ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 建設現場における熱中症対策 > 国土交通省直轄土木工事の建設現場における熱中症対策への支援について

はじめに

令和5(2023)年7月27日、アントニオ・グテーレス国連事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と発言している。
これを裏付けるように日本の年平均気温は近年最高値を更新し続けている。
令和6(2024)年の日本の年平均気温は、統計を開始した明治31(1898)年以降、これまで最も高い値だった令和5(2023)年の+1.29℃を大きく上回る見込みになったと気象庁は発表した。
また、夏場の気温の上昇に伴い、職場における熱中症による死傷者数は近年増加傾向にあり、令和5(2023)年の結果において業種別業種別で建設業の死亡者数は高くなっている1。
 
建設現場での労働環境が厳しさを増す中、受注者はさまざまな工夫を行い、安全な現場環境の整備に力を入れている。
国土交通省直轄工事では、これらの熱中症対策を支援するため、建設現場の作業環境を改善するための積算等に取り組んできたところである。
本稿は、その取組みについて以下、紹介する。
 
 

1. 直轄土木工事等におけるこれまでの熱中症対策に係る積算の取組み

国土交通省直轄工事の積算について、熱中症対策に関する取組みは、従来、共通仮設費(現場環境改善費)および現場管理費の熱中症対策補正において、必要な費用を計上できるようにしていた。
 
共通仮設費(現場環境改善費)については、主に現場の施設や設備に対する熱中症対策費用として、ミストファン、遮光ネット、大型扇風機、製氷機、日除けテントや休憩車の配備等が対象となっている(写真- 1)。

写真-1
写真-1

 
また、現場管理費の熱中症対策補正については、主に作業員個人に対する熱中症対策費用として、経口補水液、空調服、熱中症対策キットや塩飴等が対象となっている(写真- 2)。

写真-2
写真-2

 
さらには、猛暑日を考慮した工期設定となるよう、令和5(2023)年3月に工期設定指針を改正し、雨休率の中の天候等による作業不能日に猛暑日日数を追加するとともに、官積算で見込んでいる以上に猛暑日が確認された場合、適切に工期変更(延長)を行うほか、工期延長日数に応じて増加費用を計上するよう、運用を改善したところである(図- 1、2)。

図-1
図-1
図-2
図-2

 
 

2. 令和7(2025) 年度積算改定における熱中症対策費用の充実

令和7(2025)年度より、現場環境改善費(率計上)の選択項目の一つであった避暑(熱中症対策)・避寒対策費を切り離し、熱中症対策・防寒対策にかかる費用を「現場環境改善費」(率計上)の50%を上限に、設計変更を行うこととした。
これにより、従来の現場環境改善費(率計上)に加えて、熱中症対策の取組みを実施した分を積み上げて計上することが可能となり、猛暑における現場環境の更なる改善を図ることが期待できる(図- 3)。

図-3
図-3

 
 

3. おわりに

建設業が新4K、「給与がよく、休暇が取れ、希望が持てる」そして「かっこいい」魅力的な産業となり、「地域の守り手」としての重要な役割を担い続けて頂くことが重要である。
 
近年の気候変動下の厳しい作業環境の中でも担い手を確保するため、熱中症対策等費用の充実の他、週休2日の推進を含めた多様な働き方の支援を通じて、建設現場の作業環境の改善を進めるとともに、公共工事の品質と効率的な施工を確保していくためには建設生産システムの生産性向上を進めることが重要である。
引き続き、現場の実態把握に努め、必要に応じて積算基準等の改定を行うことで、建設業の働き方改革を推進し、より良い建設業の環境整備を図っていく所存である。
 
 
※1 「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します(令和6年5月31日厚生労働省記者発表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40473.html
 
 
 

国土交通省大臣官房技術調査課

 
 

【出典】


積算資料公表価格版2025年7月号


積算資料公表価格版2025年7月号

最終更新日:2025-06-19

 

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