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はじめに

BIM/CIMとは

BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)とは、建設事業で取り扱う情報をデジタル化することにより、調査・測量・設計・施工・維持管理などの建設事業の各段階に携わる受発注者のデータ活用・共有を容易にし、建設事業全体における一連の建設生産・管理システムの効率化を図ることである。
情報共有の手段として、3次元モデル(3次元形状+属性情報)、点群データ、2次元図面、GISデータなどの各種のデータを使用する(図-1)。
 
国土交通省では、受発注者の生産性向上を目的に、直轄土木業務・工事にBIM/ CIMを適用し、取り組むこととしている。
本稿では、これまでのBIM/CIMの実施 状況、国土交通省が推進しているインフラ分野のDX・i-Construction2.0、およびこれらの実現に向けた最近のBIM/CIMの取り組みについて紹介する。

図-1 BIM/CIMで使用する主なデータ
図-1 BIM/CIMで使用する主なデータ

 
 

BIM/CIMの実施状況

これまでの実施状況

国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度からBIM/CIMの試行を進め、段階的にBIM/ CIM適用の対象を拡大してきた。
また2018年度には、i-Constructionモデル事務所を設置して、各地方整備局などのうちのリーディング事務所として先導的なBIM/CIMなどの取り組みを実施している(図-2)。

図-2 i-Constructionモデル事務所の取り組み
図-2 i-Constructionモデル事務所の取り組み

 

2023年度からのBIM/CIM原則適用

国土交通省では、2023年度から、原則として全ての直轄土木工事・業務において、BIM/CIMを適用している。
(1)原則適用では活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用と、(2)DS(Data-Sharing)の実施にそれぞれ取り組むこととしている。
 
(1) 活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用
業務・工事ごとに発注者が3次元モデルの活用内容を明確にした上で、受注者が3次元モデルを作成し、受発注者で活用する。
活用内容は「義務項目」「推奨項目」に分けて設定している。
 
義務項目については、出来上がり全体イメージの確認など、視覚化による効果を中心に未経験者でも取り組み可能なものとして内容を設定しており、全ての詳細設計で義務項目を活用することとしている。
また工事についても、過年度の詳細設計業務で作成された3次元モデルがあれば、施工ステップの確認、関係者の理解促進など、義務項目を活用することとしている(表-1、図-3)。

表-1 3次元モデルの活用 義務項目
表-1 3次元モデルの活用 義務項目
図-3 義務項目の例(出来あがり全体イメージの確認)
図-3 義務項目の例(出来あがり全体イメージの確認)

 
推奨項目については、3次元モデルによる解析などの高度な内容を含むものであり、業務・工事の特性に応じて活用することとしている(表-2、図-4)。
 
ただし、これらに限ることなく、生産性向上に資すると考えられるその他の活用内容についても、積極的に検討し実施に努めることとしている。
また、3次元モデルの作成に当たっては、活用内容を満たす必要十分な程度の範囲・精度で作成するものとし、活用内容以外の箇所の作成を受注者に求めないものとしている。

表-2 3次元モデルの活用 推奨項目の例
表-2 3次元モデルの活用 推奨項目の例
図-4 推奨項目の例(施工数量算出)
図-4 推奨項目の例(施工数量算出)

 
(2)DS(Data-Sharing)の実施
業務・工事の契約後速やかに、発注者が受注者に設計図書の作成の基となった情報を説明し、受注者が希望する参考資料(電子データを含む)を貸与する。
最新のデータを漏れなく後段階の受注者に確実に共有することは発注者の責務であり、貸与資料ダウンロードシステムによるオンラインでの成果品の貸与など、円滑にDSが実施できる環境を整えている。
 
 

インフラ分野のDX、i-Construction2.0とBIM/CIM

インフラ分野のDX(Digital-Transformation)

国土交通省では、インフラ分野においてデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、文化・風土や働き方を変革することを目的として、インフラ分野のDXの取り組みを進めている。
インフラ分野のDXは、「インフラの作り方」「インフラの使い方」「データの活かし方」の変革を分野網羅的・組織横断的に進めることとしている。
これまで取り組みを進めてきたi-Construction、および今後取り組みを進めていくi-Construction2.0は、インフラ分野のDXで示す目指すべき将来像のうち、建設現場における取り組みであり、「インフラの作り方」の変革に位置付けられるものである。
 

i-Constructionからi-Construction 2.0へ

国土交通省では、2016年度から、建設現場の生産性向上の取り組みとして、ICT施工や設計・施工におけるデジタル技術の積極的な活用などの、i-Constructionを進めてきた。
 
一方で、今後さらなる生産年齢人口の減少が予測されており、かつ災害の激甚化・頻発化、社会資本の老朽化など、社会資本整備を取り巻く状況は厳しさを増している。
 
このような背景を踏まえて、2024年度から、これまで進めてきたi-Constructionの取り組みを深化し、さらなる抜本的な建設現場の省人化対策を「i-Construction 2.0」として、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」に取り組むことで、建設現場のオートメーション化の実現を目指すこととなった(図-5)。

図-5 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化
図-5 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化

 
 

データ連携のオートメーション化に向けた取り組みについて

調査・測量、設計、施工、維持管理といった建設生産プロセス全体をデジタル化、3次元化し、必要な情報を必要な時に加工できる形式で容易に取得できる環境を構築するBIM/CIMにより「データ連携のオートメーション化」を推進する。
これにより同じデータを繰り返し手入力することをなくし、不要な調査や問い合わせ、復元作業を削減するとともに、資料を探す手間や待ち時間の削減を進める。
 
建設生産プロセスにおいて作成・取得するデータは多量にある一方、現時点ではデータを十分に活用できていないことから、各段階で必要な情報を整理した上で、関係者間で容易に共有できるよう、情報共有基盤を構築し、円滑なデータ連携を進める。
 
データの活用に当たっては、設計データを施工データとして直接活用することや、デジタルツインの構築による施工計画の効率化など、現場作業に関わる部分の効率化に加え、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールなどの活用により、紙での書類は作成せず、データを可視化し、分析や判断ができるよう真の意味でのペーパーレス化(ASP(情報共有システム)の拡充といった現場データの活用による書類削減)など、バックオフィスの効率化の両面から進めていく。
 
データ連携のオートメーション化に向けて、国土交通省では現在次のようなBIM/ CIMの取り組みを進めている。
 

3次元モデルと2次元図面の整合

2023年度からBIM/CIM原則適用を開始し、3次元モデルの活用を本格的に開始しているものの、3次元モデルと2次元図面の整合性を確認していないことから、3次元モデルは参考資料として活用している。
 
将来的な3次元モデルの工事契約図書としての活用に向け、詳細設計業務において、主構造について3次元モデルと整合した2次元図面を作成する試行に着手している(図-6)。

図-6 3次元モデルと2次元図面の整合のイメージ
図-6 3次元モデルと2次元図面の整合のイメージ

 

属性情報の積算への活用(BIM/CIM積算)

今後、設計の効率化や施工の自動化を目指す上ではデータのさらなる活用が必要不可欠であるが、各段階において、どのようなデータが必要か明確に決まっていないため、データを効果的に活用できていない。
 
データのさらなる活用に向け、まずは必要なデータが明確になっている積算において、データの活用を進めることとしている。
詳細設計業務において、属性情報(3次元モデルから自動的に算出される数量)を積算に活用するBIM/CIM積算の試行にも着手している(図-7)。

図-7 RC橋脚のコンクリート躯体に積算に必要な属性情報を設定した例
図-7 RC橋脚のコンクリート躯体に積算に必要な属性情報を設定した例

 

設計データの施工での活用

設計データをICT建設機械や工場製作など、施工段階で活用する取り組みも進めている。
 
ICT建設機械での設計データ活用については、詳細設計業務において、ICT建設機械に搭載するデータの作成に必要となる、土工の中心線形と横断形状データを成果物として納品することとしている。
鋼橋の工場製作での設計データ活用については、鋼橋の設計は自動設計システムを活用して行われている一方、工場制作の際に使う自動原寸システムには図面から手入力しており、設計・施工間のデータ連携がスムーズに行われておらず非効率である。
設計データを工場制作に直接活用するため、2023年度から、中間ファイルを活用したデータ連携の試行工事を実施している(図-8)。
 
試行の結果、工場製作データの作成において1割弱の作業時間の短縮効果が確認されたが、いくつかの課題も判明し、それらに対応することでさらに3割程度以上の作業時間短縮が可能であるとの見通しが示されている(図-9)。
今後は、さらに試行を重ねて課題の対応に取り組むとともに、データ連携を推進するために、鋼橋の詳細設計業務において、自動設計のオリジナルデータ、中間ファイルなどを成果物として納品することとしている。

図-8 鋼橋のデータ連携の流れ
図-8 鋼橋のデータ連携の流れ
図-9 工場製作データ作成時間の比較
図-9 工場製作データ作成時間の比較

 

デジタルデータを活用した監督・検査などの実施

デジタル技術の進展は日進月歩で進んでおり、施工管理、監督・検査などにおいても、3次元モデルの活用やARなど、 i-Construction 2.0の柱のひとつである「データ連携のオートメーション化(ペーパーレス化)」につながるさまざまな技術が導入されている(図-10)。
 
このような新技術を積極的に活用し、監督・検査業務の効率化を進めるため、現行の基準・手法とは異なるが、デジタル技術を活用して簡素化・効率化などを図ることができる新たな施工管理、監督・検査の手法の活用について、施工者から提案があった場合は、従来方法との比較により監督・検査などに支障が生じないことを確認し、新たな手法の活用を可能とするよう、直轄土木工事の監督職員および業界団体向けに周知を行っている。

図-10 デジタルデータを活用した出来形検査の例(ARの活用)
図-10 デジタルデータを活用した出来形検査の例(ARの活用)

 

好事例の横展開

好事例の横展開を目的として、BIM/ CIMにより生産性が向上した事例を「BIM/CIM事例集」としてまとめ、BIM/ CIMポータルサイトに掲載している(図-11、12)。
 
事例の概要、BIM/CIMの具体的な方法と課題、業務・工事の概要について整理しており、キーワード検索などにより、探したい情報を検索できる。
掲載事例については今後拡充予定である。

図-11 BIM/CIM事例集 トップページ
図-11 BIM/CIM事例集 トップページ
図-12 BIM/CIM事例集 事例の閲覧
図-12 BIM/CIM事例集 事例の閲覧

 
 

おわりに

BIM/CIMは、i-Construction 2.0で掲げる「データ連携のオートメーション化」の中核となるものである。
今後は、BIM/CIMのいろいろな取り組みを進め、各段階間でのデータの連携・活用を図ることで、建設生産プロセスにおける各種作業の自動化、効率化を目指していきたい。
 
 
〈参考〉
・国土交通省BIM/CIM関連
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000037.html
・国土交通省 インフラ分野のDX
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000073.html
・i-Construction 2.0
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf
・BIM/CIM事例集
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimusecase.html
 
 
 

国土交通省 大臣官房参事官(イノベーション)グループ 課長補佐
髙橋 典晃

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
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最終更新日:2025-06-23

 

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