公民連携の公園リノベーションによる新たな子育て空間の創出~長岡京市・長岡公園~
はじめに
京都府長岡京市の長岡公園では、このたび同市に本社を置く民間企業の寄附による大規模な公園リノベーション(以下、「再整備」)1)が行われ、令和7(2025)年9月、リニューアルオープンした。
これまで、都市公園においては、民間事業者・団体などが地元の公共団体に対しベンチ、イス、時計塔などの公園施設を個別に寄附することが一般的に行われてきた。
しかし、今回は従来とはやや異なる、市民ニーズなどを踏まえた新たなかたちでの公園再整備が行われたことから、その進め方、取組内容などについて報告したい。
1. 経緯など
長岡京市(以下、「市」)は、約1,200年前に長岡京の都が置かれた歴史ある都市で、京都府の南西部に位置し、人口約8.2万人、東西約6.5㎞、南北約4.3㎞で東西に長い長方形をなし総面積19.17㎢を有する。
JR東海道本線と阪急京都本線が南北に並走し、京都市と大阪市の中間に位置する利便性と豊かな自然環境を有する市である(図- 1)。
都市公園の整備については、近年増加傾向にあるものの近隣市町と比較しても低い状況で、まちなかの緑の増進が必要となっている。
また、既設公園の老朽化に伴う施設更新、新しい時代に対応した公園づくりなどが課題で、今回再整備が行われた長岡公園もその課題を抱えていた2)。

図-1 長岡京市の位置
一方、株式会社村田製作所(以下、「村田製作所」)3)は、セラミックスをベースとする世界的な総合電子部品メーカーで、グローバルに製品供給している企業である。
昭和19(1944)年に京都市内で創業し、平成16(2004)年に本社をJR長岡京駅前へ移転し、現在に至る。
また、村田製作所は、次世代育成支援や環境保護など多様な社会・地域貢献活動にも力を注いでいる(表- 1)。
市と村田製作所は、地域の発展や持続可能なまちづくりの推進を目的とするとともに、令和4(2022)年の市制50周年の祝意も含めた包括連携に関する協定を同年5月に締結した。
この具体的な取組みとして同年10月、両者は長岡公園の再整備事業のための協定を締結し、村田製作所が基本構想、基本計画、測量、基本設計、実施設計、工事発注・監理を全額負担、執行し、完成した公園施設を市に寄附した。
株式会社空間創研(以下、「空間」)は、市および村田製作所との協議・調整を進めるとともに全体マネジメントを担い事業を推進した。
2. 長岡公園の概要(写真- 1、2、表- 2)
長岡公園は、キリシマツツジの群生を有する菅原道真公ゆかりの長岡天満宮と、平成25(2013)年度に優れた景観区域として都市景観大賞(国土交通大臣賞)を受賞した「八条ヶ池周辺地区」4)に隣接する地区公園である。
供用開始から40年が経過し、施設の老朽化に対して速やかな改修が必要な状況にあることから、村田製作所の寄附による再整備を行うこととなった。

写真-1 長岡公園隣接地と再整備前(公園全体)
の状況(©Google)

写真-2 長岡公園の再整備前の状況(広場)
3. 再整備事業の進め方の特徴
今回の進め方の大きな特徴の一つとして、市と村田製作所の協議・調整のもとで、再整備の基本的な考え方などを議論により明らかにし、それを踏まえて長岡公園の再整備事業のための協定を締結したという流れがある。
協定締結前に再整備構想を作成する必要があったことから、空間の提案により、村田製作所は美濃伸之兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科・兵庫県立淡路景観園芸学校教授を委員長とする懇談会を設置・開催し、令和4(2022)年9月、基本構想を策定した(表- 3)。
その後、再整備事業の協定を締結し、再整備事業が進展した。
4. 再整備事業内容の概要
1) 再整備構想のコンセプト(図- 2)
有識者からなる懇談会では、課題と再整備の方向性から再整備のキーワード、方針を抽出し、公園全体の再整備構想のコンセプトを「多様な人々が集い、安らぎ、公園で過ごす時間を楽しむこれからの長岡公園」と決定した。
これを受け、市と村田製作所は協定を締結した。
再整備構想のコンセプトに基づき、空間では、市および村田製作所と協議・調整を行いつつ、基本計画・設計、実施設計を進めた。
この中で公園全体約4haのうち、再整備完了までの時間的・経費的な制約条件や、どこまでの区域をどのような整備内容とすべきか、などを議論し「出会いゾーン」と「センターゾーン」の約1haの区域を再整備区域として設定した。

図-2 長岡公園の課題などの整理と再整備のコンセプト

図-3 長岡公園再整備区域

図-4 長岡公園再整備区域「センターゾーン」平面図
2) 「センターゾーン」の計画内容(写真- 3)
センターゾーンは、センター棟を中心に、空間的なあり方や景観的な視点も重視するとともに、近年の公園利用者のニーズなどの把握に努め、計画・設計した。
特に、センター棟の設計検討では、子育て世代が心地よく利用でき、多様な交流も期待できる、建築と周辺ランドスケープが一体となった開かれた場所づくりを目指し、市・関係者などへのヒアリングを踏まえ進めた。

写真-3 市・関係団体などへのヒアリングの様子
3) センター棟(休憩所、授乳室、トイレなど)(写真- 4、5)
建築設計は株式会社SALHAUS(共同代表:安原幹東京大学大学院教授)が担当した。
センター棟は、休憩室、授乳室、トイレなどから構成されている。
基本コンセプトは多世代に開かれた新たな公園の中心施設として、様々な方向から訪れる利用者を自然に受け入れるべく、大らかな屋根の下に、諸機能をゆるやかに収めた建築とした。
大屋根は京都府産の小径スギ製材を緻密に組み上げて架け渡し、互いに支え合わせる「レシプロカル構造」とした。
周辺の風景とつながる開放性と、適度に囲われた安心感が同居する空間を実現している。
また、休憩室の建具を開放すれば大屋根の下に心地よい風が吹き抜ける大きな半屋外空間となり、人々は思い思いに快適な居場所を見つけることができる5)。
この他、室内のテーブルには今回の再整備で発生した撤去・伐採した樹木を再利用している。
センター棟の愛称は、市が建築工事着手後に一般市民から募集し、「fuRari(ふらり)」に決定した。
ロゴも定め、センター棟や公園標識の表示、ホームページなどで広く広報した6)。

写真-4 センター棟「fuRari(ふらり)」
全景(手前は憩いの広場)(写真:笹倉 洋平)

写真-5 センター棟「fuRari(ふらり)」
室内から遊びの広場方向を臨む(写真:笹倉 洋平)
4) 遊びの広場(写真- 6~ 8)
センター棟に連続する南側区域は「遊びの広場」とし、その中でも子どもの遊び広場「でこぼこ広場」と乳幼児の遊び広場「ふんわり原っぱ」に機能を分けて計画した。
「ふんわり原っぱ」をセンター棟の授乳室や休憩室に隣接させ、一体的・連携した空間として整備することで、乳幼児の育児支援に寄与する設計とした。
また、「でこぼこ広場」は凹凸のある地形の上で子どもたちが自由に動き回れる空間となっている。
子どもを介した新たな交流の場、地域で子育てに関わる場としての役割を果たす機能として計画した。

写真-6 乳幼児の遊び広場「ふんわり原っぱ」
(写真:笹倉 洋平)

写真-7 遊びの広場からセンター棟方向を臨む
(写真:笹倉 洋平)

写真-8 子どもの遊び場「でこぼこ広場」,
すり鉢広場でくつろぐ姿
5) 施工および施工監理
市との協議・調整を踏まえ、村田製作所が造園工事・建築工事の両工事を発注した。
株式会社日比谷アメニス(以下、「日比谷」)が両工事を施工し、空間が施工監理を担当した。
令和6(2024)年8月に公園工事の着工後、同年11月に建築工事に着工し、令和7(2025)年8月再整備工事が完了した。
基本構想着手から再整備完了までの期間は、約3年半であった。
6) 指定管理者による管理運営
これまで、長岡公園の管理運営は、基本的に市が直営し業務の一部を外注していたが、今回の再整備を機に、市の都市公園として初めて指定管理者制度を導入した。
令和6(2024)年10月、再整備内容を前提に、公園全体約4.0haの指定管理者を公募し、同年12月に応募事業者から選定した結果、日比谷大阪支店に決定した。
指定管理業務は、リニューアルオープン前の令和7(2025)年7月から令和12(2030)年3月までの4年9か月でスタートした7)。
5. 長岡公園リニューアルオープン式典(写真- 9、10)
令和7(2025)年9月6日、快晴に恵まれた中、関係者多数が参加し、リニューアルオープン式典を迎えることができた。
当日は、村田製作所代表取締役社長 中島規巨から、長岡京市長 中小路健吾へ、寄附目録の贈呈が行われ、関係者によるテープカットで再整備区域の開園を祝った。
また、センター棟「fu Rari(ふらり)」の愛称紹介と愛称授与者への記念品贈呈、計画・設計者による「fuRari(ふらり)」および公園施設の紹介、ロゴの披露なども行われた。
式典後も、地域の市民団体による子ども向けの絵本の読み聞かせ会や、キッチンカーの出店などでにぎわった。

写真-9 長岡公園再整備区域全景
(写真:笹倉 洋平)

写真-10 村田製作所代表取締役社長 中島規巨(右)から,
長岡京市長 中小路健吾へ寄附目録贈呈
おわりに
今回の事業全体の内容、流れを整理したスキーム図は、図- 5の通りである。
また、今回の事業の特徴は、以下のようにまとめられる。

図-5 新たなかたちの公園リノベーション:
長岡公園再整備事業の全体スキーム図
(作成責任者:株式会社空間創研 橘)
(1) 事業の実施形態
村田製作所は、市との協議・調整のもと、公園再整備に係る事業経費を単なる金銭寄附にとどまらせず、自ら有識者懇談会を設置し、基本構想策定・計画策定から基本設計・実施設計に至るまでを一体的に実施し、併せて工事発注も行い事業を完成させた。
また、協議・調整などに必要な時間・場所・人材・ノウハウなども積極的に提供し、事業を効率的かつ効果的に推進し、寄贈へと結び付けた。
さらに、村田製作所社員の有志によるボランティア活動の一つとして、幼児・児童図書の寄附も行われた(写真- 11、12)。

写真-11 村田製作所社員有志からの寄附による図書(207冊)。
表紙には同社のロゴシール,裏表紙には寄贈者の想いが記された
手作りのシールが貼られている。

写真-12 こども保健室カフェ開催の様子
(センター棟の小上がりに村田製作所寄附の図書を配置)
(2) 事業実施の効果
民間からの金銭寄附の場合、通常であれば行政(市)事業の実施となり、寄附受納の事務手続き、計画・設計などの外部発注作業、工事入札事務などに一定の期間を要することが想定されるが、今回はこれらの手続きが軽減された。
加えて、民間のノウハウなどを生かすことで、事業のスムーズな進行と実現に結び付けた。
公民連携による効率的かつ効果的な事業推進のモデルケースになるものと考える。
(3) 新たな子育て空間の整備
市民ニーズなどを踏まえ、授乳室や休憩室、小上がりなどを有するセンター棟および、センター棟と一体的・連携した乳幼児の遊び場、子どもの遊び場の整備といった、建築とランドスケープ空間を総合的に計画・整備し、子育て支援への寄与、子どもを介した交流の場、地域で子育てに関わる場としての役割機能を付与する新たな公園施設を実現した。
再整備の開園後、市が市民アンケートを実施した結果、以下のように把握している8)。
・ 来園理由に、「きれいだから」という回答が再整備前よりも増えたことから、再整備が美観向上に寄与していたことがわかった。
・ 公園での過ごし方について、再整備前後で大きく変容した。
・ 再整備前に多かった「散歩、通り抜け」から、再整備後は「子どもを遊ばせた」利用が大幅に増加した。
・ 再整備後の滞在時間が増加したことから、長時間過ごせる環境が整ったことで、公園が「立ち寄る場所」から「過ごす場所」へと変化したといえる。
・ 総合満足度は、回答の約7割が高評価であった。
また、空間が公園を利用する子育て中の親に感想の聞き取り調査を実施したところ(令和8(2026)年3月上旬平日実施)、乳幼児の広場の芝生広場、砂場、手洗いなどの乳幼児向け施設の利便性や、センター棟「fu Rari(ふらり)」との動線、駐車場の整備などに好評価をいただいた。
施設の満足度が高いことがわかる。
また隣接市からの利用者も見受けられた。
今後も、より一層の利活用とともに市民・利用者に愛される公園となることを期待したい。(文中は全て敬称略)
(文責:株式会社空間創研 執行役員 橘 俊光)
【補注・引用文献など】
1) 都市公園などの施設を改修、修繕などの場合「再整備」が一般的であるが、ここでは新たな機能向上の実現や規模が大きいことなどからタイトルに「リノベーション」と表現した。
本文は「再整備」で統一した。
2) 長岡京市ホームページ
長岡公園の再整備について【更新日:令和8年2月3日】
https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000013848.html#link-hiroba
同上
長岡京市第2次みどりの基本計画(2026年3月24日)
https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000006662.html
3) 株式会社村田製作所ホームページ会社概要
https://corporate.murata.com/ja-jp/company/factsandfigures
4) 長岡京市ホームページ
八条ヶ池周辺地区が、都市景観大賞 大賞を受賞しました(2022年11月4日)
https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000003226.html
5) SALHAUSホームページ:長岡公園休憩所-fuRari-:京都府長岡京市/2025:Nagaoka Park Rest Pavilion -fuRari-:
https://salhaus.com/%e9%95%b7%e5%b2%a1%e5%85% ac%e5%9c%92%e4%bc%91%e6%86%a9%e6%89%80/
6) 長岡京市ホームページ
センター棟の愛称が決定しました! センター棟の愛称募集について
https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000013848.html#link-kettei
7) 長岡京市ホームページ 長岡公園指定管理について
https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000001175.html
8)長岡京市ホームページ
長岡公園再整備後の利用状況等に関するアンケート結果について
https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000013848.html#link-kekka
【出典】
最終更新日:2026-07-22

