令和6年度決算検査報告における公共工事関係の主な指摘事例
会計検査院は、日本国憲法及び会計検査院法に基づき、国や国が出資している独立行政法人等の法人、国が補助金等を交付している地方公共団体等の会計を検査しています。
このたび、その検査の結果を令和6年度決算検査報告として取りまとめて、令和7年11月5日に内閣に送付しました。
令和6年度決算検査報告に掲記された事項等の総件数は319件であり、このうち指摘事項は307件、指摘金額は計540億8151万円となっています。
指摘事項には「不当事項」、「意見表示・処置要求事項」及び「処置済事項」があり、「不当事項」は、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を、「意見表示・処置要求事項」は、会計検査院法第34 条又は第36 条の規定により関係大臣等に対して会計経理や制度、行政等について意見を表示し又は処置を要求した事項を、「処置済事項」は、検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項を、それぞれ意味します。
令和7年次(6年10月から7年9月まで)の検査に先立ち6年9月に策定した「令和7年次会計検査の基本方針」では、重点的に検査を行う施策の分野として「公共事業」などを挙げるとともに、これら以外の分野等の施策についても国民の関心等に留意しつつ、適時適切に検査を行うなどとしていました。
そして、検査の結果、検査報告に掲記された事項には、国民生活の安全性の確保に関するものや、予算の適正な執行、会計経理の適正な処理等に関するものなどが含まれています。
指摘事項には、府省等別、事項等別といった様々な分類があり、公共工事関係の指摘として明確に区分ができるわけではありませんが、本稿 では、筆者が選定した公共工事関係の主な指摘事例について簡単に御紹介いたします。
なお、本稿中の記述は簡略化しているため、詳細は会計検査院ホームページ(https://www.jbaudit.go.jp)に掲載している令和6年度決算検査報告本文を御覧ください。
本文には検査報告事例の理解に資する参考図等も掲載しています。
また、本稿中の記述内容については筆者の個人的見解等に基づくものであり、会計検査院の公式見解を示すものではないことを御承知おきください。
なお、各案件の末尾に記載している指摘金額について、国庫補助事業に係る事案の指摘金額は国庫補助金等ベースであり、一つの事案の中に複数件の指摘が含まれている場合は、それらの指摘金額の合計額を示しています。
1 設計・施工に関するもの
これらは、構造物に求められる所要の安全度 が確保されていない状態となっていた事態や、基準等を満たした適切な施工を行っていなかったなどの事態です。
国土交通省
【処置済事項】
- 添架水管橋の耐震性について
添架水管橋について、耐震性が確保されていないおそれがある橋りょうに上下水道管を添架して添架水管橋を築造していた事態、及び耐震性が確保されていないおそれがある添架水管橋に係る応急対策を策定していなかった事態が見受けられた。
[指摘金額:7562万円](令和6年度決 算検査報告334ページ)
【不当事項】
- 橋りょうの橋座部の設計が不適切(社会資本整備総合交付金(広域連携)事業等)
橋りょうの橋座部の設計に当たり、示方書によれば、アンカーバーを取り付ける位置と補強鉄筋の量について、鉄筋耐力が橋座部の耐力の5割程度以下となるように設定することとされているのに、鉄筋耐力は、橋座部の耐力の7割超となっていた。
そこで、改めて、コンクリート耐力を605kNとしたまま、鉄筋耐力が橋座部の耐力の5 割となるように鉄筋耐力をコンクリート耐力と同じ605kNと設定して算定すると、橋座部の耐力は水平力を大幅に下回っていて、設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、橋台の橋座部は設計が適切でなかったため、橋台及びこれに架設されたPC桁等は、地震発生時において所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
[指摘金額:9118万円(2件)](同307ページ) - 橋りょうの横変位拘束構造の設計が不適切(社会資本整備総合交付金(広域連携)事業等)
橋りょうの設計に当たり、橋台の橋座部に、コーベルの構造となっている横変位拘束構造を橋台ごとに1個ずつ設置することとして設計し、これにより施工していた。
しかし、コーベルの構造となっている横変位拘束構造と支持部材との接合部に配置していた鉄筋の定着長は、必要定着長に比べて大幅に不足しており、引張主鉄筋の端部が支持部材と確実に定着していない状態になるなどしていた。
したがって、本件橋りょうの橋台に設置した横変位拘束構造は設計が適切でなかったため、橋台、鋼製箱桁等は、地震発生時において所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
[指摘金額:3億2258万円(2件)](同303ページ) - 擁壁の設計が不適切(防災・安全交付金(砂防)事業等)
ブロック積擁壁の設計に当たり、擁壁の前 面地盤が埋め戻される部分となり、洗掘等により取り除かれるおそれがあるのに、滑動に対する抵抗力として前面地盤の受働土圧を考慮して設計するなどしていた。
そこで、ブロック積擁壁について、現地の状況を踏まえて、指針等に基づき安定計算を行ったところ、滑動に対する安定についての安全率が許容値を大幅に下回るなどしていた。
したがって、本件ブロック積擁壁等は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっていた。
[指摘金額:4424万円(3件)](同298ページ) - 側壁護岸の設計が不適切(防災・安全交付金(砂防)事業)
側壁護岸の設計に当たって、せん断抵抗角が当初設計より大きいことなどから安全であるとして、当初設計で想定していた改良土ではなく建設発生土を使用して側壁護岸及びブロック積擁壁を施工するなどの設計変更を行い、これにより請負人に施工させていた。
そこで、側壁護岸について、建設発生土の土質試験結果に基づく土の設計諸定数を用いて算定した主働土圧を用いるなどして滑動及び転倒に対する安定性について照査したところ、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、側壁護岸等については、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっていた。
[指摘金額:682万円](同315ページ) - ボックスカルバートの設計が不適切(東日本大震災復興交付金(道路)事業)
ボックスカルバートの設計について、設計変更の際に、地盤改良の幅が本件カルバートの外幅程度となっていたのに、鉛直土圧係数の割増しが必要であるか確認していなかった。
そこで、鉛直土圧係数の割増しが必要であるか確認したところ、2つのブロックについて鉛直土圧係数の割増しが必要となっていた。
そして、指針等に基づき割増しを行った鉛直土圧係数により鉛直土圧を求めるなどして、両ブロックについて改めて応力計算等を行ったところ、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件カルバートのうち両ブロックは、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、両ブロック、当該両ブロック上部の盛土工等は、工事の目的を達していなかった。
[指摘金額:3083万円](同310ページ) - 落石対策工の設計が不適切(防災・安全交付金(道路)事業)
落石対策工の設計に当たり、設計コンサルタントから受領した成果品には、落石防護工と一体で行うこととされていた落石予防工として、落石エネルギーが50kJを超える浮石等3 個の除去について記載されていたのに、工事を発注するに当たり、設計図書に当該落石予防工を記載していなかった。
このため、現地に除去されずに残された浮石等3個のうち2個の落石エネルギーが、本件工事で設置した防護網の可能吸収エネルギーを大幅に上回っていることから、当該浮石等がそれぞれ落下した場合、防護網が落石エネルギーを吸収できない状態となっていた。
したがって、本件落石対策工は、設計が適切でなかったため、落石防護工と一体として行う必要がある落石予防工が行われていないことから、防護網が落石エネルギーを吸収できずに破壊され、道路等に被害が生ずるおそれがある状態となっていた。
[指摘金額:965万円](同313ページ) - 擁壁の施工が不適切(河川等災害復旧事業)擁壁の設計に当たり、指針に基づき設計図書を作成し、これにより施工することとしていた。
しかし、現地の状況を確認したところ、請負人が設計図書に記載された根入れ深さを十分に確認しないまま施工したことにより、降雨時に擁壁の後背地からの雨水等が流出することなどにより地盤の洗掘等が進行すると、擁壁が損傷するおそれがある状況となっていた。
したがって、本件擁壁は、施工が適切でなかったため、地盤の洗掘等に対応することができない状態となっていて、工事の目的を達していなかった。
[指摘金額:1747万円(2件)](同325ページ)
農林水産省
【不当事項】
- 護床工の設計が不適切(農業用施設災害復旧事業)
護床工の設計に当たり、設計コンサルタントから受領した成果品のうち、設計図面においては、ブロックを連結することが示されておらず、構造計算書の算出条件と整合していないのに、これを看過し、当該設計図面に基づき本件工事を請負人に発注するなどしていた。
そこで、本件護床工のブロックの必要重量について、復旧工法等に基づき、ブロックを連結しない条件により改めて算出したところ、本件工事で設置したブロックは必要重量を満たしていなかった。
したがって、本件護床工は、設計が適切でなかったため、河床が露出して洗掘が進行することにより堰体等に損傷が生ずるおそれがあり、本件堰本体工、護床工等は、工事の目的を達していなかった。
[指摘金額:2164万円](同238ページ) - 水路工の施工が不適切(水利施設等保全高度化事業)
水路の設計において、張出鉄筋及び底版鉄筋を重ね合わせる長さを、基準等に基づき所定の計算式により算出される長さとしていた。
しかし、水路の施工状況を確認したところ、水路の底版コンクリートの鉄筋を重ね合わせた長さは、基準等に基づき所定の計算式により算出した長さに比べて著しく不足しており、底版コンクリートは、土圧等の外力に対応できない状態となっていた。
したがって、本件水路工は、施工が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
[指摘金額:980万円](同242ページ)
2 契約に関するもの
これは、契約額の変更を適切に行わなかった などのため支払額が過大となっていた事態です。
国土交通省
【不当事項】
- 車道等における欠損部補修工の実施に当たり 、工事の実態を踏まえた単価を用いるなどして契約変更を行っていなかったため、工事費が過大(道路交通安全対策事業等)
欠損部補修工の実施に当たり、当初、欠損部補修工の一日当たりの施工量について、積算基準の区分のうち「1t以上2t未満」と想定して単価を算定するなどしていた。
しかし、実際の一日当たりの施工量については、当初想定していた区分の施工量とは異なっているものもあり、実際の一日当たりの施工量に対応する区分の単価を新たに算定して、契約変更を行う必要があったと認められた。
そこで、欠損部補修工の施工日ごとに、実際の一日当たりの施工量に対応する区分の単価を用いるなどして、欠損部補修費用を算出し、これに道路巡回工等の費用や諸経費等を加えた本件工事の工事費を算定すると、工事費が過大となっていた。
[指摘金額:1339万円](同291ページ)
3 積算に関するもの
これらは、工事や補償費の積算に当たり、誤った算定を行っていたため、工事価格等が過大となっていた事態です。
国土交通省
【不当事項】
- トイレ施設、ガス管等の移設に係る補償費の算定が不適切(社会資本整備総合交付金(効果促進)事業等)
トイレ施設、ガス管等の移設に係る補償費の算定に当たり、復成価格(既存公共施設等と同等の公共施設等を建設することにより機能回復を行う費用)から既存公共施設等の機能廃止の時までの財産価値の減耗分を控除する必要があったのに、減耗分を控除していなかった。
このため、補償費が過大に算定されていた。
[指摘金額:1985万円(2件)](同320ページ) - 非常用発電機に係る費用の積算が過大(訪日外国人旅行者周遊促進事業費補助金(看板商品事業)事業等)
機械設備工事の工事費の積算に当たり、非常用発電機に係る見積価格は、完成品を購入する場合の価格となっており、積算の対象となっている非常用発電機は、本件排水機場の設備としてそのまま組み込むことができる機器であったことから、工場管理費対象額の算定に当たり、純製作費から機器費用を除くべきであった。
このため、本件契約額は割高となっていた。
[指摘金額:355万円](同332ページ)
4 計画に関するもの
これらは、工事計画に当たり、検討が十分でなかったことなどから、工事の目的を達していなかったなどの事態です。
国土交通省
【不当事項】
- 落石防護柵の計画が不適切(社会資本整備総 合交付金(道路)事業)
落石対策を計画する際に、二つの工区において、浮石等計26 個を落石対策の対象となる落石群として設定していた。
しかし、設計図面で浮石等の落下想定範囲に防護柵が設置されているか確認したところ、二つの工区の26 個の浮石等のうち15 個の落下想定範囲の全部又は一部においては防護柵が設置されていなかった。
そして、防護柵無浮石等について落石シミュレーションを実施したところ、道路に到達するおそれがある結果となった。
以上の結果を踏まえると、浮石等の落下想定範囲の全てに防護柵を設置する必要があり、本件工事で設置した防護柵は不足していると認められ、浮石等15個が道路に到達するおそれがある状態となっていた。
したがって、本件工事で設置された防護柵は、道路に到達するおそれがある浮石等の全てを対象として計画されていなかったことから、落石群に対応するための設置延長が確保されていない状態となっていて、当該道路を通行する車両、歩行者等を落石の被害から防護するという工事の目的を達していなかった。
[指摘金額:4961万円](同330ページ)
農林水産省
【処置済事項】
- ため池廃止工事における下流域への影響の確認等について
ため池廃止工事の実施に当たり、新設水路の設計流量が既設水路の流下能力を上回っていて、雨水等を下流域に安全に排水することができず、新設水路と既設水路の接続部分において溢水して下流域に被害を及ぼすおそれがある事態が見受けられた。
[指摘金額:1億5683万円](同255ページ)
【不当事項】
- ため池廃止工事の計画が不適切(農業水路等長寿命化・防災減災事業)
ため池廃止工事の計画に当たり、上流側ため池の堤体を開削することにより、上流側ため池に流入する雨水を下流側ため池に流下させることとしていた。
しかし、上流側ため池の堤体の開削により、下流側ため池に流入する雨水がその分増加することとなる一方で、下流側ため池の排水管については雨水を十分に排水できるよう計画するなどしていなかった。
このため、本件工事の実施後において、下流側ため池に雨水が貯留するおそれがある状況となっていた。
そこで、基準等に基づき、排水管の流下能力が設計洪水流量を上回っているかについて確認したところ、排水管の流下能力は設計洪水流量を大幅に下回っており、ため池に流入する雨水を十分に排水することができない状況となっていた。
したがって、本件工事は、計画が適切でなかったため、下流側ため池に雨水が貯留して堤体の決壊等により下流域の人家等への浸水被害が生ずるおそれがあり、工事の目的を達していなかった。
[指摘金額:690万円](同246ページ)
5 事業運営に関するもの
これらは、ファームポンドの設計に当たり、耐震設計指針等で示されている直近の耐震設計の考え方が適用されず、耐震性能が確保されていないおそれがあるなどの事態です。
農林水産省
【処置済事項】
- ファームポンドの耐震設計に適用する設計指針等について
耐震設計指針で耐震設計の対象とされた構造部材について、ファームポンド指針では耐震設計を省略してよいことなどとされており、耐震設計指針等で示している耐震設計の考え方と整合していないのに、どちらを適用するかについて明確に示されていない状況となっていて、ファームポンドの設計に当たり、耐震設計指針等で示されている直近の耐震設計の考え方が適用されず、耐震設計指針等に基づく耐震性能が確保されていないおそれがある事態が見受けられた。
[背景金額:2億9514万円](同262ページ)
東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社
【意見表示・処置要求事項】
- 高速道路の道路区域外危険箇所における土砂災害対策の状況について
重複区域の道路区域外危険箇所に該当する箇所が道路区域外危険箇所として選定されていない事態、道路区域外危険箇所に該当するかを判定するのに資するLP測量等業務の成果品が道路区域外危険箇所の選定に活用されていない事態、及び道路区域外危険箇所調書が適切に作成されていないなどしていて、道路区域外危険箇所において土砂災害が発生する前に、管理者等との間で危険防止措置の実施に向けた調整が行われていない事態が見受けられた。
[背景金額:20億0709万円、9億4434万円、21億7505万円等](同418ページ)
本稿で御紹介する公共工事関係の主な指摘事例は以上ですが、会計検査院ホームページには、御紹介した事例を含む令和6年度決算検査報告の指摘事項等の全文を掲載しています。
過去の検査報告について検索できる「会計検査院検査報告データベース」もございますので、是非御活用ください。
今後とも、検査活動に対する皆様の御理解を深めていただくため、検査結果をできる限り分かりやすく公表するとともに、同様な事態の再発防止のため、様々な機会を捉えて検査結果について説明してまいりたいと考えております。
最後になりますが、国や地方公共団体、国の出資法人等の職員の皆様及び公共工事に携わる関係者の皆様には、これらの検査報告事例を今後の業務の参考にしていただければ幸いです。
【出典】
積算資料2026年2月号
最終更新日:2026-04-27
