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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 地中熱利用 > 環境省における地中熱利用の普及促進について
はじめに

わが国は、地球温暖化対策としてパリ協定に定める目標を踏まえ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けることを宣言しました。
脱炭素社会の実現のためには、再生可能エネルギーの導入が求められており、再生可能エネルギー熱の一つである地中熱のさらなる利用を普及促進することが重要となります。
 
地中熱は、再生可能エネルギー熱の中でも、「太陽光や風力と異なり天候や地域に左右されない安定性」、「空気熱利用と異なり大気中へ排熱を出さない」、「省エネルギーでCO₂の排出量を削減できる」などのメリットを有し、地球温暖化対策やヒートアイランド現象の緩和への効果が期待されています。
 
「第五次環境基本計画」(平成30年4月17日閣議決定)」、「地球温暖化対策計画」(令和3年10月22日閣議決定)では、再生可能エネルギーの最大限の導入、再生可能エネルギー熱等の供給設備の導入支援が位置づけられています。
 
一方、わが国は、“環境資源を利用する際は長期的な負荷蓄積に伴う潜在的リスクに留意すべき”との教訓を、地下水過剰揚水に伴う地盤沈下から学びました。
このため、地下水・地盤環境の保全に留意しつつ地中熱利用の一層の普及・拡大を図るため、本稿では環境省における地中熱利用の普及促進の取組みについて紹介します。
これらの情報が地中熱利用導入に役立つ情報として活用されると幸いです。
 
 

1. 地中熱利用の普及状況

地中熱は、事務所、庁舎、学校、店舗、農業施設等で導入実績があり、CO₂ 削減の効果も確認されています。
海外では日本より国土面積が小さい国でも普及が進んでいることから(図-1)、日本でも普及の余地は大きいと考えられます。
 

 
図-1 地中熱利用ヒートポンプの国別累計設備容量(海外との比較)
 
環境省が2022年度に実施した調査によると、2021年度末までの地中熱利用システムの設置件数は約8,760件、利用方法別ではヒートポンプシステム(約37%)が最も多くなっており(図-2)、都道府県別の地中熱利用ヒートポンプシステムの設置件数は、北海道をはじめ東日本に多く分布する結果となっています(図-3)。
 

 
図-2 地中熱利用の利用方法別累計設置件数(2021年度末時点)
 

 
図-3 都道府県別累計設置件数(2021年度末)
 
 

2. 地中熱利用の効果

地中熱利用システムは、年間を通して温度が一定である地中の熱を利用するため、空気熱を利用するよりも高い効率で稼働します。
そのため、高い省エネ・二酸化炭素削減効果をもたらします。
図-4は建物の冷暖房のほか歩道の融雪に地中熱を利用している青森県弘前市の施設で、地中熱と従来型のエネルギー利用を比較したときの、1次エネルギー消費量と二酸化炭素発生量を示しています。
ここではエネルギー消費量は在来システムとの比較で46%減となっており、また二酸化炭素発生量は50%減となっています。
 

図-4 青森県の施設におけるエネルギー利用の比較(地中熱利用協会ホームページ)
 
 

3. 「地中熱利用にあたってのガイドライン(第4版)」

環境省では、共有資源である地下水・地盤環境の持続可能な利用を行いながら地中熱利用の普及促進を図ることを目的として、現在得られている知見に基づき、地中熱利用ヒートポンプのメリットとともに、想定される地下水・地盤環境への影響の可能性と技術の導入における留意点を提示し、熱利用効率の維持や地下水・地盤環境の保全に資するモニタリング方法等についての基本的な考え方を整理した「地中熱利用にあたってのガイドライン」を策定しています。
 
第4版(2023年度)の改訂では、2018年の改訂増補版を経て5年が経過したことに加えて、近年の著しい国際・国内動向の変化を踏まえて、地中熱利用の一層の普及促進を図るために、新たに得られた知見・事例等を追加することにより、内容をより充実しています。
 
以下に、その概要を紹介します。

3.1 ガイドラインの適用範囲と構成
(1) 適用範囲

本ガイドラインは、地中熱利用に関する方式のうち、主に地中熱利用ヒートポンプシステムを用いた手法を対象に解説しています。

(2) ガイドラインの構成

【第1章】地中熱利用ヒートポンプの概要

地中熱利用の種類、地中熱利用ヒートポンプの仕組み、地中熱利用の方式別・都道府県別・施設別の普及状況等について概要を紹介しています(図-5)。
 

図-5 地中熱利用の種類(例)
 
 
【第2章】地中熱利用ヒートポンプシステムによる省エネルギー効果等

従来の冷暖房や給湯などの方式と比べた場合の省エネルギー効果の試算、CO₂ 排出量削減効果の試算、省コスト効果の試算、ヒートアイランド現象の緩和効果の試算について、それぞれその結果を目安として紹介しています。
また、新たにZEB・ZEHの導入事例を追加しています(図-6)。
 

図-6 CO₂排出量削減効果の例
 
 
【第3章】地中熱利用ヒートポンプシステムに関する配慮事項

地中熱利用ヒートポンプシステムを導入する際の条件、留意点、工夫などを充実させ紹介するとともに、前回ガイドライン第5章の一部(工夫、情報、制度等)をこちらに移動しています。
 

図-7 適用できる地中熱利用ヒートポンプシステムの方式
 
 
【第4章】地中熱利用による効果・影響とモニタリング方法

モニタリングの必要性、考えられる環境影響を紹介するとともに、モニタリング項目と方法、モニタリング機器の選定・配置等の事例を掲載しています。
また前回ガイドライン参考資料の一部(稼働事例、モニタリングデータの確認方法)をこちらに移動しています(図-8)。
 

図-8 オープンループ方式の地下水・地盤環境への影響項目
 
 
【第5章】地中熱利用に関する新技術等の紹介

地中熱利用の導入を検討する際に参考となる技術情報を紹介するとともに、新たに地中蓄熱の追記、分析・解析ツール等の充実を行っています(図-9)。
 


図-9 地中蓄熱の種類(各蓄熱方式の概念図)
※Energy Storage Technology Collaboration Programme
(https://iea-es.org/task-39/, 2022年12月13日閲覧)
 
 

4. 地中熱広報資料

地中熱に関する認知度を高めるため事業者をはじめ、一般、子どもなど幅広い層に向けた広報用資料(パンフレット、ポスター・タペストリー、動画等)をHP,YouTube等に掲載し普及啓発に努めています(図-10、11、12)。


図-10 パンフレット

図-11 壁掛け用タペストリー
(A1サイズ10種)
図-11 壁掛け用タペストリー
(A1サイズ10種)

図-12 イベント等に展示し画面に触れながら地中熱について学ぶ動画
図-12 イベント等に展示し画面に触れながら地中熱について学ぶ動画

 

おわりに

脱炭素社会の実現のためには、地中熱などの再生可能エネルギー熱の普及促進が重要となります。
一方、地中熱利用技術は地盤に熱負荷を与えるため、環境影響(地下水・地盤環境)への配慮が必要な技術であることから、継続的なモニタリングによりデータ蓄積を行い、地中熱利用技術の導入による地下水・地盤環境への影響を確認しつつ、普及促進する必要があります。
また、普及に向けては、環境省、その他の省庁や自治体が実施するさまざまな助成制度(環境省HP参照)があり、これらを活用することができます。
多くの人々が利用する公共施設や大型民間施設などを中心に、モニタリングによる環境影響の検証を行いつつ、導入実績の蓄積による認知度の向上を図り、さらなる普及促進につなげることが重要と考えています。
 
https://www.env.go.jp/seisaku/list/thermal.html

 

参考文献

・環境省(2023).地中熱利用にあたってのガイドライン(第4 版)
・環境省(2023).地中熱利用システムパンフレット
 
 
 

環境省 水・大気環境局 環境管理課 環境汚染対策室 室長補佐 
大山 修

 
 
【出典】


 
積算資料公表価格版2024年5月号
積算資料公表価格版2024年5月号

最終更新日:2024-06-12

 

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