自動化施工システムA4CSELによる建設現場のDX~生産性向上および汎用化に向けた取組み~
はじめに
国内建設業では、他産業と比べて低い生産性、高齢化による熟練技能者の減少、労働人口の減少による人手不足、無くならない労働災害等解決すべき重要課題を抱えている。
特に、労働人口減少の中において生産性の向上は喫緊の課題であり、2040年に2023年時点の建設GDPを維持するためには、生産性を29%向上させる必要との試算がある(図-1)。
図-1 労働人口と建設GDPのバランス
課題解決の手段として、ICTを活用した情報化施工による生産性向上、自動化された建設機械を用いる自動化施工による省人化、無人化施工による安全性向上が期待されている。
国土交通省はi-Construction2.0を策定し、インフラの整備・維持管理を将来にわたって持続的に実施していく目的で、2040年度までに建設現場のオートメーション化による3割以上の省人化を目指している。
鹿島では、これらの課題解決を目的として建設機械の自動運転を核とした自動化施工システム(A4CSELⓇ;クワッドアクセル)の開発と現場適用を推進している(図-2)。
本稿では、A4CSELの概要、実現場へ展開する中で得た生産性向上の実績、普及展開についての取組みを紹介し、今後の建設現場のDX推進に向けた展望について述べる。
1. A4CSELの概要
1-1. コンセプト:現場の工場化
A4CSELは、製造業が工場の自動化において理論化し実践したことにより大きな生産性向上を成し遂げたように建設現場を変革することで課題の解決を目指しており、「現場の工場化」を目指す姿としている(図-3)。
ここで「工場化」とは、業務や生産活動を標準化・システム化し、モニタリングや改善を可能にするように構造化されたプロセスの体系である。
A4CSELでは、自動化改造された建設機械(以下自動化機械)により実行が可能な定型化された作業を組み合わせることで、施工状況に応じた最適な施工計画および作業データを自動で生成する。
これを遠隔地から自動化機械に送り、自動化機械が定型化された作業を自動で行う。
このため必要最小限の人員で多数の機械を同時に稼働させることが可能であり、大幅な省人化が図ることができる。
また、標準化された作業を自動化機械が確実に行うため、バラツキが抑制され、再現性・精度の高い施工が可能となる。
さらに、自動化機械から得る作業データの分析により改善サイクルの構築が可能となり継続的な生産性の向上と、安定した施工品質が期待できる。
1-2. A4CSELを構成するシステム概要
A4CSELは、「施工計画システム」「施工管制システム」「自律自動運転システム」の三つのサブシステムで構成されている(図- 4)。
「施工計画システム」は、施工エリア情報や機械台数およびまき出し層厚等の作業条件を指定すると、詳細なタイムスケジュールを自動で作成する。
「施工管制システム」は、計画した各作業を作業順序や作業エリア等の制約条件に基づき作業データを生成して自律自動運転システムに指示するとともに、全ての機械の作業状態を監視し、計画との差や異常を判定する。
「自律自動運転システム」は、作業エリアの不陸等によって生じる施工誤差を自ら修正し、自律的に自動運転を行う。
これらのサブシステムはモジュール化されているため現場の特性に合わせた組み合わせが可能あり、可変性、拡張性が高く、多様な機械やハードウェア(重機・センサー類等)、ソフトウェア(マシンコントロールシステム等)への対応が可能である。
また、自動振動ローラによる転圧といった単一機種での作業から、自動振動ローラと自動ブルドーザ、自動ダンプトラック等複数機種による連携作業までを行うことができ、目的に合った自動化機械の導入が可能である。
1-3. A4CSELによるDXソリューション
1) A4CSELが提供するソリューション
A4CSELは、単一の作業の生産性を向上させるプロダクトでなく、施工プロセスおよび施工管理プロセス全体の最適化により継続的な生産性向上を成し遂げるさまざまなソリューションの総合体である。
A4CSELを、多機種・複数の自動化機械および施工プロセス全体に適用し、施工データに基づいて作業方法や施工計画の最適化を追求し続ける。
また、自動化施工システムを現場毎に異なる環境に応じてカスタマイズし、現場およびプロセス全体の最適化により継続的な生産性向上を図る(図-5)。
2) プロセス全体の最適化
①施工計画の最適化
A4CSELは建設現場を製造業の工場のように変革することで、飛躍的に生産性を向上させることを目指している。
施工計画システムは、製造工場で使われている生産スケジューラをベースとして開発した最適化スケジューラを有しており、施工作業時間、コスト、安全性等の評価指標にもとづき作業の組合せを自動で入れ替えることにより指標が最大(最小)となる最適な計画を生成できる。
②異なる種類の複数建機の連携、自動化施工と有人施工の連携による現場全体の最適化
A4CSELは、単一の機械、単一の作業による生産性向上にとどまらず、上述の最適化された施工計画に基づき、異なる種類の複数機械を連携させることで生産性を向上させる。
また、全ての作業を自動化することはせず、定型化可能な作業は自動化施工とし、熟練操作が必要でかつアドリブが求められる作業は有人施工とすることで双方の強みを活かし、生産性向上を図っている。
成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡)では、自動ブルドーザによるまき出し後に仕上げ整地するブルドーザや、端部の法面整形、締固めをするバックホウは有人施工とした(図-6)。
ここでは、機械同士の接触防止等の安全性確保と作業効率向上のため、自動化機械と隣接して作業する有人機械に自動化機械と連携するための情報を明示し、オペレータをナビゲーションするシステムを搭載した(図- 7)。
これにより、自動化機械と有人機械とが効率的に連携することを可能とし、現場全体の最適化を実現した。
③施工管理プロセスの最適化:遠隔集中管制システム
A4CSELは、工事場所の異なる複数の導入現場を遠隔地から一括して管制する「遠隔集中管制システム」を有している。
これにより各現場に人を配置する「分散生産および分散管理」から、「分散」と「集中」双方の長所を取り入れた最適な業務プロセスへの変革が可能となり、建設業の重要課題を解決し得る(図-8)。
遠隔集中管制室から数か所の現場をあたかも一現場の施工と同等の仕組みで実施できるため、大規模現場、長工期現場だけでなく、中小工事、工期の短い工事にもA4CSELを適用することが可能となる。
2021年には、3か所の現場を鹿島本社ビル(東京都港区)に仮管制室を設け、遠隔集中管制の技術実証を行った(図-9)。
3) 作業環境に合わせたシステムのカスタマイズ
生産性向上のためには、データ解析に基づきフィードバックサイクルを継続的に回すことが重要である。
A4CSELは、管制システムによるリアルタイムフィードバックと施工計画システムによるシステム全体のフィードバック機能を有している。
A4CSELでは、自動化機械からの作業データにより計画に対する進捗を管制システムにて正確に把握することができる(図-10)。
そのため、「作業環境の変化による計画に対する遅延時間」、「作業した結果の出来形の評価値」、「品質管理の評価値」等のデータをリアルタイムで取得し、それを基に作業方法を改善できる。
また、自動化施工を稼働させる中で発生する現場環境条件の変更(作業エリア、障害物等)や、計画時に設定した歩掛・作業効率と実際の差等を要因として、施工計画と当日のパフォーマンスに差異が発生した場合は、施工計画システムや自律自動運転システムをカスタマイズすることで改善を図る。
これらにより、生産プロセス全体をコントロール下に置くことが可能であり、自らの意思で現場を制御し生産性を向上させることができる(図-11)。
4) 異なるメーカーを含む複数建機への対応
A4CSELは、汎用ハードウェアと自社開発のソフトウェアによって構成されている(図-12)。
また、A4CSELのシステムは、図-4に示したとおり、施工計画システム等のアプリケーションと自律自動運転システム等のハードウェアの中間に位置するミドルウェア(管制システム)で構成されている。
これらのシステム構成により、A4CSELはあらゆるメーカーに対応できる柔軟で拡張性の高いシステムである。
さらに、A4CSELでは汎用ハードウェアを活用しているため、現場導入およびメンテナンスのしやすさを追求できる。
2. A4CSELによる生産性向上の実績
筆者らは、自動化施工システムA4CSELの現場展開を進めており、ダム現場や災害復旧現場に適用してきた。
以下に導入現場でのA4CSELによる生産性向上の実績を紹介する。
2-1. 省人化効果
A4CSELを現場導入するメリットの一つとして一人で複数の自動化機械を稼働させることにより生産性を向上させることがある。
従って、より少ない人数でより多くの自動化機械を稼働させることが重要である。
成瀬ダムでは、管制を行うITパイロット3人(写真-1)により、14台の自動化機械を稼働させた。
従来であれば、建設機械を稼働させるためには、1台につきそれぞれ1人のオペレータが必要であるので78%の省人化が図れている。
2-2. 高い施工精度によって得られる作業効率の向上
A4CSELでは、予め計画した経路のとおり確実に自動化機械が作業を実施するため、有人施工と比較して無駄な作業がない。
赤谷3号砂防堰堤工事(奈良県)における施工実績データ分析に基づく作業の効率化について以下に記す(写真-2)。
1) 振動ローラの転圧作業の効率化
自動振動ローラと有人振動ローラの走行経路の比較を図-13に示す。
有人施工では目標経路に対し通常±20~50cmの精度であり、踏み残しによる追加転圧の発生や踏み残しを回避するため各経路間のラップ幅が必要以上に広くなり経路数の増加が発生する。
これに対し、自動振動ローラは、計画した経路のとおりに転圧可能であり、計画経路に対して±10cmの精度で走行できるため、最小の距離で転圧を完了させることができる。
自動振動ローラは有人運転と比べて走行距離を19.9%削減できることを確認した。
2) ブルドーザのまき出し作業の効率化
ブルドーザのまき出し作業では、同じ計画で運転する場合でも、有人運転では荷下ろしされた材料をオペレータが目視確認しながらまき出しを行うため、目視確認に必要な距離を余分に走行しなければならない。
しかし、自動ブルドーザの場合にはセンサーによるため目視確認する必要がなく、最小限の走行経路、時間での作業が可能となる。
自動ブルドーザは有人運転と比べて走行距離を74.3%削減できることを確認した(図-13)。
3. A4CSELの普及展開に向けた取組み
A4CSELは、前述の成果を発展させ、多様な工種へ適用する取組みを実施しており、その皮切りとして造成工事の盛土作業への適用を開始している。
以下にその取組みについて紹介する。
3-1. 複雑な平面形状に対応した自動化施工
阿知和地区工業団地造成事業(愛知県岡崎市)に自動振動ローラを導入している。
導入に際し、ダム工事では堤体上の水平かつ概ね矩形の領域が自動化施工の対象であることに対し、造成工事では多様な勾配や不陸が有り、地山に沿った複雑な平面形状が対象であることが課題であった。
この課題を解決するため複雑な作業エリアの作業計画を自動で行う造成対応計画システムを開発した(図-14)。
造成対応計画システムは地山形状に対応した複雑な作業エリアに対して、自動で転圧作業の区割りを行い、転圧作業計画や自動振動ローラへの指示を自動生成する。
本システムの導入により、さまざまな形状の転圧エリアと転圧方向に対して柔軟に転圧作業計画を立てることが可能となった。
3-2. 自動化対象作業の拡充 積込み、仮設道路での運搬の自動化
今後、さらなる生産性向上を図るためには、自動化施工が可能な作業を増やすことが重要である。
A4CSELがこれまでに培ってきた、自動ダンプトラックによる運搬、自動ブルドーザによる敷均し、自動振動ローラによる転圧からなる一連の自動化施工技術は、造成工事においても活かすことができる。
そこに、自動バックホウによる積込みと、造成工事で用い仮設道路(勾配変化、表面の不陸や轍がある)を走行できる自動アーティキュレートダンプトラックによる運搬を加えることで、盛土作業を構成する一連の作業を自動化することを可能とした。
自動バックホウによる積込作業においては、材料山の形状をリアルタイムに認識して最適な掘削を行うとともに、ダンプトラックの停止位置を認識して積込を実施する。
アーティキュレートダンプトラックは、6輪駆動と中折れ機構を活かした悪路の走行、小範囲での旋回が可能である。
これまで培ってきた最適な経路生成技術と新たに開発した中折れ式の機構特有の後進操作の最適化により、施工箇所まで最短距離で効率的かつ正確に材料を自動運搬することを可能とした(写真-3)。
3-3. 高速道路本線盛土工事への適用
NEXCO西日本新名神高速道路(大津JCT(仮称)~城陽JCT・IC間)の建設現場の本線盛土工事に、自動ブルドーザ、自動振動ローラを導入している(写真-4)。
現場から約2km離れた工事事務所に設置したオペレーションルームから、1人の管制員が自動ブルドーザ1台、自動振動ローラ1台の合計2台を管制するとともに、自動ブルドーザと連携するナビシステムを搭載した有人ダンプトラック2台を管理している(写真-5)。
本現場へのA4CSELの適用に際しては、道路の縦断・横断勾配、排水構造物、変化する盛土材料等への対応が必要である。
これらに対応して各システムをアップグレードし、盛土の出来形、品質が問題なく確保できることを事前の実証試験で確認した上で本格的な導入を開始した。
おわりに
A4CSELは、最新の製造工場と同様に、ハードウェアとしての生産機械と、自動運転や最適稼働をさせるソフトウェア、およびそれらをつなぐネットワークを備えたデジタル時代の生産システムといえる。
今後もA4CSELを発展させることで「現場の工場化」を進め、建設生産システムの変革に挑戦する。
適用対象作業を増強するとともに、現場環境に合わせて柔軟に対応できる汎用性の高いシステムへ発展させることでA4CSELの普及展開を図る。
また、遠隔集中管制室を情報集約型の生産拠点とすることによって建設生産のやり方を一新し、労働集約型の典型である建設現場を変革して建設業の課題解決に貢献する所存である。
【出典】
最終更新日:2026-05-20




















