公園別マネジメントプランの改定について（改定の視点と取組イメージ）｜建設情報クリップ

都立公園は，これまで83公園（合計2,050ha）を整備開園しており，多くの都民にやすらぎ・レクリエーションの場を提供している。
また，地球温暖化対策への寄与，生物の生息地の保全等による都市環境改善のほか，避難場所など安心・安全な都民生活の実現に重要な役割を果たすなど，成熟都市東京にとって必要不可欠な存在である。

 
 
 

パークマネジメントとは，東京が目指す公園づくりの基本理念と目標を達成するため，行政主導の事業手法から転換し，都民・NPO・企業と連携しながら都民の視点にたって整備，管理していくものであり，誰からもわかりやすい目標設定，多角的な視点による事業展開，結果の評価による継続的な改善を行っていくことである。

パークマネジメントマスタープラン（以下，マスタープラン）では，都立公園全体の目指すべき方向性として，4つの基本理念と10の目標，その実現のためのプロジェクトを定めている。

公園別マネジメントプラン（以下，公園別プラン）は，マスタープランの基本理念や目標を実現するため，公園ごとの性格・役割を踏まえ，各都立公園の目標や維持管理・運営管理等を示した取組方針である。

 
 
 

昨今，新型コロナウイルス感染症の拡大や東京2020大会の開催等，これまでにない公園を取り巻く大きな社会状況の変化があった。
それらに的確に対応していくため，公園別プランを改定することとし，新たに5つの視点を含んだ「公園別マネジメントプラン改定の視点と取組イメージ」を策定した。
策定にあたっては広く都民から意見を募集した（図－1）。

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により，これまでの生活様式が見直され，公園の利用ニーズも大きく変化している。
ウィズコロナにおいても，都民の健康や生活を支え，また，ポストコロナを見据えた社会の変化にも迅速かつ柔軟に対応していくことができる公園の管理運営が求められている。

 

生活様式の変化に伴い，都民に身近な都立公園において利用者数が増加した。
また，感染状況に応じて他者との距離確保の呼びかけや，運動施設・遊具等の施設利用制限を実施し，適切な利用を促してきた。
さらに，感染拡大により園内イベントの開催が困難になったが，人との接触を避けた方法や感染状況に応じた開催を検討・実施し，公園の魅力を伝えてきた。
今後も感染症の状況や利用の変化に合わせて以下の項目に取り組んでいく。
 
◆ 感染症への対応
　　…有料施設等の人数上限設定等の利用制限，事前予約制度の導入等
◆ 利用変化への対応
　　…屋外テレワークの場となる環境・空間やキッチンカー等を活用した飲食空間の確保等
◆ 民間のノウハウを生かした施設運営と公園利用の促進
　　…カフェ等民間ノウハウを生かした施設を設置した公園における，民間事業者等との連携強化
◆ デジタル技術を活用した利便性の向上
　　…キャッシュレス対応やスポーツ施設予約のオンライン化等
◆ デジタル技術を活用した情報・魅力の発信
　 …オンラインイベントの開催やソーシャルメディア等を活用した情報や魅力発信

近年，気候変動の影響により気象災害が激甚化している中，公園の持つ雨水浸透等の減災機能に関心が持たれている。
今後，大雨や猛暑の影響を緩和する機能等をより確実に発揮していくことが求められている。

 

気象災害の対応や公園利用者の安全確保等のため，公園では日常的に園内巡回や危険樹木の把握などを実施してきた。
これらを継続するとともに，公園の持つ防災・減災機能をより発揮するため，以下のような項目に取り組んでいく。
 
◆ 防災・減災機能を発揮する施設等の維持保全
　　…土砂崩れ防止のための法面保護施設や，地域の浸水被害防止のための貯留浸透施設等の維持保全の推進
◆ 減災に資する緑地等の保全
　　…樹林地等の保全や踏圧による地表面の踏み固め防止などの強化
◆ 暑熱対策も考慮した樹木等の管理
　　…遮熱等の機能を十分に発揮する樹木剪定等の植栽管理の強化
◆ 地域と連携した防災対策
　　…区市町村の防災所管部署や地域住民等と連携した防災訓練の実施等による防災意識の向上や防災対策の強化

東京2020大会の開催に伴い，競技施設等に加え，ユニバーサル社会実現に向けたバリアフリー化や，多言語対応等の施設整備やサービスの向上を図ってきた。
開催以降も，上記施設やサービスの継承，ユニバーサル社会実現に向けた管理運営が求められている。

 

東京2020大会開催に向け，利用者の快適性を向上させるため，スロープ整備や段差解消，公園サインの多言語化などの整備を進めた。
また，ユニバーサル社会の実現に向け，障害の有無にかかわらず，だれもが遊べる児童遊具広場を整備した。
こうした成果を次世代に継承し，発展させていくため，以下のような項目に取り組んでいく。
 
◆ 東京2020大会に向けて整備した施設のサービス水準の維持向上
　　…ユニバーサル化をした施設の適切な維持管理，ユニバーサル化の推進による公園の利便性の向上
◆ スポーツを通した公園の魅力向上
　　…東京2020大会の開催により機運が高まったスケートボードやスポーツクライミングなどの多様なスポーツ利用の在り方検討
◆ だれもが遊べる児童遊具広場の利用促進
　　…ユニバーサルデザインに配慮した遊具の整備推進，webサイト・SNS等を活用したPRやイベントの開催，利用支援団体等との連携強化による利用促進
◆ 東京2020大会に向けて実施したイベントの継続・推進
　　…障がい者スポーツ体験イベントや世界の公園花壇づくりなど，大会の機運を高めるため実施してきたイベントの大会レガシーとしての継続とさらなる発展

これまでの管理運営を通じ，地域の多様な主体によるさまざまな活動が行われるとともに，公園ごとに独自の魅力が形成されたことにより，まちに新たな魅力が創出されている。
こうした取組を継承し，より向上させることで，魅力を増進していくことが求められている。

 

公園の魅力を向上させるため，民間事業者がデザイン，建築から運営まで担うレストラン・カフェをオープンしたほか，公募設置管理制度（Park-PFI）による民間活力の導入を進めている。
また，パークミーティングや管理運営協議会等，公園管理者と利用者との意見交換を実施し，地域との連携も強化してきた。
加えて，日比谷公園周辺等では，国家戦略民間都市再生事業の取組が進展しており，周辺のまちとの連続性を意識することも重要である。
引き続き公園の魅力を向上し，人々の交流を促進するため，以下のような項目に取り組む。
 
◆ 民間のノウハウを生かした施設運営と公園利用の促進（再掲）
◆ 公園周辺のまちとの連続性を意識した管理運営
　　…国家戦略民間都市再生事業の進展等による公園周辺の「まち」の変化等を踏まえて，公園に隣接する施設や事業者等との連携
◆ 管理運営における多様な主体との連携
　　…民間事業者等の多様な主体との継続的なパークミーティングや管理運営協議会等の設置開催
◆ デジタル技術を活用した交流の促進
　　…WebマッピングシステムやSNS等の活用による公園に関する情報交換

Society5.0の提唱や感染症の感染拡大による生活様式の変化等により，キャッシュレス決済やテレワークの普及など社会全体でさまざまなデジタル技術・データの活用が加速している。
公園の管理運営においても，デジタル技術を活用した利便性・快適性の向上や，魅力の発信が求められている。

 

公園利用における利便性向上等のため，文化財庭園や動物園等，有料施設での入園料支払いにおいてキャッシュレス決済に対応したほか，イベントのリモート開催，動物園等における園内状況の動画配信などを実施してきた。
 
今後も利用者のサービス向上等のため，以下のような項目に取り組んでいく。
 
◆ デジタル技術を活用した利便性の向上（再掲）
◆ デジタル技術を活用した情報・魅力の発信（再掲）
◆ デジタル技術を活用した交流の促進（再掲）
◆ デジタル技術を活用した質の高い維持運営管理の推進
　　…樹木や公園施設等のデータベースのクラウド化やロボット草刈機の導入等の推進

 
 
 

以上の5つの視点や取組イメージを踏まえて，各公園の目標や維持管理・運営管理の取組方針等の追加充実を図り，公園別プランを改定した。

 
 
 

今後も社会状況等の変化に合わせて公園別プランを柔軟に改定し，マスタープランの実現に向けてパークマネジメントをさらに進め，より良い都立公園となるよう取り組んでいく。

 
 
 

 
 
 
【出典】

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土木施工単価2022年秋号



 
 

最終更新日：2023-03-02

 

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