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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 上水・下水道施設の維持管理 > 下水道管きょ更生施工管理技士の資格試験制度について

 

1. はじめに

高度成長期に整備しストックした我が国のライフラインは膨大な量におよび,例えば下水道においてはその総延長は47万kmに達し,敷設後すでに50年を経過している下水道管きょは約1.3万km(約3%)となっている。また,この50年を経過する下水道管きょは10年後には5.3万km(約11%),20年後には13万km(約28%)と推計されており,老朽化した管きょが急速に増加することが見込まれている。これらを背景とし,破損,クラック,腐食等による機能低下に迅速に対処する需要としての問合せも年々増加傾向にあり,管きょ更生工法の施工実績は7,000kmを超え,工法への期待も急速に高まっている。
 
そのようななか,専門業者による施工差異が生じることなく高い品質が確保されること,様々な現場環境に高い技術レベルで解決策を提供できること,安全管理,関連法令順守などは当然のことながら施工管理が適正になされることなど,業界団体としての不断の努力が必要とされている。(統計数値は「管きょ更生工法における設計・施工管理ガイドライン-2017年版-」公益社団法人日本下水道協会より抜粋)
 
 

2. 資格試験制度の創設

一般社団法人日本管更生技術協会(以下,JPR)においては,技術レベルの向上や高い品質の確保,安全管理や関連法令順守を前提とした施工管理が適切に行われるよう,マニュアル作成や全国各地における研修会の実施,各ブランド工法の技術研修等取り組んできたが,これらの活動に加えて資格試験制度を平成27年11月25日に設立し,会員各位はもとより広く一般に至るまで活動を広げ,品質の高い技術の普及に努めることとした。
 
創設した資格制度は,管更生技士,下水道管きょ更生施工管理技士,圧力管路更生施工管理技士,穿孔技師(1 級,2級)の4種5資格であるが,本稿では,下水道施設に特に関連の深い下水道管きょ更生施工管理技士と穿孔技師(1級,2級)について紹介する。
 
 

3. 下水道管きょ更生施工管理技士

3.1 目的

下水道管きょ更生工事を確実に実施できる証しとして資格を認定することを目的とし,以下に示す知識を有する者に資格を認定する。
 
①JPR 資格委員会が認める(公財)日本下水道新技術機構の審査証明書を取得した技術を有する各ブランド工法を,現場条件に合わせ下水道管きょ更生工事が実施できる知識・技能を有すること。
 
②更生工法の設計および更生管の特性に関する知識を有すること。
 
③下水道管きょ更生工事における品質管理,安全管理,施工管理の知識を有すること。
 
④管路崩壊のメカニズムと管更生技術の適用に関する基礎知識を有すること。
 
⑤下水道管きょ更生を実施するために必要とされる建設業法や下水道法等の関連法令の知識を有すること
 
 

3.2 資格者の責務

本資格取得者は,下水道管きょ更生工事の設計・施工・工程・安全・品質等の下水道管きょ更生工事施工管理全般と監督責務を担う。
 
資格者証の例
 

表面

裏面




 

3.3 試験の方法

1次試験は,択一式の筆記試験によって行われる。
 
2次試験は,筆記試験,経験記述論文(ブランド工法別の技術確認試験)となっており,各工法協会が行う技術講習の修了者は,確認書類の提出により試験問題の一部が免除される。
 

3.4 有効期限と更新及び登録の抹消

合格通知後の合格証の期限は無期限,資格者証の有効期限は5年とする。資格者証の更新については,5年間において2物件以上の施工実績,かつJPR資格委員会が認める研修会において10時間以上の継続教育履歴があることが求められる。なお,登録および証明書を受けた者が不正または著しく不当な行為を行った場合は,JPR資格委員会で審議し,不良・不適格と判断された場合においては登録が抹消される。
 

3.5 試験の出題範囲

試験の出題は,以下に示すテキスト,マニュアル,関連法令等から出題される。
 
①JPR下水道管きょ更生施工管理技士テキスト
②管きょ更生工法における設計・施工管理ガイドライン
③関連法令(労働基準法,消防法,建設業法,火薬類取締法,道路運送車両法,道路法,下水道法,道路交通法,河川法,労働安全衛生法)
 

3.6 受験資格及び申し込み

1級土木施工管理技士,2級土木施工管理技士,1級管工事施工管理技士,2級管工事施工管理技士,技術士いずれかの保有者,または土木工事,管工事で10年以上かつ2件以上の管更生実務経験者,またはJPR資格委員会が認める研修会の受講時間が20時間を超える研修受講者を受験資格対象者とする。
 
申し込みは,JPRホームページに掲載される実施案内及び受験申込書をダウンロードし,所定の期日までに必要事項を記入した受験申込書と受験希望工法種別の工法協会の講習修了書等を本部事務局に郵送するとともに受験手数料を納付する。
 
 
 

4. 穿孔技師(1 級,2級)

4.1 目的

φ800mm以下の本管更生後の取付管接続部の穿孔を確実に実施でき,かつ穿孔部の構造上の弱点を補填できる知識を有する証として資格を認定することを目的とし,以下に示す技能及び知識を有する者に資格を認定する。
 
①φ800mm以下の本管更生後,遠隔操作穿孔機を用い,取付管接続部の穿孔をできる技能を有すること。
②取付管接続部の穿孔仕上げ状況を最大限良好とするための穿孔計画,前処理等の知識を有していること。
③穿孔部の強度低下や穿孔後の漏水の原因を理解し,防止対策知識を有していること。
④穿孔作業において必要とされる各種更生工法の使用材料の材質及び特性に関する知識を有していること。
⑤各種遠隔操作穿孔機の種類及び特徴に関する知識を有すること。
 

4.2 資格者の責務

本資格取得者は,取付管穿孔の計画・実施・工程・安全・品質等の穿孔作業全般技能及び管理責務を担う。
 
資格者証の例
 

表面




 

4.3 試験の方法

1級穿孔技師は実地技能試験及び面接によって行われる。
 
2級穿孔技師は筆記試験及び実地技能試験によって行われる。
 

4.4 有効期限と更新及び登録の抹消

合格通知後の合格証の期限は無期限,資格者証の有効期限は5年とする。資格者証の更新については,5年間において300箇所以上の穿孔実績の確認,または実地技能試験によって行われる。なお,登録及び証明書を受けた者が不正又は著しく不当な行為を行った場合は,JPR資格委員会で審議し,不良・不適格と判断された場合においては登録が抹消される。
 

4.5 試験の出題範囲

試験の出題は,以下に示すテキスト,関連法令等から出題される。
 
①JPR穿孔技師テキスト
②関連法令(労働基準法,建設業法,道路交通法,下水道法,労働安全衛生法)
 

4.6 受験資格及び申し込み

1 級穿孔技師は,2級穿孔技師合格後の2年以上経験する者及び1000箇所以上の穿孔実績を有する者を受験対象者とする。2級穿孔技師は,普通自動車運転免許所有者を受験対象者とする。
 
申し込みは,JPRホームページに掲載される実施案内及び受験申込書をダウンロードし,所定の期日までに必要事項を記入した受験申込書を本部事務局に郵送するとともに受験手数料を納付する。
 
 

5. 管きょ更生工法における設計・施工管理ガイドライン-2017年版-(以下,ガイドライン)との整合について

JPR資格委員会は,資格制度の運営にあたり,国土交通省関連部局をはじめ下水道協会等関連する諸機関に活動の趣旨と内容を説明し,ご意見を煽るなど調整しながら運営している。
 
ガイドラインにおいては,主任技術者及び管理技術者の配置にあたっては,①【管きょ更生工法の現場の施工条件への適合に関する知識】や②【更生管きょの強度・耐久性の照査に関する知識】,③【管きょ更生工事に関する施工管理や安全管理に関する能力】,及び④【下水道法等の関連法令に関する知識】を備えた技術者を配置することの重要性を指摘し,施工管理に関する資格を活用することを求めている。これらは,JPRが求めている下水道管きょ更生施工管理技士の要件と十分に合致すると考えられることから,引き続き関係諸機関への説明を継続し,受験者への不便が発生しないよう活動している。また,穿孔技師においてもガイドラインが施工技術者に求める要件と十分に合致するよう,同様に関係諸機関との調整を継続している。
 
 

6. 最後に

JPR資格制度は,技術レベルの向上や高い品質の確保,安全管理や関連法令順守を前提とした施工管理が適切に行われるために運営されており,各現場において求められている要件を満足することを第一に活動している。今後,類似の活動をされている多団体との調整も必要な部分があることなどから,微細な修正等が発生する場合には,ホームページ等でいち早く公表し,受験者の負担とならないよう細心の注意を払って運営していくものである。
 
各現場においてこの資格制度が有効に活用され,円滑に工事発注される一助となることを渇望するものである。
 
 

一般社団法人 日本管更生技術協会 技術委員長 工藤章光

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2018年2月号



 

最終更新日:2023-07-10

 

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