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「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」の改訂について

1. はじめに

都市公園は、多様なレクリエーションや自然とのふれあいの場となるほか、うるおいのある生活環境の形成、都市や地域の防災性の向上、野生生物の生息・生育環境の確保、豊かな地域づくりに資する交流の場の提供等の多様な機能や効用を有する都市の「みどり」の根幹的な施設である。
そのため、樹木の安全性の確保と樹木の持つ機能や効用の増進は、継続的に両立させていくことが必要であるが、都市公園内等の公的空間における樹木の多くは、老齢化・大径木化が進行し、倒伏や落枝による重大な事故等の安全確保上のリスクは高まっている。
このような背景から、平成29年9月、国土交通省では、都市公園の樹木を起因とした事故等を未然に防止し、公園利用者等の安全・安心を確保するため、「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」(以下、「本指針(案)」という)並びに「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)参考資料」(以下、「参考資料」という)を策定した。
 
その後、国土交通省では都市における「緑地の保全及び緑化の推進に関する基本的な方針」(緑の基本方針)を令和6年12月に策定・公表した。
また、都市公園で倒木等による事故が発生している状況を踏まえ、全国の都市公園を対象として倒木等の調査を実施し、その結果を令和7年4月に公表した。
これらを踏まえ、令和8年3月に本指針(案)に点検の実施の促進に資する内容を追加するといった改訂を行い、加えて参考資料についても内容の追加を行っている。
本稿ではこの本指針(案)並びに参考資料の改訂に関して紹介したい。
 
 

2. 都市公園の安全等に関する基準等

国土交通省では、都市公園法(昭和31年法律第79号)第三十一条に規定されている国による都市公園の行政又は技術に関する助言として、都市公園法施行令(昭和31年政令第290号)第七条の「公園施設は、安全上及び衛生上必要な構造を有するものとしなければならない。」との規定を踏まえ、都市公園における公園施設の安全性の確保のために指針等を策定し周知している。
都市公園における遊び場の安全性を高めるものとしては、都市公園法施行令第五条に規定される遊戯施設のうち主として子どもの利用に供することを目的として本体の一部が設置面に固定されているものを対象施設として、「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」を平成14年3月に策定、令和6年6月には改訂第3版を策定・公表している(都市公園に設置する健康器具系施設のうち、子どもが利用する可能性のある健康器具系施設を対象に、「別編:子どもが利用する可能性のある健康器具系施設」(令和6年6月)も策定・公表している。)。
また、文部科学省及び国土交通省において、遊泳利用に供することを目的として新たに設置する、もしくは既に設置されているプール施設のうち、第一義的には、学校施設としてのプール、社会体育施設としてのプール及び都市公園における公園施設としてのプールを対象に、「プールの安全標準指針」を平成19年3月にとりまとめて公表している。
 
上述の2つの指針並びに建築基準法、電気事業法、ボイラー及び圧力容器安全規則、消防法等の規定に従って行われる調査・点検・検査の対象となるものを除いた、都市公園法第二条第二項、都市公園法施行令第五条並びに都市公園法施行規則第一条及び第一条の二に規定する公園施設については、公園施設の安全点検の前提となる考え方及び安全点検の実施に関する事項について整理した「公園施設の安全点検に係る指針(案)」を国土交通省においてとりまとめ、平成27年4月に公表している。
そして、本指針(案)は、この「公園施設の安全点検に関する指針(案)」の維持管理段階における樹木の点検部分に関する別冊という位置づけで、樹木の安全点検に関して配慮すべき事項を示すものとして策定・公表したものとなっている。
 
また、国土交通省の策定した指針類のほか、都市公園に関わるガイドラインとしては、運動・スポーツに関わる組織や個人が、科学的知見に基づき、常に必要な知見を更新して、自身が行なっている安全対策の評価・改善を図っていくことを支援するため、共通して必要となる事故防止対策や暴力・ハラスメント防止対策をとりまとめた、「運動・スポーツの安全確保対策の評価・改善のためのガイドライン(試行版)」が、令和8年1月にスポーツ庁によって公表されている(ガイドラインは、すべての関係者が運動・スポーツの現場でそのまま活用できるよう5分冊で対象者を分けた構成になっており、その1つに運動・スポーツ関連施設の設置・管理運営者向けがあり、対象となる施設には各種公園及び公園の一部に設けられた運動・スポーツ設備が挙げられている。)。
また、木造立体迷路のサービス提供の際(運営時)において、関係事業者(遊具メーカー、販売業者、サービス提供事業者、サービス提供が行われる施設管理者等)が取り組むことが望ましい事項を示した「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」が、令和8年2月に経済産業省によって公表されたところである。
なお、これらのガイドライン類のそれぞれの公表時においては、国土交通省から都市公園の公園管理者に対して、ガイドライン類が公表された旨の周知を行い、更なる安全性の向上について依頼したところである。
 
我が国の社会資本ストックは高度経済成長期に集中的に整備されており、今後の急速な老朽化で、重大な事故や致命的な損傷等の発生リスクが高まることが懸念される昨今において、様々な施設の安全性の向上が求められているが、都市公園においても例外ではない。
公園管理者には、各種指針やガイドライン類等を参考に、管理施設の安全の確保が図られるよう、必要な取組の実施が一層求められている。
 
 

3. 都市公園における樹木等の事故の発生状況(表-1、図-1~5)

令和7年4月、国土交通省では、都市公園や道路において倒木等の事故が発生している状況を踏まえて実施した全国の倒木等による人身・物損事故に関する調査の結果をとりまとめ、公表した。
令和3年4月1日から令和6年11月7日(調査時点)に発生した樹木の倒木等の事故発生状況及び樹木点検の実施状況を調査したもので、都市公園の調査は全国を対象に実施したものである(以下、「樹木調査」という)。
その結果、約3年半の間に、全国の都市公園において計931件の樹木に関連する事故(うち、人身事故77件)が発生していたことが分かった。
倒木等の主な要因は腐朽・病害が最も多く、強風、台風に起因する被害が続いた。
倒木等の被害形態としては、落枝が最多になる樹種も確認されたものの、被害が5本以上の樹種の大半は倒木となった。
樹種別の被害本数としてはコナラが最多であり、次いでサクラ類、そして、ケヤキ、アカマツ・クロマツ類、クヌギと続くが、樹木調査において被害本数が全体の10%以上を占める樹種はコナラとサクラ類のみとなっている。
同時に実施した街路樹の調査の結果では、被害本数が全体の10%以上を占める樹種はケヤキ、サクラ類となり、コナラを含む他の樹種は全体の2%にも満たなかったことから、コナラの被害は都市公園の樹木の被害の特徴となっているが、都市公園におけるコナラ類注1)の被害については、その約4割注2)にナラ枯れの被害があったことも同樹木調査から判明している。
 

表-1 樹木調査の結果
表-1 樹木調査の結果
図-1  樹木調査[1]全国の都市公園:年度別の倒木等発生件数とその事故種別
図-1  樹木調査[1]全国の都市公園:
年度別の倒木等発生件数とその事故種別
図-2  樹木調査[1]全国の都市公園:被害形態とその要因
図-2  樹木調査[1]全国の都市公園:被害形態とその要因
図-3  樹木調査[1]全国の都市公園:樹種別の被害本数と被害形態(対象樹木:被害が5本以上の樹種)
図-3  樹木調査[1]全国の都市公園:
樹種別の被害本数と被害形態(対象樹木:被害が5本以上の樹種)
図-4  樹木調査[2]国・都道府県・自治体が管理する道路:樹種別の被害本数と被害形態(対象樹木:被害が5本以上の樹種)
図-4  樹木調査[2]国・都道府県・自治体が管理する道路:
樹種別の被害本数と被害形態(対象樹木:被害が5本以上の樹種)
図-5  樹木調査[1]全国の都市公園:コナラ類のナラ枯れ被害の有無(対象樹木:コナラ,クヌギ,ミズナラ N=128本)
図-5  樹木調査[1]全国の都市公園:コナラ類のナラ枯れ被害の有無
(対象樹木:コナラ,クヌギ,ミズナラ N=128本)

注1)被害樹木のうち,コナラ,クヌギ,ミズナラ
注2)ナラ枯れの有無が判明しているN=128本が対象
 
 

4. 「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」等の改訂(表-2、写真-1~3)

平成29年9月に策定した本指針(案)においては、日常点検や定期点検をとりあげているほか、災害対策点検や診断といった種々の点検・診断について、種類に応じて適切に行うことが望ましいと記載しており、令和8年3月、前章の樹木調査の結果等を踏まえて本指針(案)並びに参考資料の改訂を行ったことは先述のとおりであるが、点検等でナラ枯れに着目した記載は改訂前にはなく、今般の改訂による追記事項の一つとなっている。
ナラ類やシイ・カシ類についてナラ枯れを、そしてマツ属についてはマツ枯れを新たに追記しているが、ナラ枯れやマツ枯れは共通して穿孔害虫等が媒介して生じる被害であり、倒木や落枝が生じるおそれがあるため、適切な対処が必要となる。
近接する同種の樹木へ被害が拡大する可能性についても考慮が必要であり、適宜適切な害虫の防除の取組が求められる。
 
また、サクラをはじめとしたバラ科の樹木では、特定外来生物に指定されているクビアカツヤカミキリの被害が拡大しており、このことについても速やかな措置の必要性について追記している。
 
加えて、本指針(案)の「10.点検結果に応じた措置・対策」の基本的な考え方(四角囲み)の中では、措置・対策として伐採を行う場合についての考えを追加し、解説中(1)④に当該解説を差し込んだ(改訂前④以降の解説は繰り下げ)。
当該樹木の機能・役割を周辺の樹木との関係を含め確認した上で、植え替え、樹種の変更、撤去等を適切に検討することが望ましく、また、伐採の判断の経緯の記録や判断のマニュアル化等により、伐採に際して一定の基準や目安を設けるよう努めることが望ましいといった趣旨の追記となっている。
その他、点検や診断結果記録の電子化について、本指針(案)と参考資料の双方に追記している。
樹木ごとに点検票等を作成し、点検・診断項目ごとに発見された変状及び異常等を記入して整理保存することについては、改訂前においても、点検・診断の実施状況等の記録として、点検の結果のほか、写真、健全度の判定結果、措置の必要の有無と実施内容、次回点検予定の有無と時期等を記入することが望ましい旨の記載があった。
今般、この記録を電子化することについて言及している。
都市公園維持管理現況調査の結果から、都市公園法第十七条に規定する都市公園台帳、また都市公園法施行規則第三条の二に規定する遊戯施設等の点検結果の記録における電子化の割合は、令和6年度末時点でどちらも5~6割程度にとどまり、紙媒体のみで管理している公園管理者も少なくない現状が分かった。
これらの法や施行令で規定された台帳等の電子化の状況を鑑みると、樹木の点検票に係る統計データはないものの、その電子化の割合も高くないものと推測され、点検・管理の効率化や省力化・管理の高度化に資する情報の電子化を促進するためにも、今般、当該事項の追記を行ったものである。
なお、参考資料に掲載の「樹木点検票」や「樹木診断カルテ」等のデータ版については、国土交通省のホームページにおいてダウンロードが可能となっているので参考にされたい。
加えて、参考資料に「Ⅺ電子データ化の取組事例」を記載しているため、併せて参照されたい。

表-2  参考資料:ナラ枯れ・マツ枯れ,サクラの被害に関する追加箇所(下線部)
表-2  参考資料:ナラ枯れ・マツ枯れ,サクラの被害に関する追加箇所(下線部)
写真-1 ナラ枯れ被害で枯死した樹木
写真-1 ナラ枯れ被害で枯死した樹木
写真-2 マツ枯れ被害で枯死した樹木
写真-2 マツ枯れ被害で枯死した樹木
写真-3 マツ枯れ対策の有無
写真-3 マツ枯れ対策の有無

 
樹木点検票(Wordファイル)、樹木診断カルテ(Wordファイル)
(国土交通省Webページ)https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_tk_000109.html

 
 

5. 「都市公園における樹木の安全管理に関する事例集」

前章で紹介した参考資料「Ⅺ電子データ化の取組事例」については、国土交通省関東地方整備局建政部公園利活用推進センターが令和8年3月に策定・公表した「都市公園における樹木の安全管理に関する事例集」(以下、「本事例集」という)から抜粋したものである。
本事例集では、先述の樹木調査の結果を踏まえ、関東地方整備局管内の地方公共団体等に対し、都市公園における樹木の安全管理に係る工夫や取組事例についてアンケート・ヒアリング調査した結果をとりまとめている。
都市公園を管理する現場では人員や予算の制約があり、いかにして効率的かつ適切な公園樹木の管理を実施していくかが課題となっている中で、限られたリソースの中で事故を未然に防ぐためには、従来の基本的な管理手法に加え、効率的・効果的な点検、リスクに応じたメリハリのある対策・計画、新たな知見の導入が有効であり、日々の維持管理業務の参考になる19自治体の事例を取り上げることとした。
日常点検や定期点検における工夫事例をまとめた「点検編」、危険木への未然防止と対処に関する現場での工夫事例をまとめた「対策編」、樹木の計画的な安全対策と管理体制の工夫事例をまとめた「管理計画編」の3編で構成しており、独自のガイドライン等を公表している自治体については、その概要とURL等を掲載している。
本事例集についても、本指針(案)並びに参考資料と併せて、樹木の安全管理に際しての参考に活用されたい。
 
 

6. 「国土交通省登録資格」の活用

本指針(案)には、樹木の点検・診断にあたり、樹種ごとの様々な特性を理解し、変状及び異常の発生の有無や程度について誤った判断をしないよう留意する必要があり、また必要に応じて専門技術者の協力を得ることが望ましい旨が記載されている。
 
国土交通省は、平成26年6月に改正された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)を踏まえ、民間団体等が運営する一定水準の技術力等を有する資格について、国や地方公共団体の業務に活用できるよう、平成26年度に「国土交通省登録資格」として登録する制度を導入した。
令和6年度、公園の樹木を起因とした事故を未然に防止し、公園利用者の安全・安心を確保していくことが喫緊の課題とされたことを背景に、公園樹木の点検・診断を適切に進めるためには樹木の専門家の知識が必要であり、指針でも記載の公園の樹木の老齢化・大径木化が今後さらに進行していくことが懸念されることから、民間資格の活用の推進が必要不可欠であるとして、「国土交通省登録資格」における「公園施設(樹木)」の施設分野を拡充した。
現時点の当該分野に登録されている資格は表-3のとおりである。
 
樹木調査の結果、公園樹木の点検実施状況について、全国における樹木の定期点検を実施している割合は約4割であり、そのうち外注している割合は約5割であった。
さらに、外注のうち、発注時に技術的要件を設定している割合は6割強となっている(図-6~8)。
樹木医等の専門資格を有する自治体職員等が実施している場合や、技術的要件を設定していない中でも外注先が自主的に樹木医等の有資格者を点検に充てる場合も想定されるが、樹木の点検・診断を適切に実施する観点から、更なる専門技術者の活用の検討が必要である。

表-3 国土交通省登録資格(抜粋)
表-3 国土交通省登録資格(抜粋)
図-6~8 樹木調査[1]全国の都市公園
図-6~8 樹木調査[1]全国の都市公園

 
 

7. おわりに

本指針(案)並びに参考資料、本事例集、国土交通省から周知した樹木調査の結果、また樹木医などの専門技術者等の活用によって、樹木の持つ機能や効用の増進、そして樹木の安全性の確保の継続的な両立を今後も図っていくことが必要である。
 
令和7年度末から令和8年度4月にかけては、同一公園内で相次いで倒木等の事故が発生し、一部では人身・物損の被害が生じた。
このことを受け、国土交通省からは令和8年4月10日付に事務連絡を発出し、各公園管理者による樹木の日常点検や定期点検の実施等の徹底を依頼したところであるが、これからの時期においては、台風が枝折れ等の変状及び異常が発生する直接的な原因になるほか、秋雨の時期はキノコの発生が多くなる傾向にあり、それぞれの時期に応じた適切な措置・対策が求められる。
今後とも都市公園における安全管理に際し、皆様のお力添えをいただければ幸いである。


【参考URL】
「公園施設の安全点検に係る指針」(国土交通省Webページ)
https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_tk_000084.html
「樹木の点検・診断に関する指針(案)について」(国土交通省Webページ)
https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_tk_000109.html
「都市公園における樹木の安全管理に関する事例集」(国土交通省関東地方整備局Webページ)
https://www.ktr.mlit.go.jp/city_park/machi/city_park_machi00000075.html
「「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」について」(国土交通省Webページ)
https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_tk_000083.html
「「プールの安全標準指針」について」(国土交通省Webページ)
https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_fr_000019.html
「運動・スポーツにおける安全対策の評価・改善のためのガイドライン(試行版)」(スポーツ庁Webページ)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/list/1372002.htm
「木造立体迷路に関する安全基準ガイドライン」(経済産業省Webページ)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/guideline_mokuzou.html
「倒木等による事故に関する全国調査について」(国土交通省Webページ)
https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_tk_000198.html
「公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格について」(国土交通省Webページ)
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000098.html
 
 
 

国土交通省 都市局 公園緑地・景観課 
東吉 寛樹

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2026年8月号


積算資料公表価格版2026年8月号

最終更新日:2026-07-22

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