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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 『材料からみた近代日本建築史』の連載を終えて

 
2012年秋号から2019年夏号までの8年間にわたり合計22回,筆者を含め7名で「材料からみた近代日本建築史」を連載させていただいた。まずは,連載を終えるにあたって読者の皆様にお礼申し上げたい。
 
さて,本連載の企画は,当初,日本大学教授大川三雄先生が中心となって計画され,現在の日本大学教授の田所辰之助,日本工業大学教授の安野彰,そして,神奈川大学教授の内田青蔵にお声掛けいただき,連載を開始したものである。
 
開始にあたっては,単にこれまでと同様な近代日本建築史に関するものではなく,何か新しい視点からの連載にしたいと考え,その視点について議論した。そうした中で,わが国への近代建築の導入は,その建築思想の導入や外国人建築家の招聘(しょうへい)などさまざまな要因があるが,そうした建築を実現するためには日本にそれまで存在しなかった技術はもちろんのこと,建築材料の導入が不可欠であるという当たり前の事実の再確認が行われた。そして「それなら,建築材料という側面から近代日本建築の歴史を描いてはどうか」という結論に至ったのである。
 
近代建築の特徴を建築材料から論じた「鉄・ガラス・セメント」というフレーズは,よく知られている。これはこの3種類の材料の存在こそが,過去の建築様式から脱却し新しい時代に即した近代建築の誕生を可能としたというわけである。そのため,これらの3つの材料をテーマにした論考から始め,さらにどのような材料をとりあげて論じるべきかの議論を行った。もっとも,われわれが材料の導入や国産化の経緯について詳しいわけでもなく,そのため,各自どのような材料なら興味を持ち,論考を描けるのかを持ち寄り,連載用の材料のリストアップを行った。その際,われわれ4名以外の方にも協力をお願いし,専門的観点からの論考をお願いすることにしたのである。
 
各自の論考をまとめていく中で確認したのは,材料史は建築材料学の分野で広く論じられており,われわれの志向するのはあくまでも新しい材料の導入により可能となった新建築の存在,そして,その後の展開を建築家や事例を通してみていくことであった。その意味では,材料そのものの歴史やその周辺の動向を知りたいという読者にとっては,少し内容が異なり期待外れの部分もあったのではないかと思う。その点は,われわれの趣旨をご理解の上,ご容赦願いたい。
 
それぞれの論考を前に,この22回続いた連載の内容を振り返れば,扱った時代が基本は戦前期を対象としつつも戦後の動向にまで触れたものもある。個人的な話をすれば,筆者が担当した「コンクリートブロック」は戦前部分をひとくくりとしてまとめたものである。ただ,扱った「コンクリートブロック」という材料は戦後も注目を浴び,一時期に住宅建築に積極的に採用されたこともあった。こうした動向は改めてきちんと紹介しておくべきであったと少々反省している。こうした思いは,おそらく他の筆者の方々も同様に抱いているのではと思う。
 
いずれにせよ,今回,連載の中でとりあげさせていただいたセメントや大谷石,あるいは板ガラスといった諸材料そのものに注目すれば,当然ながら材料史の中で体系づけられたものすべてを網羅しているわけでないことは明らかである。むしろ,そのとりあげた材料は,現在でも一般に広く普及しているもの,ある一時期だけ急速に広まったもの,あるいは,現在はその存在が忘れ去られたものなどと多様で,材料史にみられるものとは大きく異なっている。
 
おそらく,材料という観点からみればもっと紹介すべきものが,他にも存在するように思われる。この点は建築材料史とは異なるのだとするのは簡単だが,建築史的観点という近代建築の発展や近代建築の造形の展開などに極めて大きく関与したものを中心に選択したのである。その点を改めて強調しておきたいと思う。
 
ただ,そうした建築史的観点からみて重要と思われる材料をすべてとりあげているのかと問われれば,もっと加えるべきものもあると思われるのも事実である。そのような意味では,本連載は今回をもって終了するが,異なる材料をテーマにとりあげることがあれば,それはまた別の機会として,一度ここで幕を閉じたいと思う。
 

【「 材料からみた近代日本建築史」連載一覧】


 
 


【執筆者一覧(順不同)】
大川 三雄  元日本大学 教授
内田 青蔵  神奈川大学 工学部 建築学科 教授
田所 辰之助 日本大学 理工学部 建築学科 教授
安野 彰   日本工業大学 建築学部 建築学科 教授
田中 和幸  近畿大学工業高等専門学校 准教授
伊郷 吉信  自由建築研究所 代表
須崎 文代  神奈川大学 工学部 建築学科 特別助教
                (2019年12月現在)


 

●これまでの『材料からみた近代日本建築史』(全22回)は,
「けんせつPlaza」(http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/29017)に掲載しております。

 
 
 

神奈川大学工学部 建築学科 教授 内田 青蔵(うちだ せいぞう)

【出典】


建築施工単価2020冬号



 
 
 

 

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