモータグレーダの作業において、ICTを実装した機械では従来施工に比べて燃料消費量が約3割低減されているという報告もある。
建設資材についても、例えば舗装工事では、高精度の施工が可能となることで舗装厚の設計値に対する余盛り量が小さくなり、必要最低限の建設資材で施工が可能となる。
また、舗装の構造設計においては、施工のばらつきをある程度見込んでいるが、情報化施工によって施工精度が向上し、ばらつきを抑えることによって、必要最低限の厚さで施工できる可能性もある。
これらにより、建設資材の使用量が低減され、建設資材の製造、調達、廃棄の全プロセスで発生するCO2の削減が期待できる。
 

(2) 工事発注者のメリット
i) 出来形・品質の確認が容易

情報化施工の導入により、出来形・品質に大きな影響を与える施工データや材料データを建設機械の稼働情報により人手を介さず連続的に把握し、施工者と共有することが可能となる。
これらのデータは、工事発注者の監督・検査時の判断材料の一つになり、監督・検査等の業務を効率化できるとともに、施工管理が確実に実施されていることが確認できるようになる。
また、公共工事においては、完成検査だけでなく、工事実施状況等を日々確認し、短い間隔で検査を行う「施工プロセスを通じた検査」が試行的に導入されているが、その検査に情報化施工で連続的に記録された施工デー
タを活用することも考えられる。
 

ii) 施工精度の向上による設計のスリム化への期待

従来の施工方法よりも精度の高い施工が実現することで、これまで設計で考慮されてきた施工のばらつきに対する安全率の見直し等による設計のスリム化につながる可能性がある。
これにより、構造物の建設コストの縮減が期待できる。
 

iii) 効率的・効果的な管理を支援

CIM導入の中で、最も期待される部分が、施工中のみならず維持管理へのデータ活用であろう。
構造物完成後においても、施工中に得られる施工データを構造物の管理の初期値として利用することによって、例えば、供用後の点検履歴との比較による経時変化の確認や、類似する設計条件・施工品質に基づく合理的な要補修箇所の予測など、効率的・効果的な補修・維持管理が可能となり、メンテナンスコスト縮減も期待できる。
 

iv) 迅速かつ柔軟な技術者判断を支援

社会資本整備において、発注者として従来の技術や手法にとらわれない新たな技術を積極的に導入し、調査・設計、施工、維持管理の各段階で得られる情報を利用することで、迅速かつ柔軟な技術者判断を支援することができる。
例えば、情報が少ない場合、技術者は判断に係わる選択の幅が広いため根拠に乏しい判断をせざるを得ないが、情報量が増えるに従い、選択の範囲を絞り込むことが可能となり、より的確な判断を行うことができるようになる。
 

(3) 施工企業等のメリット

情報化施工技術は、施工会社、建設機械メーカー、測量機器メーカーなどの技術を組み合わせた複合技術であり、関連業界全般においてさまざまなメリットが考えられる。
 

i) 現場作業の効率化(工期短縮・省人化)を実現する

現場の施工図面、さらに詳細地形データや3次元設計データを用いて、機材配置の確認や施工手順のシミュレーションを実施することによって、初期設計ミスの事前修正や施工手順の確認が可能となり、現場作業を効率的に行うことができる。
特に、近年普及しつつあるICTをベースにしたCIMは、マシンコントロール技術を融合させることにより施工の省力化と精度向上に寄与するものと考える。
 

ii) 熟練者不足にも対応可能

CIMの現場実現におけるICTの活用は、マシンコントロールやマシンガイダンスを導入することによって、オペレータの熟練度に大きく依存しない施工速度や出来形・品質、施工の安全性が確保できる。
また、施工の出来形・品質をリアルタイムに確認しながら作業を行うため、施工ミスも予防できる。
さらに、従来のサンプリング箇所のみでの確認ではなく、面的に確認することも可能となる。
 

iii) 工事現場の安全性が向上する

検測の省力化は、施工機械との接触事故の危険性が高い区域内に検測作業員が侵入するリスクを低減する。
 

iv) 省エネルギーの実現

CO2の発生量の抑制を達成することと同時に、CIMの活用は、現場の施工効率の向上につながり、その結果、無駄な重機の運転や施工時の仮設電力の適正な使用も実現可能であり、省エネルギーに寄与する。
 

v) 建設現場のイメージが変わる

いわゆる3K(キツイ、キタナイ、キケン)のイメージでとらえられがちな工事現場が、CIMを駆使した先進的な生産現場へと転換し、高効率、高品質かつ安全な生産活動を実現することで、他産業と比べて良好とは言えない建設現場の作業環境が改善され、建設産業が若年就業者にとって魅力のある産業へと転換していくことも期待できる。
 

vi) 技術競争力の強化

CIMを用いた情報化施工は、時間的制約が厳しい工事においても所定の出来形・品質を実現できる可能性が大きくなり、技術競争力を強化するための手段として有効である。
例えば、舗装工事や鋼橋上部工事などで、交通規制日数等の短縮が期待できることから、総合評価方式の技術評価において高い評価を受けている事例も報告されている。
 

vii) 高付加価値の商品市場を拡大する可能性

ICT、CIMの普及に伴い、建設機械メーカーや測量機器メーカーにおいては、付加価値の高い情報化施工機器の市場の拡大が期待できる。
また、データ交換標準など、情報化施工技術を国内外で共通利用できる環境の整備が進むことによって、海外市場への参入が可能となる。
 
 
 
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その1》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その2》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その3》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その4》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 

 

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