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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 地中熱利用 > 地中熱施工管理技術者資格制度と地中熱講座
はじめに

 
脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの利用が進んできていますが、地中熱分野でも建物への地中熱ヒートポンプの導入が進展しており、導入する地中熱利用設備の品質確保は継続的に取り組まなければならない重要な課題となっています。
特定非営利活動法人地中熱利用促進協会では地中熱利用設備導入にかかる技術基準の整備を進めてきており、またそれに並行して人材の育成を行ってきています。
小文では2014年度から実施している地中熱施工管理技術者資格制度とそれに関連して人材育成を行う地中熱講座について紹介します。
 

1. 地中熱施工管理技術者資格制度とは

 
地中熱施工管理技術者資格制度は、特定非営利活動法人地中熱利用促進協会が実施する民間資格制度です。
この制度は、地中熱利用の設備工事にかかわる施工管理技術者の資格を定め、その登録制度を実施することにより、地中熱設備の品質を確保し、併せて、地中熱利用の技術水準の向上と地中熱利用に関わる技術者の地位向上を図ることを目的としています。
また、この資格制度を実施し、地中熱施工管理技術者の活用を図ることにより、再生可能エネルギー熱利用技術、省エネルギー技術の普及と環境負荷の軽減に寄与するものです。
 
地中熱施工管理技術者には、一級と二級の資格があります。
一級地中熱施工管理技術者は地中熱利用の設備工事(地中熱源からヒートポンプまでの施工範囲をいう)の施工管理責任者として必要な施工管理能力および知識を有し、一級地中熱施工管理技術者としての登録を受けた者を言います。
 
二級地中熱施工管理技術者は地中熱利用の設備工事における施工管理責任者を補助する者として必要な施工管理能力および知識を有し、二級地中熱施工管理技術者としての登録を受けた者をいいます。
 
すなわち、地中熱施工管理技術者は、地中熱利用の設備工事において必要な知識・技術・経験を有する地中熱利用設備工事のエキスパートとして、地中熱利用設備に係る事業全体を把握し、調査・計画・設計・施工・管理のおのおのの事業段階において行われるべき業務において、これに係る人々をコーディネートするとともに、自ら実行する能力が求められているといえます。
 

2. 資格を取得するには

 
地中熱施工管理技術者資格制度の資格試験は、年1回毎年12月に実施されています。
一級と二級の受験をするには、地中熱施工管理講座(後述)の受講が必須となります。
さらにそれぞれについての受験資格は以下のように規定されています。
 
一級では地中熱利用の設備工事について3年以上(36カ月以上)に相当する実務経歴を有すること。
または、二級地中熱施工管理技術者登録後、1年以上(12カ月以上)に相当する実務経歴を有すること。
ただし、表-1にある資格の保有者は、表に示す計上月数を実務経歴の申請月数に計上することができます。
 
二級では地中熱利用の設備工事について1年以上(12カ月以上)に相当する実務経歴を有すること。
ただし、表-1にある資格の保有者は、表に示す計上月数を実務経歴の申請月数に計上することができます。
また、本協会が実施する地中熱基礎講座(後述)の全課程を受講し、修了証書を授与されていることも1年以上の実務経験と同等の条件となります。
 

 表-1 実務経歴書に申請可能な資格と計上月数

 

 図-1 地中熱施工管理技術者資格取得、登録、更新の流れ
 
地中熱施工管理技術者資格試験に合格された方が、地中熱施工管理技術者として認定されるためには、登録申請を行い地中熱利用促進協会の「地中熱施工管理技術者登録簿」に登録され、登録証の交付を受ける必要があります。
また、技術者として登録を受けた方の登録有効期間は原則4年間ですので、資格を継続的に保持するには有効期間内に登録更新手続きが必要となります。
これらの資格取得から登録、更新に至る流れを、講座の受講を含め図-1に示してあります。
 
現在の登録者数は、一級地中熱施工管理技術者が125名、二級が95名です(2023年10月)。
2014年から登録者の推移を図-2に示します。
また、地中熱利用促進協会のウェブサイトには、企業別の地中熱施工管理技術者登録数の一覧も掲載してあります。
 

 図-2 地中熱施工管理技術者登録者数
 

3. 資格制度の運営

 
資格制度の制度構築と運営の重要事項は、過半数が外部委員からなる資格制度管理委員会が権限を有し、運営の細部についても資格制度管理委員会の指導と承認を受けて実施します。
また、資格試験の試験問題作成と採点については、公平・公正とともに秘密保持が必須のため、資格制度管理委員会の下に資格試験小委員会を設けて、高い独立性を確保し実施しています。
具体的な資格制度の実施業務は、資格制度事務局が担当しており、資格制度事務局の業務の実施は、資格制度管理委員会の指導の下に行われています。
 
地中熱施工管理技術者は現在民間資格ですが、地中熱利用技術が脱炭素社会の実現に貢献できる重要な技術であることに鑑み、資格制度管理委員会には環境省、経済産業省、国土交通省からオブザーバー参加していただいています。
 

4. 地中熱講座

 
地中熱利用促進協会では地中熱利用を進める人材の育成を目的にして、2009年度から地中熱講座を開講しており、現在、地中熱基礎講座、地中熱施工管理講座、地中熱設計講座をそれぞれ年1回の頻度で実施しています。
これらのうち基礎講座と施工管理講座は前述のように資格制度と関連しています。
地中熱講座の講師陣は講義のテキストの執筆者を中心に、大学の先生方と経験豊富な協会会員が担当しています。
それぞれの講座の目的、講義内容、テキスト、対象者についての情報を以下に記します。
 

4.1 地中熱基礎講座

目的:地中熱利用に関する基礎的な知識の習得。
内容:地中熱ヒートポンプの基礎知識、システムを構成する各部(地中熱交換器、ヒートポンプ、冷暖房システム)、設計、導入例と運転実績、経済性・環境性評価と将来展望などについての講義。
テキストに北海道大学環境システム工学研究室編「地中熱ヒートポンプシステム改訂2版」(オーム社)を使用。
対象者:業務で地中熱に携わる人、地中熱の設計・施工に携わる技術者、自治体の営繕部門、再生可能エネルギー関連事業の技術者、地中熱に関心のある学生等。
資格制度との関連:受講者は2 級地中熱施工管理技術者の受験資格に必要な実務経験を免除。
 

4.2 地中熱施工管理講座

目的:地中熱設備の施工における品質確保のため、適切な施工管理が行える技術者の育成。
内容:地中熱設備の導入検討段階から事前調査、設計、施工(地中熱交換器、掘削、配管、循環流体、品質管理など)、試運転、維持管理、システム評価・改善までを体系的に講義。
テキストに地中熱利用促進協会編「地中熱ヒートポンプシステム施工管理マニュアル改訂版」(地中熱利用促進協会2022)を使用(図-3)。
対象者:地中熱の設計・施工に携わる技術者、管理業務、発注業務に携わる人。
資格制度との関連:一級および二級地中熱施工管理技術者の受験には、本講座を受講し、修了証書の発行を受けていることが必須です。
 

図-3 地中熱ヒートポンプシステム
    施工管理マニュアル

 

4.3 地中熱設計講座

目的:地中熱についての正しい理解にもとづき、地中熱ヒートポンプシステムの適切な設計ができる技術者の育成。
内容:地中熱システムの設計概要、地中熱交換器長さの設計、空調負荷計算の基礎とシステムの性能予測についての講義、性能予測ツール「GroundClub」を用いた設計演習。
対象者:地中熱の設計・施工に携わる技術者、設備設計の技術者、自治体の営繕部門等。
 
 

5. 技術基準の整備

 
技術者の人材育成を進め、システムの品質確保を行うには、人材育成講座に適切な内容のテキストが必要であることは言うまでもないことですが、このテキストを作成するには、システムの技術基準の体系が整備されている必要があります。
 
地中熱ヒートポンプシステムは、地中熱交換器 を用いるクローズドループと、地下水と熱交換するオープンループに大別され、この両者はヒートポンプを用いる点では共通していますが、熱源側の設備が大きく異なります。
また、クローズドループについてみると、熱交換器は鉛直方向に埋設する方式と水平方向に埋設する方式があり、さらに鉛直方向の方式はボアホールを用いるものと杭を用いるものに大別されます。
 
地中熱利用促進協会では、これらのうちわが国で最も施工件数が多いボアホール方式の地中熱利用ヒートポンプシステムについての技術基準を作成し、それを「地中熱ヒートポンプシステム施工マニュアル」としてまとめ、2014年に初版を2022年に改訂版を出版しています(図-3)。
また、オープンループ方式については、2017年に全国さく井協会と共同で「地中熱ヒートポンプシステム オープンループ導入ガイドライン第1版」を作成し(地中熱利用促進協会ウェブサイトに掲載)、2023年からその改訂作業を進めています。
 
また、地中熱ヒートポンプシステムの設計に関しては、2023年度のNEDO再エネ熱人材育成講座の事業として北海道大学により地中熱設計マニュアルが作成されています。
 
オープンループ導入ガイドラインや地中熱設計マニュアルも今後地中熱講座で活用し、地中熱に関して幅広く人材育成を進めていきたいと考えております。
地中熱講座、地中熱施工管理技術者資格制度に関する情報は、逐次協会のウェブサイトに掲載していきます。
 

参考文献

1) 北海道大学環境システム工学研究室編(2020)「地中熱ヒートポンプシステム改訂2版」227p.オーム社
2)地中熱利用促進協会編(2022)「地中熱ヒートポンプシステム施工管理マニュアル改訂版」179p.地中熱利用促進協会
3)地中熱利用促進協会・全国さく井協会(2017)「地中熱ヒートポンプシステム オープンループ導入ガイドライン第1版」25p.
http://www.geohpaj.org/wp/wp-content/uploads/openloop_guide01.pdf
 

特定非営利活動法人 地中熱利用促進協会  理事長
笹田 政克

 
 
【出典】


 
積算資料公表価格版2024年5月号
積算資料公表価格版2024年5月号

最終更新日:2024-04-19

 

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