カーボンニュートラルに資する建設発生土改良土の利用拡大に向けて
はじめに
「第1回循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する関係閣僚会議(2024年7月30日)において、当時の斎藤国土交通省大臣が「建設発生土」という用語を発したのを初めて聞きました」とのエピソードを積算資料公表価格版2025年8月号で紹介しましたが、2026年4月21日に「循環経済行動計画」1)が循環経済に関する関係閣僚会議において決定し、計画の施策集に「建設リサイクルの高度化」として「建設発生土の有効利用の促進」が示されました。
循環型経済、カーボンニュートラル(CN)を進めるための国土交通省重要施策として、「建設発生土リサイクル」にスポットライトが当てられていることは、積算資料公表価格版2025年8月号でも指摘しましたが、本稿では、建設発生土リサイクルのなかでも「改良土利用」に着目し、改良土利用によるCO2排出量削減効果、改良土利用拡大に向けた方策等について説明いたします。
1. 建設発生土リサイクル、改良土のCO2排出量削減効果
京都大学大学院加藤智大助教授等の研究成果によって、建設発生土リサイクル、建設発生土土質改良土のCO2排出量削減効果が初めて次のように定量的に算定されました。
なお、計算条件・方法等の詳細は掲載論文2)でご確認ください。
(1)建設発生土リサイクル
建設発生土を全て受入地へ搬出し、全ての建設工事で新材を搬入したシナリオにおけるCO2排出量は788万t-CO2であり、2018年度の実態(現場内利用を含む建設発生土有効利用率79.8%)である356万t-CO2と比べるとおよそ1.8倍の値であり
(図-1)、2018年度時点での建設発生土リサイクルは、CO2排出量削減に大きく貢献していたことが明らかになりました。

図-1 建設発生土リサイクルのCO2排出量削減効果3)
(2)建設発生土土質改良土
標準積載量5.55㎥の10tダンプ100台分の建設発生土の土量555㎥(資源有効利用促進法における再生資源利用促進計画作成対象規模500㎥超に相当)を土質改良して利用する場合でも、受入地搬出・新材搬入よりもCO2排出量削減効果があることが明らかになりました(図-2)。

図-2 建設発生土土質改良土のCO2排出量削減効果4)
2. 建設発生土改良土の利用拡大に向けて
2.1 改良土利用拡大方策概要
土質改良された建設発生土が利用されるためには、「①改良土の品質が利用用途に求められる品質基準に適合していること(かつ安定的に供給できること)」が必須条件です。
そのためには、「②①を他者(自治体、第三者機関)が継続的に確認していること」「③工事現場や土質改良プラントにおいて土質改良作業に精通した専門技能者」が必要であり、さらに「④公共工事では建設発生土の土質性状が利用用途に適合していない場合は土質改良して利用することを原則化すること」が望まれます。
①についてJASRAは、「JASRA改良土品質基準第一版」を2025年9月に策定しました。
②については、JASRAと一般財団法人先端建設技術センター(ACTEC)が協同で設置した「建設発生土土質改良プラント認証制度検討委員会」(委員長;勝見武京都大学大学院教授)が、2022年2月に「建設発生土土質改良プラント認証制度主要事項に関するとりまとめ結果」を公表し、これに基づき2022年5月よりACTECは第三者認証事業を開始しました。
③についてJASRAは、上級職長としての資格である「登録基幹技能者」制度に基づき、2024年8月に国土交通大臣より「登録土質改良基幹技能者」講習実施機関として登録を受け、第1回登録土質改良基幹技能者講習を2025年5月に開催しました。
④についてJASRAは、国土交通省第17回建設リサイクル推進施策検討小委員会(2025年7月)において、「リサイクル原則化ルール」改正を要望しました。
これらの内容について説明いたします。
2.2 JASRA改良土品質基準第一版5)
(1) 目的
本基準は、国土交通省「発生土利用基準について」(国官技第341号、国官総第669号)に基づく「建設発生土利用技術マニュアル第4版」(独立行政法人土木研究所編著)および自治体の土質改良土品質基準を参考として、基準を制定していない、もしくは基準改定予定の自治体を対象として、JASRA会員の土質改良プラントで製造する改良土の品質基準を定めるものです。
今後、JASRAとしては、この基準への適合性を認定する「JASRA改良土認定制度(仮称)」の創設を視野に入れています。
(2) 適用
本基準は、建設発生土を建設資材として土質改良プラントにて適切な安定処理による土質改良を行い、建設工事の土質材料(以後、改良土と呼ぶ)として利用する場合について適用します。
土壌環境基準等の関係法規の基準を超過した有害物及び産業廃棄物を含む建設発生土は、本基準では対象としません。
(3) 改良土
改良土とは、建設発生土をセメントおよびセメント系固化材、石灰および石灰系固化材により化学的処理を行ったものとします(自治体が指定する再生資源(一般廃棄物焼却灰溶融スラグ、下水汚泥焼却灰など)を助材とする場合も含む)。
なお、「建設発生土利用技術マニュアル第4版」では、
『脱水、乾燥、粒度調整や安定処理等の土質改良を行い、その性状を改良した発生土を総称して「処理土」という。
このうち、セメント系や石灰系の固化材を混合し土の性状を化学的に改良することを「安定処理」といい、安定処理された土を「改良土」という。
なお、「改良土」以外の「処理土」は処理後の性状に応じて改良土以外の細区分に分類する。』(波線・太字は当協会)としています。
脱水、乾燥、粒度調整により土質改良した「処理土」が適用用途の評価において使用可能であれば、積極的に有効利用すべきであることは言うまでもありません。
(4) 改良土の土質区分と適用用途標準
改良土の土質区分と適用用途標準は、「建設発生土利用技術マニュアル第4版」の土質区分と適用用途標準における改良土に関する内容とします。
(5) 改良土の品質基準
改良土の品質基準は、表-1とします。
(6) 自治体に改良土の品質基準を提案する際の留意事項
JASRAの調査結果によれば、土質改良プラントにおける改良土の出荷率(利用率)は25%に過ぎず、75%は残土処分しており、建設発生土を有効利用するためのリサイクル施設である土質改良プラントが「残土処分地」化している実態が明らかになっています。
建設発生土を土質改良プラントに搬出する際は、改良土の利用先が確定していること、建設発生土と同量の改良土を利用することが必須・原則です。
表-2に示す自治体では、この原則をルール・規定化しています。
本基準を参考に自治体に改良土の品質基準の制定を提案する際は、基準制定に合わせて土質改良プラントの利用ルールも定めるべきだと存じます。
2.3 土質改良プラント認定・認証制度
HP等情報によれば、制定年順に福岡市、豊田市、福岡県、大阪市、広島県、名古屋市、岡山県、堺市の8自治体において、建設発生土の土質改良プラントの認定・審査等制度を運用しています。
各自治体の制度の詳細については、JASRAのHP6)に掲載していますが、その概要は表-3のとおりです。
また、建設発生土の土質改良プラント認証事業については、ACTECのHP7)をご参照願います。
なお、JASRAとしては、2026年7月からの第7期事業において、JASRA正会員を対象とするACTEC第三者認証取得支援事業を予定しています。
2.4 登録土質改良基幹技能者
登録基幹技能者は、建設現場における上級職長として、元請者技術者のもとで建設現場の高度なマネジメント業務を担う、いわば「現場の要」と位置づけられます。
登録土質改良基幹技能者は、建設現場または土質改良プラントにおいて、土質改良作業全体をマネジメントし、特に改良土の品質管理には重要な役割を担います。
登録土質改良基幹技能者講習の受講資格条件は表-4、講習実施状況は表-5のとおりです。
2.5 「リサイクル原則化ルール」改正
「リサイクル原則化ルール」改正についての詳細は、積算資料公表価格版2025年8月号に掲載していますので、ここでは結論のみを示します。
現行のルールでは、搬出工事と搬入工事間で建設発生土を工事間利用する際、土工期・土質が合致しない場合、建設発生土ストックヤード、土質改良プラントを利用して工事間利用することが明示されていないため、図-3に示すように改正すべきとJASRAが提案したものです。

図-3 国交省「リサイクル原則化ルール」の建設発生土に関するJASRA改正案
おわりに
カーボンニュートラルに資する建設発生土改良土の利用拡大に向けて、JASRAとしては、改良土品質基準策定、土質改良プラント第三者認証制度事業支援、登録土質改良基幹技能者制度運営を実現してきました。
そして、国土交通省様には「リサイクル原則化ルール」改正を提案しております。
JASRAは2021年4月に法人登記を行い、同年7月に発足式を開催して実質的な活動を開始しました。
2026年6月末をもって設立から5年が経過いたしました。
当協会は第1期を2021年4月から6月、以降、7月から翌年6月までを事業年度としています。
法人設立後第5期(2025年6月)までの活動実績概要については、HP8)に掲載しておりますので是非ご確認ください。
当協会は、2022年9月に策定した2050年までの長期ビジョン「JASRAVISION2050」9)に基づき、5年ごとにレビューしつつ事業を実施しております。
国土交通省様をはじめ関係者の皆様におかれましては、引き続きご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
(参考資料)
1) 循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する関係閣僚会議
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/economiccirculation/index.html
(2026.6.5閲覧)
2) 加藤 智大・富永 伊織・高井 敦史・勝見 武:建設発生土のリサイクルがもたらす二酸化炭素の排出削減効果、土木学会論文集、 Vol. 82、No. 1、25-00147、2026
3)2)のP7 図-8を用いて作図
4)2)のP8 図-9を用いて作図
5)JASRA改良土品質基準 第一版(2025.9)
https://jasra.or.jp/download/index.html
(2026.6.5閲覧)
6)(一社)全国建設発生土リサイクル協会 建設発生土土質改良プラント認証制度検討委員会 第2回委員会資料 参考資料3-1
https://jasra.or.jp/download/index.html
(2026.6.5閲覧)
7)(一財)先端建設技術センター:建設発生土の土質改良プラント認証事業
https://actec.or.jp/doshitsu-plant/
(2026.6.5閲覧)
8)(一社)全国建設発生土リサイクル協会:JASRA 第5期までの活動実績概要
https://jasra.or.jp/download/index.html
(2026.6.5閲覧)
9)(一社)全国建設発生土リサイクル協会:JASRA VISION 2050
https://jasra.or.jp/download/index.html
(2026.6.6閲覧)
【出典】
最終更新日:2026-07-28

