建設情報クリップ

農業農村整備民間技術情報データベース(NNTD)の概要と活用状況

はじめに

一般社団法人 農業農村整備情報総合センター(以下「ARIC」という。)では、民間企業等が開発した農業農村整備の推進に資する技術情報を広く一般に提供し、国、都道府県等事業実施団体への普及を促進することで、技術水準の向上を図り、もって農業農村整備事業の円滑な施行の確保と発展に寄与するため、「農業農村整備民間技術情報データベース」(以下「NNTD(Nougyou Nousonseibi Technical-information Databaseの略)」という。)を運営している。
 
NNTDは、民間企業等が開発した「農業農村整備に資する技術」の情報を登録し、ウェブサイト(https://www.nn-techinfo.jp)上で公開するもので、ARICのウェブサイトのトップページからもアクセスすることができる。
2026年6月末現在、登録技術件数約443※件、ウェブサイトには2012年2月に運営を開始してから61.1万回を超えるアクセスをいただいている。
※更新手続き中を含む

ARICのウェブサイトのトップページ
ARICのウェブサイトのトップページ(https://aric.or.jp/)からのNNTD へのリンクとNNTDのウェブサイトのトップページ(https://nn-techinfo.jp/

 
 

1. NNTDの位置付け

農林水産省は「農業農村整備に関する技術開発計画」を策定し、農業農村整備に関する技術開発と普及を促進することとしている。
 
ARICは、NNTDがこの技術開発計画の中で重点取組事項として掲げられている“開発技術のデータベース化・活用”に資するツールの一つに当たると考えている。
 
農林水産省が公表している「調査・測量・設計業務等特別仕様書記載例」には、設計作業の留意点として「コスト縮減に関して新技術や新工法等の選定にあたっては、農業農村整備民間技術情報データベース(NNTD)および新技術情報システム(NETIS)等を積極的に活用しなければならない。」と記載されており、設計をする際には、NNTDに登録されている技術を発注者や設計者が吟味することとされている。
(水路工の場合: https://www.maff.go.jp/j/nousin/seko/kyotu_siyosyo/k_tokubetu/attach/pdf/index-207.pdf
また、土木工事共通仕様書第1 編 共通編 第1 章総則1-1-50「工事特性等への対応状況の報告」の中で、NNTD等に掲載の新技術を活用した事項については監督職員に報告することができるとされ、工事成績評定の参考とすると記載されている。
 
 

2. NNTDの特徴

NNTDでは、民間企業等が開発した技術情報を可能な限り収集し、有益な形で農業農村整備事業の現場等に情報提供することとしている。
 
登録する情報は、新技術に限らず農業農村整備の推進に資する技術とし、技術の信頼性を確保するため、採用実績を有する技術を原則としている。
 
登録する技術分野として、土木工事、建築、機械設備、電気通信設備、調査・測量・設計のほか、施設の長寿命化対策(機能診断、補修・補強工法等)、環境配慮対策、施設の維持管理、自然エネルギー活用など、農業農村整備事業の分野全体を網羅するカテゴリーを用意している。
 
登録した情報は、素早く閲覧できるよう、施設別の分類や工種別に分類して掲載しており、技術情報の検索は分野別検索の他に、フリーワード検索、条件検索ができる。
検索条件に合致した技術は一覧表で画面に表示され、技術の内容、登録会社名、採用実績件数等を確認できるため、同種・類似の技術を比較することができる。
 
登録の有効期間(掲載期間)は、原則2年間としており、更新手続きを行うことにより、現場での採用実績の増加を踏まえた、新たな情報の追加等が適切に反映される仕組みとなっている。

 
 

3. 掲載する技術資料

NNTDには、統一様式の技術情報詳細等と添付資料を登録している。
技術情報詳細等には、開発年、開発者、技術の特徴、適用範囲、積算参考情報、特許情報、連絡先、サポート体制、図表・写真、採用実績、技術情報や建設コンサルタントが閲覧できるURLなど、行政機関側が求める情報をできるだけ網羅して掲載している。
統一様式のため、データベース内に同種・類似の技術がある場合、内容の比較が容易である。
また、採用実績には、発注者、施工年度、施工場所(都道府県名)、工事件名、実績報文の有無などが示されている。
 
この他に、添付資料として、登録企業等が独自に作成したカタログ、パンフレット、動画、機関誌等へ投稿した文献、単価、歩掛、設計・施工マニュアル等の掲載も可能である。
NNTDでは、これらの資料を自由に閲覧できるので、農業農村整備事業に携わる技術者が直接、技術情報を確認することができる。
また、登録企業等は、自信のある技術のPRをNNTDで行うことができる。
 
 

4. 登録技術の特徴と今後の展望

NNTDには現在までに開発された技術が新技術に限定することなく登録されている。
開発年代別では下図に示すとおりであり、2000年以降に開発された比較的新しい技術が約81%を占めている。

登録技術の開発年代別の比率
登録技術の開発年代別の比率

 
登録技術は土木工事に関係するものが最も多い。
施設別では、水路工206件、農道87件、ため池46件、環境保全・河川・干拓34件、頭首工28件、ダム29件(重複あり)の順となっている。
また、土木工事で工種別に登録されている技術について、その内訳を見ると工種別では、法面工・擁壁工72件、地盤改良工36件、石・ブロック積(張)工30件、コンクリート工26件(重複あり)の順に登録件数が多い。
 
登録件数が多い技術分野は、施設の長寿命化対策(コンクリート補修・補強工法)に関する技術は131件、環境配慮対策(生態系保全、景観保全、水質保全等)に関する技術が68件となっている。
これらの技術の登録が多い背景には、
①基幹的農業水利施設の老朽化が進み、限られた財源の中で施設の長寿命化やライフサイクルコストの低減が求められていること
②土地改良法において環境との調和への配慮が位置付けられ、生態系や景観に配慮した事業へのニーズが高まっていること
などが挙げられ、これらの課題(ニーズ)に対応した技術開発が民間企業等において進められ、NNTDに登録されている結果を示していると考えられ、その成果がNNTDに反映されているものと考えられる。
 
今後の展望としては、世界的な食料情勢の変化、気候変動、国内市場の縮小、生産者の減少・高齢化など、農業を取り巻く環境の変化に留意する必要がある。
こうした状況を踏まえ、全ての農政の根幹である食料・農業・農村基本法が改正され、令和6年6月に施行された。
改正基本法では、「食料安全保障の確保」、「環境と調和のとれた食料システムの確立」、「多面的機能の発揮」、「農業の持続的な発展」、「農村の振興」が基本理念として掲げられている。
 
農業農村整備関係では、第29条「農業生産の基盤の整備及び保全」において、環境との調和や先端技術の活用に配慮しつつ、最新の技術的知見を踏まえた事業の効率的な実施を図ることが示されている。
また、農地の区画拡大や汎用化・畑地化、農業用用排水施設の機能維持増進に加え、新たに「施設の保全」が明確に位置付けられた。
 
さらに、食料・農業・農村基本計画では、令和7年度からの5年間で農業の構造転換を集中的に進めることとされており、生産コスト低減に向けた農地の大区画化、情報通信環境の整備、スマート農業技術の導入等の推進が示されている。
また、土地改良長期計画では、「生産性向上等に向けた生産基盤の強化」、「農業用水の安定供給及び良好な排水条件の確保」、「増大する災害リスクに対応するための農業・農村の強靱化」、「農村の価値や魅力の創出」を政策課題として掲げている。
一方、国土強靱化実施中期計画においても、激甚化・頻発化する気象災害や南海トラフ地震等の 大規模災害に備え、防災・減災、国土強靱化の取組を今後5 年間で着実に推進することとされている。
NNTDにおいても、こうした制度改正や政策展開の方向性を踏まえ、施設の保全・長寿命化、防災・減災、環境配慮、スマート農業等に関する技術情報の充実と活用促進について、引き続き検討していく必要があると考えている。
 
 

5. システムをリニューアルしたNNTD

NNTDは2012年より稼働しており、2023年8月、利用者、管理者の負担軽減を図るためのシステムリニューアルを行った。
これによりNNTDは、次のような点で一層使いやすくなった。
 
●絞り込み検索が充実され、欲しかった内容をすぐ閲覧できる。
●新規登録や更新申請は登録申請者が手軽に行える。
●内容詳細の記述が充実し、読みやすくなった。
 
 

おわりに

現在、高齢化の進行等に伴い農業の担い手不足が一層深刻化している。
他方で、気候変動に伴う災害リスクが顕在化しており、農業水利施設の機能保全対策のみならず、農業の効率化を促進する担い手への農地の集積や集団化、農業経営の規模拡大などの取組みが急務であり、農業農村整備事業に多様な技術を効果的かつ効率的に運用できる仕組みが求められている。
 
また、NNTDは官民の技術交流の場として、重要な役割を担っていると考えている。
多くの人が目にする「積算資料」への寄稿依頼をいただいた。
何よりのNNTDのPRの機会であり、深く感謝申し上げたい。
 
今後もARICは、農業農村整備事業の推進に有用な技術のNNTDへの登録を充実させるとともに、 NNTDが農業農村整備事業に関わる多くの技術者にとって分かりやすく、必要不可欠なツールとなるようさらなる改善や普及啓発に努めてまいりたい。
 
 
 

一般社団法人 農業農村整備情報総合センター

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2026年9月号


積算資料公表価格版2026年9月号

最終更新日:2026-08-21

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