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多様化する地盤改良に適応する高圧噴射撹拌工「JETCRETE」

はじめに

高圧噴射撹拌工法は、日本で開発された代表的な地盤改良技術であり、1970年代初頭に誕生して以来、半世紀にわたってインフラ整備や建築工事に貢献してきた。
当初は交通・物流および生活エネルギーなどの各種施設築造における仮設目的で利用されることが多かったが、狭隘地や空頭制限下、稼働中の施設内でもセメント系固化工法の地盤改良が可能であることから、耐震対策や液状化対策、都市部再開発における建築構造物の基礎地盤への適用など、ニーズが多角化・高度化してきている。
こうした現代のさまざまなニーズに応えるためには、各々の要求性能や照査項目に応じた施工管理、品質検査手法の確立が不可欠である。
 
本稿では、高圧噴射撹拌工法の変遷と課題を整理した上で、多様化する地盤改良に適応し建設技術審査証明を取得した高圧噴射撹拌工法「JETCRETE」の適用性、品質管理および公的評価について説明する。
 
 

1. 高圧噴射撹拌工法の概要

1-1.高圧噴射撹拌工法の特長

高圧噴射撹拌工法の施工手順を図-1に示す。
高圧噴射撹拌工法はスラリー状の固化材(流体)を回転するロッドの先端から水平方向へ高圧噴射し、原地盤を切削・撹拌混合しながら円柱状の地盤改良体を築造する技術である。
本工法では、固化材と切削した原地盤が混合する過程で生じる余剰分(排泥ともいう)を地上へ円滑に排出させることにより、地盤内に過剰な内圧が生じないため、周辺地盤を変状させることなく施工することが可能である1)
そのため、鉄道をはじめとする重要構造物に近接した変位制限の厳しい施工条件下でも広く採用されてきた。
また、機械撹拌工法とは異なり流体で地盤を切削・撹拌するため、改良体同士のラップ部や既存構造物との密着性が高い点も大きな特長である2)3)4)

図-1 高圧噴射撹拌工法の施工手順
図-1 高圧噴射撹拌工法の施工手順

図-2に既存構造物との密着部、図-3に改良体同士の密着部をそれぞれ示す。

図-2 既存の地下躯体や基礎との密着4)
図-2 既存の地下躯体や基礎との密着4)
図-3 改良体同士の密着4)一部加筆
図-3 改良体同士の密着4)一部加筆

 

1-2.高圧噴射撹拌工法の適用の変遷

高圧噴射撹拌工法が普及した1980年代は、上下水道、ガス管などの地下ライフラインの新設が相次ぎ、シールド工事や推進工事に伴う立坑築造が盛んに行われた。
その中で本工法は、立坑築造に伴う底盤補強、先行地中梁、シールド工法や推進工法の発進・到達防護などの補助工法として採用事例を増加させていった。
 
本工法が評価された要因として、当時主流であった薬液注入工法と比較した際の確実性の高さが挙げられる。
高圧噴射撹拌工法は改良径2.0m程度を確保できるとともに、粘性土および砂質土の軟弱地盤においてそれぞれ1.0MN/m²、3.0MN/m²の改良強度で設計可能であったため、画期的な技術として急速に普及した。
 
1990年代に入ると東京湾岸の開発や都市部の大深度地下鉄工事が本格化し、各種既設管の存在により立坑の山留め壁が不連続になる事例が散見されるようになった。
これに伴い欠損部を補完する地盤改良が求められ、改良径の拡大(改良径5.0m)や大深度化といった技術開発が進み、適用実績をさらに伸ばしていった。
 

1-3.高圧噴射撹拌工法の課題

2000年頃までの高圧噴射撹拌工法は、90mm~150mm程度の小径ロッドから大口径の地盤改良体を築造できることから、制限の多い特殊な施工条件に対応可能な技術として注目を集めていた。
しかしその一方で、本工法には品質管理上の課題も指摘されていた。
その背景には、まず「地中という直接目視できない環境下で流体によって地盤改良体を築造する」という施工上の特性があった。
さらに当時は、「あらかじめ規定されたスラリー状固化材を用い、一律の仕様で施工する仕様設計的アプローチ」が主流であったことも重なり、改良径や改良強度が対象地盤の土質変動に大きく左右される状況にあった。
このため、品質や形状の評価は最低保証値を基準とせざるを得ず、確実性を担保するために固化材の添加量や噴射仕様を過剰に設定する必要があった。
その結果、構造物の支持や液状化対策としては評価されにくく、補助工法としての適用にとどまる傾向があった。
 

1-4.地盤改良の転換期

従来までは「補助工法」にとどまっていた状況に大きな転換をもたらしたのが、1995年の兵庫県南部地震である。
同地震における被害調査では「地盤改良が施された地盤では液状化が発生せず、構造物の被害も軽微であった」と報告され、地盤改良による耐震・液状化抑制効果が公に評価された。
これを受け、2001年の建築基準法改正の際には国土交通省告示第1113号によって地盤改良体の許容応力度の計算方法が示された。
さらに2002年の道路橋示方書改定に伴い、構造物および基礎・地盤の設計体系は従来の「仕様設計法」から「性能設計法(限界状態設計法)」へと大きくシフトした。
 
これらにより、地盤改良においても許容応力度設計の適用や、各種限界状態に応じた定量的な性能要求を満たすことが不可欠となった。
単に「一定の仕様で均一に地盤を固める」という従来の仕様設計的アプローチでは、高度化する構造計算や耐震要求に対応することが困難となったのである。
この転換期において、地盤改良体には「必要な位置に必要な強度と形状で狙いどおりに築造し、その品質を定量的に証明する」という高い信頼性が求められるに至った。
こうした時代のニーズに応えるべく開発されたのが、設計自由度の高い高圧噴射撹拌工法「JETCRETE」である。
 
 

2. 多様化に対応するJETCRETEの特長

2-1.JETCRETEの適用範囲と設計の自由度

JETCRETEは、従来の補助工法にとどまらず、品質のばらつきを定量評価することで、既存建築物の耐震補強や建て替えに伴う基礎地盤改良、液状化対策などへも適用可能な高圧噴射撹拌工法である。
設計に際しては、「2018年版建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針-セメント系固化材を用いた深層・浅層混合処理工法-(発行:一般財団法人日本建築センター、一般財団法人ベターリビング)」の考え方を準用し、統計的手法を用いた品質保証を行っている。
具体的には、設計改良強度として最大10.0MN/m²、改良径として最大8.5mまで対応可能5)である。
さらに、ノズルの回転速度や回転角度(揺動角)をデジタル制御し、噴射圧力や流量、引き上げ速度を制御することで、円形断面のみならず扇形6)、半円形、矩形7)8)9)といった特殊形状の改良体についても精度高く築造できる。
図-4にJETCRETEの改良体形状の一例を示す。
このように形状や施工仕様を対象範囲へ合理的に配置できるため、従来の仕様設計的アプローチで生じていた過剰な施工要素を削減することが可能となった。

図-4 JETCRETEの改良体形状の一例4)
図-4 JETCRETEの改良体形状の一例4)

 

2-2.多様化する現場環境への適応性

近年は、稼働中施設内や宅地の液状化対策、都市部再開発における地盤改良など、狭隘かつ空頭制限のある厳しい施工条件下でのニーズが増加している。
こうした現場では、大型重機やクレーン等の搬入・使用は困難なケースが多い。
JETCRETEはこれらの施工環境に対応するため、小型化した施工機械および噴射ツールを用意しており、狭隘地においても多くの適用実績を有している。
例えば、護岸1)や既存宅地周辺の液状化対策、重要文化財の沈下防止対策10)、稼働中工場内の耐震補強工事11)、杭基礎を有する建築物の継続使用・長寿命化6)などである。
 
表-1にJETCRETEの施工機械の一例、写真-1に狭隘地の施工状況を示す。

表-1 JETCRETEの施工機械の一例4)
表-1 JETCRETEの施工機械の一例4)
写真-1 狭隘地におけるJETCRETEの施工
写真-1 狭隘地におけるJETCRETEの施工

 

2-3.JETCRETE品質管理の基本方針

JETCRETEは、要求性能を確実に満足する品質を確保するため、独自の品質管理システムを確立している。
図-5にJETCRETEの品質管理フローを示す。

図-5 JETCRETE品質管理フロー4)一部加筆
図-5 JETCRETE品質管理フロー4)一部加筆

 
まず、事前地盤調査から得た地盤条件および設計条件から施工配置および暫定的な施工仕様を決定する。
この暫定的な施工仕様は過去の豊富な施工実績に基づき、地盤条件・施工条件・噴射条件を定式化した「地盤切削推定式」から導かれた仕様(噴射圧力・回転数・引き上げ速度等)である。
併せて事前採取した現地土を用いた室内配合試験を行い、設計基準強度を満たす固化材の種類および添加量を設定する。
次に、本施工に先立ち現場試験施工を実施し、以下の2つの手法によって改良径および連続性の検証を行う。
 

  1. 熱電対を用いた計測による到達判定
    改良体の計画外周部に熱電対を配置し、噴流接触時の初期温度変化やその後のセメント水和熱の上昇を計測することで、高圧噴流が計画改良径まで確実に到達・切削したかを現場にて即時に評価する。
  2. コア採取による物理的検証
    試験施工後、改良体端部等からボーリングコアを採取し、改良体の連続性確認および一軸圧縮試験を実施することで、要求性能の充足を直接検証する。

 
試験施工において要求性能を満足することが確認された後は、本施工において試験施工と同一の施工仕様・管理体制・施工サイクルを再現する。
これは試験施工にて確認された管理プロセスを再現することにより、本施工におけるすべての改良体において同等の品質が再現・平準化されると位置づけている。
この一連の品質管理プロセスが評価され、JETCRETEは「建設技術審査証明」を取得するに至った。
 
 

3. 建設技術審査証明の取得内容

JETCRETEは、設計・施工・品質管理システム全体の妥当性を第三者公的機関に提示し、建設技術審査証明を取得した。
図-6に建設技術審査証明書の写しを示す。

図-6 建設技術審査証明書の写し
図-6 建設技術審査証明書の写し

評価された主要項目は以下の3点である。
 

  1. 「JETCRETE品質管理指針」の適切性
  2. 格子状壁式に施工された改良体がラップ部を含めて所定の品質を確保していること
  3. 機械撹拌工法におけるFL値算定式12)を用いて、JETCRETEにより築造した格子内地盤の液状化判定ができること

 
審査においては、本工法における管理手法を規定した「JETCRETE品質管理指針」が前述の「建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」の方針に整合していることが確認された。
これにより、品質管理手法が施工環境や地盤条件の変動に適切に対応して、品質適合性の高い地盤改良体を築造できる技術であることが公的に評価された。
また、地盤改良体の強度特性については、コア供試体試験により本体部およびラップ部の双方においてコア採取率が判定基準を満たしていることが確認された。
この検証結果により、壁式・格子状壁式・ブロック式などの各種構造形式へ応用した場合の構造的信頼性が示されている。
さらに、改良体自体の強度に加え、格子状壁式に囲まれた未改良地盤(格子内地盤)のせん断拘束効果についても、過去の実績および機械撹拌工法(DCM-L工法)の適用範囲に基づき評価する妥当性が認められた。
高い剛性の格子状改良地盤により囲い込んだ内部地盤の地震時せん断変形を抑制し、過剰隙間水圧の上昇を抑えるこの機構を評価可能としたことで、地盤改良体と格子内地盤を複合地盤として設計に組み込むことが可能となり、改良範囲を抑えつつ高い液状化抑制効果を発揮する合理的な設計ができるようになった。
 
 

おわりに

技術基準の改定や社会環境の変化に伴い、地盤改良技術には構造物や地盤の挙動を把握し、現場条件へ最適化する技術への変革が求められている。
JETCRETEは、改良径の設定を含めた改良体の配置や狭隘地施工といった個別案件の最適設計を可能にするとともに、室内配合試験や現地試験施工を組み合わせた品質管理体制により品質の平準化を実現している。
こうした高度な品質管理は、建設技術審査証明による公的評価を受けたことによって、客観的に技術的妥当性が示されたといえる。
 
JETCRETEは今後も、複雑化・高度化が進む建設分野の課題に対し、安全かつ合理的で信頼性の高い地盤改良技術として貢献していくことが期待される。
 
 

参考資料

1) 川崎雄太、米持和典、西牧宏明、高野一規、佐藤智一:ジェットクリート工法による側方流動対策工事の施工実績、令和2年度土木学会全国大会第75回年次学術講演会、pp.Ⅵ-58、2020
2) 高岡雄二、中野翔太、加藤博規、井口雄介:既存躯体直下に造成した高圧噴射型地盤改良工法の出来形・性状について、日本建築学会大会学術講演梗概集(東北)、構造Ⅰ、pp.517-518、2018
3) 田屋裕司、内田明彦、上枝豊、時松孝次、土屋勉、阿部宏幸:高圧噴射撹拌工法による格子状地盤改良の原位置施工実験(その1)および(その2)、日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿)、構造Ⅰ、pp.569-572、2014
4) 建設技術審査証明協議会会員(一般財団法人ベターリビング):BL審査証明-082JETCRETE(高圧噴射撹拌工法)概要書、2026
5) 「都市トンネルのための地盤改良工法」連載講座小委員会:都市トンネルのための地盤改良工法(4)「事例4:土留め壁欠損部への高圧噴射攪拌工法の適用」、トンネルと地下第45巻9号、pp.69-71、2014
6) 鎌田敏幸、山上幸、島村淳、一坪慎吾、久世直哉:杭の補修・補強のための高圧噴射撹拌工法による地盤改良とその適用、第14回地盤改良シンポジウム論文集、pp.455-462、2020
7) 島村淳、田中伸明、渡邊陽介、阿部宏幸:矩形高圧噴射攪拌工法の開発、第51回地盤工学研究発表会(岡山)pp.1189-1190、2016
8) 田屋裕司、奥村豪悠、志田翼、内田明彦、阿部宏幸、小松和彦:高圧噴射攪拌工法による矩形改良体の原位置施工実験(その1~4)、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)、構造Ⅰ、pp.524-
530、2016
9) 益本孝彦、山田修三、小西一生、阿部宏幸、小松和彦:高圧噴射撹拌工法による揺動矩形改良体の原位置施工実験その1・その2、土木学会第72回年次学術講演会(平成29年9月)、pp.33-36、2017
10) 加藤博規:重要文化財の沈下対策に用いた地盤改良工事、日本建築学会大会学術講演梗概集(東海)、構造Ⅰ、pp.567-568、2012
11) 岩崎結子、加藤博規:浄化施設の耐震補強工事高圧噴射攪拌工法の改良体品質について、日本建築学会大会学術講演梗概集(東海)、構造Ⅰ、pp.565-566、2012
12) 株式会社竹中土木:評定CBLFP019-14号「DCM-L工法による格子状地盤改良における格子内地盤のFL値算定方法」、指定性能評価機関:一般財団法人ベターリビング
 
 
 

ケミカルグラウト株式会社 技術・設計本部 技術開発部 課長
渡邊陽介

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2026年10月号


積算資料公表価格版2026年10月号

最終更新日:2026-09-18

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