- 2025-06-30
- BIM/CIM&i-Construction | 建設ITガイド
はじめに
東北地方は少子高齢化が進む中、近年各地で甚大な自然災害が相次ぎ、災害時の迅速な対応や国土強靱化対策の加速が急務となっています。
また、豪雪・過疎地域を多く抱えているため、インフラの維持管理や除排雪体制などにおける担い手不足が東北6県に共通する課題となっており、継続的・安定的に企業を維持していくためには、生産性の向上は避けては通れない喫緊の課題です。
これらの課題解決に向けて、東北地方整備局では、2016年度から「働き方改革の推進」「生産性向上の推進」「担い手の育成・確保」の三本柱からなる「東北未来『働き方・人づくり改革プロジェクト』」を官民連携で取り組んでいます(図-1)。
DX推進の取り組み
(1) インフラDXの推進体制
2021年度に、整備局全体が一体となって取り組む「東北地方整備局インフラDX推進本部」を設置しました。
現状の働き方における3つの課題(既成概念・場所・ペーパー)に着目し、課題解決に向けて「離れた空間をデジタルで共有」、「誰でもすぐに現場で活躍」、「オフィスに現場を再現」、「ワンチームでDXを推進」の4つの挑戦テーマを設定して、データとデジタル技術を活用した社会資本整備や公共サービスの提供、除雪作業の効率化に向けた技術開発、人材育成や担い手確保などさまざまな取り組みにチャレンジしているところです。
(2) BIM/CIM原則適用
BIM/CIMの取り組みは2012年度からスタートし、橋梁や水門、トンネルなどを中心に積極的に進め、2023年度から原則適用となり、整備局独自の取り組みとして、詳細設計や工事に加えて、大規模構造物の予備設計も対象としています。
受発注者双方の経験者も増え、3次元データの蓄積も進んでいます。
好事例を通じて経験者を増やし「特別なもの」から「普段使いのツール」とし、さらに「使いこなす」ことで3次元データ活用を図っていきます。
(3) 3次元情報活用モデル事業
i-Constructionモデル事務所である鳴瀬川総合開発工事事務所では、3次元情報活用モデル事業「鳴瀬川総合開発事業(宮城県加美郡加美町)」において、大規模かつ長期にわたるダム事業の特性を踏まえ、調査・設計段階からBIM/CIMモデルを活用した事業監理に取り組んでいます。
具体的には、GIS情報共有基盤ベースの流域モデル(流域全体の地形・地質モデル)上に地すべりモデル、原石山・残土受入地モデル、構造物モデルなどのBIM/CIMモデルを統合し、情報共有プラットフォームを構築して、2022年度から事業監理プラットフォームを運用しています。
現在は、事業に関する各種資料や工事記録、現場写真などの情報を蓄積・共有を図っている段階です(図-2)。
また、整備局独自の取り組みとして「3次元情報活用モデル事業」を管内20事務所・29事業で行っており、新技術導入を加速化させるとともに、3次元データの “普段使い”の実践を図っているところです(図-3)。
(4) 東北インフラDX人材育成センター
発注者(自治体含む)および受注者に対する3次元データ・デジタル技術の知識習得(研修・実習など)を目的に2022年度末に「東北インフラDX人材育成センター」を開所しました。
DX人材育成センターは「人材育成機能」、「技術交流機能」、「情報発信機能」の3つの機能を兼ね備え、特に「人材育成機能」としては、3次元設計データトレーニング施設、除雪グレーダ・バックホウのシミュレーターブースなどを配置し、受発注者双方の集中的な技術向上および担い手確保に向けた体験などの取り組みを実施しています(図-4)。
2023年度の1年間で、研修やセミナー、体験会などで総勢約1,270名の利用がありました。
今後も人材育成センターを活用した研修・セミナーの高度化を図り整備局職員や自治体職員、民間企業の人材育成にもこれまで以上に取り組んでいきます。
(5) 官民連携した取り組み
整備局や東北6県、仙台市、建設業者団体、学識者で構成する「東北みらいDX・ i-Construction連絡調整会議」を2016年度から開催しています。
具体的な取り組みとして、地元企業における生産性向上の取り組みを支援するため「ICTサポーター制度」を創設し、2年間で約600件の活動実績がありました。
工事情報共有システム(ASP)や遠隔臨場、BIM/CIM・ICT建設機械施工用3次元データ作成、3次元計測技術などに関する技術支援や相談が多い状況となっています。
また、ICT施工導入の投資メリットを地元中小企業の企業経営者クラスの方に直接理解していただき、ICT施工活用の普及・拡大につなげることを目的に「地元経営者向けセミナー」を開催しています(写真-1)。
さらに、次世代を担う若手技術者の育 成に向けて、「i-Construction新技術体験学習会」を開催しており、2023年度は東北6県の中・高・大学生、延べ約500人を対象に実施し、3次元設計データ、VR・MR技術、遠隔臨場など建設業の最新技術に触れてもらっています(写真-2)。
今後も、官民連携した取り組みを継続・拡大させ、地域建設業のイメージアップと担い手確保へつなげていければと思います。
おわりに
インフラ分野のDXを推進し、受発注者双方の働き方を変革してデジタル技術を普段使いし、インフラまわりをスマートにしていくことで、いかなるときも地域住民の生活、社会活動、経済活動を支えるための環境を、インフラを通じて継続的に社会へ提供していくことが重要だと考えています。
東北地方整備局としては、今後も、生産性向上や働き方改革、担い手の育成・確保など、官民連携をさらに強化・充実させながら東北地域のインフラDXの取り組みを進めてまいります。
【出典】
建設ITガイド2025

最終更新日:2025-06-30
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