- 2025-06-09
- 積算資料
1.はじめに
阪神高速道路のネットワークは、総延長258.1kmに及び、関西の大動脈として、1日平均70万台のお客さまにご利用いただいている。
しかし、大阪都心部、大阪~神戸間では、都心部に向かう交通と、都心部を目的地としない通過交通が混在するため、慢性的な渋滞が発生しており、物流や観光などの経済活動が大きく阻害されている。
また、4月13日より開催される大阪・関西万博のインパクトを最大限に活用し、ミッシングリンクの解消に向けた早期の道路ネットワーク網整備が期待されている。
現在の建設中路線は、大阪湾岸道路を構成する「大阪湾岸道路西伸部」、大阪都市再生環状道路を構成する「淀川左岸線(2期)」および「淀川左岸線延伸部」、名神高速道路と阪神高速3号神戸線および5号湾岸線を連絡する「名神湾岸連絡線」の4路線であり、総延長30.3kmで事業を推進しているところである(図- 1)。
本稿では、阪神高速道路における建設事業の概要を説明するものとする。
なお、「大阪湾岸道路」および「大阪都市再生環状道路」の説明は、以下のとおりである。
(1)大阪湾岸道路
神戸淡路鳴門自動車道(垂水JCT)から関西国際空港(りんくうJCT)までを結ぶ約80kmの自動車専用道路である。
大阪湾沿岸地域の幹線道路の交通負荷を軽減し、都市環境の改善を図るとともに、大阪湾沿岸諸都市を有機的に連絡して、都市の活力を向上させることにつながる道路である。
(2)大阪都市再生環状道路
6号大和川線、4号湾岸線、2号淀川左岸線および近畿自動車道などから構成する新たな環状道路であり、大阪都心部の慢性的な渋滞緩和や沿道環境の改善とともに、新たな拠点エリアを誘引する都市活性につながる道路である。
2.建設中路線
(1)大阪湾岸道路西伸部(六甲アイランド北~駒栄)
①路線概要
本路線は、前述の大阪湾岸道路の一部を構成し、開通済みの5号湾岸線六甲アイランド北ランプからさらに西に延伸し、ポートアイランド、和田岬を橋梁で結び駒栄地区にて既設の31号神戸山手線へ接続する延長14.5kmの路線である(図- 2)。
当該路線は、2016年度に公共事業として事業化し、2017年度に公共事業と有料道路事業との合併施行方式を導入、2018年度に港湾事業の参画を決定している。
また、本路線は、六甲アイランド~ポートアイランド間、ポートアイランド~和田岬間で、国際航路を跨ぐ形で計画されており、当該地の長大橋の架設においてさまざまな課題等へ対応していくため、有識者委員会を設立し検討を実施している。
同委員会では基礎構造をはじめ、上部構造に対する耐震、耐風、景観等の観点から有識者の助言を踏まえた詳細検討を行っており、2019年12月には「災害時の道路機能確保」、「景観性」および「維持管理性」などの観点から長大橋の橋梁形式の選定結果について公表がなされた。
さらに、新港・灘浜航路部については、これまでの審議を踏まえ、橋長2,739mの7径間連続4主塔鋼斜張橋として、2023年8月に基本構造の決定について公表がなされた。
2023年11月には新港・灘浜航路工区鋼斜張橋工事を東西工区に分割し、技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)で公示を実施し、2024年12月に契約締結を行った。
詳細設計契約後は、耐風・耐震および施工計画を踏まえた詳細設計を実施予定である。
また、他の区間についても引き続き検討を進め、事業を推進していく。
②整備効果等
大阪湾岸道路西伸部の整備により、国際コンテナ戦略港湾である阪神港や関西国際空港などの物流拠点への移動時間が短縮され、物流の効率化が図られるほか、交通事故等で3号神戸線が通行不能となった場合や、通行規制が行われた場合には、一般道への交通集中を緩和する代替路として機能する。
また、利便性が向上し、沿線のポートアイランドに立地する神戸医療産業都市(国家戦略特区)への、さらなる企業進出等による地域経済活性化が期待される(図- 3)。
③進捗状況
現在、当社では、六甲アイランド北ランプから六甲ライナーを越える区間(六甲アイランド東工区)の鋼桁および鋼製橋脚工事、下部工事、並びに31号神戸山手線の接続部付近(駒栄工区)の開削トンネル工事を契約締結している。
なお、六甲アイランド東工区については、現在鋼桁および鋼製橋脚工事において詳細設計および鋼製橋脚工事を、下部工事において基礎工を実施中(写真- 1)で、駒栄工区の開削トンネル工事は函体の構築等(写真- 2)を実施し、工事の進捗を図っている。
(2)名神湾岸連絡線
①路線概要
名神湾岸連絡線は、名神高速道路と阪神高速3号神戸線(大阪方面)および5号湾岸線を連絡する延長2.7kmの道路である。
2021年に公共事業として事業化し、2024年公共事業と有料道路事業の合併施行方式を導入した後、共同事業者である国、西日本高速道路株式会社と事業を進めている。
全線にわたって高架構造が採用されており、西宮港の渡航部においては航路を跨ぐ計画となっている(図- 4)。
②整備効果等
名神湾岸連絡線は、大阪湾岸道路西伸部と一体となり、3号神戸線の渋滞の緩和に寄与するとともに、沿道環境の改善や代替路としての機能が期待されている。
③進捗状況
現在、当社では渡航部における構造検討、3号神戸線や5号湾岸線への交通影響検討等を実施している。
また国で行っている西宮浜における予備設計に参加し、5号湾岸線との接続方法等について共同で検討を行っているところである。
(3)淀川左岸線(2期)、淀川左岸線延伸部
①路線概要
淀川左岸線(2期)および淀川左岸線延伸部(以下、両路線)は、前述の「大阪都市再生環状道路」の北側の一部を構成する道路である。
両路線はトンネル構造を主体に計画している(図- 5)。
淀川左岸線(2期)は開通済みである2号淀川左岸線(淀川左岸線(1期))および3号神戸線(神戸方面)と海老江JCTで接続し、国道423号(新御堂筋)沿いに整備する豊崎IC(仮称)までの4.4kmを結ぶ路線であり、うち4.3kmを大阪市と当社の合併施行方式により事業を実施している。
合併施行区間の本体工事は大阪市施行となっており、海老江地区および豊崎地区の工事(開削トンネル、橋梁、換気所)を当社が受託している。
淀川左岸線延伸部は、前述の淀川左岸線(2期)から門真JCTまでの8.7kmの路線であり、第二京阪道路および近畿自動車道に接続する。
2017年に事業化し、共同事業者である国、西日本高速道路株式会社と事業を進めている。
当該路線は、開削トンネル工法およびシールドトンネル工法により大部分をトンネル構造として構築し、一部区間については河川堤防と一体構造となった計画と
している。
当該路線の設計・施工にあたっては、道路構造物と堤防を一体構造とした場合の安全性やモニタリング手法、近接シールドの併設影響など、建設に際しさまざまな技術的課題を解決する必要があるため、有識者委員会を設置し技術的検討を行いながら事業を進めている。
②整備効果等
両路線の整備によって第二京阪道路と接続することで、大阪ベイエリア(阪神港・夢洲・咲洲地区)と名神高速道路などの主要な高速道路の相互のアクセス性が向上する。
これにより、物流の効率化や周辺地域との連絡強化による大阪・関西の経済活性化、競争力強化、災害時のリダンダンシー向上といった効果が期待できる(図- 6)。
③万博に向けたアクセスルート整備
2022年10月に策定された大阪・関西万博来場者輸送具体方針(アクションプラン)で、来場者輸送における公共交通として想定する3つの主要ルートの一つとして淀川左岸線(2期)が位置づけられている。
新大阪駅や大阪駅から大阪・関西万博会場となる舞洲へのシャトルバスのアクセスルートとして活用するため、大阪市とともにハード面およびソフト面の準備を進めている。
④進捗状況
淀川左岸線(2期)のうち、当社が受託している海老江地区では、下水処理場内にて橋梁工事を実施しており、一部区間を除き橋梁本体工を完了したところである(写真- 3)。
また、3号神戸線以東では開削トンネル工事も実施しており、一部区間では函体の頂版まで打設を完了している(写真- 4)。
残りの区間については側壁まで構築した状態で大阪・関西万博を迎え、万博終了後に工事を再開する予定である。
豊崎地区では、新御堂筋から分岐し淀川左岸線(2期)に流入する入路の施工を行っており、橋梁部分の構築を完了したほか、大阪・関西万博開催時の整備形態に対応した盛土・土工部の構築についても完了している(写真- 5)。
また、いずれの地区とも大阪・関西万博に向けたアクセスルートとして活用するための舗装設置を完了している。
淀川左岸線延伸部については、地中障害物の撤去工事を進めているとともに、トンネルおよびシールド立坑などの設計検討、堤防・道路一体構造の安全性などの検討を実施している。
また、淀川堤防と道路構造物との一体構造形状について、河川堤防としての安全性の照査方法、施工方法、維持管理手法およびモニタリング等に関する技術検討を行っているところである。
3.結びに
事業中の建設路線について、早期完成を目指し、共同事業者や工事に関係する方々と協力して、事業推進に向けて引き続き取り組んでいく。
【出典】
積算資料2025年3月号

最終更新日:2025-06-09
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