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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 橋梁の維持管理と技術開発 〜コンクリート内部の可視化技術の開発〜

 

1. はじめに〜CAESAR設立の背景〜

我が国では,高度経済成長期(昭和30年〜48年)に道路整備が急ピッチに進められた。そのため,建設後50年以上を経過した橋梁が,現在飛躍的に増加している。
 

【図− 1 建設年度別橋梁数(橋長2m 以上)1)】




 
また,我が国の道路橋の多くは,世界的にみても非常に厳しいレベルの道路交通事情や自然環境にさらされている。厳しい財政事情の下で,その健全性を適切に評価し,予防保全の考え方を取り入れながら戦略的に維持管理するための,調査・点検,診断・評価,補修・補強技術の確立を急ぐ必要がある。
 
我が国の道路橋は,1930年代(昭和10年前後)のニューディール政策の時代から整備が本格化した米国と比較して,全体に30年程度若いが,既に床版の疲労,鋼部材の疲労,コンクリート部材の塩害・アルカリ骨材反応による損傷といった橋の耐荷性能に重大な影響を与える損傷事例も多数報告されている。例えば,平成18年には,鋼桁橋(国道25号 山添橋)の主桁と横桁間の溶接部から疲労に起因する1mを超えるき裂が発生する事例が報告されている。また,平成19年には,国道23 号 木曽川大橋(写真− 1)や国道7 号 本荘大橋など鋼トラス橋の引張斜材が腐食等により破断に至り,その補修のために一時的に通行規制を余儀なくされ,社会的に大きな影響を及ぼした。
 

【写真− 1 トラス橋の斜材破断(木曽川大橋)】




 
さらに,同じ平成19年には,米国ミネソタ州ミネアポリスI-35W橋において,毎年の詳細点検や実橋計測,構造解析による状態評価を行っていたにもかかわらず崩壊事故が発生している。このような状況を踏まえ,平成20年に,国土交通省が設置した有識者会議は,技術開発の推進,技術拠点の整備を含む「道路橋の予防保全に向けた提言」を公表した。
 
一方,平成7年の兵庫県南部地震や平成23年の東北地方太平洋沖地震により,社会基盤施設は甚大な被害を受けた。平成16年新潟県中越地震,平成19年能登半島地震・中越沖地震,平成20年の岩手・宮城内陸地震等を含めて,大規模な地震が頻発しており,首都直下地震,東海地震,東南海地震,南海地震等の大規模地震発生の切迫性が指摘されている。社会経済活動の高度化に対応して,構造物の防災・減災技術の高度化も一層求められている。
 
このような社会的ニーズの高まりを踏まえ,(国研)土木研究所では,平成20年4月,既存の研究組織を発展的に改組し,橋梁の設計施工技術,維持管理技術,さらには災害復旧技術をはじめとする,道路橋の安全管理のための総合研究組織として構造物メンテナンス研究センター(CAESAR:シーザー)を設置した。
 
CAESARの役割は主に,1)技術的課題を抱える個別橋の診断・処方など現場の技術支援,2)既存橋に対して「計画的な保全」と「安全管理」を目的とし,橋の社会的重要度や管理レベルに応じた技術・研究の開発,3)維持管理技術者の集積拠点として産学官,海外機関との連携を通じて技術交流・情報発信の場を整える,などが挙げられる。
 
 
 

2. コンクリート橋の塩害による劣化

コンクリート橋の主な劣化として,コンクリート内部に埋設された鋼材の腐食が挙げられる。一般に,コンクリート中に埋設された鋼材は,アルカリ環境下にあるため腐食しにくい。しかし,海などから飛来する塩分や,凍結防止剤などに含まれる塩分がコンクリートに多量に浸透すると,その塩分によってコンクリート中の鋼材が腐食する場合がある。この現象は塩害と呼ばれ,日本のコンクリート橋に数多くみられる劣化現象である(写真− 2)。
 

【写真− 2 塩害によって鉄筋やPC 鋼材が腐食破断した例】




 
この例では,コンクリート表面から浸入した塩分によって,コンクリート内部にある鋼材(鉄筋やPC鋼材)が腐食し,コンクリートが大きく剥離しているのがわかる。
 
図− 2に,都道府県・政令市等,市町村の管理体ごとに塩害の影響地域および非塩害地域における健全度判定区分の関係を示す。この図からは特に健全度判定Ⅲ,Ⅳといった区分において,塩害が大きく影響していることが示されている 1)。
 

【図− 2 健全度分布の塩害の影響地域による比較1)】




 
 

3. PC橋の鋼材腐食

ポストテンション方式のPC橋で,グラウトの充填が十分に行われていない事例が近年確認されている。ポストテンション方式のPC橋は,コンクリート打設後にPC鋼材を緊張する方式であり,鋼材の腐食等の劣化を防止するため,シースとPC 鋼材の隙間をグラウトで充填する。しかし,シース内にグラウトの充填不良箇所が存在すると,雨水や塩化物イオン等がシース内に浸入する恐れがある(図− 3)。その結果,PC鋼材が腐食・破断し,最終的に落橋という重大事故につながる恐れもある。
 

【図− 3 PCT 桁橋の上縁定着部からの水の浸入のイメージ】




 
 
PC橋の点検は基本的に近接目視点検で行われる。これによってグラウト充填状況を直接知ることはできないものの,特定のひび割れパターンを確認し,PC鋼材位置との関連性や他の変状の有無などを総合的に勘案することによって,間接的にグラウト充填状況を知ることができると考えられる。この場合の代表的な劣化シナリオとしては,1)グラウトの充填不足により,2)その部位に水や塩分が徐々に浸入する。それにより,3)PC鋼材の腐食が経年的に進行し,4)シース沿いにひび割れの発生が想定される。
 

【図− 4 シースに沿ったひび割れの例】




 
 

4. コンクリート内部の可視化技術の開発

4.1 高出力X 線源による可視化技術の開発

府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより科学技術イノベーションを実現するための国家プロジェクトとして,平成26年度から戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)が開始された。SIPの課題の一つである「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術(プログラムディレクター:藤野陽三 横浜国立大学先端科学高等研究院 上席特別教授)」の一環として,土木研究所では東京大学と連携して高出力X線加速器を用いた内部鋼材の可視化技術の研究開発を行っている。以下にグラウトの充填不足やPC鋼材の腐食・破断を調査する技術として,X線技術を用いた可視化技術の現状について紹介する。
 

4.2 X線発生装置

X線の利用を規定している放射線障害防止法が平成17年に改正され,高出力X線の屋外利用の可能性が広がった。改正では,X線等を屋外で使用する場合,橋梁検査に限って4MeVまでのX線加速器の使用が認められた。これを受け,高出力X線源の現場利用に向けて,出力が950keVと3.95MeVの二つの加速器の開発を行った。開発された3.95MeV加速器(出力が3.95MeVのもの)の全体像を写真− 3に示す。
 

【写真− 3 3.95MeV X線発生装置】




 
装置は,X線源,高周波発生装置,電源,水冷ポンプから構成されている。高出力の他装置に比べ重量が小さいのが特徴であり,既存の橋梁点検車に搭載可能なように,X線源等を200kg以下に抑えている。また,X線源および検出器を連続的に移動できる専用のスキャン架台を製作している。
 

4.3 現地撮像試験

実際のPC橋において,高出力X線によるPC鋼材の調査を実施している。箱桁の場合は箱桁内部に加速器を入れて撮影している(写真− 4)。また,T桁橋では橋梁点検車に加速器を搭載して撮影している(写真− 5)。
 

【写真− 4 箱桁の撮影状況】

【写真− 5 T桁の撮影状況】




 
写真− 6は,950keV加速器を用いて実際の橋梁で撮影されたX線画像である。対象の橋梁は,鋼材が腐食し破断していることが削孔などにより確認されている橋梁であり,950keV加速器を用いたX 線撮影により,内部鋼材の破断が確認できる。
 

【写真− 6 高出力X 線源(950kev)を用いた撮影画像】




 
また,橋梁において放射線量を実測した結果,950keV加速器を用いた場合でも,基準となる線量を大幅に下回っており,十分安全であることが示されている。これまで,950keV加速器での実際の橋梁における撮影を2回,研究所内における試験桁の撮影を1回実施しており,コンクリート内部にある鋼材の可視化に成功している。また,平成29年3月には,屋外での撮影が二回目となる3.95MeV加速器による撮影が行われ,撮影手法も標準化しつつある。
 
 
 

5. おわりに

本稿では,塩害によりコンクリート内部の鋼材が腐食した桁の可視化方法について紹介した。PC構造の耐荷力評価では,鋼材の減肉量だけでなく,空隙の状態やプレストレス量の把握などが重要である。老朽化する橋梁の数が急激に増加している現在,より簡易に内部状態が把握できる可視化技術へのニーズが高まっており,可視化技術を基本とした耐荷力評価手法の完成を目指していく予定である。
 
 


参考文献:
1)国土交通省道路局:道路メンテナンス年報,平成29年8 月
 
 

国立研究開発法人 土木研究所                     
構造物メンテナンス研究センター(CAESAR) 上席研究員 石田 雅博

 
 
 
【出典】


積算資料2017年10月号



 

 

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