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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 耐震天井への取り組み 〜天井落下を防止するために〜

 

日本耐震天井施工協同組合(JACCA)技術委員長
塩入 徹

 

1.はじめに

平成23 年3 月11日に発生した東日本大震災では,多数の建物で天井が落下し,それによって5名もの尊い命が失われ,大勢の方が負傷したことは記憶に新しいことと思う。構造躯体の耐震化が進み,建物本体が地震に強くなった反面,非構造部材と呼ばれる天井などの耐震対策の遅れがクローズアップされる結果となった。
 

【体育館や事務所の天井落下被害】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
東日本大震災以降,地震に強い天井の普及に取り組んでいる日本耐震天井施工協同組合(以下JACCA)には施主,設計事務所,ゼネコンなどから「天井が落ちたので現場を見てほしい」「天井の一部が壊れているので天井の耐震診断をしてほしい」との依頼が急増した。その際,「なぜ天井が落ちたのか?」という質問が多く,天井の施工に詳しい人は「クリップが弱いから」とか「ハンガーが変形したから」というように,天井部材の強度不足を原因として指摘することが多かった。
 
しかしそれらは結果であって本当の原因ではないことが多い。
 
天井落下の根本的な原因は,天井に適切な耐震設計がなされていなかったことにある。
 
適切な耐震設計がされていれば,その要求する強度に見合った耐震部材を使用して天井を施工することになるので,こうした部材の変形,脱落は防げるのである。つまり天井を正しく耐震設計することが重要なのである。
 
 

2.耐震天井の設計

それでは耐震天井は一体どのように設計すればよいのだろうか。
 
建築基準法施行令第39条では「地震その他の振動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない」と規定されている。ところが実際には設計者がどのように天井の脱落対策をすればよいのか明確な規定がなく,多くの実験データに基づいて理論的に耐震設計された天井から,適当にブレース材を配置した名ばかりの耐震天井までもが市場に氾濫することとなった。
 
そこで国土交通省は平成25 年8 月5日に建築基準法施行令第39条を改正し,告示第771号で「特定天井の構造方法」を明確化した。
 
特定天井とは脱落によって重大な危害を生ずるおそれのある天井とされ,具体的には「6m超の高さにある,面積200㎡超,質量2㎏ /㎡超の吊り天井で人が日常利用する場所に設置された天井」のことである。
 
また,天井の構造に関しては,耐力上の安全の確保が義務付けられることになった。
 
安全の確保のためには,告示第771号に定められた基準(同告示第3)(仕様ルート)によるが,基準によらない場合は,告示に定められた構造計算(同告示第3 第2項)(計算ルート)により安全を確かめなければならない。また,超高層建築物や特殊な天井については大臣の認定を受ける必要がある(大臣認定ルート)。
 

【建築物における天井脱落対策の全体像 出典:国土交通省】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
各検証ルートの違いは天井の設計震度の求め方や設計の自由度となっており,設計しやすい仕様ルートは設計震度をより安全側に求めるようになっている。そのためブレースなどの補強部材が多く使われることとなるが,実態としてはブレース材が天井裏に設置されたダクトなどの設備機器類にぶつかってしまい,設置できないことが多いので注意していただきたい。
 
計算ルートは三つの手法に分類されており,設計のしやすい水平震度法から,簡易スペクトル法,応答スペクトル法となっている。より高度な設計手法を選択するほど,ブレースなどの補強部材を減らすことができるので経済設計が可能である。
 
例えば仕様ルートで設計震度が2.2となる天井が,簡易スペクトル法では0.6というケースも出てきている。これは簡単にいえばブレースを220本使用する天井が,実際には60本で告示に則った耐震化が可能だということである。
 
さらに簡易スペクトル法などの高度な検証方法であれば,天井の剛性のデータを利用してクリアランスを小さく設定することも可能である。仕様ルートや計算ルートの水平震度法ではクリアランス6cm以上という設定が多いと思われるが,天井の剛性のデータを利用して設計することで6cm以上のクリアランスを2 〜 3cm程度に小さくすることも可能である。クリアランスを小さくできることで隙間をカバーする金物の費用を抑えることができるうえ,デザイン上の観点からもメリットを生かせるので,今後は簡易スペクトル法などでの高度な検証が増えていくと思われる。
 
いずれにしてもそのルートに対応できる耐震部材の許容耐力データが鋼製下地材メーカーより公開されていることが重要である。
 
前述した簡易スペクトル法も鋼製下地材メーカーの許容耐力と剛性のデータがようやく揃い公開され始めたので,構造設計者がそのデータを使用してより経済的な設計ができるようになったのである。特定天井の設計者はぜひ最新のデータを使用して経済的な設計を行い,正しい耐震天井の普及活動を行っていただきたい。
 
また,平成26 年4 月1日の告示第771号の施行日前までの鋼製下地部材メーカーのカタログを参考にしてしまうと,新基準試験方法で行っていない試験データや破壊耐力だけ掲載されているものが多いので,設計に採用する場合は,告示に規定された試験方法で最新の許容耐力を公開しているか,設計者がデータを再確認する必要がある。
 
設計者は鋼製下地部材メーカーのカタログに「国交省告示第771号対応」と明記されていることと,繰り返し試験のデータやグラフが掲載されていることをよく確認していただきたい。
 
またこの告示は平成26 年4 月1日以降に着工される新築建築物等に適用されることに注意していただきたい。平成25年度に設計されたものでも平成26 年4 月1日以降に着工する現場の特定天井は,この天井告示の規制対象となる。
 
ここで注意が必要なのは「天井高が5mで特定天井ではない場合には何もしなくてよい」というわけではないことである。あくまでも建築基準法施行令第39条は天井を脱落させてはならないことを定めているのであり,図1の左下にあるようにどのような天井であっても「設計者の判断により安全を確保する」ことが重要である。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

【告示に則った試験方法で許容耐力が掲載されたカタログ】(提供:株式会社桐井製作所)


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

3.天井撤去について

これらの制度改正に伴い,既設の屋内運動場などの天井に関しては撤去するという方策もあるが,天井には吸音性・遮音性・断熱性・空調効率向上・照明効率の向上などの役割があることも考慮しなければならない。
 
「天井を撤去してから教師の声が反響してよく聞こえない」とか,「屋根を打つ雨の音がうるさくて授業にならない」といった相談を受けることがある。夏場は屋根が高温になり室内にも影響を与えて暑くなったり,冬場は結露が発生したりとさまざまな問題も発生している。さらに照明の反射効率が低下して室内が暗くなるなど,天井を撤去して耐震天井の再設置をしない場合は,防音,断熱,空調機・照明器具の増設などの検討を合わせて行う必要がある。
 
また天井高が6m未満となる武道場や講堂では天井を撤去することにより,天井面からの窓の位置や面積が建築基準法第35条の内装制限の規定に該当するケースがあるため,安易な天井撤去を選択しないようにお願いしたい。
 
 

4.耐震天井の施工

耐震天井の設計が終わるといよいよ耐震天井の施工となるが,ここでのキーマンは設計監理者と施工管理者である。特に設計監理者は設計図書どおりに現場で施工されているのか監理監督する義務がある。設計者が正しい耐震天井を設計しても施工者が正しく施工できていなければ意味がないことになってしまう。
 
JACCA では正しく耐震天井を施工するために耐震天井施工技術者認定講習を行っている。告示第771号が施工された平成26 年4 月1日以降の講習会の修了試験合格者のライセンス証の顔写真の下には「天井告示対応技術者」と記載している。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
耐震天井の施工には,以下のように大きく三つのポイントがある。一つ目はクリップやハンガー,チャンネルジョイントなどのパーツの補強。二つ目は天井を揺らさないようにするブレース材(斜め部材)の設置。最後にブレースを入れても,地震時には天井が少しは揺れるのと,また建物自体も揺れて変形するために天井が壁と衝突しないようなクリアランス(隙間)が必要となる。
 
耐震天井の設計・施工のポイント
1)パーツ類の補強
2)ブレース材の設置
3)クリアランスの設置
 
よって,このうちのどれか一つが欠けても耐震天井とはならない。
 
さらにJACCA は設立当初より現場溶接は禁止しており,誰が施工しても同じ強度が実現できるような金物やビス接合を認定していたが,今回の告示でも現場溶接が禁止となったので,施工方法を告示に沿って施工要領書などに明確に記載する必要がある。
 
特に東日本大震災で被害の多かった斜めの天井や段差部分,開口部などの詳細が施工要領書に具体的に明記されていないと施工ができない。設計監理,施工管理を担当される方は耐震天井の施工要領書の内容をよく把握し,現場の施工状況を確認していただきたい。
 

【JACCA認定耐震天井工法の施工要領書】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

5.告示仕様以外の天井

告示第771号で特定天井の構造方法が定められたがこの原稿を書いている時点では吊り天井のみとなっている。ブレースなどにより地震力による天井の振れを抑制し,併せて天井面と壁などとの間に一定のクリアランスを設けることにより,天井材の損傷ひいては脱落の防止を図ることを基本的な考え方としている。
 
天井は今後の技術開発の余地が大きいため,その促進を図る観点から,このような考え方とは異なる方法であっても安全を確認できれば大臣認定ルートによる採用も可能であるとされている。さらに一般にも普及するように,告示により特定天井の構造方法が追加となることもあり得るので最新の情報収集は欠かせない。われわれが「壁持たせ天井」と呼んでいるブレースを必要とせず,クリアランスが不要な天井も,構造検討が進めば特定天井でも採用できるようになるかもしれない。
 
いま一度,特定天井と呼ばれる五つの条件を思い出してほしい。「6m超の高さにある,面積200㎡超,質量2㎏ /㎡超の吊り天井で人が日常利用する場所に設置された天井」となっているが,吊り天井でなければ特定天井には該当しない。よって鉄骨面に天井板を直張りするなどの工法や質量2kg/㎡以下の軽い天井を採用するなど,どのような天井で設計すべきかは,設計者が数ある選択肢の中から,天井の要求性能や設置目的によって決めるべきである。
 
講堂や音楽ホールなどは吸音性や遮音性を考慮した重い天井板を採用するケースが多く,さらには音の反射を効果的に利用するために天井や壁が複雑な折れ曲がり形状になっていることが多い。特に重い天井板(例えば40㎏/㎡を超える天井など)を通常の鋼製下地で支えるには強度的にも難しいケースが多く,軽量鉄骨(C形鋼など)に直接天井仕上げ材を貼るケースがある。これは構造的に吊り天井ではなく,前述した特定天井にはあたらないが,当然のように重い天井板が落下すると危険なため,より慎重に天井の構造の安全性を検証すべきである。
 
軽量鉄骨造として下地を完璧に構造検討しても,重い天井仕上げ材がビスから抜け落ちて落下しているケースもあるので,ビス頭の形状や規格寸法,許容耐力などもしっかりと検証する必要がある。
 
また吊っていない天井と同様に2㎏/㎡以下の軽い天井も特定天井には該当しない。最近では軽い幕天井や断熱材を吊りボルトで吊るような新しい超軽量天井も増えてきている。ただし幕天井の支持フレームや超軽量天井のフレームが耐震設計されていることや,構造体としっかり接合されていることを確認した上で選択すべきである。
 
また照明器具を天井に取り付けできないケースも多く,施工範囲も限られる。照明器具の重量を加算すると,ほとんどが2㎏/㎡を超えてしまうので注意が必要である。
 

【2kg/m2以下の超軽量天井(商品名:KIRII安心天井)】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

6.天井の耐震診断

新築の建物の天井であれば「設計」→「施工」で進む流れではあるが,既存の建物の場合は,まず現在の天井がどのような設計になっていて,実際にはそれがどのように施工されているか,確認する必要がある。
 
つまり「耐震診断」→「設計」→「施工」が正しい手順となる。発注者は設計発注時に現状を調査するという項目を含めて発注することも多いが,いずれにしても天井の構造に詳しい専門家が天井裏を診断し,どのように改修するのが一番よいのか,設計者が正しく判断できるように情報を引き継ぐ必要がある。
 
いきなり設計してしまう,また施工してしまうというケースもゼロではない。また,現場施工が始まってしまってから,設計のとおりにブレースが入らないというトラブルが発生するケースや,現場に行くと建築図面では把握できない設備機器が先行して設置してあり,所定の位置にブレースを配置できないなどのトラブルが多い。
 
さらには天井裏を診断してみると,驚いたことにいたるところで天井部材が破損,脱落,変形しているケースが目立つ。
 

【JACCA天井耐震診断士による天井耐震診断】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「東日本大震災で天井が落ちなかったから大丈夫」という施主も数多くみられたが,一度,天井裏を専門家に点検してもらうことをお勧めする。JACCAで診断させていただいた物件の半数以上で何らかのトラブルが発見されている。
このような状況で国土交通省は平成25 年8 月20日に下記のような通達を出している。
 
「屋内プール等の大規模空間を持つ建築物の吊り天井の脱落対策について」(技術的助言 国住指1852 号,1853号)
 
平成25 年7 月14日の静岡県富士市,同月27日神奈川県横須賀市のプール天井の落下事故から全国都道府県建築主務部長,関係団体及び関係省庁あてに注意喚起の通知を発出した。
 
対象建物
天井高6m超の部分が面積200㎡超ある空間で建設後,震度4以上の地震が観測されたもの。具体的には屋内プール,体育館,劇場,音楽ホール,映画館, エントランスホール,待合ロビー,講堂,展示場,宴会場 等
 
必要とされる対策
①天井面のゆがみや垂れ下がりの有無を目視等により点検する。点検口等から天井裏を目視し,クリップ等の天井材の外れ等が生じていないかの点検を実施する。
②点検の結果,クリップ等の天井材の外れ等の異常が発見され, 天井の脱落のおそれがあると考えられる場合には,天井下の立入を制限するなどの安全対策,所要の天井落下防止措置等の実施を行う。
 
そして建築基準法第12条の定期点検報告制度(平成20年告示第282号)が改正され,平成26年11月7日に国土交通省告示第1073号として公布された。
 
特定天井は定期的(6カ月から3年に一度)に天井材の劣化および損傷の状況を確認することが法制化されたのである。
 
施行は平成27 年4 月1日からとなっているが所有者,管理者,占有者の方々は注意していただきたい。
 
天井の破損状況の写真を見ると予想以上に天井裏が破損しているケースが多いことに驚く。部屋の中から天井を見上げていても天井裏の異変にまでは気が付かないのである。天井裏の診断は,天井の専門家に任せるのが安心ではあるが,点検口やキャットウォークから簡単に点検できる現場も多いので,ぜひ一度は天井の状況を確認していただきたい。
 
東日本大震災で天井が落ちなかったのは単に不幸中の幸いだっただけで,天井裏ではかなりの重症を負っている建物が予想外に多いことを肝に銘じるべきである。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
天井には耐震対策が必要であるということを再認識していただくとともに,現在の天井の状況確認も至急検討していただくことを強く望むものである。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【出典】


建築施工単価2015冬号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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