- 2024-03-19
- 特集 道路の安全・安心 | 積算資料公表価格版
はじめに
主に一般道、生活道路における歩行者や自転車交通者への安全対策の取組みにおいて、一般社団法人樹脂舗装技術協会の会員が提供する工法を解説し、適用例をご紹介します。
1.樹脂系すべり止め舗装に代表される樹脂系カラー舗装の種類とその特長
1-1)樹脂系すべり止め舗装とは
舗装路面上に樹脂系バインダとして可撓性エポキシ樹脂またはMMA樹脂を薄く均一に塗布し、その上に耐摩耗性に優れた硬質骨材を散布して路面に固着させる工法です(以下「ニート工法」と呼称)。
樹脂バインダに固着した骨材が2~3層重なることで、複雑な凹凸形状となり、すべり抵抗性を有した舗装面となり、特に、雨天時においても高いすべり止め効果が得られます。
着色磁器質骨材とトップコートにより多彩な色相が得られることから、運転者や歩行者に対して路面の危険性や誘導を視覚的に示すことができます。
18種類(RPN-301~RPN-602)の工法規格を定めて、わかりやすく設計しやすい工法としています。
1-2)塗布式樹脂系カラー舗装とは
カラーの樹脂系塗材をゴムレーキ、ローラー刷毛、エアレススプレーなどにより路面に塗布する工法です。
その特長は、速乾性に優れ、施工が容易であり、比較的安価に路面をカラー舗装にすることができます。
2.一般道、生活道路における安全対策の取組み
2-1)交差点、カーブ部の視認性と制動距離の削減
交差点やカーブ部にニート工法を施工すると明色性に優れるトップコートにより、運転者に注意喚起し、高いすべり抵抗は緊急ブレーキを踏んだ時に車両の制動距離を短くして追突事故や施設接触事故を削減する効果があります(図- 1、2)。
2-2)交通区分を明示して車両の流れを整える
バスレーンや自転車道においては、道路の用途を明示して一般車両の通行を減らします(図- 3)。
交差点手前や施設内においては行先別に路面の色を変えることにより運転者の迷いを減らして、車線誘導を円滑にし、また急な車線変更を減らし、車両の流れをスムーズにして交通事故の発生を低減します(図- 4、5)。
2-3)通学路における適用例
スクールゾーンの入口を明示することや、歩道を分離できない狭い通学路、生活道路における歩行者通行帯を明示するカラー舗装にニート工法は多く採用されています(図- 6)。
区画線同等に段差がほとんど無く、側溝蓋を伴っても施工できます(図- 7、8)。
2-4)ゾーン30における適用例
生活道路における歩行者や自転車の安全を確保することを目的として、各自治体は国土交通省、警察庁、地元関係者と連携して「ゾーン30」、「ゾーン30プラス」の整備を進めています(図- 9)。
生活道路を抜け道利用する車両の速度抑制、注意喚起を目的として、指定区画の入口に採用される路面表示や道路に設置する物理的デバイスと共にニート工法は広く採用されています(図- 10、11)。
2-5)園路における景観整備
公園内の園路は、アスファルト舗装の黒色に対してカラー舗装を採用することにより景観を整え、管理車両などの歩車道の分離を明示することができます。
すべり止め効果が高いので傾斜地園路のすべり止めに有効です。
硬質骨材の代わりに自然石を用いることにより、自然石の風合いを舗装空間に取り込むことで景観性を高め、歩きやすさも提供することができます(図- 12、13、14)。
3.自転車道におけるカラー舗装の役割
3-1)車道における自転車レーンの整備
ニート工法は、車道路側部に自転車レーンを区分するカラー舗装として全国で採用されています(図- 15)。
色彩は青に限定されるものではなく、景観整備条例に基づく特注色を指定されることもあり、仕上り色に対する自由度の高さもニート工法の特長です(図- 16)。
下地の舗装は新設・既設、アスファルト舗装、コンクリート舗装いずれにおいても適用できます。
路面表示と相まって利用者に優先性が分かりやすい上に10年以上経過しても摩滅消失しない耐久性は、社会資本としてコストパフォーマンスに優れているといえます。
3-2)サイクリングロードの整備
古くからサイクリングロードの整備には、カラー舗装が多く採用されています。
近年はサイクリングロードの整備の際、一般道との交差点部における注意喚起を促す工夫を伴うデザインなど各地において多く採用されています。
いくつかの事例を紹介いたします。
(1)浅川サイクリングロード
平坦なサイクリングロードにおいて、塗布式樹脂系カラー舗装は容易な施工性があり、耐久性および価格面で高い評価を得ています。
図- 17はアスファルト舗装面に吹付塗布しています。
(2)しまなみ海道サイクリングロード
広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ、日本初の海峡を横断する約70kmのナショナルサイクルルートです。
各大橋から各島を巡る海岸線に至る坂道は、勾配約3%で設計されています。
1983年12月4日開通した因島大橋へ至る坂道は、ニート工法RPN-501が今も使われています(図- 18)。
(3)つくば霞ヶ浦りんりんロード
つくば霞ヶ浦りんりんロードは、旧筑波鉄道の廃線敷と霞ヶ浦を周回する湖岸道路を合わせた全長約180kmのサイクリングコースです。
2019年第1次ナショナルサイクルルートの指定を得て整備が進みました。
筑波山方面(桜川土浦自転車道)は、JR常磐線土浦駅から筑波山の南側を通ってJR水戸線岩瀬駅までを40kmで結びます。
筑波山方面の特徴は、地元の多くの車道と交差しており、車両通行優先の交差点と自転車通行優先の交差点をその構造から双方の利用者に認識し、一時停止を促すように設計されています(図- 19、20)。
約5kmごとに残る駅の跡を利用して駐車場、休憩所、トイレを整備し車でのアクセスを可能にすると共にライダーに休憩所の所在をわかりやすく整備されています(図- 21)。
(4)たまリバー50キロ
「多摩川サイクリングロード」とも呼ばれており、多摩川沿い全長53kmの道路です。
道路橋があるたびに堤防の天端から小段に降りて橋の下を通るように整備されています。
また、スピードの出し過ぎ等による接触事故が多発したため、安全対策の一部と
して動線をわかりやすく表示しています(図- 22)。
おわりに
樹脂系カラー舗装の主な適用例を紹介しました。
発注者におかれては、手掛けている設計において安全・安心への採用効果、デザインによる道路機能の更なる向上、インフラとしての社会的貢献に活用していただけたら幸いです。
詳細は、全国の施工会員または事務局にお問合せください。
ホームページ https://www.jushikyo.gr.jp
【出典】
積算資料公表価格版2024年4月号
最終更新日:2024-03-19
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