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ホーム > 建設情報クリップ > 土木施工単価 > 建設業界におけるドローンの現在地

1.はじめに

 
現在、わが国におけるドローンの普及・展開に関する団体は多数設立されているが、日本ドローンコンソーシアム(JDC)¹ は、ドローンのメーカー、ユーザー、ベンダーに加えて研究者や自治体等からなる法人を中心とした全国組織であり、日本のドローン産業全体の健全な育成を目的に活動している。
本稿では、JDCが注力している事業分野の一つである建設分野におけるドローンの活用状況を紹介する。
 
 

2.建設分野でのドローン導入の概要

わが国における産業用ドローンの展開は、一時期の過剰な期待と過度の失望時期を脱して、ようやく持続的安定の段階に入り始めたと考えられる。
一般的には「空飛ぶクルマ」などが話題を呼んでいるが、社会実装という側面では、農業や測量分野が先行している。
こうした中で、建設分野では写真-1 に示すような、高架橋等のインフラ点検など、困難な条件下での活用や技術開発が注目を集めている。
一方で、大規模土工などの現場では、日々の現場計測の一環としてドローンを導入している例も多く、着実に施工管理技術としての効果を発揮していることは、それほど知られてはいないように思われる。
 
以上のことから、ここでは、実際の土木施工現場において、施工管理の目的でドローンが導入された事例について述べるものとする。
 

【写真-1 ドローンによる橋梁の点検(提供:三信建設工業株式会社)

【写真-1 ドローンによる橋梁の点検(提供:三信建設工業株式会社)


 
 

3.土木工事におけるドローンの活用事例

土木工事においては、起工測量、出来形測量、出来高計測などさまざまな目的で日々測量・計測が行われており、こうした施工管理において、ドローンを有効活用することが可能である。
以下には、大規模切土、土砂埋立ておよび河川測量にドローンを活用した事例を通じて、その効果について示すものとする。
 
 

3.1 切土工事における進捗管理への適用²

本事例は、重機による切土工事(計測対象範囲:約300m×160m、総切土量:約42 万6,000m³、法面高低差:約40m)の進捗管理にドローンを導入したものである。
この現場では、月1回以上の頻度でドローンによる写真測量を実施し、作成した点群データを用いて切土工事の進捗管理を行った。
着工後間もない時期と切土完了後の状況を写真-2、3に示した。
具体的には、二時期の写真の差分から地形変化を抽出し、掘削土量を計算した。
図-1は、変化をわかりやすくするため、4カ月の期間での変化量を抽出し色別に結果を示した。
 
この方法により、従来手法で3~4日程度を要していたものを、空撮(0.5日)・データ処理(1日)の合計1.5日の半分以下に短縮することができた。
さらに、品質の面でも、従来手法では代表測線の計測であったのに対して、ドローン計測では必要精度を確保しつつ面的なデータが得られるため、大きく改善されることとなった。
 

【写真-2 切土工事着工直後の状況】

【写真-2 切土工事着工直後の状況】

【写真-3 切土工事完了時の状況】

【写真-3 切土工事完了時の状況】

【図-1 4カ月間の地形変化】

【図-1 4カ月間の地形変化】

 
 

3.2 中間貯蔵施設における搬入土量管理への適用³

本事例は、東日本大震災による原子力発電所の事故で発生した除去土壌を中間貯蔵施設へ埋め立てるものである。
この工事では、対象とする土壌について、搬入日付、量、埋立て位置等のトレーサビリティの確保が求められている。
こうした要求に対応するために、ドローンと3次元埋立管理システムを導入してその管理を行った。
すなわち、日々搬入・埋め立てられる土壌の出来高計測と属性情報を一元管理した。
図-2 は対象とした中間貯蔵施設全体の点群データであり、図-3 に日々の埋立状況をメッシュデータで示した。
 
この事例のように日々変化する地形情報を確実に管理していくうえでは、ほぼ自動的に対象領域を飛行するドローンにより取得される点群データを用いて管理する方法が、現場計測の効率化の面でも、情報管理の面でも極めて有効である。
 

【図-2 中間貯蔵施設の全体の点群データ】

【図-2 中間貯蔵施設の全体の点群データ】

【図-3 日々の埋立量の計測】

【図-3 日々の埋立量の計測】

 
 

3.3 グリーンレーザによる河川測量への適用4

河川工事や海岸工事においては、水中測量が必要であり、水深に応じて音響測深や人力による深浅測量などが適用されている。
こうした中で、透明かつ水深の浅い領域については、グリーンレーザによる測量ができるようになってきた。
これは、水中でも透過する緑色領域のレーザ光を用いるものである。
グリーンレーザ搭載ドローンを写真-4 に示した。
 
本事例は老朽化した堰を解体・更新するものであり、現況確認にドローンによる測量を実施した。
写真-5 に工事エリアの状況を、その計測結果の一部を図-4、5に示した。
この事例のように、グリーンレーザによる測量は浅水域と陸上部が混在する河川敷などでのシームレスな測量に威力を発揮するものとして期待されている。
 

【写真-4 グリーンレーザ搭載ドローン】

【写真-4 グリーンレーザ搭載ドローン】

【写真-5 現場概要】

【写真-5 現場概要】

【図-4 取得された点群データ】

【図-4 取得された点群データ】

【図-5 断面測量結果】

【図-5 断面測量結果】

 
 

4.まとめ

本報告では、土木工事におけるドローンの導入事例を通じてその効果について紹介してきたが、今後、AI、5G通信やLiDARなどの技術の適用により建設分野におけるドローンの高度化はさらに加速していくことは疑いのないものと言える。
同時に、ドローンの産業での活用に対するさまざまな法律や制度の整備も進められており、国土交通省が定めた安全基準に基づく機体認証制度が2022年度より開始され、続いてドローンの操縦ライセンスについても間もなく導入される見込みである。
 
このような動きは、ドローンが社会インフラの一翼を担っていくうえで非常に重要であるが、産業用ドローンそのものがソリューション産業であるため、単純に従来技術に対する制度設計の枠組みを適用することが難しい側面があるのも否めず、継続的な改善を行っていく必要性があるものと考えられる。
 
以上のような状況において、ドローン産業に係るあらゆる領域のメンバーからなるJDCが果たす役割は、より一層大きくなるものと考えている。
 
 
 
【参考文献】
1 日本ドローンコンソーシアムHP: https://jdc.or.jp/ (2022年10月入手)
2 早川健太郎、黒台昌弘:UAVを用いた建設現場における地形変化の計測について、応用地質、第62巻.第6号. pp.363-367、2022
3 紫垣萌、永井裕之、澤城光二郎:ドローンと3 次元埋立管理システムによる土壌貯蔵のトレーサビリティ管理、第9回環境放射能除染研究発表会(オンライン開催)要旨集、 pp.27、2020
4 澤城光二郎、黒台昌弘:UAV グリーンレーザ計測の陸域・水域における計測精度検証、日本リモートセンシング学会誌、Vol.42 No.3、pp.190-195、2022
 
 
 

一般社団法人日本ドローンコンソーシアム 副代表理事 
笠 博義
(株式会社 安藤・間 技術研究所)

 
【出典】
 
 


土木施工単価2023年冬号
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最終更新日:2024-03-25

 

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