- 2023-01-23
- 土木施工単価
1. はじめに
国土交通省では,2016年度から調査・測量から設計,施工,検査等のあらゆる建設生産プロセスにおいてICT等を活用するi-Constructionに取り組んでおり,2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させることを目標としています。
i-Constructionの取り組みは「ICTの全面的な活用」,「全体最適の導入」,「施工時期の平準化」の三つのトップランナー施策から構成されています。
本稿では,トップランナー施策のひとつである「ICT施工」について,令和4年度の基準類の改定内容を紹介します。
2. 現状
現在,直轄工事におけるICT施工の実施率が約8割に対し,地方公共団体におけるICT施工の実施率は約2割にとどまっています(図-1)。
今後,ICT施工のさらなる普及を図るためには,ICT施工の対象工種を拡大し,中小建設業へ普及させることが必要不可欠となります。
このような現状から,小規模な現場に対応したICT施工の導入を図りました。
3. ICT施工に関する基準類の整備状況
国土交通省ではICT施工の普及拡大に向けて,平成28年度のICT土工から始まり,順次基準類を拡充しています。
令和4年度は新たに,小規模現場に対応する「ICT土工・床掘工・小規模土工・法面工」と「ICT構造物工(橋梁上部・基礎)」について基準類を策定しました。
(1) ICT土工等(ICT土工・床掘工・小規模土工・法面工)
今までのICT施工は,主に規模の大きい現場を対象とした中型のバックホウでの施工を標準としており,都市部や市街地などの狭小箇所における施工が難しい状況であったため,施工規模の小さい(土工であれば1,000m³未満)現場を対象に小型のMGバックホウを使ったICT施工の導入を図ることとしました。
また,出来形管理は,衛星測位(RTK-GNSS)やトータルステーション(TS)等を活用した断面管理を標準とし,市販のモバイル端末やTLS等を活用した面管理も可能としました(図-2)。
(2) ICT構造物工(橋梁上部工,橋脚・橋台,基礎工)
構造物の出来形管理においては,従来は計測箇所に計測員を配置し,レベル・巻き尺等を用いて計測し,出来形管理を行っていました。
ICT構造物工では3次元計測技術(ドローン,レーザースキャナー等)を用いることにより,計測箇所に計測員を配置する必要がなく,計測作業の効率化を図るとともに,高所への立ち入り抑制等による安全性向上を図ることができます。
また,橋梁の橋脚・橋台において,できばえ管理やひび割れ管理について面管理データや写真データの活用も可能としました(図-3~6)。
(3) 民間等の要望を踏まえた基準の策定・改定
公共工事に用いられる工種は多種にわたること,またICTの進展が非常に早いことから,新技術を迅速に現場導入するため,民間企業等から基準類の提案を募集し,より迅速に基準類を整備する取り組みを行っており,以下の手法について基準類へ反映しました。
① 施工履歴データを用いた出来形管理
盛土天端等の出来形管理について,GNSSを搭載したローラを使用し,締め固め施工中のローラ転圧輪の走行軌跡(施工履歴データ)を取得することで,盛土天端等の面的な出来形を計測・管理することを可能としました。
② ステレオ写真測量を用いた路面切削工の出来形管理
これまでレベル計測や水糸下がり量管理,メジャー計測によって行われてきた路面切削工における切削深さ・幅の計測を,デジタルカメラで複数の観測点から撮影して得た2次元画像を解析することにより寸法・形状を求める写真測量技術を用いた手法を適用可能としました。
③ 等対地高度撮影手法の要領化
起伏の大きい山間部などを撮影する場合,「対地高度を一定とする撮影手法」を可能としました。
また,カメラを斜めに向けて飛行する手法も可能としました。
④ 地上写真測量(動画撮影型)を用いた出来形管理
現在,出来高管理を対象に地上写真測量を適用できる状況となっていますが,通常の土工事において,地上写真測量を用いた出来形管理が実施できるように改定しました。
⑤ TLS・TS等による擁壁工の出来形管理
擁壁工(プレキャスト擁壁,場所打擁壁工,補強土壁工)の出来形管理(断面管理)をTLSまたはTS等を用いて行うことを可能にしました。
⑥ 軽量盛土工の出来形管理(面管理)に,多点計測技術で計測した点群データを用いることを追加しました。
4. おわりに
建設現場の生産性向上を目指しi-Constructionに取り組み,ICT施工の普及に関して,前述したように一定の普及は確認されています。
しかしながら,中小建設業においては,ICT施工を経験した企業はまだまだ少ない状況であり,ICT施工に関する研修や講習会の実施,ICT施工に関するさまざまなアドバイスを受けることができるICTアドバイザー制度の導入など,中小建設業へ向けたICT施工普及の取り組みを実施しているところです。
今後も,ICT施工のさらなる普及のため,工種の拡大や人材育成等の普及方策を実施し,課題解決に向けた取り組みを進め,さらなる建設現場の生産性向上に努めてまいりたいと思います。
【出典】
土木施工単価2022年夏号
最終更新日:2023-01-23
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