- 2025-06-19
- 特集 雪寒対策資機材 | 積算資料公表価格版
1. はじめに
近年、除雪機械の熟練オペレーターの減少や担い手不足が深刻な状況にある。
その背景には、除雪機械という特殊な機械を操作するために技術を要することや、その特殊性により新たな担い手が育ちにくいことなども影響していると考えられる。
令和4年度に国土交通省の除雪作業を受注した会社に対して行ったアンケート調査の結果では、全国の除雪作業従事者の年齢構成が、20代以下が7%であるのに対し、50代以上が49%と半数近くを占めており、高齢化が進んでいることがはっきりと分かる(図- 1)。
また、除雪作業従事者の経験年数においては、経験年数10年未満の割合が45%と半数近くを占めており(図- 2)、50代以上でも約3割近くが経験年数5 年未満と経験が浅くかつ高齢のオペレーターも少なくない(図- 3)。
そこで国土交通省では、熟練オペレーターの減少や担い手不足といった課題解決の一助とするため、熟練技術や経験がなくても一定精度での除雪を可能とする、除雪機械作業装置の自動化に関する技術開発に取り組んでいる。
2. 除雪機械の作業装置自動化
除雪機械は、作業装置を動かすために複数のレバーやジョイスティックを操作する必要があり、かつ周囲の安全を確認しながら操作することも必要なため、非常に高度な技術が必要である。
開発中の作業装置の自動化システムは、高精度の3 次元地図上(図- 4)に作業装置の動きをあらかじめ記録し、除雪作業中にGNSSから得られる高精度の位置情報を用いて自動で各作業装置の動作を再現するシステムとしている。
これにより、オペレーターは作業装置の操作より車両の運転や周囲の安全確認に注力することができるようになり、また経験の少ないオペレーターでも一定の精度で除雪を行えるようになると期待している。
自動化する除雪機械には、油圧系統に電子制御可能なセンシングシリンダーや油圧バルブを採用するとともに、運転席にガイダンス装置(タブレット)を設置し、オペレーターはそこに表示されるガイダンス画面で、道路線形や作業装置が自動で動作するタイミング等を確認することができる(図- 5、6)。
なお、自動での動作中にオペレーターが危険を感じた場合は、作業装置の操作レバーを動かすことで自動制御は解除され、手動で動かせる仕様としている。
次に、除雪トラック、除雪グレーダ、ロータリ除雪車、小形除雪車のそれぞれの自動化技術について紹介する。
⑴除雪トラック
除雪トラックの作業装置は、新雪などを除雪する「フロントプラウ」、圧雪などの路面を整正する「グレーダ装置」、交差点や沿道施設の出入り口のような雪を置いてはいけない区間において一時的に雪を抱え込む「サイドシャッタ」で構成されている。
フロントプラウは、進行角を制御して交差点などで雪を前送りする動作や、障害物(マンホールや橋梁ジョイント等)を回避するため作業装置を上下する動作を自動化している。
グレーダ装置は、道路の幅が広い箇所などでブレードを伸ばすなど伸縮量の調整や、障害物を回避するため作業装置を上下する動作を自動化している。
サイドシャッタは交差点などで雪が残らないように、作業装置の開閉動作を自動化している(図- 7、8)。
⑵除雪グレーダ
除雪グレーダの作業装置は、新雪除雪や路面整正をする「グレーダ装置(ブレード)」、グレーダ装置の推進角を変更する「サークル」、交差点など雪を置いてはいけない区間において一時的に雪を抱え込む「シャッターブレード」で構成されている。
除雪グレーダでは、作業負荷と位置情報を基にブレードとサークル、シャッターブレードを自動で動作する技術の開発を行っている。
ブレードの抱える雪が多くなり作業負荷が増えると車両速度が低下してしまうため、速度が低下する前にサークルを回転させて推進角を小さくして作業負荷を低減し、速度を維持する制御を自動化している。
また、ブレードは障害物を回避するため作業装置を上下する動作を自動化しており、シャッターブレードは交差点などで雪が残らないように開閉する動作を自動化している(図- 9、10)。
⑶ロータリ除雪車
ロータリ除雪車は、雪堤を崩して装置内へ掻き込む「オーガ」と、砕いた雪を投雪する「ブロア」、投雪方向を調整する「シュート」「シュートキャップ」の作業装置で構成されている。
これらの作業装置は、位置情報を基にブロワ旋回、シュート旋回、シュート伸縮、シュートキャップ開閉の制御をすることで、投雪場所を自動で変更することできる(図- 11)。
また、位置情報に加えて、3D-LiDARにより雪堤高さを検知して雪堤の頂点に投雪するようにシュートキャップを制御する機能も開発している(図- 12)。
なお、ロータリ除雪車では、これまでオペレーターが行ってきた複雑な操作を再現するため「ならい制御」を用いている。
これは実際にオペレーターが行った操作を、各作業装置に取り付けてあるセンサーで計測を行い、自動制御用のデータを自動で作成、記録し、再現するものである。
⑷小形除雪車
小形除雪車はロータリ除雪車と同様、「オーガ」「ブロア」「シュート」「シュートキャップ」の作業装置で構成されている(図- 13)。
これらの作業装置は、位置情報を基にオーガとシュートを自動で動作する機能と、オーガが歩道の不陸に自動で追従できる機構を開発している。
また、オペレーターが設定した高さに、自動で投雪高さを調整する機能の開発も行っているところである(図- 14)。
3. 開発状況と今後の方針
現在、北海道開発局、東北地方整備局および北陸地方整備局にて、さまざまな条件下で自動化機械の実証実験を行っており、その中で判明した以下のような課題の解消に向けて検討を行っている。
・動作精度の向上
・メンテナンス体制の確保
・オペレーターへの説明
また、自動化機械の全国展開に向けて、各種マニュアルの作成や、オペレーターの方々等に作業装置の自動化について理解を深めていただけるよう動画などの資料作成にも取り組んでいるところである。
将来にわたっての除排雪体制の確保に向けて、複雑な操作を行わなくても除雪作業が行える省力化や、担い手不足に対応すべくオペレーター1 人で除雪作業を行うワンマン化も視野に、自動化機械の現場導入を進めていく考えである(図- 15)。
4. おわりに
除雪作業は、降雪により視界が悪い上、積雪により道路表面が確認できない悪条件の中、オペレーターの知識や経験を基に作業を行う熟練した技術により成り立っている。
一方、除雪作業従事者の高齢化や担い手不足、熟練技術者の減少などの課題に直面しており、除雪作業従事者を増やすだけでなく、未経験者でも除雪作業が行えるような技術や、少ない人数で除雪作業が行えるような技術開発や普及が必要不可欠と考える。
「豪雪地帯対策基本計画」(令和4年12月閣議決定)においても、除雪機械の自動化等の開発・普及を図ることとなっており、地域の安全・安心な暮らしや、経済活動を支える道路交通を確保するため、また除雪作業が若い人にとって夢を持てる魅力ある仕事とするためにも、除雪機械の作業装置自動化の取り組みを引き続き進めていく。
【出典】
積算資料公表価格版2025年7月号

最終更新日:2025-06-19
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