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公共建築改修工事標準仕様書(令和7年版)と外壁改修工事の動向

1. はじめに

国土交通省大臣官房官庁営繕部による「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」
(以下、「改修標仕」)は、関係省庁連絡会議の決定を受けて令和7年3月に制定され(同年5月12日に正誤表による改定あり)、また、その解説書に位置付けられる国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「建築改修工事監理指針令和7年版」(以下、「改修監理指針」)が同年12月に発行された。
 
「改修標仕」は、公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書により発注される公共建築改修工事において使用する材料(機材)および工法等について標準的な仕様を取りまとめたものである。
設計図書に適用する旨を記載することにより、請負契約における契約図書の一つとして適用される。
また、「改修標仕」は各府省庁が官庁営繕事業を実施するための「統一基準」として位置付けられており、その改定周期は原則として3年である。
さらに、公共建築工事のみならず、多くの民間建築工事にも準用されている。
 
本稿では、令和7年版の「改修標仕」および「改修監理指針」における追加・変更点に関連して、外壁改修工事に関する最近の動向について解説する。
 
 

2. 監督員の立会いおよび定期報告制度におけるデジタル技術の実装

2.1 官庁工事における遠隔臨場

「改修標仕」1章各章共通事項の中の表-1に示すように遠隔臨場の実施が導入された。
すなわち、遠隔臨場が特記された場合は、それが監督行為の代替として扱えることとなる。
図-1に遠隔臨場のイメージを示す。
遠隔臨場により施工現場における監督職員の立会いが減少することが期待されることになるが、実際に遠隔臨場を採用する場合は遠隔臨場による確認・検査項目、実施の方法、使用機器の仕様等を取りまとめた実施計画書を作成し、監督職員の確認を受ける必要がある。

表-1 「改修標仕」令和7年版への遠隔臨場の導入
表-1 「改修標仕」令和7年版への遠隔臨場の導入
図-1 遠隔臨場のイメージ
図-1 遠隔臨場のイメージ

 
なお、国土交通省官庁営繕のホームページ1)には令和4年に制定された「官庁営繕事業の建設現場における遠隔臨場に関する実施要領」(以下、「実施要領」)および参考資料として「遠隔臨場に関する適応性一覧表」(以下、「適応性一覧表」)が示されている。
 
例えば、「実施要領」には表-2に示す動画撮影用カメラ等に関する参考数値や表-3に示すWeb会議システム等に関する参考数値が示されている。
また、「工事が設計図書の内容に合致するかどうかの確認」を行うこととされる項目の遠隔臨場への適応性について、これまで実施した官庁営繕工事における遠隔臨場の試行結果並びに民間建築工事の施工者及び工事監理者へのヒアリング結果に基づき「適応性一覧表」が取りまとめられている。

表-2 動画撮影用のカメラ等に関する参考数値
表-2 動画撮影用のカメラ等に関する参考数値
表-3 Web会議システム等に関する参考数値
表-3 Web会議システム等に関する参考数値

 
表-4に「適応性一覧表」の中から仕上げ工事について抜粋したものを示す。
表-4から理解できるように遠隔臨場に適していない確認項目や確認内容も当然存在している。
このような適応性を理解した上で合理的・効率的な遠隔臨場を適用することが重要である。
また、リモートセンシング技術やDX技術の発展により適応可能性が将来的に拡大することも期待される。

表-4 遠隔臨場の適応性(工事が設計図書の内容に合致するかどうかの確認)抜粋
表-4 遠隔臨場の適応性(工事が設計図書の内容に合致するかどうかの確認)抜粋

 

2.2 「12条点検」におけるデジタル化の促進

建築基準法第12条に基づく定期報告制度では告示改正により、赤外線装置、可視カメラ、センサー等による調査が可能となった。
すなわち、従来「目視により確認する」とされ実質的には資格者の立会いを必要としていたものが、「目視又はこれに類する方法により確認する」と改正された。
なお、「これに類する方法」とはどのような方法であるかが問題となる。
令和6年6月28日の国土交通省住宅局参事官からの事務連絡により、「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」2)(以下、「ガイドライン」)に則った調査の他、定期調査・検査を実施する者が自らの目視によるときと同等以上の情報が得られると判断した方法(例えば、ファイバースコープや双眼鏡、赤外線装置、可視カメラ、拡大鏡等の検査器具類を使用した結果、目視と同等以上の情報が得られる方法等)をいうとしている。
国土交通省のパンフレットの一部を図-2に示す。

図-2 定期報告制度における新技術による調査のパンフレット(国土交通省)
図-2 定期報告制度における新技術による調査のパンフレット(国土交通省)

 
ここで「ガイドライン」について解説しておく。
建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、定期調査における調査項目、調査方法および調査結果の判定基準を平成20年国交省告示第282号(以下、「第282号」)の中で規定している。
第282号によれば、湿式のタイル張り仕上げ外壁やセメントモルタル塗り仕上げ外壁等を対象に、おおむね6ヶ月から3年以内に一度は手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行う必要がある。
この10年に一度の全面打診では、仮設足場の設置が必要となることが多く、経済的負担が大きくなっている。
このような背景にあって、国交省は2022年1月に第282号を一部改正し、打診以外の調査方法として、無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものの利用を明確にした。
 
ここで重要な点は、「テストハンマーによる打診と同等以上」という精度の確保である。
国交省は、打診と同等以上の精度とするためには、前出の「ガイドライン」を遵守する必要があるとしている。
したがって、「ガイドライン」は赤外線調査を対象としており、赤外線調査以外の方法(ファイバースコープや双眼鏡、可視カメラ、拡大鏡等の検査器具類を使用した方法等)については定期調査を実施する者が自らの目視によるときと同等以上の情報が得られると判断できればよい。
 

2.3 外壁改修工事におけるデジタル技術の推進

前述したように官公庁工事における遠隔臨場や建築基準法第12条に基づく定期報告制度においてデジタル技術の実装化が進んでいる。
 
デジタル庁はデジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しのために規制所管府省庁や地方公共団体とも連携して安全性や実効性を確認する観点から、技術検証事業を実施した。
そして、2023年度の技術検証事業の一つとして「類型3:ドローン、3D点群データ等を活用した構造物等の検査の実証」を実施し、建物・構造物の管理状況や損傷状況等の検査・調査を求める規制について、ドローンやAIによる画像解析等の技術を活用した遠隔での状況確認や評価により代替が可能であるかについて検証した。
このような技術検証を背景として、第282号の改正がなされたものと考えられる。
 
今後は、労働力不足や技術進展を背景として、建築物の調査および施工時の確認・検査において、デジタル技術およびAI技術の活用が一層拡大すると考えられる。
 
 

3. 労働安全衛生関係法令の改正と化学物質のリスクアセスメント

3.1 労働安全衛生法関係法令の改正

施工中の化学物質に対する労働安全性について「改修標仕」1章各章共通事項の中に表-5に示す記述がある。
この記述は令和4年版と変わっていないが、化学物質を扱う事業者(専門工事業者)にとっては労働安全衛生法関連法令が改正されたため、化学物質のリスクアセスメントが必須となり、新しい対応が求められるようになった。

表-5 「 改修標仕」令和7年版における化学物質のリスクアセスメント
表-5 「 改修標仕」令和7年版における化学物質のリスクアセスメント

 
詳細は、例えば「改修監理指針」の7章塗装改修工事7.1.4施工一般(1)塗装準備(イ)塗料の取扱い(f)化学物質に関するリスクアセスメントおよび(g)自律的な化学物質管理の強化を参照するのがよい。
本稿では労働安全衛生法改正とリスクアセスメント義務化の背景を解説する。
 
厚労省は化学物質による労働災害を防止するため、令和4年から労働安全衛生関係法令の改正を行っている。
改正の目的は、特別規則(特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則)による規制の対象外であった有害な化学物質を主な対象として、国によるばく露の上限となる基準の策定、危険性・有害性情報の伝達の整備・拡充等を前提として、事業者がリスクアセスメントの結果に基づき、ばく露防止のための措置を自律的、且つ適切に実施する制度を導入することにある。
 
したがって、化学物質を取り扱う塗装工事業者や防水工事業者等は、①GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)分類による表示ラベルやSDS(安全データシート)により伝達される危険性・有害性情報を理解し、②化学物質を取り扱う工事における施工方法、施工環境等を勘案し、③適切な方法でリスクアセスメントを実施し、④リスクアセスメント結果に基づき化学物質のリスク低減措置を決定し、⑤リスクアセスメント結果およびリスク低減措置を労働者に周知する必要がある。
 

3.2 改正前の化学物質管理体系

図-3に労働安全衛生関係法令による従来の化学物質管理体系を示す。
先ず、製造禁止物質として8種類の化学物質が定められている。
次に、自主的管理が困難で有害性の高い物質について特別規則(特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則)を定め、個別具体的な措置を義務付けてきた。
例えば、特定化学物質中毒予防規則(以下、「特化則」)にしたがった特化則作業主任者の選任、保護具着用、掲示義務、健康診断、記録保存等がこれに該当する。
 

図-3 労働安全衛生関係法令による従来の化学物質管理の体系(厚生労働省サイトより)
図-3 労働安全衛生関係法令による従来の化学物質管理の体系(厚生労働省サイトより)

また、特別規則には該当しない化学物質であっても、許容濃度またはばく露限界値が示されている化学物質については、ラベル表示、SDS交付、リスクアセスメントが義務付けられていた。
これらの物質に特別規則の対象化学物質を含めると674物質であった(令和2年時点)。
 
そして、GHS分類で危険性・有害性がある上記以外の化学物質(数万物質)については具体的な措置基準はなく、ラベル表示、SDS交付、およびリスクアセスメントも努力義務であった。
 

3.3 化学物質による健康障害

従来の化学物質管理体系下にあった平成29年における化学物質による健康障害を原因物質別および障害内容別に集計した厚労省のデータを表-6に示す。

表-6  化学物質による健康障害(平成29年)の原因物質別および障害内容別の集計(厚生労働省のサイトより)
表-6  化学物質による健康障害(平成29年)の原因物質別および障害内容別の集計(厚生労働省のサイトより)

 
原因物質別の割合で第一に注目されるのは、特別規則対象物質に起因する障害は20.5%と少数であることである。
原因物質が特定できない場合も約30%あるが、特別規則以外の化学物質に起因する割合が約50%に達している。
この理由として、国のリスク評価により、ある化学物質が特別規則への追加が決まると、材料製造業者は当該物質の利用をやめて規制対象外で同等の効果を発揮する代替品を開発することが挙げられる。
この場合、危険性・有害性に全く問題がないという代替品が開発されれば理想であるが、現実には難しい。
開発された代替品は特別規則の規制を免れてはいるが、有害性や危険性がないということではないことに注意が必要である。
すなわち、リスクアセスメントに基づいたリスク管理が必要である。
厚労省は今まで労働環境衛生を確保するために重要な化学物質を特定して、特別規則の対象としてきた。
一方で、材料製造業者は特別規則の規制を避ける代替物質を開発してきたのである。
いわゆる「イタチごっこ」である。
 
今後、数万種類もある化合物をすべて特別規則の対象として個別具体的対策を規定するということは不可能である。
したがって、今後は、取り扱っている化学物質のリスクアセスメントを自律的に行い、適切なリスク管理を実施する必要がある。
しかし、厚労省の調査によるとリスクアセスメントの実施率は高いとは言い難いレベルにある。
特に、中小企業においてリスクアセスメントの実施率が低くなっており、有害作業、ラベル、SDSに対する労働者の理解度が低いという調査結果であった。
 
一方、欧州および米国ではGHS分類で危険性・有害性のある全ての物質がラベル表示、SDS交付の義務対象となっている。
また、欧州は特定化学物質障害予防規則のような個別の物質ごとに具体的に措置を定める規制はしていないが、危険性・有害性のある全ての化学物質についてリスクアセスメントが義務となっている。
更に、細かい流通規制も行われている。
 
米国も特定化学物質障害予防規則のような個別の物質ごとに具体的に措置を定める規制やリスクアセスメントの義務付けをしていないが、労働現場の安全衛生を守るための専門家であるインダストリアル・ハイジニストの判断が重視されている。
 

3.4 新しい化学物質管理体系

厚労省は「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会(令和元年9月~令和3年7月)」を設置して検討を行い、図-3に示した従来の化学物質管理体系を見直して、図-4に示す自律的な管理を基軸とする新しい化学物質管理体系への移行を提案した。
 
すなわち、①危険性・有害性が確認された全ての物質に対して国が定める管理基準の達成を求めること、②基準達成のための具体的手段は指定しないこととした。
今までの方針の大転換である。
図-4に示す新しい化学物質規制では、先ず、図-3に示した①管理使用が困難な物質(8物質)の製造・使用等の禁止、②自主管理が困難で有害性が高い物質(123物質)の特別規則(特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則)よる個別具体的な措置義務は、引き続き適用されることとしている。
 
そして、図-3では674物質についてラベル表示、SDS交付、リスクアセスメントが義務付けられていたが、図-4に示す新しい仕組みでは、674物質を含めて国がラベルおよびSDSのモデルを作成した物質(約2900物質)についてラベル表示、SDS交付、リスクアセスメントを順次義務づけることとした。
更に、図-3に示されたGHS分類で危険性・有害性がある物質(数万物質)についても国によるGHS分類を進めてラベル表示、SDS交付、リスクアセスメントを義務付ける予定である。
現在進められているリスクアセスメント対象化学物質の追加状況を図-5に示す。
今後も国によるGHS分類により危険性・有害性が確認された化学物質については、リスクアセスメント対象物質として順次追加されることになっている。
現在、新しい化学物質管理体系の下で化学物質を扱う専門工事業者のリスクアセスメントおよびリスク管理が実施されている。
それぞれの工事で使用する材料のGHS表示やSDSをよく理解した上で作業内容を踏まえた作業マニュアルを作し、そのマニュアルに従って防護策を講じる必要がある。
化学物質を取り扱う専門工事業者は化学物質に関するリスク管理マニュアルを整備中であり、ウレタン塗膜防水工事におけるリスク管理マニュアル3)が刊行されている。

図-4 改正された労働安全衛生関係法令による新しい化学物質管理の体系(厚生労働省サイトより)
図-4 改正された労働安全衛生関係法令による新しい化学物質管理の体系(厚生労働省サイトより)
図-5 リスクアセスメント対象化学物質の追加計画(厚生労働省サイトより)
図-5 リスクアセスメント対象化学物質の追加計画(厚生労働省サイトより)

 
 

4. 石綿含有建材の事前調査

4.1 事前調査者の資格

「改修標仕」1章各章共通事項の中に5節「石綿含有建材の調査」があり表-7のように規定されている。
表-7の「(ウ)(イ)の事前調査及び分析調査は、それぞれ厚生労働大臣が定めるものが行う」が新しく「改修標仕」に追加された。

表-7 「 改修標仕」令和7年版における石綿含有建材の事前調査
表-7 「 改修標仕」令和7年版における石綿含有建材の事前調査

 
建築物の改修工事では、石綿含有建材の有無によって工事費、工期が大きく異なってくる。
「改修標仕」においては、発注者が石綿含有建材を事前に調査し適正な工事費、工期を設定することを基本としている。
 
しかし、石綿障害予防規則(以下、石綿則)および大気汚染防止法(以下、大防法)においては、建築物等の改修工事に先立つ事前調査は施工者に義務付けられている。
発注者には大防法により施工者が行う事前調査への協力が義務付けられており、石綿則では施工者に使用状況等を通知するよう努力義務が課せられている。
そのため、「改修標仕」では、発注者が事前に石綿含有建材の使用状況を調査している場合には、表-7の(ア)に示すように調査報告書を貸与することを特記するとしている。
この場合、施工者は、貸与された調査報告書について未調査部分の有無等を確認し、必要に応じて監督員と協議した上で追加調査を行うことが必要である。
 
建築物等の改修工事に先立つ事前調査は施工者に義務付けられているが、未調査や不十分な調査による施工時の石綿粉じん飛散事故が報告されており、事前調査における規制強化が求められ、令和2年の石綿則、大防法改正により次のことが規定された。
 
①事前調査方法の明確化(令和3年4月1日施行)
②事前調査を行う者の資格(令和5年10月1日施行)
③分析を行う者の資格(令和5年10月1日施行)
④事前調査結果の報告の義務付け(令和4年4月1日施行)
⑤事前調査結果の現場備付および3年間の保存(令和3年4月1日施行)
 
令和4年版「改修標仕」の時点では②、③の施行に至っておらず、令和7年版「改修標仕」に表7(ウ)の規定が加えられた。
ちなみに、建築物だけでなくではなく工作物についても資格者による事前調査が令和5年の石綿則改正で義務付けられ、令和8年1月1日から施行されている。
 

4.2 事前調査の調査手順

事前調査における石綿含有建材の調査手順を図-6に示す。
調査方法は以下の3つに大別できる。
 
①全ての材料について、設計図書等の書面調査、および現地での目視調査により確認する方法。
基本となる方法である。
②既に前号①の方法による調査に相当する調査が実施されている場合において、その結果報告書を確認する方法。
発注者等が既に①の方法に倣って調査しており、その調査結果報告書の貸与を受けた場合である。
施工者には、発注者等から貸与された調査結果報告書が調査時期、調査方法等において①の方法に照らして満足していることを確認することが求められる。
③工事着工時期が平成18年9月1日以降であることを設計図書等で確認する方法。
平成18年9月1日に改正された安衛法施行令により、石綿含有率0.1重量%を超える製品の製造・使用等が禁止されている。
これ以降は、石綿含有建材の使用がないため、これ以降の着工を確認すれば、事前調査は「石綿含有建材無し」の結果で終了することができる。

図-6 石綿含有建材の使用状況の調査手順
図-6 石綿含有建材の使用状況の調査手順

 
図-6において、書面調査は目視調査の準備業であり、次の手順で実施する。
 
設計図書等の書面から、全ての部屋の全ての材料を洗い出し、それらの材料について石綿含有の有無を確認する。
石綿含有建材の商品名と製造時期については、国交省および経産省による「石綿(アスベスト)含有建材データベース」を利用することができる。
ただし、「ご利用上の注意」を確認する。
また、データベースに掲載されていないことにより石綿無含有であることにはならないことに注意する。
 
その他に、製造所や業界団体の資料、JIS、不燃材料資料等も活用して石綿含有の有無を確認する。
次に、現場における目視調査では、書面調査で洗い出した材料と現場で使用されているものの相違を網羅的に確認し、一致しない場合には、監督職員と協議する。
 
設計図書等で建材に石綿が使用されているか否か不明なもの、疑わしいものを中心に裏面表示のJIS番号、aマーク等から石綿含有の有無を確認し、それでも不明の場合は分析調査のための試料採取を行う。
また、分析せずに石綿含有建材とみなして取り扱うこともできる。
この「みなし」は吹付け材を含めすべての含有建材で可能である。
 
この場合には、監督員と協議する。
 
表-7の(ウ)に規定されるように、事前調査は、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程(平成30年10月23日厚生労働省国土交通省環境省告示第1号)に基づき厚生労働省に登録された機関が行う講習を修了した建築物石綿含有建材調査者(特定、一般)または同等の能力を有する者が行うこととされている。
 
なお、戸建て住宅および共同住宅の住戸部分の内部の事前調査に限っては、前記「登録規程」に基づく講習を修了した戸建て等石綿含有建材調査者も行うことができるとされている。
 
また、石綿含有建材の分析調査についても、「厚生労働大臣が定める所定の実技講習を受講し、終了考査に合格した者又は同等以上の知識及び技能を有すると認められる者」が行うこととされている。
 

4.3 事前調査結果の報告

事前調査結果を取りまとめ、監督員に提出するとともに、必要事項を官公署に報告する必要がある。
官公署への報告は、都道府県知事等(大防法)および労働基準監督署長(石綿則)に提出するが、電子情報での報告が基本となっており、この場合は両方に同時送信される。
この報告の対象となるのは以下の工事である。
 
①請負金額が100万円(税込み)以上の建築改修工事、特定工作物の解体・改修工事
②床面積80㎡以上の建築解体工事
 
調査の結果、石綿含有建材がない場合でも報告が必要であることに注意する。
調査結果のとりまとめにあたっては、設計図書と調査結果に相違がある場合、相違点(材質の違い、石綿含有建材の種類の違い、改修の有無等の証拠の突合せ)を明確にした表を作成したものを添付する。
 
なお、事前調査で得た、石綿以外の繊維状物質(例えばロックウール、ガラス繊維)が使用されているかの情報は、石綿粉じん濃度測定と極めて関連があるため、その記録を残しておくことが望ましい。
 
 

5. 石綿含有仕上塗材の除去工事

石綿含有仕上塗材の除去については、表-8に示すように、令和4年版「改修標仕」では除去工法について具体的記述がされていたが、令和7年版「改修標仕」では「除去工法は特記による」と規定されている。

表-8 「改修標仕」令和4年版および平成7年版における石綿含有仕上塗材の除去工法
表-8 「改修標仕」令和4年版および平成7年版における石綿含有仕上塗材の除去工法

 
石綿則は令和5年8月(令和6年4月施行)に表-9に示すように改正された。
すなわち、改正以前は、①電動工具を使用せずに石綿含有仕上塗材を湿潤化して除去すること、②電動工具を使用して除去する場合は、隔離養生(負圧不要)して、仕上塗材を常時湿潤化して除去することを規定していた。
しかし、令和5年の改正により、①電動工具を使用せずに石綿含有仕上塗材を湿潤化して除去すること、②電動工具を使用して除去する場合は、隔離養生(負圧不要)して、仕上塗材を常時湿潤化して除去すること、に加えて、③除じん性能を有する電動工具を使用して、隔離養生(負圧不要)し、常時湿潤化せずに除去すること、④その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置をした除去工法を追加した。

表-9 石綿則(令和5年改正)および大防法における石綿含有仕上塗材の除去
表-9 石綿則(令和5年改正)および大防法における石綿含有仕上塗材の除去

 
一方、大防法では表-9において除じん性能を有する電動工具について明示していない。
しかし、令和6年2月29日に「特定粉じん排出等作業における除じん性能を有する電動工具の使用について(通知)」(環水大管発第2402284号)を通知している。
その通知の中で「除じん性能を有する電動工具を使用すること」は「除去する特定建築材料を薬液等により湿潤化すること」と同等以上の効果を有する措置として取り扱って差し支えないとして、改正石綿則と整合を図っている。
 
以上述べたような石綿則改正を踏まえて、令和7年版「改修標仕」では石綿含有仕上塗材の除去工法を特記することとした。
 
ここで重要なことの一つは「除じん性能を有する電動工具」である。
令和5年8月29日の「石綿障害予防規則の一部を改正する省令の施行について」(基発0829第1号)では、以下のような措置を挙げている。
 
①「除じん性能を有する」には、JISZ8122でいうHEPAフィルタ又はこれと同等以上の性能を有するフィルタを備えた集じん機を用いることが含まれること。
②取扱説明書等に従い、適切に使用するとともに、フィルタの交換等適切なメンテナンスを定期的に行う必要があること。
③石綿等が付着した電動工具の持ち出しを防ぐため、付着した石綿の除去等の措置に留意すること。
④電動ファン付き呼吸用保護具(S級の半面形面体であってろ過材がPS3又はPL3のものに限る。)又はそれと同等以上の指定防護係数を有する防じん機能を有する呼吸用保護具を使用すること。
 
したがって、「除じん性能を有する電動工具」を使用する場合は上記①~④に合致していることを確認する必要がある。
 
私見であるが、「除じん性能を有する電動工具」においては、「フィルタ性能が優秀であっても、集じん機の粉じん捕集効率が低い場合は、粉じん汚染が発生する」ことを認識する必要がある。
単にフィルタがHEPAフィルタであることを確認するだけではなく、さまざまな作業条件下における粉じん捕集効率を十分に検証した上で使用すべきである。
 
石綿含有仕上塗材を除去した廃棄物は、石綿含有産業廃棄物として処分する。
また、プラスチックシート等に付着した粉じんの再飛散を防止するために、プラスチックシート全体にむらなく粉じん飛散抑制剤を散布する。
その後、石綿繊維等粉じん付着面を内側にして折りたたんだ後に密封処理を行う。
なお、隔離養生(負圧不要)外へ運搬するまで施工区画内に保管する場合は一定の廃棄物保管場所を定め、他の産業廃棄物と区分して保管し、上記に示した梱包等による飛散防止の措置を行う。
また、保管場所には、石綿含有産業廃棄物の保管場所であることの表示を行う。
 
石綿含有仕上塗材を除去した場合は、事前調査を行うことができる者または当該作業の石綿作業主任者が除去面を目視により確認し、取り残しの無いことを確認する。
なお、制約により石綿含有仕上塗材を除去できない部分が存在する場合は、その後の維持管理のために、残存している部分の記録を残す必要がある。
 
 

6. 外壁複合改修工法

6.1 「改修監理指針」における外壁複合改修工法の位置づけ

建築物の維持保全の重要性が高まるにつれて、多くの新しい外壁改修技術が開発されている。
官庁の建物を対象とした「改修標仕」に採りあげられている工法以外にも、多くの外壁改修工法が存在する。
これらの新しい外壁改修工法は主として以下の理由から「改修標仕」に採りあげられていない。
 
①比較的新しく開発された外壁改修工法や技術評価が新しくなされた外壁改修工法であり、工事実績からその有効性を判断するのが困難な工法であるため。
②民間工事では実績があっても、官庁の建物において実績が少なく、経験が乏しい改修工法であるため。
 
しかし、ケースによっては「改修標仕」以外の外壁改修工法が有効であることも考えられる。
このような場合は、十分な技術的検討を行い、特記により外壁改修工法を指定することになる。
そのための参考資料として、「改修監理指針」4章9節では「改修標仕」以外の外壁改修について解説している。
その中で外壁複合改修工法を紹介している。
 
しかし、外壁複合改修工法は前述した①、②に該当する工法ではない。
①に関して言えば、外壁複合改修工法は建設省が平成7年11月27日建設省告示第1860号によって、建設技術評価制度の研究対象として「外壁複合改修構工法の開発」を公募したこと等を契機に開発された技術である。
図-7に外壁複合改修工法の施工実績を示す。
外壁複合改修工法は平成元年に発生した北九州市共同住宅の外壁剥落事故と契機として施工が開始され、徐々に施工実績が増大し、平成22年以降は一定の施工事績を確保している。
すなわち、上記①に示す「新しく開発された外壁改修工法や技術評価が新しくなされた外壁改修工法であり、工事実績からその有効性を判断するのが困難な工法」には該当しない。

図-7  外壁複合改修工法の施工実績((一社)外壁複合改修工法協議会調べ)
図-7  外壁複合改修工法の施工実績((一社)外壁複合改修工法協議会調べ)

 
次に、図-8に外壁複合改修工法の累積施工面積に対する官公庁発注工事と民間発注工事(UR都市再生機構の発注工事を含む)の比率を示す。
図-8に示すように1/3以上が官公庁発注工事であり、上記②に示す「民間工事では実績があっても、官庁の建物において実績が少なく、経験が乏しい改修工法」には該当しない。

図-8  外壁複合改修工法の累積施工面積に対する官公庁発注工事と民間発注工事の比率((一社)外壁複合改修工法協議会調べ)
図-8  外壁複合改修工法の累積施工面積に対する官公庁発注工事と民間発注工事の比率((一社)外壁複合改修工法協議会調べ)

 
外壁複合改修工法の「改修標仕」への導入に関しては、改定時の各種団体からの意見聴取において要望が多かった案件である。
また、UR都市機構「保全工事共通仕様書」にも導入されている。
今後、導入が検討されることを期待したい。
 

6.2 外壁複合改修工法の標準化

外壁複合改修工法は、前述したように建設技術評価規定(昭和53年建設省告示第976号)に基づいて、建設省が平成7年11月27日建設省告示第1860号によって「外壁複合改修構工法の開発」を評価対象として公募したことが契機となっている。
なお、建設技術評価制度においては構法と工法の両者の意味を有することから外壁複合改修構工法と呼称していたが、現在は「改修監理指針」においても外壁複合改修工法と呼称している。
 
「外壁複合改修構工法の開発」の公募に対して、団体を含めた数社が技術開発に応募し、平成9年6月3日付けの評価書を取得した。
なお、建設技術評価では同一の技術内容について再公募することは想定されていないため、建設技術評価制度に基づく評価を受けた工法は数種類に限定される。
建設技術評価制度による公募終了後も外壁複合改修工法は種々開発された。
いくつかの工法は、第三者認証として(一財)日本建築センターや(一財)ベターリビングにおいて建設技術審査証明を取得している。
建設技術審査証明は「民間開発建設技術の技術審査・証明事業認定規定(昭和62年建設省告示1451号)に基づいて実施されていたが、平成13年に廃止された。
そして従前より建設大臣認定機関として審査証明事業を実施してきた14機関で「建設技術審査証明協議会」を発足し、民間事業として審査証明事業を行っている。
 
また、UR都市機構「保全工事共通仕様書」では外壁複合補修工法(URでは外壁複合補修工法と呼称している)が標準仕様の一つとして採用されており、「機材及び工法の品質判定基準・仕様登録集」に品質判定基準が定められている。
 
以上のことから、外壁複合改修工法は以下のように分類できる。
 
①建設技術評価制度で平成9年に「評価書」を受けた工法
②建設技術審査証明事業で認証を受けた工法
③UR都市機構「機材及び工法の品質判定基準・仕様登録集」に適合する工法
④その他の工法
 
このような背景にあって、令和2年10月に(一社)外壁複合改修工法協議会が設立された。
協議会の目的は、外壁複合改修工法の標準化および普及である。
(一社)外壁複合改修工法協議会は、①建設技術評価制度における評価項目および評価基準、②建設技術審査証明での開発目標、③URでの品質判定基準および④既往の研究成果等を参考として、外壁複合改修工法を表-10に示すように分類し、表-11に示す性能評価基準を定めている。
詳細は協議会が発刊した「外壁複合改修工法ガイドブック」4)に示されているので参考にするとよい。

表-10 外壁複合改修工法の分類
表-10 外壁複合改修工法の分類
表-11 外壁複合改修工法の性能基準
表-11 外壁複合改修工法の性能基準

 
 

7. 木材の屋外塗装仕様

環境保護や温暖化対策等の観点から建築物への木材利用促進が図られている。
一方、木質系素地に対する屋外塗装仕様は屋内塗装仕様と比較して限定的である。
屋外塗装仕様については実績の少ないものが多く、新規塗装仕様が導入されにくい状況が続いている。
また、木質系素地を対象とした屋外塗装仕様では(他の素地でも同様であるが)定期的な塗装改修が必須である。
したがって、定期的な塗装改修を建築物の保全計画の中に組み込んでおくことが重要である。
 
令和7年版「改修標仕」では屋外での木材塗装仕様は、①合成樹脂調合ペイント塗り、②ピグメントステイン塗り、③木材保護塗料塗りの3種類が規定されている。
また、(一社)日本建築学会では、現在、日本建築学会建築工事標準仕様書JASS18(塗装工事)の改定作業を進めているが、屋外における木材塗装仕様は①合成樹脂調合ペイント塗り、②つや有合成樹脂エマルションペイント塗り、③木材保護塗料塗り、④水系保護塗料塗りが規定される予定である。
 
このように「改修標仕」とJASS18では若干の差異がある。
「合成樹脂調合ペイント塗り」および「木材保護塗料塗り」は実績も多く、屋外塗装仕様として利用されている。
JASS18では「木材保護塗料塗り」に加えて「水系木材保護塗料塗り」が追加される。
従来、主成分が油性系塗料であったものを水系エマルションで代替した塗料であり、新しく建築学会材料規格を制定している。
一方、「つや有合成樹脂エマルションペイント塗り」はJASS18では採用されているが、新設工事対応である「公共建築工事標準仕様書」(以下、「標仕」)に採用されていないこともあって「改修標仕」には導入されていない。
 
また、「改修標仕」で採用されている「ピグメントステイン塗り」はJASS18では屋外塗装仕様から削除され、屋内塗装仕様として「ピグメントステイン塗り」および新たに「水系ピグメントステイン塗り」が追加される。
 
以上のように、木質系素地を対象とした屋外塗装については「標仕」、「改修標仕」とJASS18の間で若干の差異が認められるため、それぞれの塗装仕様を正しく理解した上で採用する必要がある。
 
 

8. まとめ

令和7年版「改修標仕」の中から外壁改修工事に関連する部分について変更点を中心に解説した。
対象としたトピックに一貫性がないため、理解しづらかった点をご容赦願いたい。
 
建築改修工事および12条点検におけるDXの導入(2節)、労働安全衛生法の改正による化学物質に対するリスクアセスメント(3節)、石綿含有建材の事前調査(4節)、石綿則改正による石綿含有仕上塗材の除去(5節)、外壁複合改修工法の位置づけ(6節)、木材に対する屋外塗装仕様の現状(7節)等の内容はそれぞれ重要であり、「改修標仕」や「監理指針」の改定に反映されていることを理解いただけたら幸甚である。
 
 
 

参考文献

1) 国土交通省官庁営繕ホームページ
https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000051.html
2) 定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)ガイドライン(一財)日本建築防災協会ホームページhttps://www.kenchiku-bosai.or.jp/disaster/kizyunhou12/よりダウンロード
3)(一社)建築防水安全品質協議会「手塗り工法によるウレタン塗膜防水工事における化学物質のリスク管理マニュアル」テツアドー出版(2025)
4)(一社)外壁複合改修工法協議会編「外壁複合改修工法ガイドブック(第2版)」テツアドー出版(2025)
 
 
 

芝浦工業大学 名誉教授 
本橋 健司

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2026年11月号


積算資料公表価格版2026年11月号

最終更新日:2026-10-22

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