阪神高速道路における大規模更新・大規模修繕事業の概要と進捗状況について
1. 阪神高速における大規模更新・大規模修繕事業
(1) 阪神高速道路の老朽化
昭和37年5月に阪神高速道路公団が発足し、昭和39年の環状線土佐堀~湊町間2.3㎞の開通以来、現在では阪神高速道路の総延長は258.1㎞に達し、1日に約72万台(令和6年度実績)のお客さまにご利用いただいている。
現時点で5割を超える構造物が建設後40年以上経過しており、10年後には約8割を占める状況となる。
このような中、阪神高速道路の社会基盤としての役割を永続的に適切な状態に保ち、その利用機能を阻害させてはならないという使命から、大規模更新・大規模修繕事業について平成27年に「高速道路リニューアルプロジェクト」を立ち上げた。
その後、法定点検において、新技術を活用しつつ、より詳細な点検を行ったことにより、従来の知見だけでは対応が困難な損傷が発見されたことから、令和6年3月に22.4㎞の区間を新たな大規模修繕事業として追加し、総延長112.9㎞の区間で順次事業を進めている(表- 1、図- 1)。
(2) 大規模更新・大規模修繕事業の内容
大規模更新事業は、特殊な構造や部材の老朽化に伴う損傷が顕在化した構造物に対して、繰り返し補修を行っても改善が期待できない箇所を対象とし、効率的・効果的な対策として構造物の全体的な取り替え等を計画している。
大規模修繕事業は、損傷が顕在化した構造物に対して、繰り返し補修を行った場合でも改善が期待できないものの、大規模更新を必要としないレベルの箇所に関して、主要構造の全体的な補修を予定するものである。
令和6年3月に追加した新たな大規模修繕の代表箇所である新神戸トンネル、阿波座付近、深江浜付近の概要を、以下に紹介する。
新神戸トンネルは、老朽化による構造物や設備関係の損傷のほか、建設当時は耐久性に優れると考えられていたPC舗装(プレストレストコンクリート舗装)におけるPC鋼材の破断といった、長年の過酷な使用環境の影響による損傷も発生している。
最新の知見により抜本的な修繕を実施するとともに、適切な維持管理を継続することで、トンネル全体の長期的な健全性および防災上の安全性を確保する(図- 2)。
阿波座付近に代表される、大規模交差点等の長スパンとなる箇所の一部では、上部工の荷重低減等を目的に鋼製高欄を採用しているが、冬季の湿塩散布や高欄内部に浸入した雨水等が原因で腐食等の損傷が発生している。
水は完全に遮断できないことを前提として、水抜き孔や防錆処理等を施した新型の鋼製高欄への取り替えを実施し、耐食性の向上、橋全体の長期健全性を確保する(写真- 1)。
深江浜付近では、Uリブを有する鋼床版で疲労き裂が新たに発見されたため、当て板等の恒久対策に加えて、鋼繊維補強コンクリート(SFRC)舗装等により鋼床版の剛性を向上させることで、き裂の進行を抑制し、鋼床版の長期健全性を確保する(図- 3)。
令和7年12月現在の進捗状況については以下のとおりである。
14号松原線喜連瓜破付近で実施していた橋梁架け替え工事が、令和7年10月末に完了(令和6年12月に通行止め解除)した。
15号堺線湊町付近における橋梁基礎の更新工事は、更新対象の基礎9基のうち3基の本体工が完了、残る6基についての検討を順次進めている状況である。
大規模修繕事業としては、16号大阪港線の阿波座付近で実施していた鋼桁改良工事(縦目地の解消)が、令和7年2月末に完了(令和6年5月に本線の固定規制解除)し、その他は設計・工事契約等が完了した箇所より順次現場施工を実施している。
本稿では、これらの事業のうち、大規模更新事業として無事完了した、14号松原線喜連瓜破付近の橋梁架け替え工事と、現在実施中の15号堺線湊町付近の橋脚基礎更新工事、大規模修繕事業として無事完了した、16号大阪港線阿波座付近の鋼桁改良工事について紹介する。
2. 大規模更新事業の施工事例(14号松原線喜連瓜破付近橋梁架け替え工事)
(1) 背景
14号松原線内の喜連瓜破付近に位置する全長154m、幅員19mの橋梁は、3径間連続有ヒンジラーメンPC箱桁橋となっており、昭和55年に供用を開始している。
供用後に生じた中央ヒンジ部の垂れ下がりに対して、外ケーブル補強などの対策を講じてきたが、抜本的な改善には至らず、長期耐久性の確保、維持管理性の向上のため、令和4年に橋梁架け替えに本格着手した。
(2) 工事概要
本橋梁は、約6万台/ 日を超える交通量を有する瓜破交差点の上空に位置しており、大型商業施設、地下鉄喜連瓜破駅や住宅が隣接し、歩行者・自転車の交通量も多い地域である(写真- 2、3)。
橋梁の撤去・新設に際しては、有識者や関係自治体等の委員からなる検討会を開催し、さまざまな側面から慎重に議論した結果、「交通影響対策を講じて、通行止め案で工事を行うことが妥当である」と、取りまとめられた。
既設橋梁は、橋梁上部に撤去のための仮設桁を設置し、仮設桁から吊り下げた移動作業車内で低騒音工法により桁を切断、解体を行った(図- 4)。
切断したコンクリートブロックの搬出は高速道路経由で行うことで、撤去に係る一連の作業を交差点上空で完結させ、交差点への交通影響を最小限に抑える撤去工法を採用した。
新設橋梁は、荷重軽減と工期短縮を図るため鋼製とし、側径間は隣接する高速道路上で地組みし、送り出しにより架設した。
送り出しは、多数のエンドレスローラーと多軸台車を駆使し、中間橋脚側への桁の送り出しから、橋脚支点部への桁の受け替えまでを、南北それぞれ1夜間のうちに完了した。
中央径間は、近傍に確保した施工ヤード内で地組みを行い、多軸台車で運搬、側径間に配置した吊上げ設備を用いて1夜間で一括架設した(図- 5)。
また、本橋は重交通交差点上であることを鑑み、架設に併せて常設足場を設置している(写真- 3右)。
都市部の重交差点直上での橋梁架け替えという難易度の高い工事であったが、綿密な施工計画に基づき、施工上の安全にも徹底した配慮を行い、撤去から架設まで、社会的な影響をいかに小さくするかを念頭に工事を進めた結果、地域の方々のご理解・ご協力を得て、当初の予定からおよそ4カ月前倒しして無事に通行再開できた。
3. 大規模更新事業の施工事例(15号堺線湊町付近橋脚基礎更新工事)
(1) 背景
15号堺線の湊町付近は、大阪の中心部であるミナミの繁華街を横断する区間であり、その地下には建設当時から複数の鉄道の駅や地下街が上下に重なり合うように張り巡らされていた。
橋梁の建設にあたっては、そうした地下構造物の直上に基礎を設置せざるを得なかったことから、それらへの負担をできる限り軽減するために軽量な鋼製基礎が採用された(図- 6)。
しかし、その後の周辺環境の変化により近隣の地下水位が上昇、鋼製基礎の内部に地下水が流入し、腐食が進行していた。
内部の空間は、水位の変動を受けながら常に高湿な状態にあり、溶射や電気防食などの腐食対策が行われてきたものの、抜本的な解決には至っておらず、さらに腐食が進行する恐れがあった。
以上により、鋼製基礎全9基を対象に、大規模更新工事を実施することとした(図- 7)。
(2) 工事概要
1号環状線および15号堺線の地下街の上に設置している鋼製基礎(全9基)を対象に、基礎本体の防食や支承などの取り替え、維持管理・耐震性の確保が可能な構造への更新を行う。
鋼製フーチングには腐食対策を施すとともに、外周全面にコンクリートボックスを設置することで、耐食性の向上や地下水の流入対策、維持管理空間を確保する。
工事箇所近傍の千日前通は、約5万台/ 日もの利用がある主要幹線道路であり、限られた車線規制しか行えず、路面覆工下で工事を進める必要がある。
施工手順の概略は以下の通りである。
まずは土が崩れないよう仮設土留めを設置した後に、路面を掘削し、覆工板を設置する。
その後、覆工板下で既設基礎の保護コンクリートを撤去し、錆・塗装の除去、防食工、躯体コンクリート工・防水工、埋め戻し・復旧工と進めていく(図- 8)。
今回は、実施した対策工のうち、「金属溶射による防食工」と「躯体コンクリート工」について紹介する。
更新の基本形を図- 9に示す。
長期耐久性を確保するため、既存の鋼製基礎の内外面ともに防食工を施した。
防食工は、耐アルカリ性に優れる亜鉛アルミニウムによる金属溶射を基本とし、溶射困難部(施工空間が確保できない箇所や添接部で金属溶射が適さない箇所)は重防食塗装、コンクリート被覆部(躯体コンクリートが設置される鋼製基礎上面や耐震補強のためモルタル充填される箇所)は有機ジンクリッチペイント塗装とした。
鋼製基礎内面の防食区分の例を図- 10に示す。
防食前後の状況は写真- 4のとおりである。
躯体コンクリート工においては、鋼製基礎の上面・側面に設置して遮水壁とするとともに、将来的にブラストや金属溶射等による補修を可能とする維持管理空間を設けた。
躯体コンクリート頂版の打設状況を写真- 5、維持管理用空間を写真- 6に示す。
維持管理用空間は幅1,000mmを基本とし、地下埋設物近接箇所は最小幅600mm、高さ1,500~1,800mmを確保した。
現在、先行的に3基の大規模更新を完了しており、残る6基について検討と施工を進めていく。
4. 大規模修繕事業の施工事例(16号大阪港線阿波座付近鋼桁改良工事)
(1) 背景
16号大阪港線(天保山方面)阿波座付近は、約600mの短い区間での分合流区間にあたり、交通が錯綜することから、平成9年に1車線拡幅工事を実施している。
その際、拡幅桁は既設RC橋脚の梁を拡幅して支持するのではなく、既設橋脚の間に拡幅桁のみを支持する鋼製橋脚を新設し、既設桁と拡幅桁の境界部分にはゴム製の縦目地を設ける構造とした(写真- 7、8)。
しかし、支点が異なることで生じるたわみ差により、縦目地部における損傷や腐食、それらに起因する走行性への悪影響や騒音発生の不具合が生じており、さまざまな対策を講じてきたが抜本的な解決には至っていなかった。
そこで、縦目地をなくすことで、不具合を本質的に解消する大規模修繕工事を実施することとした。
(2) 工事概要
既設桁のみを支持していたRC橋脚の梁部を拡幅し、既設拡幅桁の撤去・架け替えを行い、支点位置を既設桁に統一し、上部工を一体化することで縦目地を解消した(図- 11、写真- 9)。
拡幅桁を支持していた鋼製橋脚は梁を拡幅し、鉛直荷重を支持する支承は設置せず、地震時水平力に対してのみ機能する水平力分担構造を設置することで、橋梁全体での耐震性の確保も可能となった(図- 12)。
約4年にわたる工事となったが、下部工改築28基、上部工改築534mを無事完了させ、長年の課題であった縦目地構造を解消した。
高速道路上では工事規制に伴う渋滞も発生していたが、工程短縮に努め、当初の予定よりも約4カ月短縮し、交通規制を開放することで、社会的影響を極力低減することにもつながった。
5. おわりに
これらの大規模更新・大規模修繕事業においては、周辺への交通影響が不可避である。
今後も、一般街路への交通影響を抑制する観点から、高速道路会社や道路管理者間で連携して代替路へのう回を促すとともに、事業全体に対する認知・理解向上のため、意義訴求広報を継続し、各事業の進捗に合わせた適切な情報発信を行いながら、推進していく所存である。
【出典】
積算資料公表価格版2026年4月号

最終更新日:2026-03-19






















