- 2023-03-06
- 土木施工単価
日本中どこのまちを歩いていても必ず目にするものと言えば,そう,路上に設置されたマンホールの蓋です。
中でも下水道のマンホールは全国に1,600万基以上が設置されているそうです。
そのマンホールの新たな価値に気付き,下水道事業のPRや地域活性化につなげようとするプロジェクトが大きな広がりをみせています。
ここでは,今まさに全国的なブームを巻き起こしているマンホールカードやそれらにまつわるイベントなどについてご紹介します。
とはいえ,皆さんはマンホールカードをご存じでしょうか?
マンホールカードはGKP・下水道広報プラットホームが,平成28年4月に第1弾を発行し,瞬く間にその人気が全国に波及した今もっともコレクターに注目されているカードのひとつです。
2022年8月に投入された第17弾で,シリーズ累計872種・624団体となり,総発行枚数は835万枚に達しました。
これほどまでに人々を熱狂させるマンホールカードの魅力とはなんなのか。
これまでの経過をたどりながら,その人気の秘密を解き明かしていきましょう。
「ご当地もの」のマンホール
マンホールカードは,地方公共団体が発行するカード型パンフレットとして先鞭(せんべん)をつけたダムカードにヒントを得てGKPが発行したものですが,その最大の魅力は,デザインマンホールの蓋が「ご当地もの」であることです。
最初にデザインマンホールが登場したのは,昭和52年に製造された那覇市の蓋だとされています。
魚をモチーフとしてマンホール全体にあしらったもので,それまでの一般的なマンホールデザインとは一線を画す新たな取り組みとして注目されました。
その後,当時の建設省下水道部の担当者からマンホール蓋のメーカーに対し「下水道事業の市民PRのためにマンホール蓋にデザインを施してほしい」という要望があり,昭和50年代後半から全国各地で地元の観光名所や草花,動物,キャラクターをモチーフにしたカラーマンホールが作られるようになりました。
それぞれのデザインは,地方公共団体の職員の企画によるものや一般市民への公募,美術学校やプロのデザイナーへの委託などさまざまな方法によって採用されています。
そのひとつひとつのデザインに魅了された蓋マニアが全国を巡りながら蓋の写真の収集を行い,彼らがネットを通じて発信することで,少しずつ一般にも認知されるようになりました。
蓋マニアのことを「マンホーラー」と呼んでいますが,彼らが立ち上げた蓋探索のブログや写真集の発行でさらに人気が出て,SNSの登場で一気に全国にファンが広がりました。
蓋ファンは彼らを「レジェンド・マンホーラー」と呼び,テレビ番組にも多数出演して蓋の魅力を語っています。
歩道上に埋め込まれた直径60cmのスペースに,地域の名所や名物が凝縮されていることが,人を惹きつける大きな魅力になっているのです。
マンホールカードの登場
じわじわと広がっていったマンホール蓋の人気を下水道の広報につなげられないかと考えたのがGKPのメンバーでした。
GKP・下水道広報プラットホームは,国土交通省や地方公共団体,大学,民間企業,マスコミの有志で構成されるボランティア団体です。
下水道の機能や役割だけでなく,その本当の価値を国民に正しく伝えるための広報活動を行っています。
そこで,マンホール蓋の魅力を広げるために発足したチームと蓋マニアが中心となって企画・制作されたのがマンホールカードです。
カード型のパンフレットとしてデザインにもこだわりましたが,コレクションアイテムとして入念に作り込まれたコンテンツもその魅力を押し上げています。
全国を9つのブロックに分けて,カードのベースの色でどの地域のカードかが一目で分かるようになっています。
第17弾からはこれに日本下水道事業団のカラーが加わって,全部で10色のベースカラーがあります。
また,1ロット2,000枚を最初に発行して,その後のカードは新たなロットナンバーが付されますし,同じ公共団体のカードでも,蓋のデザインの違うカードは先頭のアルファベットがA・B・Cと変わっていくなど,コレクションの楽しさも加味されています。
さらに面白いのは,ピクトグラムを採用したことです。
蓋のデザインのテーマに合わせて,花や海,お城など33種類のカテゴリーがあり,それらにも連番が付されています。
つまり,花のデザインを集めるとか,お城のデザインをコンプリートするといった楽しみ方もあります。
そして,それぞれのカードには,カードになったマンホールが設置されている場所の座標が入っていて,実際に設置されている蓋を見に行くこともできます。
SNSには,カードをもらった蓋ファンの人たちが,実物のマンホールとカードを一緒に撮影した写真を投稿して楽しんだりしていますし,収集を目的にしたバスツアーも開催されるなど,観光資源としての一面もあるのです。
高い収集のハードル
しかし,カードの配布は1カ所で1種類しか配布しておらず,枚数も1人1枚までに限られています。
つまり,入手するハードルが高いというのもコレクションカードとしての魅力です。
例えば,北海道だけでも第17弾までに40団体のカードがあるため,何度も旅行に行かないとコレクションできません。
また,マンホールカードは1年間に3回(4月・8月・12月),1回で50~60種程度を投入します(新型コロナウイルス感染症の影響などにより,2020年および2021年は2回発行)。
いったん目的のカードを集め終えても,すぐに新しいカードが発行されるため,コレクションするのは相当厳しいのです。
マンホールサミットや下水道展などのイベントで複数の種類のカードをまとめて配布することもありますが,それもイベントが開催されている場所まで足を運ぶわけですから,たやすく入手できるわけではありません。
ましてや全種類をコンプリートするのは至難の業です。
特別版のカードも発行
そして,先述したベースカラーの通常版のほかに,東京2020オリンピック・パラリンピックに合わせて発行した「東京都特別版」のマンホールカードがあります。
これらは,第1弾として2020年11月に鉄腕アトム(千代田区),ウルトラマン(世田谷区),3月のライオン(渋谷区)など12種を,第2弾として2021年11月にゴジラ(新宿区),こち亀(葛飾区),ブラックジャック(東久留米市)など15種が発行され,人気を博しました。
人気のアニメやキャラクターとのコラボレーションもマンホールカードの人気を押し上げる大きなコンセプトになっています。
マニア大集合「マンホールサミット」
そして,全国の蓋マニアやマンホールカードファンが一堂に会するのが「マンホールサミット」です。
初開催となった東京・秋葉原でのサミット2014から毎年全国各地に会場を移して開催されています。
マンホール蓋をこよなく愛する蓋マニアを「マンホーラー」と呼びますが,マンホールサミットはこのマンホーラーたちが,自らのマンホール愛を語るほか,蓋関連グッズの販売,実物の蓋の展示,下水道施設の見学会なども行われ,マンホール蓋と,蓋の先に広がる下水道の世界を堪能できるイベントです。
毎回マンホールコースターやマンホールどら焼きなどの販売のほか,マンホール型の鉄板で作る料理も堪能できるとあって,マンホーラーにはたまらない空間です。
新型コロナウイルス感染症の影響で,2021年までの2年間は延期されていましたが,2022年は11月19日(土)に埼玉県所沢市のところざわサクラタウンをメイン会場にしての開催が決定しています(※)。
現在は新型コロナウイルス感染症の影響から配布を見合わせている地方公共団体もありますが,グループでの外出や県をまたいでの人の移動自粛が緩和され,通常の生活が戻ってきたときには,全国を旅しながらのカード収集に皆様もぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
旅行した先々の「旅の思い出」として,マンホールカードをよろしくお願いいたします。
※マンホールサミット所沢の詳細につきましては,以下のHPをご参照ください。
(http://www.gk-p.jp/activity/manhole-summit/)
【出典】
土木施工単価2022年秋号

最終更新日:2023-03-06
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