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今回は道路舗装に焦点を当て,(株)ガイアート技術研究所の鈴木技術担当部長に,事故対策縦溝粗面舗装「フル・ファンクション・ペーブ(FFP)」について伺ってきました。
冒頭写真/ 舗装表面(縦溝粗面)の仕上がり
米国特許出願申請・台湾国特許出願申請中
(株)ガイアートの「フル・ファンクション・ペーブ」は,舗装だけではなく「舗装工法,舗装構造および舗装装置」という特許名称の総合的舗装技術です。
これまで全国各地で計145 件採用されており,累計30万m2 を超える実績がある舗装です。凍結抑制対策に加え,事故対策を目的として採用されており,国土交通省の新技術情報システム(NETIS)に登録されています(登録番号KT-130010-VR)。2015 年7 月には国際特許協力条約(PCT) に基づく国際出願にて特許性[1]ありとの見解を取得し,日本国特許も取得。さらに海外展開も視野に入れ,今年1月には米国特許出願申請,台湾国特許出願申請を進めています。
[ 1 ] 特許を受けるための要件の一つ
フル・ファンクション・ペーブ(FFP)のスゴイ性能
「フル・ファンクション・ペーブ」には,“縦溝粗面型ハイブリッド舗装”,“事故対策縦溝粗面舗装”,“多機能型排水性舗装” など,ある程度性能が分かる名称が付いているのですが,よくよく聞いてみるとそれらの名称だけでは分からないスゴイ性能があるのです。
「フル・ファンクション・ペーブ」は30 ~ 50mmの厚みがあるうちの路面付近だけが水を通す構造になっており,舗装内部は砕石マスチックアスファルト舗装(SMA)[2] で水を通さない防水構造となっています。これにより水の浸透が防がれ,舗装の脆弱化を抑制します。
[ 2 ] 粗骨材とフィラー(詰め物)が多い不連続粒度のアスファルト混合物で耐流動性に富む

フル・ファンクション・ペーブの層別機能図
坂道や曲線部といった滑り抵抗が求められる箇所にも適する
特長的なのがその表面。縦溝は直線ではなくギザギザの不連続で,タイヤの溝に近い40mm 間隔に施された粗面構造になっています。滑り抵抗性があるだけでなく,寒冷地の場合この縦溝と路面付近の空隙に凍結防止剤が留まることで塩分残存率の高い凍結抑制舗装となります。寒冷地で散布される凍結抑制剤が従来の2 倍程度流れにくくなるとの実験・実証結果もあるほど。これにより散布回数を低減でき,維持管理のコスト削減にもつながっています。また,浮き水が減ることでブラックアイスバーン(氷の幕)の抑制にも効果を発揮し,縦溝粗面効果で路面の反射がしにくいため昼夜ともに視認性の向上が図れる他,耐流動性と骨材飛散抵抗性にも優れています。軽井沢駅のロータリー前にも採用されているので,そこで見てみると分かりやすいかもしれません。
このような特長から,より安全性を求められる区間に適した舗装工法として全国で実証が進んでいます。

フル・ファンクション・ペーブと同時施工できる注意喚起舗装「トレッドマシーン」
軽井沢の自社保有道路にて試験施工を重ねる
開発に着手したのは2010 年。本格的な営業開始に先立ち,同社が運営している延長10km の有料道路「白糸ハイランドウェイ[3]」での試験施工を実施。開発当初はアスファルト混合物の配合を工夫して表面を粗面にしていましたが,十分な機能が発揮できなかったため,施工機械で粗面にする方法を軸に試行錯誤を重ねたそうです。
寒冷期はアスファルト混合物の温度低下が早いため密度不足などの問題が生じやすくなります。アスファルトフィニッシャ[4]本体での加温・保温対策としてはスクリード[5]の連続加熱程度で,効果的な対策は取られていませんでした。
そのため,施工・品質の向上を図るべくアスファルトフィニッシャの改良として,シニックスクリード[6] 装置,「サーマルホッパー」,ほかにダンブトラック運搬時の温度低下を抑える特殊保温シート「G シート」なども開発しています。

シニックスクリードによる敷均し例

サーマルホッパー
[ 3 ] 長野県東軽井沢町にあり,観光名所「白糸の滝」に続く。白糸
ハイランドウェイにはバスも運行しているため,フル・ファ
ンクション・ペーブの性能を体感することができる
[ 4 ] アスファルト舗装のために使われる建設機械のこと
[ 5 ] アスファルトを敷き均す部分のこと
[ 6 ] 縦溝をつくる装置
まとめると「フル・ファンクション・ペーブ」には以下の性能があります。
● 一層で排水機能と防水機能の2 つの機能
● ハイドロプレーニングの抑制
● 持続性が高い凍結防止機能
● ブラックアイスバーンの低減
● 優れた耐流動性と骨材飛散抵抗性
● 視認性の向上
● 一般舗装に比べて騒音値が低減
昨年6 月に開かれた国土交通省近畿地方整備局研究発表会で「フル・ファンクション・ペーブ」を施工した名阪国道の米谷カーブと大道カーブでの事故件数低減効果に関する論文が発表され,事故抑制やコスト低減など有効な工法と評価されたそうです。さらに「事故対策舗装工法」としての工事も受注しているとか。これからも全国さまざまな場所で見られることになると思われます。
安全・安心な道が全国に広がることを期待しています。
【出典】
積算資料公表価格版2017年04月号

最終更新日:2018-04-16