- 2023-02-06
- 積算資料
1. はじめに
木材需給を巡る状況は,新型コロナウイルス感染症の影響による世界各国の経済活動の縮小や,その後の米国における建築需要の増加に伴う2021年の木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)の発生,さらに2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻に伴う欧米等による経済制裁によって,世界的にサプライチェーンへの影響が生じるなど不透明な状況となっています。
このような中,林野庁では,木材需給や木材価格等に関するデータについて,林業・木材産業関係者をはじめ各方面へ一元的に,かつ,広く提供するため,情報を分かりやすく集約・整理し,林産物に関するマンスリーレポート「モクレポ」を2021年10月から毎月定期的に公表しています。
本稿では,モクレポ(以下,本誌)の誌面の一部を紹介しつつ,併せて最近の需給動向についてご紹介します。
2. 木材需給を巡る状況
(1)2021年の木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)について
2020年は,新型コロナウイルス感染症の影響により世界各国で経済活動が縮小し,わが国では新設住宅着工戸数が縮小したことなどから,林業・木材産業にも大きな影響が及ぶこととなりました。
一方で,同年後半からは米国における建築需要の高まりによって,木材の産地価格の急激な上昇やコンテナの海上輸送運賃の上昇が始まり,2021年に入ってからは,輸入木材製品の不足が顕著となりました。
こうした状況によって,国産材への代替需要が高まりましたが,原木の生産から製品として利用されるまでの木材の流通には一定程度の期間が必要となることなどから,需給が逼迫し国内生産の製材品等の価格が春頃から高騰する,いわゆるウッドショックと呼ばれる状況が発生しました。
また,木材製品の価格が上昇したことにより,国産原木の価格についても同時期から上昇しました。
2022年に入っても同価格は高い水準で推移しています(図-1)。

資料:林野庁木材産業課調べ
注 1:北海道はカラマツ(工場着価格)
注 2:径24cm 程度,長さ3.65 ~ 4.0m(2018年12月~)
注 3:都道府県が選定した特定の原木市場・共販所の価格
【図-1 スギ原木の主要市場価格】(モクレポ2022年7月号より)
(2)ロシア・ウクライナ情勢を巡る木材需給について
2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって,今後,ロシアからの木材輸入に支障を来す可能性が生じています。
2022年3月に,ロシアはわが国を含む「非友好国」に対して,同年末までチップ,丸太,単板の輸出を禁止することを発表しました。
また,今後,船舶の確保や,経済制裁に伴ってロシアへの送金が困難になるおそれもあります。
ロシア産の製材等は,わが国の製材用材消費量の5.7%,ロシア産の単板はわが国の合板用材消費量の2.3%を占めており,当該品目について,代替材の調達の必要性が生じるなど,国内の木材需給に影響が生じています(図-2.1,2.2)。
3. 製材工場の原木入荷,製品生産等の動向
わが国の製材品出荷量は,2020年4月以降,住宅の受注減などにより生産調整が行われ大幅に減少しましたが,8月以降は経済の持ち直しに伴い回復傾向に転じました。
住宅需要が回復する中,2021年3月からの輸入木材不足により,輸入木材の代替としての需要が高まり,製材工場等が稼働率を上げて対応した結果,同月の製材品出荷量は2019年の水準となりました。
2022年1~5月の製材用原木の入荷量は,7,122千m³(2019年比98%)で,同様に製材品の出荷量は3,572千m³(2019年比94%)となっています(図-3)。
4. 合板工場の原木入荷,製品生産等の動向
合板出荷量も,製材品と同様に2020年4月以降,大幅に減少しましたが,8月以降は回復傾向に転じ,2021年3月以降は2019年と同程度となりました。
出荷量が回復して以降も,住宅を中心に旺盛な需要が続いたことから,出荷量が生産量を上回る時期もあり,合板在庫量は減少傾向となりました。
2022年1~5月の合板用原木の入荷量は,2,520千m³(2019年比118%)で,現在の原木在庫量は高い水準になっています。
同様に,合板の出荷量は1,298千m³(2019年比95%)となっています。
また,合板在庫量は,2020年5月から減少傾向に転じ,現在は低い水準で推移しています(図-4)。
5. 木材輸入額および輸入量の動向
わが国の輸入木材については,2022年5月の輸入額は1,597億円(前月比121%,2021年同月比174%)となっています(表-1)。
また,2022年1~5月の木材輸入額累計は,6,979億円(2021年同期比161%)となっています(表-1,図-5)。
2022年1~5月の品目別の輸入量で見ると,丸太が1,131千m³(2021年同期比101%),製材が2,267千m³(同125%),合板が875千m³(同115%),集成材が477千m³(同132%)と,軒並み増加しています。
また,その中では,EUとロシアの製材,インドネシアの合板,EU,ロシアおよび中国の集成材が増加しています(図-6)。
なお,2020年同期と比較すると,2022年1~5月の木材輸入額累計は165%となり,品目別輸入量では,丸太が106%,製材が104%,合板が108%,集成材が110%と,軒並み増加しました。

資料:財務省貿易統計
注1:輸入統計品目表第44類(木材及びその製品並びに木炭)の合計
2:EUに英国は含まない
3:EUは,フィンランド,スウェーデンの合計ではない
【図-5 2020~2022年の1~5月における木材輸入額】(モクレポ2022年7月号より)

資料:財務省貿易統計
注:2022年2月のエクアドルからの丸太(4403.99-990号)輸入量については,財務省に数値の確認中のため,集計からは除外している
【図-6 2020~2022年の1~5月における品目別木材輸入量】(モクレポ2022年7月号より)
6. おわりに
林野庁では,上述のとおり木材需給を巡る状況が大きく変化する中,川上から川下までの関係団体による需給情報連絡協議会を中央および全国7地区において開催し,木材の需給情報の把握および共有等に取り組んでいます。
また,本誌は,木材価格等の需給動向の情報に加え,川上から川下までの森林・林業・木材産業に関するさまざまなトピックスを毎月掲載しています。
引き続き,読者に分かりやすく伝わる誌面づくりに取り組み,本誌を通じて,より多くの方々が森林・林業・木材産業に関する政策や,事業活動を取り巻く状況について,関心と理解を深めていただけるよう努めてまいります。
〈林野庁「モクレポ」HP〉
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/toukei/monthlyreport.html
【出典】
積算資料2022年9月号

最終更新日:2023-02-06
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