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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 土木施工単価 > 中温化(低炭素)アスファルト舗装

 

一般社団法人 日本道路建設業協会 技術及び施工管理部会
井原 務

 

はじめに

中温化アスファルト舗装は,工事で使用する加熱アスファルト混合物(以下,加熱混合物)の製造・施工温度を30℃ 程度低減することができる中温化技術を用いた舗装で,製造温度を低減することにより,必要となる燃料消費量が削減でき,二酸化炭素排出量の抑制にもつながることから,低炭素アスファルト舗装とも呼ばれている。また,中温化技術によって製造した中温化アスファルト混合物(以下,中温化混合物)は,2010年2月よりグリーン購入法に基づく「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」の特定調達品目に追加された。
 
ここでは,中温化(低炭素)アスファルト舗装の概要と施工実績および普及に向けての協会のこれまでの取り組みについて紹介する。
 
 

1.中温化アスファルト舗装の概要

(1)中温化技術の種類

中温化アスファルト舗装に用いる中温化技術にはいくつかの種類があり,中温化の効果が得られるメカニズムの違いから発泡系,粘弾性調整系および滑剤系に分類され,専用の特殊添加剤(以下,中温化剤)やフォームドアスファルトが用いられている。また,中温化混合物の製造時の違いによって分類すれば,その混合物の製造時に中温化剤あるいはフォームドアスファルトを用いるプラントミックスタイプと,あらかじめアスファルトと特殊添加剤を混合した中温化混合物用アスファルトを用いるプレミックスタイプがある。これらの中温化技術によって製造された中温化混合物は,混合物の製造温度を通常よりも30℃程度低減させても,必要とする品質が確保される。
 

(2)適用効果

アスファルトプラントにおける加熱混合物の製造時のCO2の発生は,骨材を加熱するための重油等の燃焼によるものが大部分であり,その排出量は加熱温度が高いほど増加する。製造時のCO2排出量について,製造温度毎に試算した結果の例を表- 1に示す。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
これは加熱のために使用される燃料消費量のみに着目したものであるが,製造温度を通常温度よりも30℃低減させることで,CO2排出量を15%程度削減できることが試算される。
 
また,適用効果は表- 2に示すように,加熱混合物の製造時のCO2排出量や燃料消費量削減の他に,補修工事における早期交通開放(規制時間短縮)による渋滞緩和や開放直後の初期わだち発生の抑制などがある。これらの主な適用効果の中で,CO2排出量の削減および早期交通開放については,試験工事や試行工事等で検証されている(※1)。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なお,通常温度で製造する加熱混合物に中温化技術を用いれば,製造から敷きならし,転圧までの時間がより長く確保でき,また,同じ転圧温度でもより高い締固め度が得られる。このことから,中温化技術は寒冷期の施工や混合物の急激な温度低下が懸念される橋面舗装や薄層舗装などの施工性改善のために用いられることがある。
 
 

2.施工概要

(1)中温化混合物の製造および運搬

中温化混合物は,写真- 1に示すアスファルトプラントにおいて,通常の加熱混合物と同様に,適切な温度管理および品質管理のもとで製造し,運搬車で施工現場に運搬する。また,その温度管理や品質管理の方法や頻度も通常の加熱混合物と同じである。
 

写真- 1 アスファルトプラントの全景


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アスファルトプラントにおける中温化混合物の単位時間当たりの製造能力は,通常の加熱混合物の製造時とほぼ同じであるが,出荷時には,設定された温度条件で製造するために,燃焼設備の調整やホットビンに貯蔵された加熱骨材の処理等が必要である。特に,1日のうちで通常の加熱混合物と中温化混合物を繰り返して製造する場合や,中温化混合物自体の製造量が少ない場合には,不必要な燃料の消費につながり,期待するCO2排出量の削減効果が得られないこともあるので注意が必要である。例えば,製造温度を低減してCO2 排出量の削減を目的とした工事では,少なくとも100t以上の中温化混合物を連続して製造することが望ましいとされている(※1)。
 
中温化混合物の運搬は,通常の加熱混合物と同様に,よく清掃した運搬車を用いて品質が変化しないように行い,温度低下が予測される場合は必要な保温対策を講じる。また,発泡系の中温化混合物の中には,発泡の継続時間に制約を受けるものもあるので,施工現場までの運搬距離や運搬時間などに配慮が必要な場合がある。
 

(2)舗設

中温化混合物の舗設は写真- 2~3に示すように,通常の加熱混合物と同様であり,アスファルトフィニッシャによる敷きならしからローラによる転圧終了までの一連の作業を迅速に行って仕上げる。
 

(手前からアスファルトフィニッシャ, タンデムローラ, タイヤローラ) 写真- 2 舗設機械の編成

(奥からタンデムローラ, タイヤローラ) 写真- 3 ローラによる転圧状況


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
また,各施工段階における中温化混合物の温度管理も通常の加熱混合物と同様であり,一般には,敷きならし温度,初転圧温度,二次転圧温度および仕上げ転圧温度について,施工計画で設定した目標温度をもとに温度管理を行う。その他の品質管理や出来形管理についても,通常の加熱混合物と同様に,設計図書に示されている基準を満たすように管理する。
 
 

3.中温化アスファルト舗装の供用性

国土交通省関東地方整備局管内の直轄国道で施工された中温化アスファルト舗装(製造温度を30℃程度低減)の耐久性について,施工後2カ月~10年程度経過した路面性状データを用いて,取りまとめ調査(※2) が行われた。この調査は中温化アスファルト舗装と,同じ路線の近隣で同時期に施工された通常舗装における路面性状値の区間平均値によって比較・検討されている。なお,調査区間における中温化混合物は,表層に適用された区間が2箇所,基層に適用された区間が8箇所,アスファルト安定処理に適用された区間が3箇所となっている。
 
取りまとめられた結果の一部を図- 1と図- 2に示す。
 

        図- 1 わだち掘れ量の比較(※2)

 

          図- 2 MCIの比較(※2)


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
中温化アスファルト舗装(中温化技術適用区間)は,わだち掘れ量,MCI(MaintenanceControl Index:維持管理指数)ともに,通常の加熱混合物を用いたアスファルト舗装(従来舗装区間)とほぼ同等と評価されており,現時点では耐久性に対する懸念は少ないとしている。
 
なお,MCI は,路面のひび割れ率とわだち掘れ量および平たん性から計算(※3) される指数である。
 
 

4.施工実績

日本道路建設業協会で実施した調査によれば,国内における中温化技術を用いた施工実績は,2009年までの過去10年間で概ね300万m2程度であり,適用目的ごとの件数は図- 3に示すように450件程度となっている。
 

   図- 3 中温化技術の適用目的ごとの施工件数


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
このうち,製造温度を低減してCO2排出量の抑制や早期交通開放等を目的としたものが全体の4割であり,製造温度を通常と同一として寒冷期や橋面舗装の施工性改善等を目的としたものが6割である。また,製造温度を通常温度よりも低減した中温化アスファルト舗装は,施工面積で152 万m2,工事件数で189 件となっている。その施工面積や層厚などの施工条件に対する中温化混合物の使用量を推定すると約45万tになり,これは過去10年間の総製造量の0.1%以下と非常に少ない割合である。さらに,工事で用いた中温化混合物の種類は図- 4に示す通りであり,新規の中温化混合物での実績が多く,国内の加熱混合物の製造数量の約70%を占める再生混合物での適用実績は少ない現状にある。
 

   図- 4 施工実績における中温化混合物の種類


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なお,2011 年以降の3年間の中温化技術を用いた加熱混合物の年度別の製造数量は,全製造数量に対して0.3%程度で推移している。一方,中温化混合物と同種のWarm Mix Asphaltは,欧米では多くの実績が報告されおり,米国における2011年以降の3年間におけるWarm Mix Asphaltの年度別の製造数量は,全製造数量に対して20%程度,フランスにおいては10%程度で推移(※4)している。積極的にWarm Mix Asphalt を使用している米国やフランスに比べて,国内の中温化混合物の適用は少ない現状にある。
 
 

5.日本道路建設業協会の取り組み

日本道路建設業協会では,中温化技術の普及を図るため,その技術のメカニズム,中温化アスファルト舗装の適用効果と施工実績および費用対効果の試算結果を掲載したパンフレットを作成した。パンフレットの表紙を写真- 4に示す。
 

写真- 4 パンフレットの表紙


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
また,これからの普及展開に当たり,現状の技術に関する基本事項を整理して取りまとめることが必要と考えられ,舗装工事に中温化アスファルト舗装を適用する際の参考図書の位置づけを想定して手引き書を作成・発刊した。手引き書の目次構成を表- 3に示す。
 

表- 3 手引きの目次構成


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
配合設計の章では,特殊添加剤の添加方法の違いによるプラントミックスタイプとプレミックスタイプのそれぞれの配合設計方法を示した。また,製造の節では,CO2排出削減効果を確認する方法を記載した。なお,この手引き書は協会のホームページからダウンロードすることができる(※5)。
 
 

おわりに

近年,舗装分野では,環境の改善や負荷軽減に寄与する技術開発が進められてきており,中温化技術もそのひとつに挙げられる。
 
本技術の実道における試験施工は15年以上前から行われ,各種用途へ幅広く適用しながら技術的にも着実に進歩を遂げてきてはいるものの,舗装工事全体からみた実績は少なく,しかも地球温暖化抑制というCO2削減の観点からの適用は限られていた。
 
加熱混合物製造時でのCO2排出量削減が図れる中温化技術が有効であることは確かである。グリーン購入法の特定調達品目の中温化混合物において,当面,再生加熱アスファルト混合物およびポーラスアスファルト混合物は,まだ実績が少ないため適用外とされている。特に,再生加熱アスファルト混合物は,国内の加熱混合物の製造量に占める割合が多く,CO2排出総量の削減に大きく影響するため,当該混合物への適用が課題となっている。適用拡大に向けた近年の中温化技術に関する研究開発では,再生加熱アスファルト混合物への適用検討や更なる製造温度低減あるいは微細泡化(マイクロバブル化)したフォームドアスファルトの検討が行われている。
 


 
参考文献
(※1) 一般社団法人日本道路建設業協会:中温化(低炭素)アスファルト舗装の手引き,2012.4
(※2) 東 拓生:中温化技術を適用したアスファルト舗装の性能,舗装Vol.34 No.3, pp.7-11, 2011.3
(※3) 公益社団法人日本道路協会:舗装設計施工指針(平成18年版),p.38, 2006.2
(※4) European Asphalt Pavement Association:Asphalt in Figures 2011,2012,2013
(※5) 日本道路建設業協会ホームページ(中温化手引書):http://www.dohkenkyo.com/techno/tyuon_2012.htm
 
 
 
【出典】


土木施工単価2015春号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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