ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 沖縄総合事務局開発建設部のこれまでの取り組み ~本土復帰50周年にあたって~

1. はじめに

1972年5月に沖縄は日本に復帰し,今年で50周年を迎えた。
 
本土復帰を機に沖縄における経済の振興および社会の開発に関する総合的な計画(振興開発計画)を推進する機関として沖縄開発庁(2001年の中央省庁再編に伴い,内閣府に統合)が設置され,その地方支分部局として沖縄総合事務局は設置された。
 
その後,5次にわたる「沖縄振興計画」等によりさまざまな取り組みが実施され,沖縄の生活・文化・産業を支える社会基盤は飛躍的に向上し,県民の安全・安心,生活や質の向上に大きく貢献した。
 
本稿では,沖縄総合事務局開発建設部がこれまで携わってきた主な取り組みを振り返りたい。

 
 

2. 主な取り組み内容について

(1)道路事業

1975年は,「沖縄国際海洋博覧会」に向けた整備が集中的に行われ,国道58号名護市の通称「名護の七曲り」と呼ばれるカーブが連続する交通の難所がゆったりと安全に走行できる道路へと大きく改良された。
また,右側通行であった通行区分も,復帰から6年後の1978年7月30日(通称ナナサンマル)に現在の左側通行に変更された(写真-1)。
 
2000年に開催された九州・沖縄サミットに合わせ,沖縄自動車道から那覇空港につながる国道506号那覇空港自動車道「南風原(はえばる)道路」が供用され,北部から那覇空港までの移動時間の短縮に寄与した。
本道路は連続するアーチ橋としては世界一となる21連続のアーチ橋となっている。
 
2016年には,那覇市から糸満市に至る国道331号の「豊見城(とみぐすく)道路」が全線開通,2017年には「糸満道路」が全線開通された。
本道路は,商業地やビーチなど,観光客も多く訪れる地域に位置し,本道路の開通により交通の利便性や地域活性化,交通渋滞緩和にも大きく貢献し東洋経済新報社発行『都市データパック』では,豊見城市が成長力ランキング全国1位を5度獲得している。
2021年には,沖縄自動車道北端の許田(きょだ)ICと本島北部の中心都市を結ぶ,国道58号「名護東道路」が開通し,美ら海水族館や今帰仁城(なきじんぐすく)跡など北部地域有数の観光スポットまでのアクセスが大きく改善されるとともに,慢性的な市街地の交通渋滞緩和に寄与した。
 
この他にも,本島中部から南部に至る延長約50kmの「沖縄西海岸道路」や沖縄自動車道,国道58号・329号の骨格となる道路を柱とした「ハシゴ道路」など,多くの道路整備事業を推進中である。

復帰前の右側通行

【写真-1 復帰前の右側通行】


(2)ダム事業

島嶼(とうしょ)県である沖縄は,降雨量は多いが梅雨時期と台風期に偏り,さらに流域が小さく勾配も急なため降雨はすぐに海に流出してしまうことから,水の安定的な確保が難しく慢性的な水不足に悩まされてきた。
 
復帰当時の1972年から1994年までは毎年のように給水制限が実施され,特に1981年から翌年に続いた326日にも及ぶ給水制限は,現在も全国最長記録となっている。
そのため,沖縄の振興・発展のためには水資源の確保が急務であり,沖縄振興計画上の最重要課題の一つであった。
こうした問題に対し沖縄総合事務局(当時は沖縄開発庁)は1972年の本土復帰と同時に北部ダム事務所を開設し10基の多目的ダムを完成させ,合計の利水容量が1億tを超えた。
そのうち福地ダムは,復帰時にダム本体工事の途中で米国陸軍工兵隊から日本政府が引き継ぎ完成させたダムであり,この福地ダムを含む北部5ダムについては各ダムを調整水路で連結し統合運用による効率的な水運用を行っている(写真-2)。
 
このように整備されたダムにより,1995年以降給水制限を回避するとともに,近年の水害の激甚化,異常豪雨の頻発化に備えた事前放流を含めた流域治水の取り組みにより,県民の生活面や経済産業の発展にも大きく寄与している。
現在,2014年の沖縄北部ダム湖サミット宣言に基づき,水源地である“やんばる”の自然やダム等の魅力を生かした「沖縄北部ダムツーリズム」を推進し,水源地域の活性化を積極的に支援しているところである。

米国陸軍工兵隊より引き継ぎ完成させた福地ダム

【写真-2 米国陸軍工兵隊より引き継ぎ完成させた福地ダム】


(3)港湾事業

復帰直後における港湾整備状況は,離島生活を支えるために必要な最小限の輸送機能を確保するための施設が中心であった。
その後,外郭施設や水域施設の拡張などが行われ,現在の港湾整備は,就航船舶の大型化が進む中で定時性確保や荷役効率の向上を進めている状況である。
 
近年では,輸送機能の高度化への対応とともに,大型クルーズ船受け入れ施設の整備や,大規模災害に対する港湾の防災,減災のための施設整備が鋭意行われるようになり,整備の重点も時代の要請に対応して拡大している。
 
 

【国際クルーズ拠点整備事業等】
那覇港では,2009年に泊ふ頭クルーズ船専用岸壁が暫定供用,2014年には背後の旅客ターミナルが供用開始され,それ以降,沖縄におけるクルーズ船の寄港は大幅に増加し,県内観光産業の活性化や新たな雇用の創出に寄与している。
 
2019年には沖縄県への寄港回数が581回(全国1位)となり,寄港数の増加やクルーズ船の大型化に対応するため,那覇港,平良港,石垣港において大型クルーズ船が接岸可能な岸壁等の整備を進めており,2022年には各港で22万t級のクルーズ船が受け入れ可能となる(図-1)。

沖縄へのクルーズ船の寄港回数の推移

【図-1 沖縄へのクルーズ船の寄港回数の推移】


(4)空港事業

1945年米軍の沖縄占領とともに那覇空港の前身の小禄飛行場はその管理下に置かれた。
 
1972年本土復帰に伴い,名称も「那覇空港」と改められると同時に「沖縄振興開発計画」および「第二次空港整備5か年計画」に組み込まれ整備拡充が行われてきた。
その後,1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会に対応するため,暫定ターミナル地区の整備,滑走路改良および誘導路新設等,基本施設を中心に工事が実施された。
 
 

【那覇空港】
那覇空港は,沖縄の玄関口として国内外各地を結ぶ拠点空港であるとともに,県内離島と沖縄島を結ぶハブ空港として重要な役割を果たしており,沖縄県のリーディング産業である観光・リゾート産業をはじめとして,さまざまな経済活動や県民生活を支える重要な社会基盤である(図-2)。
 
本土復帰した1972年の航空輸送人員は,約69万人であったのに対し新型コロナウイルスの影響を受ける直前の2019年には2,176万人となり,約31倍と大きく増加した。
 
増加する航空需要に対応すべく,空港施設の整備が着々と進められ,1986年には既設の第1滑走路長を2,700mから3,000mに延長し供用した。
20年近く経過した第1ターミナルは第2ターミナルと統合され,1999年に現在の国内線新旅客ターミナルが供用されるとともにターミナルと接続する高架道路を供用した。
 
直近では急速に拡大する航空需要に対応すべく,2014年には国際線ターミナルが供用,2019年には際内連結ターミナルが供用された。
また,2020年には既設の第1滑走路から1,310m沖側へ長さ2,700m,幅60mの第2滑走路を供用した。
これらの取り組みにより,沖縄振興に大きく寄与している。

那覇空港第 2 滑走路

【図-2 那覇空港第2滑走路】


(5)公園事業

【国営沖縄記念公園海洋博覧会地区】
沖縄海洋博覧会は,沖縄の振興開発の一環として位置付けられ,その跡地利用については1975年,沖縄国際海洋博覧会記念公園(仮称)を設置し,国により整備することが決定した。
博覧会終了後,施設を引き継ぎ,1976年に約36haを開園。
2002年には,「沖縄美ら海水族館」を開館し,沖縄の主要な人気観光スポットとなった。
 
開園年の入園者が約54万人であったのに対し,新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前年の2018年には約490万人と約9倍に達した(図-3)。
 
それは,入域観光客数の約5割が来園したことになり県内観光施設の中核を担っている。
 
 

【国営沖縄記念公園首里城地区】
先の大戦で戦禍を被った首里城は,1992年「首里城公園」として開園し,2000年には首里城跡が世界遺産に登録された。
開園年の入園者が110万人であったのに対し,新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前年の2018年には270万人と約2.5倍に達した。
それは,入域観光客の約3割が来園したことになり,沖縄の観光振興に大きく貢献していることが分かる(写真-3)。
 
2019年2月に全てのエリアが開園となったが,2019年10月31日未明に発生した火災により,正殿等9つの施設が焼失または一部焼失した。
 
正殿の復元に向けて2022年3月に実施設計が完了し,現在,2022年秋の着工,2026年の完成を目指し取り組んでいる。

入域観光客と国営記念公園入園者の推移

【図-3 入域観光客と国営記念公園入園者の推移】



 

焼失前の首里城正殿

【写真-3 焼失前の首里城正殿】


(6)営繕事業

営繕事業においては,国の行政機関を那覇新都心地区に集約する。
那覇第2地方合同庁舎(1号館(2003年),2号館(2008年),3号館(2023年予定)の整備を実施し,交流拠点の形成や行政サービスの向上,防災機能の強化等を図っている。
沖縄の伝統芸能である「組踊」の専用劇場である「国立劇場おきなわ」は,一般の方々に広く観賞する機会を提供する施設として位置付けられ2004年に開場された(写真-4)。

国立劇場おきなわ

【写真-4 国立劇場おきなわ】



 

3. 今後の課題

これまで述べてきたように沖縄総合事務局では県民生活の質の向上や県内各種産業の活性化に向けて取り組んできた結果,県民生活にもゆとりと潤いがもたらされ,入域観光客数も1,000万人に達するなど観光産業をはじめとする各種産業も着実に発展を遂げ当初目標であった本土との格差是正については一定の成果を上げてきた。
しかしながら,1人当たりの県民所得が全国最下位にとどまるなど課題が引き続き存在することを踏まえ,沖縄振興の一層の推進を図るためのインフラ整備を進めるとともに大規模自然災害への対応やインフラの老朽化,環境への配慮など,喫緊の課題に対し,迅速かつ効果的に対応していくことが求められることから,関係機関との連携を図りながらやるべき使命に向けて鋭意取り組んでいきたい。

 
 
 

4. おわりに

本年は,復帰50周年を迎えると同時に沖縄総合事務局が設置されて50周年となる。
今後も,「安全・安心の確保」「持続可能な地域社会の形成」「経済成長」の達成に向け,インフラストックの効果を最大化するとともに,SDGsを取り入れた事業展開を行い,「持続可能な沖縄の発展」に努めていきたい。

 
 
 
 
 

内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 部長
坂井 功(さかい いさお)

 
 
【出典】


積算資料2022年6月号
積算資料2022年06月号

最終更新日:2022-12-15

 

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