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DX技術を活用した除雪オペレーターの担い手確保の取組み~除雪シミュレーターによる技術伝承~

1. はじめに

除雪作業を行う除雪機械オペレーターは、除雪機械の操作だけでなく、一般車両や歩行者の安全確保、除雪によって生じる危険への注意など、多様な点に配慮する必要がある。
また、担当する除雪区間の道路環境に関する知識や、変化する路面状況への対処など、作業経験に基づく高い運転技術が求められる。
 
一方で、さまざまな業界で担い手不足が問題となっているが、除雪オペレーターも例外ではなく、不安定な作業量や不規則な就業時間といった厳しい条件が重なり、担い手不足は深刻化している。
将来的な担い手確保が困難になることが懸念される状況である。
 
本稿では、除雪作業に必要となる高度な運転技術の確保および、将来の担い手となる新規オペレーター等の円滑な育成を目的として開発した「除雪グレーダ操作シミュレーター」について報告する。
 
 

2. 担い手確保対策のアプローチ

(1)課題

道路除雪作業は、一般交通がある環境での作業となるため、高度な運転技術と緊張感の維持が求められる。
さらに連続した降雪が発生した場合には、少ない人数での迅速な対応が必要となり、作業負担は大きい。
このような作業環境を改善するためには、新人オペレーター等の円滑な育成に係る課題を解消することが重要であり、それが担い手確保対策にもつながると考えられる。
 

(2)対象機械

除雪作業は、新雪除雪、路面整正、拡幅除雪などに分類され、それぞれに適した除雪機械が配備・運用されている。
その中でも除雪グレーダ(写真-1)は、東北地方整備局で主力として使用される一方、操作には多様な動きが必要であり、技術習得の難易度が高いことから、最も対策が求められる機種である。
また、現在調達可能な除雪グレーダは一人乗りとなっており、10年後には機械更新に伴い、ほぼ全てが一人乗りのみになる見込みであるため、熟練オペレーターが同乗して運転技術を伝承することが困難になると考えられ、当該機械を対象とした(写真-2)。

写真-1 除雪グレーダ
写真-1 除雪グレーダ
写真-2 運転室の比較
写真-2 運転室の比較

 
 

3. 除雪グレーダ操作シミュレーターについて

オペレーター育成用のツールとして、さまざまな分野で活用されている訓練用シミュレーターを開発し、操作方法の習得だけでなく、機械特性、作業時の挙動、安全確認など、実作業前に必要となる留意点等を事前に把握できるようにすることを目的として開発した。
 

(1)開発スケジュール

令和3年度は基本設計を検討し、令和4年度は基本設計を基に東北地方整備局管内の実作業工区をモデルとした試作機を製作し、除雪オペレーターによる試用と意見徴収を実施した。
令和5年度は前年度に収集した意見を踏まえて改良を行った。
開発した除雪グレーダ操作シミュレーターを写真-3に示す。

写真-3 開発した除雪グレーダ操作シミュレーター
写真-3 開発した除雪グレーダ操作シミュレーター

 

(2)ハードウエアの開発

操作方式は、現在調達可能な2社の除雪グレーダに対応するため、コックピットの構成パーツをモジュール化し、操作方式に応じた操作部の入替を可能とした(写真-4)。

ジョイスティックレバー操作方式
ジョイスティックレバー操作方式
写真-4 各種操作方式
ハンドルおよびレバー操作方式
ハンドルおよびレバー操作方式

 
モニターの構成や配置については運転席の視野等について調査や(写真-5)、重機メーカーへのヒアリング、配置位置の計算を実施し、実車の運転席視野を再現した(図-1)。

写真-5 運転席視野等の調査状況
写真-5 運転席視野等の調査状況
図-1 モニター構成・配置等の検討
図-1 モニター構成・配置等の検討

 

(3)運転環境の再現

道路環境の再現にはMMSデータ(モービル・マッピング・システム)で取得した点群データを基に実作業工区のモデルを作成した。
 
さらに多様な現場条件で訓練を実施できるよう、以下のような複数の環境設定を行った(図-2)。
・交差点、道路上の支障物、他車線区間等を再現した「市街地」
・急な道路勾配や見通しの悪い道路線形等を再現した「山間地」
・「天候・降雪の多少」「昼夜」「一般車両の有無」
など

市街地(片側二車線)
市街地(片側二車線)
山間地(片側一車線)
山間地(片側一車線)
降雪条件
降雪条件
夜間
夜間
一般車両(追い越し)
一般車両(追い越し)
図-2 さまざまな現場条件の設定

 
また、オペレーターへのヒアリングに基づき、橋梁ジョイントなど作業時に注意が必要な支障箇所や、勾配に応じたブレード接地圧の操作等、実作業で必要な事項を学習できるようにした(図-3)。

ハンドホール通過手前
ハンドホール通過手前
図-3 作業上の必要な注意事項例
橋梁ジョイント通過手前
橋梁ジョイント通過手前

 

(4)利用者ニーズへのマッチング

オペレーター経験5年未満を対象として習熟度に応じてガイダンス付きで基本的な操作方法を学習できる「基本操作の習得モード(図-4)」、実践形式で各種運転状況下で操作訓練できる「訓練モード」の2段階のシナリオを設定した。

図-4 シナリオ例(基本操作の習得モード)
図-4 シナリオ例(基本操作の習得モード)

 
シミュレーター機能を生かし、車両・歩行者の飛び出し、対向車との接触事故回避などヒヤリハットを体験できる項目も設定した(図-5)。

図-5 ヒヤリハット事例(対向車との接触事故回避)
図-5 ヒヤリハット事例(対向車との接触事故回避)

 
また、運転時の左右の寄り具合や、ブレード角度の空間的な理解を補助するため、俯瞰的に確認できるワイプ画面を追加した(図-6)。

図-6 俯瞰的視点(ワイプ画面)
図-6 俯瞰的視点(ワイプ画面)

 
操作訓練終了後には、熟練オペレーターによる指導ができるよう、操作内容を記録し動画再生できる走行プレビューモードも設定した。
 
 

4. 操作シミュレーターの活用

「除雪グレーダ操作シミュレーター」は、令和5年3月に開所した宮城県に所在する「東北インフラDX人材育成センター」に常設し、一般来場者を含め広く利用されている。
 
また、除雪オペレーターの育成を目的として、令和6年度から本シミュレーターを東北地方整備局の事務所や除雪ステーションに搬入し、管内の除雪作業を担当する受注業者を対象に訓練を実施している。
 
令和6年度は青森県および秋田県内で運用し計90名、令和7年度は岩手県、山形県、福島県で運用し計103名の操作訓練を実施した。
令和6年度は、全国で初めて訓練運用を行ったことから注目を集め、多くの報道関係から取材があった(写真-6)。
訓練したオペレーターからは、「運転操作を覚えるために有効であった」「初めから路上で運転操作を行うには、新人オペレーターでは難しいと改めて感じた」などの感想が寄せられた。
令和6、7年度の利用者アンケートでは操作シミュレーターへの満足度が9割を超える評価となり、その有用性が確認できた(図-7)。

写真-6 現地運用状況(マスコミ取材)
写真-6 現地運用状況(マスコミ取材)
図-7 操作シミュレーター利用の満足度調査結果
図-7 操作シミュレーター利用の満足度調査結果

 
 

5. 最後に

本操作シミュレーター技術を活用することにより、実際の道路上で除雪グレーダを操作する前に、熟練オペレーターの指導の下で安全に訓練が行える。
これにより、新規オペレーターが未経験の除雪機械を操作する機会が創出され、煩雑な操作への不安軽減や作業安全性の向上につながり、担い手確保の面でも効果が期待される技術であると考えている。
今後も、新規にオペレーターとなる人材や操作習熟度を高めたい人材を対象に、順次、操作訓練を実施する予定である。
 
 
 

国土交通省 東北地方整備局 東北技術事務所 施工調査・技術活用課 
田中 孝之

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2026年7月号


積算資料公表価格版2026年7月号

最終更新日:2026-06-19

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