建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > いまさら聞けない BIM/CIMの始め方

 

BIM/CIMの状況

周知の通り、国土交通省は令和2年9月の第4回BIM/CIM推進委員会にて、「令和5年度(2023年度)までに小規模を除く全ての詳細設計・工事においBIM/CIMを原則適用」という方針を示しました。
 
また、CIM導入ガイドライン(案)は、「設計業務等共通仕様書」の構成に合わせて、より業務内容との関係性を明確にして参照しやすくするために、BIM/CIM活用ガイドライン(案)への再編が行われ、共通編については、令和2年3月に公開されました。令和3年度には河川編、砂防および地すべり対策編、ダム編、道路編などが公開されます。
 
このようにBIM/CIMの世界は毎年急速にバージョンアップしていますので、常に情報を把握することが重要です。
 
弊社が受託しているBIM/CIMモデル作成の依頼では、昨年度よりモデリング相談が漸増し、本年度はさらに新たな顧客からの相談が急増している状況から、業界全体が大きく変わってきているのが手に取るように分かります。
 
新たな相談の中で最も多いのが、「BIM/CIM活用業務ではないけれど、会社として取り組みをしていきたいが、どうすれば良いでしょうか」という相談です。今までも国土交通省の発表や各種団体のセミナーなどで情報を把握していたけれど、いざ具体的な取り組み方についてとなると経験がないので分からないということです。
 

BIM/CIMの詳細設計・工事への適用のロードマップ(案)

国土交通省 第4回BIM/CIM推進委員会資料より抜粋



弊社もCIMという言葉が出てきた平成24年度あたりの時点では、取組順序も分からず、何が正解かも分からずやってきましたが、さまざまな経験から得たものがあり、今回ここにこれから取り組む際に知っておくべきことを紹介したいと思います。
 
 

まずは3次元データの特徴を把握する

BIM/CIMを始めようとすると、すぐにどのソフトを選定すれば良いかとか、後述するリクワイヤメントを満たすには、どうすれば良いかと考えがちですが、ソフトを買えばできる訳でもなく、単に3次元化するだけでは、自分たちの生産性向上は図ることはできません。
 
まず、初めに必要なのは、土木で利用する3次元データの特徴を把握する必要があります。土木で利用する3次元データには、下記の3種類のデータがあります。3Dポリラインなどの線(ワイヤーフレーム)は今回除いて考えます。
 
・ソリッドモデル
・サーフェスモデル
・点群データ
 
ソリッドモデルは、中身の詰まったデータで、豆腐のようなものです。土木では「構造物」で利用します。単体で体積を算出したり、形状に属性を付与することが可能です。

 
土木で利用する3次元データの特徴


サーフェスモデルは、表面だけのデータで、ブルーシートのようなものとなります。
 
土木では「現況地形」「造成後の法面」などに利用します。
 
単体だと表面積しか算出できませんが、複数のサーフェスデータがあれば、差分計算により土量計算に活用できます。
 
中にはソリッドモデルに見えるサーフェスモデルというものもありますが、今回の解説は省略します。
 
土木で利用する3次元データの特徴

点群データは、集合体で見ると地形や建物が3次元に見えますが、1点につきXYZの座標を持つデータです。
 
点群単体で、「現況」の状況が見えるだけでなく、必要な個所をデータ上で計測が行える他、点群からサーフェスを作成することも可能です。
 
また点群を削除することで、新しい景観を見ることが可能となります。
 
土木で利用する3次元データの特徴

これら3種類のデータは、複合的に利用しても単体で利用してもBIM/CIM活用をしているといえます。ただし、どの工種にも使えるわけではないということに加え、異なる特性のデータなので、扱うソフトウエアが異なるということに、気付いていただきたいのです。
 
対象の工事でどのデータが必要になるかを先に知ることが重要であったりします。
 
例えば、起工測量時に点群をとっておけば、施工計画書作成にも利用できますし、これから施工する3次元モデルを配置する3次元の現況図を別途作成する手間が省けてBIM/CIM活用にもなり、生産性向上にもつなげられたりするからです。
 

土木で利用する3次元データの特徴

福井コンピュータ株式会社提供



工種によるデータの違いとソフトウエア選定

2次元CADもソフトウエアによって特徴がありますが、3次元は次元が増えた分、当然ながら倍以上のソフトウエアの種類や特徴があります。
 
3次元CADは、自動車業界、映像・ゲーム業界、建築業界などで発展してきました。
 
これらの業界では、作成するモデルは自動車業界ならクルマ、建築業界なら建物といったように作るものは一貫性があり、形状が異なるだけなので複数のソフトウエアを利用する必要がありません。
 
一方、土木業界は多種多様な工種があるので、異なる3次元データを混在させたり、使い分けたりする必要があります。
 
では土木業界で必要な3次元モデルは工種によってどのように分類されるのでしょうか。
 
3Dデータと工種のポジショニング

上図のようにサーフェスとソリッド、地形を含む工種と単体で成り立つ構造物で分類すると、多種多様なのが分かります。
 
この図からも分かるように、当然、利用するソフトウエアも異なってきます。
 
・ 地形が絡む工種(現況地形、計画地形、道路、河川)
 
地形が絡む工種(現況地形、計画地形、道路、河川)

・単体で成り立つ工種(構造物、仮設)
単体で成り立つ工種(構造物、仮設)

ここで重要なのは、BIM/CIM対応するためには、数種の3DCADを利用しなければならないことです。
建築と土木は同じ建設業界ですが、考え方が大きく異なることを知っておくべきです。
 
構造物は地形上に存在し、施工段階の状況(土工事や地形なりの構造物)を複合的に表示したりしますので、サーフェスデータとソリッドデータを同じ空間で表示する、いわゆる統合モデルを作成する必要が生じることもあります。
 
上記のような理由から、会社全体で統一したソフトウエアを選定するのではなく、工種ごと(担当部署ごと)に選定し、複数のソフトウエアを組み合わせて利用することを推奨します。
 
 

詳細度によるデータの違い

工種により作成するデータやソフトウエアが異なることを理解しただけでは不十分です。
 
BIM/CIMに対応するためには、詳細度(LOD:Level Of Detailsの略)を考慮したデータを作成する必要があります。
 
詳細度は、LOD100 ~ LOD400まで4段階あり、3次元モデルの利用シーンによって、どこまで詳細に作成すべきかを決めて作成します。
 
3次元をやったことない方が最初に壁となるのは、この詳細度といっても過言ではありません。
 
全ての構造物データを一番詳細なモデルであるLOD400で作成すれば、積算も可能になってきますので(積算については他の問題点もありますが)、これでなければBIM/CIM活用ではないと思っていないでしょうか。
 
図-1のように鋼構造物は重要となる場合がありますが、どのような工種でもいつも必ずその詳細度は必要があるでしょうか?
 

詳細度によるデータの違い

図-1
LOD400の例:オフィスケイワン株式会社提供



例えば、道路工事の場合、L型街渠を1本ずつ作る必要があるでしょうか?そこまではほとんどすることはないので、大げさな話ですが、LODを詳細にすると当然作業時間も膨大になるということです。
 
国土交通省は2023年度までに小規模を除く全ての公共工事でBIM/CIM化と言っていますが、詳細度については指定していません(図-2)。
 

土木分野におけるモデル詳細度標準(案)

図-2
出典:土木分野におけるモデル詳細度標準(案)
【改訂版】平成30年3月 社会基盤情報標準化委員会 特別委員会



詳細度は下図のように定義されていて、BIM/CIMをどのシーンでどのように活用し、どのような効果が得られるのかによってLODを決めてやっていくことも重要なポイントだと思います。3次元から少し離れた話になりますが、地図情報においてこの詳細度について考えてみてください。
 
都道府県を表示している時は主要な道路くらいしか表示されていないのに対し、自分の住んでいる地域を表示している時には主要道路に加え、街区道路や住宅が表示されています。
 

尺度による表示内容の違い

尺度による表示内容の違い:地理院地図より引用



つまりエリアが広範囲の場合は街区道路があっても見えないため、詳細度を下げ、エリアが狭い場合は詳細な情報が必要なため、詳細度が高くなっています。
 
BIM/CIMも同様に利用シーンによって詳細度は変えるべき(常に詳細に作る必要はない)と私は思っています。生産性向上、問題点の解決など、意味のある3次元モデルを作成することを強くお勧めします。
 
 

2次元CADの使い方と異なる点

現在は3次元での設計までは実現できていないことが多く、設計された2次元図面から3次元モデルを作成することがほとんどです。
 
その際に必要な知識としては、2次元図面では1工事単体で図面の役割を成していましたが、土木における3次元の場合は、地理空間上の構造物として管理するために単位を合わせる必要があり、m単位、少数点以下第3位までの管理となります。
 
平面図においては、図面枠内に作成していたのに対し、方位や座標をCADデータそのものに与えることに加え、測地座標系を設定する必要が生じます。
 
そのため、測地座標系は世界測地系(測量成果2011)とし、平面直角座標系を用い、m単位で統一することになります(管理する数値は小数点以下第3位まで)。
 
さらには、基準水準面については、T.P.(東京湾中等潮位)を標準とするので、A.P.やO.P.は変換した高さに変換しなければなりません。
 
構造図の場合は、現状ではmm単位で作図されていることが多いと思いますが、3次元ではm単位で作図して小数点以下第3位の精度でモデリングします。
 
3次元データに取り組む際に、2次元図面の描き方も変化を求められているのです。
 
さらに3次元図面を作図するためには、画面を上から下からまたは左右からと動かしながら作図します。画面表示の変化が激しいため、PCのスペックが乏しいと動かなくなってきます。
 
 

必要なハードの環境

BIM/CIMに取り組む際によく聞かれる項目の一つがPC環境です。そしていつも回答することは、作成する3次元データによって異なるということです。点群を扱う際や3次元モデル作成の範囲が広ければ、情報量が多いため相当なスペックが求められます。単体の構造物で配筋などが入らないLODが低いデータであれば、それほど高スペックでなくても良いこともあります。全員のPCを高スペックにするのではなく、作成するモデルによってPCを使い分けるのも手です。
 
推奨スペックは扱う3Dモデルによって異なります。
・点群処理、広範囲の場合やVRの場合
・単体のモデリング程度の場合
(表-1)
 

BIM/CIMに取り組む際に必要なハードの環境

表-1



人材育成

土木業界では今まで3次元に取り組んでいませんでしたので、BIM/CIM作成ができる人材はほとんどいないのが実情です。他の業界(建築や機械業界)でモデリングできる人を探す方法もありますが、構造物のモデリングはすぐにできるようになる一方、サーフェスモデルは土木の図面を読み取る力が必要なので、特に時間がかかります。メーカー各社の研修を積極的に受講することをお勧めします。
 
 

事例

 

CIM導入ガイドライン 下水道編

CIM導入ガイドライン 下水道編 R1.5 国土交通省抜粋




施工計画の例

施工計画の例:福井コンピュータ株式会社提供




点群活用の例

点群活用の例:株式会社デバイスワークス



要求事項(リクワイヤメント)について

BIM/CIM活用の実施方針として、要求事項(リクワイヤメント)という言葉があります。
 
これは、BIM/CIMモデル作成に関する発注者の要求事項ということですが、必須項目としては、
・CIMモデルの作成・更新
・属性情報の付与
・CIMモデルの照査
・CIMモデルの納品

選択項目としては、表-2から5項目
を選択することになっています。
 

要求事項(リクワイヤメント)選択項目

表-2



要約すると、
・CIMモデルの共有、確認
・情報共有システムによる情報連携
・後工程で活用できる必須項目以外の
属性情報
・施工ステップの確認、工程連携
・モデルからの自動数量抽出
・2次元図面との整合性を確認する3DAモデル作成
・3次元モデルおよび属性を活用した照査
・ICTによる3次元計測と3次元モデルでの検査
・CIMモデルを活用した仮設計画、施工計画
を選択することになっています。
 
リクワイヤメント必須項目で出てくる属性情報について、どんな属性を入れれば良いかという議論が必ず出てきます。
 
例えば、今回の案件が道路設計だとします。
 
道路設計には、サーフェスモデルで作成される道路線形や法面に加え、BOXカルバートのようなソリッドモデルが共存することが多いと思います。
 
ここで重要なのは、リクワイヤメントを対象範囲全体でやる必要はないということです。この例で言えば、属性としては道路の中心線形はJ-LandXMLによって属性情報が入ります。道路線形情報は、施工者側にデータが渡る際に非常に重要な役割を果たしますので、この属性情報を作成すれば良いのです。
 
このデータがあるとMG(マシンガイダンス)で利活用でき、施工者側が生産性向上を図れるのです。BIM/CIMはデータが活用できなければ意味がありません。自分たちが便利になることも重要ですが、業界全体がトータル的に生産性向上に図れるように考えるべきだと思います。
 

構造物モデルは、施工者側でコンクリート打設リフトの情報などの属性を入れるなど完成形状にだけ属性を入れるなど、作業途中の情報を入れることも可能です。
 
BIM/CIMを行うに当たって、見栄えの良い実績となる配筋のモデリングを望む声が多く聞こえます。しかし私は必ずしも重要だと考えていません。設計図どおりに作成すると継ぎ手は重なってしまいますので、干渉チェックをする際にはわざわざ動かしておかなければなりません。
 

継手部分の重なり

継手部分の重なり



確かに数量は算出できますが、2次元図面から作っているだけなので、数量は分かっています。設計ミスを見つけることはできるかもしれませんが、作業ボリュームに対する費用対効果があまりないと思います。
 
鉄筋の取り合い(補強筋など)を確認する箇所だけ作成すれば良いと思います。
 
属性を利用して数量を算出する際に、3次元モデルを作成すれば本数などを計上することができ、効果的になると考えて、鉄筋の属性を入れることが挙げられますが、鉄筋が全て入っていなくても参照による属性管理をすることが許されていますので、参照(リンク)による対応も考える方が得策かもしれません。参照情報のデータベースがあれば積算につなげられますので、3次元モデルとは別途作成して管理することも考えてみてはいかがでしょうか(図-4)。
 

BIM/CIM活用ガイドライン(案)

図-4 BIM/CIM活用ガイドライン(案)共通編 R2.3 国土交通省



鉄筋の例のように、全てを3次元化しようとするのではなく、費用対効果を考えて協議すべき箇所についてBIM/CIM化をすべきだと考えています。
 
BIM/CIMを始める際に、最初から難しいことをやろうと考えると非常に大変です。できるところから取り組んで、そこから飛躍していっていただければ幸いです。
 
最後にBIM/CIMは1年ごとに進展しています。常に最新の情報を取得していくこと
が大切です。
 
国土交通省のBIM/CIMポータルサイトを確認して実施方針やガイドラインを確認するようにしましょう。
http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimindex.html
 
 

問い合わせ先

株式会社デバイスワークス
東京都中央区日本橋茅場町2-14-7
日本橋テイユービル1F
03-6661-7771
代表取締役 加賀屋 太郎
Email:consul@deviceworks.co.jp

株式会社 デバイスワークス 代表取締役 加賀屋 太郎

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品