- 2025-06-19
- 特集 雪寒対策資機材 | 積算資料公表価格版
1. はじめに
新潟市では、近年集中的な降雪により大規模 な交通障害が発生しており、各種の新技術を用いた対応も検討されてきた。
AIスマホ路面判定システムは、車載したスマホで撮影した画像から路面状況の情報収集するもので、新潟市では2022/23年冬期から導入された。
より効率的・効果的な道路管理への適応のため、新潟市と防災科学技術研究所は共同研究を進めてきた。
2. AIスマホ路面判定システムによる2023/24年冬期の観測
2022/23年冬期は、新潟市北区と中央区合わせて12台を設置した。
2023/24年冬期には、北区と中央区に複数台と残りの市域7区に2台ずつ、合計27台を設置して観測を行った。
中央区、北区では、パトロール車(図- 1)だけでなく、薬剤散布車にも設置した。
本システムは設置したスマホのカメラで2秒に1枚撮影され、1分ごとにサーバーに送られる30枚の画像をAI解析して分類し、多数決により1分間で走行した道路の路面状況を判定するものである。
新潟市では、多いところでは一冬に延べ50日以上稼働しており、市全体では230万枚の画像が取得された。
AIによって1枚の画像について、積雪(深さ(1、3、5、10cm)、(雪質の乾・湿も区別))、圧雪、凍結、乾燥、濡れ、冠水に分類される。
側方余裕幅や路肩雪堤の高さについても試験的に判定している。
新潟市では2023年12月22日に日降雪量36cmの大雪となり、多くのAIスマホ路面判定システムが稼働した。
図- 2は12月22日と23日の路面判定結果を示したもので、22日は路面上の積雪深が5cm以上の判定結果が多く、新雪が道路に大量に積もっていることが分かる。
23日には圧雪や濡れ判定となっており、除雪や自動車通行により道路上の積雪が減少した状況と一致した結果となった。
図- 5は2023年12月22日の新潟市中央区、図-6は同じく12月22日の北区のさらに詳細な観測結果を示したものである。
設置台数の多い箇所では、さらに詳細な路面状況が把握されることが分かる。
図- 7ならびに図- 8は、路線図をクリックして閲覧することができる2秒ごとの12月22日の連続映像で、夜間でもヘッドライトの照明で路面状況を十分に把握できる。
図- 9は次日12月23日の画像で、機械除雪が終了していることが分かる。
路面判定結果だけでなく、この連続映像も、情報共有には非常に有用となっている。
図- 3は2024年1月7日と8日の路面判定結果を示したものである。
また、側方余裕幅と雪堤高さの2023年12月23日の判別結果を図- 4に示した。
3. 2024/25年冬期の観測
2024/25年冬期、新潟市と防災科学技術研究所はAIスマホ路面判定システムを活用した冬期道路管理に関する研究を継続して行った。
2025年2月7日17時から22時までに、気象庁の新潟観測点で1時間11cm、3時間30cm、5時間41cmの記録的な降雪を記録した(図- 10)。
新潟市では、2024/25年冬期から市内の8区にそれぞれ1カ所の路面の雪の深さを測る積雪深計と周辺の状況を撮影する簡易カメラを設置して監視を行ってきた。
西区では、同じ時間帯に1時間16cm、3時間降雪30cm、5時間45cmという、さらに集中的な降雪が記録された(図- 11)。
カメラ画像からも、この後、降雪が小康状態になり、除雪が比較的スムーズに行われ、大きな混乱はなかったことが分かる(図- 12)。
この集中降雪時のAIスマホによる観測結果を図- 13に示す。
新潟市全体の道路が大量の降雪や圧雪に覆われたことが記録から読み取れる。
さらに、今冬からは地元の交通事業者の協力の下、バス会社のパトロール車や地元タクシーにもAIスマホを設置することにより、大量降雪時の路面データや画像が取得できた(図- 14、15)。
路面積雪深と各種画像データを利用して解析することにより道路管理に今後活用される可能性が示された。
4. 関係者との意見交換
新潟市では、新潟市除雪新技術研究会としてAIスマホ路面判定システム活用に関しての意見交換を冬期前と冬期後に実施している。
さらに、冬期にも道路管理者にヒアリングを実施し、問題点や有効性などについて意見交換を行っている。
本システムの利用方法として有効なのは、ほぼリアルタイムで取得される路面状況の動画を関係者と共有することにより、路面状況の確認や除雪出動の判断、優先順位等の検討(図- 16)が容易にできるようになったことで、パトロールの効率化にも寄与しているとの意見も多く、今後の活用を強く要望されている。
5. 各種災害への活用
2024年1月1日に発生した能登半島地震で液状化によって被災した箇所の把握や災害復旧資料作成にもAIスマホ路面判定システムで取得した記録が活用された(図- 17)。
また、大雪による倒竹や倒木の影響把握に取得した記録が活用できる可能性も得られた(図- 18)。
さらに、2024年7月25日には大雨による道路の湛水発生時の状況も本システムで情報収集・共有された(図- 19)。
6. 今後の予定
新潟市では最近の大雪を受けて除雪体制に関する検証会議やその後のオブザーバー会議で新技術の活用による除雪の効率化も目指すことにしている。
今後、さらに研究を進めAIスマホ路面判定システムの路面判定精度向上、側方余裕幅、路肩高さ判定等、道路管理に役立つ活用方策の検討、公共交通機関との情報共有、冬期以外の活用など検討していきたい。
調査に全面的に協力いただいた新潟市土木総務課ならびに各区の除雪担当の方々に感謝いたします。
【出典】
積算資料公表価格版2025年7月号

最終更新日:2025-06-19
同じカテゴリの新着記事
- 2025-06-19
- 建設現場における熱中症対策 | 積算資料公表価格版
- 2025-06-19
- 特集 雪寒対策資機材 | 積算資料公表価格版
- 2025-06-19
- 特集 雪寒対策資機材 | 積算資料公表価格版
- 2025-06-19
- 特集 雪寒対策資機材 | 積算資料公表価格版