- 2024-06-08
- BIM/CIM&i-Construction | 建設ITガイド
はじめに
中国地方整備局では、「中国地方整備局インフラDX推進計画」にBIM/CIMによる建設生産システムの効率化・高度化を位置付けて、3次元モデルの活用を推進してきたところですが、令和5年度から業務・工事においてBIM/CIM原則適用となり、さらなる活用を推進しているところです。
本稿では、これからの建設業界の生産性向上に欠かせないBIM/CIM の活用について、中国地方整備局の取り組みを紹介します。
中国地方整備局における取り組み状況
中国地方整備局のこれまでの取り組みとして、大規模構造物などを中心にBIM/ CIMを活用、順次対象を拡大しながら事例を収集し、「BIM/CIM活用の手引き(案)」や「BIM/CIM活用事例集」を作成・公表しています。
山陰西部国道事務所では、調査、設計、施工のプロセスを意識した3次元ベクトルデータを測量成果として作成することにより道路設計の効率化および高度化を図ることを目的に、ガイドラインを作成し運用しているところです。
令和5年度から業務・工事においてBIM/CIM原則適用を受け、この取り組みを他の事務所へ横展開し、BIM/CIMのさらなる活用推進を図っていきます。
受注者については、特に中小企業においてBIM/CIMがまだ十分に浸透していない現状も見られるため、中国地方整備局では、業団体が参加する講演会や勉強会などにおいてBIM/CIMに関する説明を積極的に行っています。
また、BIM/CIMを含むDXの取り組みに関する最新の事例を収集し、中国5県や業団体などへ定期的に提供するなど、外部への情報発信にも取り組んでいます。
BIM/CIMを効果的に活用し、建設生産・管理システムの効率化を図っていくためには、建設事業に関わる発注者および受注者における人材育成が不可欠です。
中国地方整備局では、幅広い関係者がDXに関する専門性の高い研修や技術体験ができる人材育成の拠点として、令和4年度より中国技術事務所に「中国インフラDXセンター」の整備を進めており、令和5年7月18日に暫定運用を開始したところです。
建設生産・管理システムのプロセスにおいて活用可能なDX技術のうち、AR・VRコンテンツなど(図-1)の体験が可能となっています。
今後も、DXセンターで体験できる技術メニューや研修コンテンツの充実を図り、BIM/CIM活用促進を支える人材育成の環境整備に取り組むこととしています。
フロントローディングの取り組み事例
中国地方整備局では、早期段階から一貫したBIM/CIM導入に向けて、測量、設計、施工の各段階でフロントローディングを実践しています。
測量段階では、点群測量成果を単に地形図成果として使用するのではなく、道路設計の効率化および高度化を図るため、点群測量に合わせて現地補備測量を実施し、自由に縦横断地形図が作成できる3次元ベクトルデータ(図-2)を測量段階の成果とする「点群データ活用ガイドライン(案)」を作成しました。
令和3年度新規事業から本格的に活用を開始しており、測量段階での作業は増加するものの、自由に縦横断面図が作成可能なことから通常実施する現地縦横断測量(応用測量)を省略でき、これまでの測量設計プロセスを見直すことで一連の作業効率化が図られることが可能となっています。
設計段階では、道路設計で作成された CIMモデルを、後工程となる、トンネル設計や橋梁設計を実施後に再度モデルの更新(接合)を行う必要があります。
しかし、設計業者ごとにCIMモデルの着色や、モデル化範囲が異なるため(図-3)、モデル更新に時間を要していることから、令和5年度に一定のルールを作成する取り組みを実施しています。
施工段階では、ICT土工用データを発注者が作成し、受注者に貸与する試行を行っています。
また、地質調査の検尺で一般化されつつある遠隔臨場を発展させ、遠方から現場をリアルタイムで見学するバーチャル現場見学会を令和4年度から実施しており、令和5年度はバーチャル現場見学会を応用した用地・幅杭遠隔立会(図-4)を試行するなど、新たな取り組みにチャレンジしやすい環境整備を行っています。
おわりに
中国地方整備局では、建設業界の生産性向上を図りつつ、整備局職員を含めた建設業界の働き方改革を実現することを目指し、各種の取り組みを実施しています。
実施に当たっては、社会情勢の変化や 建設業界、職員からのニーズなどを踏まえた上で、「中国地方整備局インフラDX推進計画」を毎年度策定し、それらを実施、点検、分析・評価し、インフラ分野のDXを推進してまいります。
【出典】
建設ITガイド 2024
特集1 建設DX、BIM/CIM

最終更新日:2024-07-08