泥・土砂からFOD(異物)まで、現場出口で「持ち出し」を抑えるフォッズマット―タイヤの動きを利用した、設置・移設可能な車両用トラックアウト対策システム―
はじめに
工事現場や造成地、資材置場などでは、ダンプトラックや工事車両のタイヤに泥、砂、小石などが付着し、車両の退出とともに現場外へ持ち出されることがある。
道路上へ持ち出された土砂や異物は、周辺道路の汚れだけでなく、道路清掃作業の増加、排水設備への土砂流入、飛散物の発生などにつながり、現場管理者にとって継続的な管理課題となる。
こうした車両による「持ち出し」を、できるだけ現場の出口で抑えるために使用されているのがフォッズマット(製品名: FODS、以下「フォッズ」)である。
フォッズは、車両がマット上を通過する際に発生するタイヤの変形を利用して、タイヤ溝に入り込んだ泥、砂、小石などを落とす、再利用可能な車両用入退場口マットである。

写真-1 工事現場出入口に設置されたフォッズと大型車両
ピラミッド状の突起がタイヤ溝を開き、付着物を排出
フォッズの大きな特徴は、マット表面に規則的に配置された独自のピラミッド状突起である。
車両のタイヤがこのピラミッド上を順番に通過すると、タイヤが局部的に圧縮・伸縮し、トレッド溝が開閉する。
その動きによって、タイヤ溝の奥に入り込んでいる泥、砂、小石などが外へ押し出され、ピラミッド間の低い部分へ落下する。
落とされた土砂や異物はタイヤの走行面より下側に保持されるため、後続車両が再び同じ異物を拾い上げにくい構造となっている。

写真-2 フォッズのピラミッド形状とタイヤ接触部
単純にタイヤ表面をこするのではなく、車両自身の重量を利用してタイヤを変形させ、タイヤ溝そのものを動かすという考え方がフォッズの特徴である。
フォッズは、泥や土砂だけではなく、FOD(Foreign Object Debris:異物)への対策も重要な用途である。
タイヤ溝に入り込んだ小石などを、重要区域へ持ち込む前にできる限り排出するという考え方は、フォッズの製品設計・用途を理解するうえで重要なポイントである。
NASAケネディ宇宙センターにおける使用事例でも、車両がフォッズを通過することでタイヤ溝内のFODや土砂をマット底部へ落とし、高FODリスク区域への異物持ち込みを抑える用途が紹介されている。

図-1 ピラミッド上を通過することでタイヤ溝が開閉する仕組み
フォッズを通過すると、どの程度泥や異物を落とせるのか
行政機関や施工会社へフォッズを説明する際、「どの程度タイヤがきれいになるのか」「現場条件が変わっても同じように効果が出るのか」という質問を受けることが多い。
フォッズによる付着物の落ち方は、全ての現場で一律ではない。
タイヤに付着しているものが乾いた土なのか、水分を多く含む泥なのか、あるいは小石や砂なのかによっても異なる。
また、タイヤのトレッド形状や溝の深さ、車両重量、走行速度、フォッズの設置枚数、フォッズ上をタイヤが何回転するか、さらにマット内部への土砂の堆積状況などによっても効果は変化する。

図-2 タイヤ回転数とフォッズ配置の考え方/1×4,1×5Tなどのレイアウト例
特に重要なのが、フォッズ上で十分なタイヤ回転数を確保することである。
タイヤがピラミッド上を通過するたびに、圧縮と伸縮によってトレッドが開閉する。
そのため、フォッズを通過する距離が長くなり、タイヤが複数回転するほど、付着物を排出する機会も増える。
メーカーの設置ガイドでも、現場条件や最大車両に合わせて十分なタイヤ回転数を確保することが重要とされており、一般的な Best Management Practice(BMP:建設現場からの土砂などの流出を抑えるための管理手法)では、最大車両のタイヤが2~3回転する程度の走行距離を確保する考え方が紹介されている。
そのため、日本国内でも単に「フォッズを置く」というだけではなく、車両の種類、タイヤ径、出入口幅、進入方向、通行台数、土質などを確認したうえで、必要な枚数と配置を決めることが効果を引き出すうえで重要となる。
泥の状態に応じて湿式タイヤ洗浄との組み合わせも可能
フォッズは水や電源を必要とせず、車両が通過するだけで使用できる乾式方式である。
一方、現場によっては水分量の多い泥や粘性の高い土がタイヤへ強く付着することもある。
こうした現場では、フォッズと散水・高圧洗浄・湿式タイヤ洗浄設備を組み合わせる方法が有効な選択肢となる。
フォッズ上では、タイヤはピラミッド頂部によって支持され、その下側に空間が確保される。
この状態でタイヤへ水を当てれば、タイヤ溝から離れた泥や土砂を下方へ逃がしやすい。
したがって、まずフォッズのピラミッドによってタイヤを変形させ、泥・小石・異物を落とし、残った付着物を必要に応じて水で洗浄するという組み合わせが可能である。
海外では実際にフォッズとホイールウォッシュを組み合わせた運用が行われている。
例えば米国フロリダ州のTitan Americaの施設では、フォッズとホイールウォッシュを併用しており、まずフォッズで大部分の土砂・異物を落とし、残った細かな汚れを水圧洗浄で除去する方法が採用されている。
さらにWaste Managementが運営するEco-Vista Landfillでは、ホイールウォッシュの前後にフォッズを設置している。
洗浄前のフォッズで大部分の土砂を落とし、ホイールウォッシュ通過後にもフォッズを設置することで、車両が再び泥や異物を拾うことを防ぐ構成である。
このようにフォッズは、乾式で単独使用する装置であると同時に、より高い清浄度が要求される現場では湿式タイヤ洗浄を補完する装置としても活用できる。
日本でも、泥の性状や求められる道路の清浄度に合わせて、このような組み合わせを検討する価値がある。
なお、水を使用する場合は、単に水たまりを作るのではなく、泥を含んだ洗浄水が公道や雨水排水へ流出しないよう、排水・沈砂・回収方法を含めて計画することが重要である。

写真-3 フォッズと湿式タイヤ洗浄設備を組み合わせた海外事例

図-3 フォッズ→ホイールウォッシュ→フォッズの組み合わせ例
約30分で設置可能。工事の進行に合わせて移動・再配置
フォッズのもう一つの大きな特徴が、設置と移設の容易さである。
フォッズは工場で完成したマットを現場に搬入し、必要な枚数を並べて固定する方式である。
現場では、設置場所を平坦で安定した状態に整え、車両動線に合わせてマットを配置し、アンカーで固定する。
大規模な基礎工事を必要としないため、メーカーは標準的な設置について30分以内での設置が可能としている。
また、施工工程の進行によって車両出入口が変わった場合には、アンカーを外してマットを移動し、新しい出入口へ再設置することができる。
道路工事、管路工事、造成工事のように工事区間や車両動線が徐々に移動する現場では、同じフォッズを工程に合わせて移設しながら使用することも可能である。
設置場所についても、土の地盤だけではなく、アスファルトやコンクリートなどに対応でき、現場に合わせてアンカー方式を変更する。
つまりフォッズは、固定設備ではなく、「必要な場所へ設置し、現場条件が変われば移動し、次の場所で再び使う」ことのできる仮設型の泥・異物対策設備である。

写真-4 フォッズの設置作業

写真-5 移設・再配置作業
実際の工事現場で道路清掃59%削減
フォッズの効果を考えるうえでは、実際の現場における比較データも参考になる。
米国テキサス州のHarris County Flood Control Districtでは、大規模な掘削工事において、フォッズを実際の工事車両出入口に設置して評価を行った。
試験期間全体では29,745台の満載トラックが現場から退出し、そのうちフォッズ使用期間には20,354台の大型トラックがフォッズ上を通過した。
検証の結果、従来のSCA(Stabilized Construction Access:砕石を用いて車両タイヤからの土砂持ち出しを抑える安定化工事用出入口)と比較して、道路清掃回数59%削減、出入口設備の補修89%削減という結果が報告された。

図-4 Harris County実証結果 道路清掃59%削減/出入口設備補修89%削減
一方で、フォッズそのものについては定期的な清掃が行われた。
これはフォッズの構造を考えると重要なポイントである。
フォッズは「清掃そのものをなくす」ことを目的とした製品ではない。
タイヤから落とした泥や土砂をフォッズ内部に集め、それを現場出口の限られた範囲で清掃する。
その結果として、公道へ持ち出される土砂を減らし、より広い範囲で行わなければならない道路清掃や出入口補修を減らすという考え方である。
ハリス郡の評価でも、フォッズは従来方式より清掃頻度自体は高かった一方、清掃作業に要する時間は短く、道路をよりきれいな状態に保つ結果につながったと報告されている。
行政機関や現場管理者がフォッズを評価する場合には、「タイヤから何%の泥が落ちたか」という一点だけではなく、道路へ出た土砂量、道路清掃回数、出入口の維持管理、周辺道路の状態まで含めて効果を評価することが重要である。
フォッズの原点でもある「異物を持ち込まない」という考え方
日本ではフォッズを「泥落としマット」と説明することが多いが、海外における用途を見ると、それだけでは製品の特徴を十分に表していない。
フォッズが対象としているのは、泥、砂、土砂だけではなく、タイヤ溝に入り込んだ小石などのFOD(異物)も含まれる。
この点を象徴する導入先が、米国フロリダ州のNASA Kennedy Space Center(ケネディ宇宙センター)である。
同施設のCrawlerway関連工事ではフォッズが導入され、工事区域を走行した車両のタイヤからFODや土砂を落とし、高FODリスク区域への異物の持ち込みを抑えるために使用された。
航空・宇宙関連施設では、小さな石や異物であっても設備や車両、航空機にとってリスクとなる可能性がある。
フォッズはこうした「重要区域へ異物を持ち込まない」というFOD管理の考え方にも対応する製品であり、その構造が現在の建設現場における泥・土砂持ち出し対策にも応用されている。

写真-6 NASA Kennedy Space Centerで使用されたフォッズ
写真提供:FODS LLC
Metaの大規模データセンター建設でも採用
もう一つ、フォッズの用途の広さを示す事例が、米国アリゾナ州MesaにおけるMetaの大規模データセンター建設である。
同プロジェクトではDPR Constructionがフォッズを採用した。
大規模データセンター建設では、多数の大型車両や重機が長期間にわたって出入りするため、現場から公共道路へ持ち出される泥や異物を継続的に管理する必要がある。
Meta Mesa Data Centerの建設では、車両退出部にフォッズを設置し、タイヤから泥・異物を除去することで、土砂等が工事区域外へ広がるリスクを抑える対策として使用された。
NASAケネディ宇宙センターとMetaデータセンターという用途の異なる現場での採用は、フォッズが単なる建設現場の泥対策にとどまらず、道路・橋梁工事、造成・大規模開発、工場・プラント、データセンター、空港・航空宇宙施設、リサイクル・廃棄物処理施設、エネルギー・インフラ工事など、車両による泥・土砂・異物の区域間移動を管理したい現場で活用できることを示している。

写真-7 Meta Mesa Data Center建設現場で使用されたフォッズ
写真提供:FODS LLC
性能を維持するためには、適切な設置と清掃が重要
フォッズの性能を継続して発揮するためには、設置後の管理も重要となる。
タイヤから落とされた泥・砂・小石はピラミッド間に蓄積する。
その空間が土砂で埋まってしまえば、タイヤとピラミッドが十分に作用するための空間が減少する。
そのため、定期的に堆積状況を確認し、必要に応じて専用ショベル、ブラシ付き重機、路面清掃車などを使用して土砂を取り除く。
メーカーでは、ピラミッド間の堆積土砂がおおむね2.5インチ程度に近づいた段階を、清掃を行う一つの目安としている。
また、設置面についても、大きな石や深いわだち、段差、軟弱な箇所をそのままにせず、平坦で安定した状態に整えることが重要である。
マットを地面へ適切に固定し、車両が指定されたフォッズ上を確実に通過する動線を作ることで、本来の性能を発揮しやすくなる。

写真-8 フォッズの清掃・メンテナンス状況
「泥を落とす装置」から「現場出口を管理するシステム」へ
フォッズを理解するうえで重要なのは、単なる泥落としマットとして見るのではなく、「車両が区域をまたぐ場所で、タイヤに付着した泥・土砂・小石・異物をできるだけその区域内に残すためのシステム」として捉えることである。
付着物の状態や車両条件によって落ち方は変わるため、十分なタイヤ回転数を確保できる枚数・配置を選定する。
粘性の高い泥や、より高い清浄度を求める現場では、フォッズと湿式タイヤ洗浄を組み合わせる。
マット内部へ土砂が溜まれば清掃する。
工事工程が進み出入口が変われば、マットを移動して再設置する。
このように、現場条件に応じて柔軟に使い方を変えられることがフォッズの特徴である。
海外では、NASAケネディ宇宙センターでのFOD対策、大規模データセンター建設、道路・インフラ工事、工場や廃棄物処理施設など、さまざまな環境で導入されている。
日本国内においても、単に「泥が落ちるか」という視点だけではなく、公道へ持ち出す泥や異物を減らすこと、道路清掃や出入口管理の負担を減らすこと、必要な場所へ短時間で設置し、工程に合わせて移設できること、湿式洗浄と組み合わせてさらに高い洗浄効果を狙えること、小石などのFOD管理にも活用できること、といった複数のメリットを組み合わせて評価することで、フォッズの本来の価値がより分かりやすくなる。
ライン企画工業株式会社およびKynergy International株式会社では、国内でのフォッズ導入にあたり、車両種類、通行量、土質、出入口形状、施工期間などを確認し、必要枚数、配置方法、固定方法、清掃方法、湿式タイヤ洗浄との組み合わせなど、現場条件に合わせた導入支援を行っている。
フォッズは、泥・土砂対策だけにとどまらず、現場出口における「持ち出し」を総合的に管理するための新しい選択肢として、日本の建設・土木現場でも活用の可能性を広げている。
【出典】
最終更新日:2026-10-23

