さいたま市におけるPark-PFIの取組み
はじめに
さいたま市は、平成13年5月の浦和市・大宮市・与野市の3市合併により誕生しました。
平成15年4月には政令指定都市へ移行し、平成17年4月の岩槻市の合併を経て、令和5年に政令指定都市移行20周年を迎えました。
関東平野のほぼ中央、東京から20~40km圏域に位置する本市は、全体的に平坦な地形を有します。
大宮駅、さいたま新都心駅、浦和駅などの主要鉄道駅周辺に商業用地が分布し、鉄道沿線を中心に住宅地などの市街地が形成されています。
市街地を挟むように荒川、元荒川、見沼田んぼといった貴重な自然環境が広がり、まちなかと自然環境が近接する緑豊かな特徴を備えています(図-1)

図-1 さいたま市の緑の構造
本市では市民満足度向上を図るため、「さいたま市を住みやすいと思う市民の割合」=「市民満足度(CS)」と定め、2030年までに市民満足度を90%以上とすることを目指す「さいたま市CS90+運動」に全庁一丸で取り組んでおります。
令和7年度の市民意識調査では、「住みやすいと思う」、「住み続けたいと思う」と回答した市民の割合はいずれも85%を超えました。
また、少子高齢化の進展により日本全体が人口減少局面にある中でも、本市は転入超過・人口増加が続いており、令和8年6月には人口が136万人を突破しました。
0歳から14歳の転入超過数は大都市の中でも上位に位置していることから、今後も発展していく都市であると考えています。
1. Park-PFI制度の導入検討の背景と経緯
本市は、最上位の行政計画である総合振興計画において、将来都市像の一つに「上質な生活都市」を掲げています。
その実現に向け、都市公園の適正な配置や既存ストックの活用は重要な施策でしたが、これまで都市公園を取り巻く状況は、量・質の両面で課題がありました。
量的な面では、目標として市民一人当たりの都市公園面積を10m²と掲げ、特に公園の空白地域において、徒歩圏内の身近な公園の整備を重点的に進めてきました。
しかし、市街地における用地確保の困難さや公園整備の進捗を上回る人口増加などの要因により、Park-PFI制度の導入検討に着手した平成30年度時点では、一人当たりの都市公園面積は5.10m²という状況でした(表- 1)。
質的な面では、公民連携手法による効率的かつ効果的な維持管理を目的に、全ての既存の都市公園で指定管理者制度を導入していましたが、整備後30年以上を経過する公園が多く、施設の老朽化や陳腐化による公園の魅力低減、維持管理費の増大が大きな課題となっていました。
このような背景を踏まえ、本市ではPark-PFIの創設を契機として、既存の都市公園をリニューアルし、公園の質向上や利活用の促進などを図るため、Park-PFI制度の導入検討を直ちに開始しました。
検討に当たって、公園面積、借地状況、用途地域、土地の活用性による整理、設置年数、主要な公園施設などの公園概要を整理し、22カ所の公園をPark- PFI事業の対象候補として選定しました。
さらに、他自治体の先進事例、民間事業者へのヒアリング結果などを踏まえ、①「新規整備を行う都市公園」、②「地域・まちづくりの交流や拠点としてのポテンシャルが高い都市公園」、③「公園としての潜在的な魅力や機能が十分に発揮できていない都市公園」、④「老朽化が進み公園の魅力や機能が著しく低下している都市公園」、⑤「民間事業者の参入意欲が高い都市公園」を 選定基準とし、22カ所の公園の中から優先的に事業検討を行う5カ所の公園を選定しました。
その後、学識経験者への意見聴取を行った上で、それぞれの公園ごとに公民連携方針を策定し、具体的な整備に向けて検討を進めました。
なお、前述のとおり既存の都市公園には既に指定管理者制度を導入していましたが、利用者の利便向上を図るため、Park-PFI事業者を当該公園の指定管理者とする方針を採用しました。
2. Park-PFIにより整備した公園
最終的に選定した5カ所(表- 2)の公園のうち、既存の都市公園である与野公園、さぎ山記念公園については、公園の質向上、利用者のさらなる利便性向上を目的にPark-PFIを導入しました。
一方、新規に整備する三室中央公園、(仮称)岩槻南部新和西地区近隣公園、(仮称)さいたま市農業交流公園については、新規整備による公園区域全域を事業区域とし、民間企業のノウハウを生かした整備を進めています。
現在、与野公園、三室中央公園の2カ所が完成しており、さぎ山記念公園、(仮称)岩槻南部新和西地区近隣公園、(仮称)さいたま市農業交流公園の3カ所は整備中です。
次節では、既にオープンしている与野公園と 三室中央公園について紹介します。
2-1 与野公園
(1) 概要
本公園はバラとサクラの名所として知られ、例年5月に開催される「ばらまつり」には3,000株以上の規模を誇るバラを鑑賞しようと市内外から1日当たり最大8万人にも上る観光客が訪れます。
バラ園の一部はボランティア団体のバラサポーターによって管理されており、地域住民に非常に親しまれています。
明治10年に太政官布達により開園した歴史ある公園であり、国道17号新大宮バイパスに接するなど交通の便にも恵まれています。
一方で、公園施設の老朽化に加え、花の名所と親和性の高い飲食施設・休憩施設が十分に整備されていないことや駐車場の不足などの課題を抱えていました。
(2) 事業内容
地域住民のみならず、地域外からの来園者にとっても憩いや遊びの場となる緑のオープンスペースや遊戯施設の整備に加え、立地を生かした収益施設の整備やイベント開催など、にぎわい創出や公園の魅力向上を目指し、Park-PFI事業を実施しました。
実施に当たり、①バラ園やサクラなど既存の花や樹木を生かした「美しい公園」、②公園に訪れる誰もが、年間を通じて憩い、にぎわうことのできる「魅力ある公園」、③子どもたちが安心・安全に遊ぶことができる「楽しめる公園」を基本方針とし、令和4年8月に事業者を公募しました。
公募の結果、令和5年1月に大和リースグループを事業予定者に選定し、「公園で“まち”“ひと” “とき”をつなぐみんなの杜Living PARK YONO」を事業コンセプトとして設定しました(図- 2)。
特定公園施設は、公園のシンボルである「バラ園」を一望できる視点場かつ滞在空間としての機能を持った展望デッキ「ばらテラス」を設置し、その下部にトイレを新設しました(写真- 1)。
また、「あそびのひろば」には、オリジナルのバンク遊具、インクルーシブ遊具を設置しました(写真- 2)。
さらに、不足していた駐車場の拡張や、グリーンインフラへの配慮として雨庭を整備しました。
公募対象公園施設は、来園者の日常利用を想定したベーカリーカフェを設置しました(写真- 3)。

図-2 与野公園マップ

写真-1 ばらテラス(展望デッキ)

写真-2 あそびのひろば

写真-3 ベーカリーカフェ
(3) 開園後の状況
令和7年4月のリニューアルオープン後は、キッチンカーの出店やワークショップの開催など、公園のにぎわいづくりの取組みが実施され、日常的な利用者が増加しました。
ベーカリーカフェが好評なことも相まって、バラの開花シーズンである4月から6月にかけては来園者数がリニューアル前の約2倍に達するなど、公園の魅力と利用者の利便性が向上しました。
2-2 三室中央公園(愛称:ヌゥパーク)
(1) 概要
本公園は、埼玉県立総合教育センターの跡地に新規整備された公園です。
主要幹線道路に近接し、低層住宅地が広がる人口集中地区に位置しますが、これまで周辺地域にはまとまった規模の公園が未整備であり、地域の防災やコミュニティの拠点となるオープンスペースの確保が求められているエリアでした。
(2) 事業内容
整備方針として、①地域住民の憩い・遊び・運動の場としてにぎわいや魅力のある公園、②発災時に地域住民が逃げ込めるオープンスペースを有する公園、③既存の樹木を生かした周辺地域の景観に溶け込む美しい公園、の3つの方針を設定し、令和4年2月に事業者を公募しました。
公募の結果、令和4年8月にヌゥパーク共同企業体を事業予定者に選定し、「毎日楽しく元気になれる地域の庭、人と地域がつながり、広域ともつながる」を事業コンセプトとして設定しました。
また、公園が見沼田んぼに近接していることから、事業者提案により見沼田んぼの竜神伝説に由来する、本市のPRキャラクター「つなが竜ヌゥ」をシンボルとした公園に整備することにしました(図- 3、4)。

図-3 さいたま市PRキャラクター「つなが竜ヌゥ」

図-4 三室中央公園マップ
特定公園施設は、芝生広場に「つなが竜ヌゥ」をモチーフにした遊具やインクルーシブ遊具を整備しました(写真- 4、5)。
加えて、災害時の一時避難場所を想定し、災害時にも利用できる トイレやコンセント付きのソーラー式照明灯を整備しました。
さらに、「つなが竜ヌゥ」に連想し、農的体験ができる水田を整備しました(写真- 6)。

写真-4 ヌゥすべり台

写真-5 ユニバーサルブランコ

写真-6 水田
公募対象公園施設は、管理事務所、おにぎりカフェ、地域活動の拠点となるレンタルルームを併設したコミュニティハウスを整備しました(写真- 7)。
この他、管理・運営の面でも地域住民の参画を目指し、整備検討段階からボランティア(ヌゥサポーター)を募り、公園開設に向けたイベントなどを開催しました。

写真-7 コミュニティハウス
(3) 開園後の状況
令和7年10月の新規オープンから、平日・休日を問わず多世代の利用者が訪れ、レンタルルームでは周辺住民のコミュニティ活動の場として活用されています。
また、地域住民が参画し、日常の清掃活動、水田の田植えやミニ果樹園での収穫体験などのイベントを企画・実施しており、「地域の庭」として親しまれています。
3. 今後に向けて
本市で初めてPark-PFIを活用した与野公園は、リニューアルオープンから1年が経過しました。
公募設置等指針の策定をはじめ、特定公園施設整備費の債務負担行為の設定や指定管理者の指定などの議会手続きなど、先例のない事務において実務的に細かな調整が求められ、担当部署はまさに手探りで導入を進めてきました。
その結果、老朽化した施設の更新や公園の魅力向上、地域コミュニティの拠点化やにぎわい創出といった、当初期待されていた効果が十分に発現しており、おおむね順調に運営されていると評価しています。
しかし、20年という長期にわたるプロジェクトで、これらの効果を安定的に持続していくことは容易ではありません。
現時点では、次の2点を整理することが重要であると考えます。
まずは、事業効果の適切な検証です。
公募対象公園施設であるカフェなどの収益施設には、平日・休日を問わず多くの公園利用者が訪れます。
事業者には、周辺地域の景観と公募対象公園施設が一体となった質の高い維持管理を期待していますが、これらの効果を検証するためには、透明性の高い評価基準を整備し、利用者数や満足度の向上、地域貢献度などを多角的な視点で適切に測定していくことが重要です。
次に、持続可能な公園の管理・運営の仕組みづくりです。
本市ではPark-PFI事業者が指定管理者として20年間にわたり公園を管理・運営することとなります。
そのため、事業者において運営資金や人材を安定的に確保することが重要です。
また、事業者の強みを発揮できるよう行政と事業者が課題を共有し、課題解決に向けた工夫・改善を実施するとともに、地域住民と連携した協力体制を構築することが不可欠であると考えます。
おわりに
少子高齢化を背景に、生産年齢人口の減少や扶助費の増加など、自治体を取り巻く状況は厳しさを増しています。
都市公園においても、維持管理費の増加や公園施設の老朽化といった課題が大きくフォーカスされています。
一方で、都市公園の有するさまざまな機能は、良好な都市環境の形成や地域課題の解決に大きく寄与するものです。
現下の物価高騰や国際情勢など不透明な社会経済状況の中で、民間事業者の参入意欲を喚起するためには、公募に際して自由度の高い条件設定などさらなる工夫が求められます。
Park- PFI制度は都市公園が抱える課題への有効な対応策の一つです。
今後もPark- PFI制度の導入について、調査・検討を進めていきたいと考えています。
【出典】
最終更新日:2026-07-22

