旭川市域における道路除排雪に関する国・道・市の連携協定による取組みについて
1. はじめに
旭川市は北海道のほぼ中央に位置し、人口規模が多い都市でありながら、厳しい冬の気候と多量の積雪がある地域である。
最北の中核都市である旭川市は交通の要衝となっており、空路は旭川空港をはじめに、鉄路では旭川駅に函館本線のほか3路線が接続している。
道路では、北海道縦貫自動車道のほか、市内の国道や道道で構成され幹線道路による道路ネットワークを形成している。
旭川市は降雪の際に、各道路管理者が交通量等から設定した除雪基準に従って、おのおのが所管する道路の除排雪作業を実施している(図-1)。
2. 除排雪作業の課題
(1)気象状況の変化への対応
冬季には急な大雪や気温低下による路面凍結など、さまざまな気象状況変化への対応が課題となっている。
除雪の未実施によるスタック車両の発生等による道路交通への影響軽減や市民の生活環境の確保を図るため、管理している直轄国道の排雪強化に向け、雪堆積場の確保や有効活用に加え排雪強化に向けた排雪用ダンプトラックの効率的な運用が求められている。
(2)道路管理者の違いなどで生じる課題
各道路管理者が所管する道路区間は自ら設定した基準で除排雪作業を実施しているが、同幅員の道路でも道路管理者の除雪基準が相違する区間があり、除雪回数や排雪時期の違いにより、排雪の実施区間と未実施区間の連続による交通渋滞の発生など、路面状態のバラつき等を抑えていく必要がある(写真-1)。
(3)持続可能な除排雪体制の構築
1年の半分近くが雪で覆われる旭川市にとって、除排雪作業など雪対策の充実や改善が長年の課題となっている。
当事務所が目指す持続可能な除排雪体制の構築の実現は、市民、企業、行政が、それぞれの役割を担いながら一体となって除排雪作業に取り込み、除雪機械のワンオペ化やICTを活用しながら目指すものであり、その実現に向けては、国・北海道・旭川市(以下、道路管理者)が連携し、除排雪作業の強化や充実を図り、除雪企業が円滑な除排雪作業に取り組める環境を作る必要がある。
3. 連携協定の締結
(1)背景と目的
旭川市内の幹線道路をより利便性の高い道路ネットワークとして機能させるため、交通結節点機能の強化が必要であるが、近年、担い手不足や気象状況の変化等、除排雪作業を取り巻く環境は厳しさを増している。
持続可能な除排雪体制の構築の実現には、市内の道路管理者の連携が不可欠であると考え、令和4年1月27日に「旭川市における道路除排雪に関する協定および「旭川市における道路除排雪に関する細目協定」(以下、連携協定)を締結した(写真-2)。
(2)協定の概要
連携協定に基づく相互協力事項の概要
① 市内幹線道路の交通ネットワーク機能確保
② 河川敷、公共遊休地等における雪堆積場の活用・調整
③ 冬期渋滞箇所の除排雪作業への取組み強化
④ 排雪用ダンプトラックの調整等効率的な排雪作業への取組み
⑤ 新技術や新たな取組み等の情報共有と推進
⑥ ゼロカーボンの推進
4. 連携による課題解消に向けた取組みと効果
(1)道路除雪連携会議の設置
連携協定の相互協力事項を道路管理者間で調整し、取組みを推進するため「道路除雪連携会議(以下、連携会議)」を設置し、定期的に会議を行っている。
都市間ネットワークの確保に向けて、国道・道道をはじめに旭川市への流入出道路の除雪の強化を目標として、安全・安心で円滑な冬の交通網を確保し、冬期間における市民の利便性向上を図るため、既存の取組みの課題検証や改善策検討、新たな取組みの検討、除排雪計画等の情報共有、作業実績・予定の状況報告等を、冬期間に月1回程度実施している(写真-3)。
(2)河川敷、公共遊休地等における雪堆積場の活用・調整
雪堆積場については1級河川の高水敷や公共遊休地を活用することで、極力市街地近郊で必要な堆積量を確保していたが、連携協定締結後には、道路管理者でそれぞれ確保している雪堆積場の情報を共有し、お互いに利用することで新たな雪堆積場への搬出が可能となり、従来の運搬距離が短縮され排雪コストの縮減につながった(図-2)。
(3)冬期渋滞箇所の除排雪作業の取組み強化
市内の幹線道路では日々の除排雪作業によって路肩部に堆積した雪堤が大きくなるため、片側2車線の道路では片側1.5車線程度しか確保できていないのが現状である。
主要交差点部において渋滞が発生する時間帯があり、道路利用者から相談がきている状況であった。
渋滞緩和に向け、冬期渋滞箇所の恐れがある主要交差点の除排雪作業を連携して重点的に取り組む「重点除排雪交差点」として設定(国道、道道または市道交差点14カ所)し、交差点の前後30mと右折車線長を道路管理者で除排雪時期を調整し、同時に行うことで、交差点前後を2車線確保する「スポット排雪」の取組みを実施した(図-3)。
スポット排雪の延長については、以下のように決定した。
① スポット排雪(現況右折車線長)
現地調査の結果、右折町車両の滞留最大延長が現況右折車線長に比較的近い値になっていることが確認できたため、現況右折車線長をスポット排雪の必要延長とした。
② スポット排雪(摺付長)
スポット排雪摺付長は、設計速度からシフト長を算出し決定した。
シフト長の算出では、冬期路面の走行速度低下を考慮した上で、道路構造令に示されている「本線シフトの区間長」の計算式を用いて算出した。
各交差点で計算値と最小値を比較した結果、全箇所において計算値が最小値の30mを下回ったため、スポット排雪の摺付長を「30m」で統一した。
スポット排雪により、道路管理者の違いで生じる路面状況の一部解消により渋滞が大きく緩和し、効果を実感できた。
また、実施前後で相談・苦情が大幅に減少した(写真-4、図-4)。
(4)排雪用ダンプトラックの調整等効率的な除排雪作業への取組み
北海道は全域で豪雪地帯に指定されており、工事が減少する冬期間でも排雪用ダンプトラックが多く稼働している。
旭川市では例年開催される「旭川冬まつり」等の冬期イベントが重なる時期については、排雪用ダンプトラックや交通誘導警備員の確保が厳しい状況となっている。
イベント期間中は道路管理者間は限られた台数や人数での作業が必要となる。
そのため、効果的な排雪を行えるように、除排雪計画を道路管理者で調整し、策定することで適切な除排雪作業を実施するこができた。
(5)新技術や新たな取組みの情報共有と推進
当事務所では持続可能な除排雪体制の構築の実現に向けて、除雪機械のワンオペ化に取り組んでいる。
従来ではオペレーター1名、助手1名の2名体制としていたが、助手が行っていた後方や左側の安全確認をカメラで行い、映像を室内モニターで確認することができ、1名での除排雪作業を可能とするものである。
ワンオペ化により除雪機械1台につき1名のみで作業可能となったため、除排雪作業のコスト縮減につながった(写真-5)。
また、当事務所は除雪機械のワンオペ化の他に、「映像鮮明化装置」の取組みも行っている。
吹雪時の視界不良の際でも視界をクリアに表示し除排雪作業を可能にするものである。
映像鮮明化装置により除排雪作業時の視認性が向上につながった(図-5)。
しかし、ワンオペ化、映像鮮明化装置ともに新たな課題が生じている。
主な課題としてはオペレーターのワンオペ経験が浅いことによる技能不足や緊急時の対応などがあり、特に安全面の不安についての課題が多い。
除雪作業中にオペレーターが1名でモニターを確認しながら運転を行う場合は、一時的に脇見運転になるため危険が残る。
また、峠部や交通量の多い市街地で気象条件の悪い場合は、安全性に不安がある等の意見が挙がっていた。
さらに担い手不足のためワンオペ化を進めていきたいところだが、経験の浅いオペレーターにとって1名での作業はストレスの大きいものになるため、熟練のオペレーターでなければ実施は難しいなど不安がある。
そのため、当事務所では2人乗りでの試行期間を設け、視認性や安全性を十分に確認した後、完全にワンオペ化を行うことでオペレーターのストレス低減およびワンオペ化に向けた経験をさせている。
この試行期間を経て、オペレーター自身に安全性や視認性を確認してもらう。
ワンオペ化には多くの時間がかかるため、旭川市内の道路管理者の中では、当事務所のみがワンオペ化を実施し、成果や課題を連携会議にて報告している。
5. 連携協定による取組みの効果
令和6年度に得られた主な効果は、道路管理者でそれぞれ確保している雪堆積場を共有し、使用することで従来の運搬距離を短縮でき排雪コストの縮減、「スポット排雪」による渋滞の抑制や緩和、「旭川冬まつり」等の冬期イベントが重なる時期に道路管理者間で除排雪計画を調整し、策定することで、効果的な除排雪作業を実施することができたことである。
また、安全面で課題は残るものの、除雪機械のワンオペ化の取組みにより除排雪費のコスト縮減、「映像鮮明化装置」による視界不良の際の視認性向上につながった。
今後も引き続き連携会議において情報共有や新たな取組みの検討を進めていくことで持続可能な除排雪体制の構築に向けて連携を深化させていく。
6. 最後に
旭川市の幹線道路は都市の骨格としてさまざまな活動を支える重要な道路であり、道路管理者で密な連携を今後も図り、円滑な冬の交通確保に努めていきたい。
連携協定の締結による市内の除排雪事業を取り巻く環境が一部解消しつつあるが、課題も多く残る。
今後も連携会議にて現状の課題の解消向けた取組みの検討や、ICTの活用や除雪機械のワンオペ化などにより、業務の効率化や安全性の向上を図りながら、オペレーターなど担い手の確保やコスト縮減に努めることで、持続可能な除排雪体制の構築を目指していきたい。
【出典】
最終更新日:2026-06-19











