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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 高速道路 > E8 北陸道リニューアル工事 新手取川橋リニューアルプロジェクト
はじめに

 
北陸自動車道(以下、北陸道)は、1972年の開通から半世紀が経過し、交通量の増加や冬期の凍結防止剤の散布により、橋梁などの道路構造物の劣化が進んでいます。
 
これまで維持修繕や改良工事による部分的な補修をおこなってきましたが、北陸地方の厳しい使用環境による変状の進行や新たな変状の発生などが顕在化しており、長期にわたって道路構造物を健全に保つために、大規模な更新工事(以下、リニューアル工事)が必要となっています。
 
北陸道では2017年度から、富山県、石川県、福井県、滋賀県において、リニューアル工事として床版取替工事と上部工架け替え工事を実施しています。
 
 

1. 床版取替工事

 
北陸道の床版取替工事では、お客さまへの影響が最小となるようGWやお盆といった交通混雑期および雪氷期間を避け、通行止めではなく、上下線両方向の通行を確保する対面通行規制を採用し、可能な限り交通への影響を抑えて工事をおこなっています(写真-1、図-1)。
 
規制区間を通行されるお客さまの安全性を確保するため、音と振動で注意喚起をおこなう薄層舗装や、規制器材の視認性向上を目的とした高輝度大型矢印板(表面積が既製品の約2倍)を使用するなどの安全対策を講じています。


写真-1 対面通行規制による床版取替工事(庄川橋,2021年度)

図-1 対面通行規制イメージ

 

2. 手取川橋

 
1972年の開通から半世紀が経過する北陸道の小松ICから金沢西IC間は、日本海に近接し、海からの飛来塩分や冬期の凍結防止剤の散布により、コンクリート構造物の塩害が進行しています。
その中でも、橋長約550mのPC橋である手取川橋は、手取川の河口に位置し日本海に極めて近く、飛来塩分の影響を受けると同時に飛砂により橋桁表面が摩耗しやすい厳しい環境下にあります(写真-2)。
 

写真-2 手取川橋全景
 

手取川橋は、供用開始から約10年後に上部工コンクリート部分のはく離や浮きなどが発生したため、1983年から1985年にかけて、第1次塩害補修工事として損傷箇所の部分的な断面修復を実施しました。
 
工事完了から約10年後、再び上部工コンクリート部分のはく離や浮きが広範囲に発生したため、1994年から1997年に、第2次塩害補修工事として上部工の全面的な断面修復を実施しました。
 
このように、供用後に2回の大規模な塩害補修工事を実施しましたが、橋桁コンクリート内に塩化物イオンが浸透し、はく離や浮きなどの損傷が著しいことから、2023年から手取川橋の上部工架け替え工事(以下、新手取川橋工事)に着手しています(写真-3)。
 

写真-3 既設桁のはく離や浮き
 
 

3. 新手取川橋工事の特長

 
新手取川橋工事では、対面通行規制を実施した上で、8径間連続PCラーメン箱桁橋を、8径間連続合成鋼1主開断面箱桁橋に架け替えます。
 
新橋の橋桁には、厳しい環境下でも長期の耐久性を確保するため、炭素鋼の表面にステンレス鋼を接合し高い耐食性を有するステンレスクラッド鋼を、日本の道路橋として初めて採用しています(写真-4)。
 

写真-4 ステンレスクラッド鋼
 
また、主桁接合部を現場溶接することで桁表面を平滑にし、腐食の原因となる飛来塩分や凍結防止剤が付着・堆積しにくい構造としたり、主桁内側底面に膜厚2,500㎛の超厚膜塗装をおこない、水分が堆積しやすい箱桁内において耐久性を確保するなど、さまざまな技術的工夫を取り入れることで上部工の長寿命化を図り、100年耐久を目指しています(図-2)。
 

 
さらに、手取川周辺には石川県の絶滅危惧種に指定されているイソコモリグモ(砂浜海岸にのみ生息する大型のクモ)やコアジサシ(水鳥)が生息しており、特にイソコモリグモは手取川橋高架下脇の砂地にいることが分かっています。
本工事では、手取川橋の近傍に生息する希少生物への影響に配慮するため、既設桁の撤去は、既設桁上に新設桁を架設・地組し、新設桁および既設桁を取り囲むように新設桁に設置した可動型の撤去フレームを用いて、新設桁上のレールで撤去した既設桁を搬出する工法(本線上の作業のみ)を採用しています。
 
 

4. 新手取川橋工事の施工ステップ

 
新手取川橋工事の主な施工ステップは次のとおりです。
 
① 既設桁上に新設桁を架設・地組
 
対面通行規制後に橋面舗装を切削します。
その後、工場で製作した新設桁(半断面に分割された桁)を既設桁上に輸送し、橋梁中央部から橋梁端部両方向に向かって架設の上、溶接・地組することで既設桁上に新設桁を設置します(写真-5)。
 

写真-5 新設桁の架設・地組
 
② 撤去フレームの設置,既設桁の撤去
 
新設桁の設置後、新設桁および既設桁を取り囲むように新設桁に可動型の撤去フレームを設置します。
既設桁の切断にあたっては、事前に箱桁内に設置されている外ケーブルの除荷、ケーブル切断搬出をおこないます。
その後、撤去フレーム内で既設桁をワイヤーソーなどで分割切断し、切断した既設桁を撤去フレームを用いて新設桁上に吊り上げ、新設桁上面に設置した自走台車上へ積み込みをおこないます。
自走台車は新設桁上のレールを移動し、切断した既設桁を本線外へ搬出します(写真-6、図-3)。
 

写真-6 撤去フレーム
 

図-3 既設桁の撤去イメージ
 

③ 既設橋脚の柱頭部を切り下げながら、新設桁をジャッキダウン
 
既設桁撤去が完了後、橋脚柱頭部上面の半断面に設置したジャッキで荷重を受け、荷重を受けていない半断面をワイヤーソーで切断し、切り下げます(図-4①)。
その後、切断した半断面に設置したジャッキで荷重を受け直し、荷重を受けていない半断面を切断します(図-4②)。
 

図-4 新設桁のジャッキダウンイメージ
 

この作業を繰り返し、新設桁を現況舗装面の高さに合うまでジャッキダウンし、据え付けます。
 
④ プレキャストPC床版の設置

新設桁のジャッキダウン完了後、床版架設機2機にて橋梁中間部から橋梁端部両方向に向かって新設桁上にプレキャストPC床版を架設し、その後、舗装工や付属物工をおこないます(図-5)。
 

図-5 プレキャストPC床版架設イメージ
 

5. 既設桁の劣化状況

 
工事着手に合わせて、劣化状況の把握を目的として、既設桁内の塩化物イオン濃度確認や、PCグラウトの充填状況確認など、各種調査分析をおこなっています。
 
既設桁のコアを採取し塩化物イオン濃度を確認したところ、既設コンクリートの第一鉄筋やPC鋼材シース管よりも深い位置で、鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度(1.74kg/m³)を超過している箇所が一部で見られました。
また、PCグラウトの一部で充填不足、PC鋼棒の腐食も確認されました。
 
撤去した既設桁の断面を確認したところ、充填不足が見られたPCグラウトの一部で充填不足箇所に水分が供給されていたため、錆汁の漏出が見られました(写真-7)。
 

写真-7 PC鋼棒からの錆汁の漏出
 
また、PCグラウトの充填不足箇所を、PC鋼棒をハンマーで叩くと、コンクリートと一体化していないため付着切れを起こし、鋼材が簡単に突出しました(写真-8)。
 

写真-8 PC鋼棒の付着切れ
 

さらに、過去の第2次塩害補修工事で実施した上部工の全面的な断面修復でも、既設コンクリートと付着切れを起こしている箇所が見られました(写真-9)。
 

写真-9 断面修復材の付着切れ
 

おわりに

 
現在、新手取川橋工事では新設桁のジャッキダウンを施工中で、2024年度冬季にかけて上り線の架け替えをおこなっていきます。
 
高速道路を利用されるお客さまや周辺住民の方々へのご迷惑を最小限とするよう取り組んでいきますので、ご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。
 
 
 

中日本高速道路株式会社 金沢支社

 
 
積算資料公表価格版2024年4月号
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最終更新日:2024-04-01

 

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