ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 建築BIM > 脱炭素化に向けた積算データの活用について-BIM対応建築積算システム「ΗΕΛΙΟΣ」の新たな挑戦-

はじめに

株式会社日積サーベイでは、BIM対応建築積算システム「ΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)」を開発・提供しており、2024年12月には、最新版「ΗΕΛΙΟΣ 2025」をリリースした。
この「ΗΕΛΙΟΣ 2025」では、「高速化・省力化・新機能」を3本柱として全25項目の機能追加・機能改良を実装している。
主に「高速化」では、「PDFデータ取り込みの高速化」、「起動時の高速化」、「Excel出力時の高速化」の3つを改良している。
次に「省力化」では、「自動計上項目の追加」をはじめ、操作性の向上を目的とした「初期値設定機能」、「ショートカットキーの追加」、「範囲配置機能の追加」を実装している。
最後に「新機能」として、ペーパーレス化に向けた取り組みの一つとして「PenPlus」との連携機能(オプション機能)、今回の主題となる「One Click LCA」との連携機能を実装している。
ここで「PenPlus」とは、株式会社プラスソフトが開発・販売しているソフトウエアである。
今回の連携は、このソフトウエア上で、PDFデータの計測を行い、計測したデータをΗΕΛΙΟΣへ取り込む機能になる。
「PenPlus」の主な特長として、動きが軽く、操作性に優れている点、複数ページ含まれているPDFファイルに対して計測作業が可能である点である。
次に、「One Click LCA」とは、住友林業株式会社が2021年にフィンランドのOne Click LCA社と日本市場における単独販売代理店契約を締結した、建物が一生涯に排出するCO2などを見える化するソフトウエアである。
今回、住友林業株式会社が提供する「One Click LCA日本版」との連携を実現している。
 
 

「One Click LCA」との連携に至った背景

今回の連携に至った主な背景として、CO2排出量の算定において、内訳書を基に資材数量を把握していることから積算業務との親和性が高い点、CO2排出量の算定を今後、積算技術者が担うことが想定される点である。
また、国土交通省が2022年12月に「ゼロカーボンビル推進会議」を設置、2023年5月の報告書にて、「2030年エンボディドカーボン算定義務化」について言及したこともあり、建設時CO2排出量の算定に向けた取り組みも今後増えてくることが想定される。
 
 

エンボディドカーボン算定とは?

現在、世界のCO2の約37%が建設セクターから排出されている。
建設セクターの内訳として、約70%が居住時・使用時に発生する(オペレーショナルカーボン)、約30%が一連の建設プロセスで発生する(エンボディドカーボン)になる(図-1)。
 
オペレーショナルカーボンについては、ZEHやZEBにより削減が進んでいるが、エンボディドカーボンの削減については今後重視される傾向にある。
そのため、エンボディドカーボンの算定が必要になる(図-2)。

図-1 出典:住友林業株式会社提供資料
図-1
出典:住友林業株式会社提供資料
図-2 出典:住友林業株式会社提供資料
図-2
出典:住友林業株式会社提供資料

 
 

「One Click LCA」の特長

「One Click LCA」は世界170カ国以上で導入され、11カ国語に対応しているソフトウエアである。
主な特長として、「CO2排出量の精緻な算定を実現」、「国際認証との高い適合性」、「効率的なデータ算定が可能」の3点である。
「CO2排出量の精緻な算定を実現」では、ISO準拠の汎用データ、環境認証ラベルEPD、プライベートデータの利用が可能であり、輸送・施工など実データに基づき算定し、さまざまな企業努力を結果に反映することが可能である。
「国際認証との高い適合性」では、国際規格ISOや70以上の世界のグリーンビルディング認証に適合している。
「効率的なデータ算定が可能」では、資材データはBIMをはじめ、Excelから取り込むことが可能であり、ライフステージごとのCO2を自動計算で効率よく算定できる。
 
 

「One Click LCA連携」の全体図

「One Click LCA連携」の流れとしては、まず、住友林業株式会社が提供している原単位コード一覧表をΗΕΛΙΟΣへ取り込む。
 
次に、従来どおりΗΕΛΙΟΣで数量算出を行い、ΗΕΛΙΟΣの内訳書内で原単位コードの仕分け作業、単位換算作業を行う。
最後に「One Click LCA取込用フォーマット」に出力を行い、「One Click LCA」に取り込むことでCO2を見える化することが可能になる(図-3)。

図-3
図-3

 
 

「One Click LCA連携」機能の特長

今回の機能の特長として、「原単位コードの仕分け作業の省力化」、「単位換算作業の省力化」、「出力除外設定機能」の3点になる。
「原単位コードの仕分け作業の省力化」では、原単位コードを検索する機能をはじめ(図-4)、科目に応じた可能性のある原単位コードを初期表示する機能を実装している。

図-4
図-4

また、原単位コードとして「コンクリート」を選択する場合において、摘要表現からコンクリート強度を取得し、可能性の高い原単位コードを初期表示する機能も併せて実装している(図-5)。

図-5
図-5

次に「単位換算作業の省力化」では、明細上の単位「ton」、原単位コードの単位「kg 」の場合に換算値を自動入力する機能、ΗΕΛΙΟΣで数量算出を行っている場合において、建具本体のW寸法、H寸法を換算値として自動入力する機能を実装している(図-6)。

図-6
図-6

最後に「出力除外設定機能」では、「One Click LCA取込用フォーマット」へ出力したくない項目(CO2算定除外項目)について、科目単位、明細項目単位で設定できる機能も実装している。
 
 

CO2算定における今後の展開

「One Click LCA連携」においては、「原単位コードの仕分け作業」、「単位換算作業」の省力化につながる機能開発を進める予定である。
「原単位コードの自動入力機能」を最終目標として、今後も継続して取り組みたいと考えている。
また、別ツール製品との連携も状況に応じて前向きに検討していきたい。
「One Click LCA」でのCO2算定業務の際には、ぜひこの「One Click LCA連携」機能をご利用いただきたい。
 
 
会社概要
会社名:株式会社日積サーベイ
所在地:大阪市中央区大手前1-4-12大阪天満橋ビル8F
創業:1964年(昭和39年)10月
URL:https://www.nisseki-survey.co.jp/
資本金:2,000万円
従業員数:47名(2024年4月現在)
主な事業内容:建築積算、コスト算出、コンピューターシステムの開発
 
 
 

株式会社日積サーベイ システム開発部
田川 彰

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025

最終更新日:2025-06-16

 

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