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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 雪寒対策資機材 > 冬期の道路交通確保に向けて~最近の取組みについて~

1.はじめに

近年、短期間の集中的な大雪により、大規模な車両滞留が発生し、通行再開や車両滞留の解消に長時間を要したケースが発生している。
 
本稿では、「大雪時の道路交通確保対策中間とりまとめ」(令和3年3月改定)を踏まえた取組み、令和5年1月に新名神高速道路で発生した大規模滞留事象の概要と当面の対応策、地方公共団体に対する道路除雪の支援について紹介する。
 
 

2.中間とりまとめ(改定)を踏まえた取組み

これまでは、「自らが管理する道路をできるだけ通行止めにしないこと」や「道路ネットワーク機能への影響を最小化」を目標として対応してきたところであるが、「人命を最優先に、幹線道路上での大規模な車両滞留を徹底的に回避すること」を基本的な考え方として対応することとしている。
 

(1)道路管理者等の取組み
  • タイムライン(段階的な行動計画)の作成
    • 大雪前に行動変容を促す広報の実施、通行止め予測の公表
    • 関係機関と連携して躊躇なく通行止めを実施
    • 滞留が長期化した際の乗員保護
    • これらを実行するための合同訓練を実施
  •  

    反対車線を利用した滞留車両の解放訓練(湯沢横手道路)
    反対車線を利用した滞留車両の解放訓練(湯沢横手道路)

     

  • 除雪体制の強化
    • 情報連絡本部を設置し、関係機関の相互支援などを構築
  • 除雪作業を担う地域建設業の確保
    • 少雪時も含めて適正な利潤が確保できるよう地域維持型契約方式(複数年契約・複数業務の一括発注)の活用や予定価格の適正な設定について、国から地方公共団体に要請
    • 国では、固定的経費の試行計上を実施
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    除雪作業を担う地域建設業の確保
    除雪作業を担う地域建設業の確保2

     

  • 除雪作業への協力体制の構築
    • 住民グループ、道路管理者、市区町村が連携し、冬期道路管理を実施
  • チェーン等の装着の徹底
    • 運輸事業者への依頼や現場でのチェック・指導を実施
  • 短期間の集中的な大雪時の行動変容
    • 報道機関への説明、外出抑制・広域迂回等の行動変容の呼び掛け、動画配信やSNS投稿などを実施
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      冬期啓発ポスター
      冬期啓発ポスター2

      冬期啓発ポスター
       

    • 数日先までの大雪の見通しや要警戒地域における立ち往生事例を用いることで、外出抑制や冬タイヤなどの装備徹底等に関する注意喚起を実施
    • 大雪が見込まれる際には、緊急発表を実施
    • 高速道路や国道の通行止め予測を公表
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      大雪に対する国土交通省緊急発表(令和4年12月21日)
      大雪に対する国土交通省緊急発表(令和4年12月21日)
      気象の見通し
      気象の見通し
      通行止め予測の公表
      通行止め予測の公表

       

    • 経済産業省や農林水産省と連携し、荷主に対して高速道路・幹線国道の通行止め情報と通行止め予測情報の周知、運行経路の変更や運行の中止等を認めるなど柔軟な対応を要請を実施する体制を構築
    • 短期間の集中的な大雪時の行動変容
  • 短期間の集中的な大雪時の計画的・予防的な通行規制・集中除雪の実施
    • 高速道路と並行する国道の同時通行止めを実施
    • 予防的に通行止めを行い、集中除雪を実施
    • 予防的通行規制区間を指定、リスク箇所へのCCTVカメラ設置など監視体制を強化
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    予防的通行規制区間
    予防的通行規制区間

     

  • 立ち往生車両が発生した場合の迅速な対応
    • 都道府県や運輸局等の関係機関と連携し、雪害時における乗員の移動手段・宿泊施設の確保など乗員保護に関する支援体制を構築
  • 基幹的な道路ネットワークの強化
    • 暫定2車線区間の4車線化、付加車線や登坂車線の設置などを実施することを通じ、大雪の観点からも基幹的な道路ネットワークを強化
  • スポット対策、車両待機スペースの確保
    • リスク箇所に対して、カメラ増設、消融雪施設の整備、チェーン着脱場の整備などを実施
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      短期間の集中的な大雪時の行動変容
      スポット対策の整備事例

 

(2)道路利用者や地域住民等の社会全体の取組み
  • 宅配事業者や荷主(通信販売事業者)等は、大雪時の配送遅延等による影響について、HPやSNSで発信して消費者へ理解の呼びかけを実施

 

(3)より効率的・効果的な対策に向けて
  • 関係機関の連携の強化
    • 道路管理者間や輸送機関との連携強化として、道路除排雪の連携・相互支援に関する道路管理者間での協定締結や交通手段が限定された状況における輸送対策の検討等を実施
  • 情報収集・提供の工夫
    • モバイルエンコーダやウェアラブルカメラ等の機器を活用し、現地パトロール職員から路面や雪質などの状況映像をリアルタイムで共有し、判断・指示の精度を向上
  • 新技術の積極的な活用
    • 運転制御・操作支援の機能を備える高度化された除雪車の開発を推進
    • カメラ画像を活用したAIによる交通障害の自動検知の導入を推進

 

AIによる交通障害の自動検知
AIによる交通障害の自動検知

 
 

3.新名神高速道路における大規模な車両滞留

(1)渋滞・滞留と除雪状況

令和5年1月24日夕方から夜にかけて、名古屋~大阪間を結ぶ高速道路のうち、名神(愛知~滋賀)、名阪国道、京滋バイパス等が通行止めになり、その結果、名神の滋賀・京都間に交通が集中したことを契機に、新名神の三重~滋賀間でも渋滞が発生した。
 
名神では、京都付近での24日17時頃からの予測を上回る降雪により、名神高速道路(下り)が大山崎JCT付近を先頭に約30kmの渋滞が発生し、24日22時過ぎには、名神(下り)天王山TN付近を先頭に約70kmの渋滞が発生した。
この名神の渋滞の影響により、新名神では同日18時頃から草津JCTを先頭に渋滞が発生した。
 
新名神では、この渋滞が草津JCT付近では23時頃に滞留に変わり、25日0時過ぎには、新名神土山SA付近で除雪車両が滞留車両に巻き込まれて除雪の継続が不可能となり、25日3時50分には草津JCTを先頭に菰野ICを超え、約66kmの渋滞が確認された。
 
26日6時24分に渋滞最後尾の車両が動き出し、8時5分には渋滞が解消して集中除雪を開始した。
 
20時40分には亀山JCT~甲賀土山ICが通行止め解除、23時30分には四日市JCT~亀山西JCTが通行止め解除。
 

渋滞・滞留と除雪状況

 

(2)NEXCOにおける大雪時の当面の対応策

新名神高速道路を管理するNEXCO中日本・西日本は、今回の対応について大雪時における対応の課題と原因を検証し、再発防止のため「当面の対応策」を令和5年2月8日に公表した。

  • 通行止め実施判断の見直し
    • 「予防的通行止め」の適用基準に達しない場合でも、渋滞延伸により除雪運行が困難となるなど、大規模な滞留が予見される場合は、徹底した出控え要請とともに、躊躇なく通行止めを実施する。
      なお、上記方針について、事前に関係機関と運用方法について確認を行う。
  • 事前広報・事後広報
    • 大雪時の渋滞は、さまざまな要因で滞留につながるリスクがあるため、的確に渋滞情報等を提供するとともに、渋滞による滞留が発生した場合は、Twitterをはじめとして、あらゆる媒体を活用して滞留状況、作業状況や解消の見込みなど、きめ細かく情報提供する。
  • 健康管理・物資支援
    • 躊躇ない通行止め徹底による滞留発生防止に努めるとともに、万が一滞留の場合には、早い段階で関係機関へ情報共有し、関係機関からの応援を含めた乗員保護体制の充実を行う。
  • 長時間滞留の回避
    • 躊躇ない通行止め徹底による滞留発生防止に努めるとともに、万が一滞留の場合には、中央分離帯開口部や後方からのUターン処理などにより長期化を回避する。
    • 関係機関からの応援を含めた体制の充実を図る。
  • 早期通行止めの解除
    • 効果的な凍結防止剤の活用や新技術など、広範囲にわたる圧雪凍結路面への迅速な対応が可能となる体制の整備を行う

 

早期通行止めの解除

 
 

4.道路除雪の自治体支援

  • ICT技術の導入により、除雪作業の自動化(除雪装置の自動制御)を行い、熟練オペレーターの技術の伝承、作業の効率化・安全性の向上を図る。
  • 道路除雪の自治体支援
  • 災害級の大雪時には、自治体の要望に応じて国の除雪機械等を派遣する。
  • 令和3年度補正予算で地方整備局に配備する小形除雪車等を増強し、直轄国道における滞留発生時の排出作業に活用するとともに、直轄国道において使用していない時には、地域へ無償貸出し等を実施。
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  • 令和4年2月、札幌都市圏は大雪により除排雪が追いつかず社会経済活動に影響発生したため、北海道開発局は複数の自治体に対して除排雪支援を実施した。

 

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5.おわりに

国民の生活を支えるため、いかなる状況下でも安定的な物流を確保することの重要性が高まっている一方、近年は雪の少ない地域も含め、短期間の集中的な大雪が局所的に発生している。
冬期の道路交通確保に向けては、道路管理者の取組みを強化するだけでなく、大雪時の行動変容(外出抑制・広域迂回)を促すなど社会全体で取り組むことが求められている。

国土交通省 道路局 環境安全・防災課 道路防災対策室 企画専門官
竹島 大祐

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2023年7月号

積算資料公表価格版2023年7月号

最終更新日:2023-06-23

 

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