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ホーム > 建設情報クリップ > 知る見るインフラストラクチャー > 知る・見るインフラストラクチャー 可塑状グラウト®について知ってみよう!

 



 
技術・製品・工法の内容を,サクッと掘り下げてみる「知る・見る インフラストラクチャー」。
 
今回は,高度成長期に多く見られる矢板工法などによる道路トンネルの補修・補強の際に採用される,空洞充填注入材を使った工法に焦点を当て,可塑状グラウト協会の若菜和之事務局長に「可塑状グラウト®」について伺ってきました。
 
 

可塑状グラウト®って何ですか?

構造物のリニューアルや補修・補強に用いられるグラウト。グラウトとは空洞に充填する薬液のことで,このグラウトに可塑性[1] を持たせたものが「可塑状グラウト®」です。
 
[ 1 ] 固体に外力を加えて変形させ,力を取り去っても元に戻らない性質のこと
 
 

エアモルタル+可塑剤=可塑状グラウト®

泥状のモルタルに気泡を混入して作られた材料のことをエアモルタルといいます。
 
従来,空間充填注入材として,軽量で施工性・充填性に優れたエアモルタルが採用されてきました。しかし,流動性を持たせた一液性のグラウトだったため,停止すべき位置を通り過ぎて施工不必要な遠方にまで流れたり,気泡が消失して体積が減少したり,クラック等の隙間から漏出することがありました。
 
この問題点を防止するには,グラウト自体の粘性を瞬時,かつ大幅に増大する必要があり,同時に若干の加圧で流動し,容易に空洞に充填できる程度の固結強度を持ったグラウトにすることが必要です。
 
流動状のエアモルタルに可塑剤を加え,可塑状グラウト®にすることにより,水に強く,限定注入が可能で,小さな隙間からの漏出も防止できる「エアパック工法」が開発されました。
 



 
写真中央は静止した状態ではほとんど広がりがなく固体の性質を示していますが,注入ポンプで加圧すると容易に流動化します。
 
 

可塑状グラウト® の種類

 



 
可塑状グラウト® には,エア系と非エア系があります。先の「エアパック工法」はセメント系の固化剤を使用したエア系です。近隣の生コン工場より生モルタルの供給を受けることで,設置プラントではなく車上プラントを使い,200m 程度のコンパクトな圧送により注入箇所の近くで施工が可能で,一車線のみの規制で対応できます。主に,道路トンネルなどに対応する工法です。
 

「エアパック工法」は 一車線ごとの施工が可能




 
 

「エアパック工法」トンネル注入状況




 
 
これに対して「スラメント工法」は非エア系に分類され,固化剤にスラグを使う非セメント系の工法です。坑外に主要プラント(材料製造・注入)を設けて圧送注入する定置プラント方式が基本で,2,000m超の長距離圧送が可能です。
 

「スラメント工法」プラント設置状況




 
 

新開発「TG-NAP 工法」とは

「可塑状グラウト®」はThixotropical-gel-Grout(チキソトロピカル・ゲル・グラウト)と訳されますが,「TG-NAP工法」のTGはこれを略したもの,NAPはニュー・エアパックを意味しています。
 
新開発の「TG-NAP工法」は,圧送距離が長くても大丈夫なものが欲しいという要望により,「エアパック工法」から圧送性を妨げる砂を抜いた工法として開発されました。先の表からするとエアの入らない非エアのセメント系に分類されます。
 
しかし,砂を抜いたセメントだけだと早く固まってしまうため,新開発の無機系安定剤「TG-安定剤」を使用することでセメント水和反応[2] と材料分離を抑制し,脱水圧密[3] を低減するため,長い使用時間を確保できるようにしました。
 
このため,A液を圧送管内に残置しても24 時間以内であれば再圧送可能であり,圧送管洗浄回数の軽減と,廃液などの産業廃棄物削減による経済性の向上が期待できます。
 
[ 2 ] セメントの化合物と水が化学反応して凝結・硬化すること
[ 3 ] 水が分離して体積が収縮すること
 



 
長距離圧送が可能な「TG-NAP工法」の適用範囲は以下の通りです。
 
● 各種トンネルの背面空洞対策
● 地下構造物の背面空洞対策
● 護岸および堤防等の背面空洞対策
● 限定注入が要求される充填箇所
● その他の長距離圧送が必要な施工箇所
 
 

可塑状グラウト®を使った工法は東京湾アクアラインでも採用されている

可塑状グラウト協会には3つの部会があり,そのうちのシールド注入部会の「シールド可塑状注入工法」は東京湾アクアラインにも採用されています。また,「エアパック工法」は,山梨県大月市の国道トンネル,福井県敦賀市のレンガ造りのトンネル,阪神・淡路大震災による影響で発生した岸壁構造物下部空洞の充填などにも使用されています。
 
※「可塑状グラウト®」は登録商標。一般名は可塑性グラウトになります
 
 

おわりに

入った瞬間から出ることだけを考えてしまう道路トンネルですが,高度成長期に矢板工法で造られたトンネルの裏側に充填されているグラウトに思いをはせると,トンネルに居る時間もそう悪くないかと思うのですがいかがでしょうか。
 
 

(取材・文= (株)フィールドリサーチセンター)

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年07月号



 

最終更新日:2023-07-10

 

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