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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 雪寒対策資機材 > LiDAR活用による除排雪業務効率化と生産性向上のチャレンジ  ~降雪地でのモノづくり最前線を快適にする~

1. はじめに

異常気象が多発する昨今では記録的大雪や交通機関が麻痺するような現象に遭遇しやすい状況である。
そうした中で人口減少および生産労働人口減少により、世界的にも豪雪都市といわれる札幌市において、今までの当たり前が通用しなくなっていることを強く感じている。
 
こうした背景の中、ICT技術の導入で高精度となった機器を活用することにより、冬期の除排雪作業における省人化や施工ステップ改善による安全性の向上および生産性向上へ、チャレンジする取組みを展開することは必然であり、冬期除排雪作業での人力による計測など、作業スピードが向上しない作業については、従前の取組みの見直しが必要であると考えた。
 
そこで、札幌市近郊での冬期の除排雪作業において、iPad およびiPhoneを用いてLiDAR機能(Light Detection And Ranging:光を用いたリモートセンシング技術で、レーザー光の反射を利用して、物や地形の距離を読み取ることが可能)を活用し、施工範囲や積雪量算出などを行い、作業の安全性向上および、効率化と生産性向上につながった継続取組み事例を紹介する。

 
 

2. 工事概要

工事概要を以下に示す。
 
工事内容
 夏期(道路清掃工・道路除草工・応急復旧処理工他)
 冬期(道路除雪工・運搬排雪工・人力除雪他)
 

工事場所
 R231号 札幌市北区北34条~石狩市八幡町
     KP=0.032~KP=19.309 L=19.277㎞
 
 R337号 当別町蕨岱~生振3線
     KP=69.894~KP=85.000 L=15.106㎞
     石狩市新港南2~札幌市手稲山口(小樽市界)
     KP=87.141~KP=99.557 L=12.416㎞
 
※全体図は図-1参照
 
工期等
 工 期 令和4年4月1日~令和5年3月31日
 発注者 国土交通省 北海道開発局
     札幌開発建設部 札幌道路事務所
 受注者 一二三北路株式会社
 

図-1全体図
 
 

3. 施工上の課題

冬期において、除雪により路肩などに堆雪した雪を排雪する際に、堆雪量確認やダンプトラックの積載量確認を行う(排雪量1,000m³につき1回の検量を行っている)。
従前は人力で検尺などを行い、堆雪量確認やダンプトラックの積載量を算出する方法であったが、一定の人員確保のほか、路上や高所作業が発生するため、安全性が低くなる場合があった。
 

写真-1 人力検尺状況(従前)
 
 

4. ICT機器を使用した施工

こうした課題から、堆雪ボリューム算出などICT機器を活用し、降雪期におけるリスクを回避しながら生産性向上に関する取組みについて、以下の技術を活用してチャレンジ施工を行った。
 
4.1 LiDAR機能活用による点群データ取得
4.2 点群データ活用による堆雪量の算出
4.3 ダンプ積載管理へのチャレンジ

4.1 LiDAR機能活用による点群データ取得

従前は人力で検尺し算出していた堆雪量について省人化や安全性向上の観点から、iPhone13Proに搭載されたLiDARを活用し、点群データを取得した。


写真-2 点群データ採取状況
4.2 点群データ活用による堆雪量の算出

4.1 で取得した点群データをNorthCan(3次元点群処理ソフト)で処理し、全体の堆雪量を算出した。
 

図-2 堆雪箇所点群データ
 
Li DARで取得した点群データは、今回は体積算出を行うため3次元での解析を実施し数量算出を行った結果、高精度に数量算出できることが確認できた。
 

図-3 3次元解析による数量算出結果

 
点群データを活用して堆雪量を算出することが可能となった結果、従前に比べ作業人員が約80%削減された。
さらに、取りまとめ作業においても、2.5時間の作業時間削減が見込まれた。
 
表-1 路肩堆雪量算出における作業時間

 

以上から、現場作業の安全性の向上および、とりまとめを含めた省人化によって、生産性向上につながることが確認できた。

4.3 ダンプ積載管理へのチャレンジ

前述4.1および4.2の取組みにより、生産性向上などが実現されたことから、排雪時のダンプ積載量確認にも適用し、施工ロスの減少へ向けたチャレンジ施工を行った。
 
従前では4名程度がダンプトラックの荷台にて検尺を行い、積載量を算出していた。
今回は1名がiPhone13Proを導入してLiDAR機能活用にて点群データを取得し、積載量を算出した。
 

写真-3 積載量確認状況(従前)

写真-4 積載量確認状況(チャレンジ施工)

 

今回活用したLi DAR機能の精度確認をするために、取得した点群データの検証を行った。
その結果、ダンプトラック積載量が概ね14m³であることが確認できた。
 


図-4 点群データ検証積載量確認

 
また、従前に比べ作業人員が80%ほど削減されるとともに、安全性の向上が見込まれる。
また、取りまとめ作業においても2.5時間の削減が見込まれた。
 
表-2 ダンプ積載量算出における作業時間

 
 

5. 施工上の留意点

5.1 作業条件

当該施工時は昼間であったが、夜間施工においても同様の結果を得ることができるか、施工精度の検証が必要である。
また、降雪時においても同様の精度を確保できるかの検証も必要になる。
 
また、ダンプトラックの積載量確認について、今回はダンプトラックの荷台に載って確認を行ったが、さらなる安全性向上に向けて、定点カメラ等を活用することで荷台に載らずに確認できる手法を検討中である。
 
 

6. まとめ

LiDAR機能を用いた堆雪量算出を行った結果、従前と比べて約2.5時間の省力化が図られた。
また、路上や高所での作業時間が短縮され、安全性の向上にも寄与することができた。
 
 

7. 今後の活用効果について

ICT機器の進化に伴い、高い精度で現場活用できることが確認できた。
また、アプリケーション活用により従前の施工方法や品質管理の改善に結びつくことが考えられる。
さらに、全体的に計測手間削減で省人化が実現し、施工効率と安全性の向上が見込めた他に、電子データを作業所内外で共有することで、手戻りのない円滑な施工が実現できることを確認した。
 
現代社会のスマホ所有率向上と、電子機器の機能(精度)向上に伴い、AIや5Gなどのデジタル技術を活用することで、DX(デジタルトランスフォーメーション)の中で施工プロセス全体が変わる、新たなるツールの創出の一助になっていくと考える。
 
このように、建設DXを活用することにより、関係者の生産性が向上し、近江商人の活動理念である「売り手よし(受注者)・買い手よし(発注者)・世間よし(地域住民)」の、いわゆる「三方良し」の精神につながり、公共工事を通じて、三方に利益をもたらす可能性が高いと考えられる。
 
 

8. おわりに

異常気象発生が当たり前になりつつある昨今では、こうした状況下においても平常を保つことが重要であり、こうした技術の活用で高効率かつ無事故・無災害で完成することが考えられる。
これらは、ICT活用の中で、何をどのように使うかというようなアイデアの創出となるアプローチが非常に大切であると感じた。
 
そうした活動から、工事全体が効率よく円滑に進み、さらに数量算出などの手間削減により施工ロスの減少にもつながったと考えるとともに、安全性向上および省人化と生産性向上に大きく貢献できるツールとして考える。
 
最後に、技術提供をいただいた株式会社ネクステラスの皆様に感謝いたします。
 
 
 

国土交通省 北海道開発局 札幌開発建設部 札幌道路事務所
 一二三北路株式会社

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2024年7月号
積算資料公表価格版2024年7月号

最終更新日:2024-06-27

 

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