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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 軟弱地盤・液状化対策 > 軟弱地盤・液状化対策に用いる地盤改良用石灰

はじめに

地盤改良(安定処理)に用いられている石灰は石灰特有の固化反応や膨張作用などが軟弱地盤および液状化対策に効果があり、道路、鉄道、空港、港湾、河川、堤防、宅造、基礎地盤など各分野に及んでいる。
本文では地盤改良用石灰の種類、特長、改良の原理、そして液状化対策工法について紹介する。
 
 

1. 地盤改良用石灰とは1)

1-1 種類
地盤改良(安定処理)に用いる石灰には、生石灰、消石灰、軽焼ドロマイト、水酸化ドロマイト、石灰系固化材および発塵抑制型石灰(湿潤消石灰など)などの製品がある。

 

  • 生石灰、消石灰、軽焼ドロマイト、水酸化ドロマイト、石灰系固化材(セメントを含まないもの)および発塵抑制型石灰(湿潤消石灰など)は、六価クロム溶出試験を実施する必要はない。
  • 地盤改良用石灰の一般的な性状と荷姿を表-1に示す。

また、生石灰、消石灰、軽焼ドロマイトおよび水酸化ドロマイトの品質は、表-2に示した工業用石灰を用いており、主として1号品以上が使用される。

表-1 一般的な性状と荷姿1)
表-1 一般的な性状と荷姿1)
表-2 工業用石灰の等級および品質基準(JIS R 9001)1)            単位 %
表-2 工業用石灰の等級および品質基準(JIS R 9001)1)単位%
工業用石灰には、その他の成分として、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化第二鉄(Fe2O3)などが含まれる。

 

1-2 各製品の特長
(1) 生石灰

石灰石を900℃以上の温度で焼成して製造したもので、地盤改良用には5~0㎜の粉状のものと30~5㎜程度の粒状のものが主に用いられている。
 
生石灰は土中水を水和水として取り込み、かつ発熱反応により多量の土中水を蒸発させるため、特に含水比が高い土の改良に適している。

 

(2) 消石灰

生石灰を水分と反応させて生成したもので、ふるい目600㎛を全て通過する粉末状のものである。
 
消石灰は土中水に微量溶解し、アルカリ雰囲気下でイオン交換反応、ポゾラン反応を進行させ、土の物理性状や強度を改善する。
 

(3) 軽焼ドロマイト

ドロマイト(石灰石に含まれるカルシウムの一部がマグネシウムに置き換わった鉱石)を900℃以上の温度で焼成して製造したもので、地盤改良用には5~0㎜の粉状のものと30~5㎜程度の粒状のものが主に用いられている。
 
軽焼ドロマイトは土中水を水和水として取り込み、かつ発熱反応により多量の土中水を蒸発させるため、特に含水比が高い土の改良に適している。
 

(4) 水酸化ドロマイト

軽焼ドロマイトを水分と反応させて生成したもので、ふるい目600㎛を全て通過(ブレーン値10,000~12,000㎠/g)する粉末状のものである。
 
水酸化ドロマイトは土中水に微量溶解し、アルカリ雰囲気下でイオン交換反応、ポゾラン反応を進行させ、土の物理性状や強度を改善する。
 

(5) 石灰系固化材

生石灰、軽焼ドロマイト、消石灰および水酸化ドロマイトを母材(主成分)とし、これに添加材として石膏、スラグ微粉末およびアルミナ含有物質またはフライアッシュなどのポゾラン物質を配合したものであり、セメントを含有していないものである。
 
石灰系固化材は、従来の石灰では固化しにくい高含水比粘性土や腐植土を固化するために開発されたものであり、表-2に示す石灰単体では強度発現の小さい土質に対して効果があり、高い強度が得られる。
表-3に石灰系固化材の種類と特長を示す。

表-3 石灰系固化材の種類と特長1)
表-3 石灰系固化材の種類と特長1)

 

(6) 発塵抑制型石灰(湿潤消石灰など)

発塵抑制型石灰は、施工上防塵性が要求される場合の地盤改良に利用するもので、湿潤消石灰、湿潤石灰系固化材および石灰にテフロンで加工処理したものがある。
 
湿潤消石灰は母材である消石灰に20~25%の水を添加したもので、含水比が低い土の安定処理に適している。
湿潤石灰系固化材は、母材である石灰系固化材に水を加えて湿潤消石灰よりも強度発現効果を高くしたものである。
 

1-3 石灰による改良の原理

生石灰および軽焼ドロマイトでは消化吸水反応、消石灰および水酸化ドロマイトでは、吸水作用やイオン交換反応がまず短期的に生じ、次いで土中の粘土鉱物とのポゾラン硬化反応による硬化が中長期的に生じて、強度増加につながる。
 
石灰系固化材は、これらの反応に加えて、石膏系反応物であるエトリンガイトの生成が早期に行われ、または各種のポゾラン物質によるポゾラン反応が促進し、あるいは両者の相乗作用により、強度増加が一層大きくなることが特長である。
 
 

2. 地盤改良用石灰による液状化対策工法

地盤改良用石灰を用いた液状化対策工法としては次の工法などがある。

  • 生石灰パイル工法
  • 固結工法

また、平成16年(2004年)新潟県中越地震において液状化により被災した管路施設の復旧・液状化対策工事として石灰系固化材による埋め戻し部の固化が多数採用され、液状化対策の効果が確認された。
その時の事例として刈羽村の管路施設の本復旧工事、液状化対策工事において石灰系固化材の以下の特長が評価された。
 
①改良土を製造してから、仮置き時間を取っても所要強度を確保できる。
②土壌を強固に固化しないので、施工後の再掘削作業が容易である。
③再掘削した改良土を埋戻土として再利用が可能である。
④六価クロム溶出試験を必要としない。
 
さらに、平成19年(2007年)新潟県中越沖地震において、石灰系固化材処理土を埋め戻した管路施設では液状化による被害は見られなかった。
また、石灰系固化材改良土の埋め戻し箇所はバックホウにより容易に再掘削ができた2)
 
 

おわりに

日本は石灰の原料となる良質の石灰石に恵まれている。
天然で無機物な石灰は国内で自給自足出来る数少ない貴重な資源の一つである。
 
地盤改良用石灰は各分野で広範囲に使用されている。
石灰は地盤改良用以外にも鉄鋼用、化学工業用、公害防止用、下水道用やヘドロ処理用等環境関連および食品添加物など幅広く使われており、暮らしの中で欠かせない基礎素材である。
 
 

引用・参考文献

1) 日本石灰協会:石灰による地盤改良マニュアル第7版(2016年2月)
2) 日本石灰協会:石灰による地盤改良事例集(Ⅰ)(2011年7月)
 
 
 

日本石灰協会 ゼネラルマネージャー
渡辺 忠明

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2024年10月号


公表価格版10月号

最終更新日:2024-09-20

 

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